交通事故における民事調停とは?簡易裁判所への申請から解説
「民事調停」は簡易裁判所で行われ、調停委員会のもとで双方が話し合うことで問題を解決しようとするもの。費用は「裁判」の半分程度に抑えられ、スピーディな解決も期待できる方法。反面、調停委員が交通事故の専門家ではない可能性があり、問題点もあります。
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「民事調停」は簡易裁判所への申し立てで申請
調停委員会が発足され話し合いが始まる
当事者同士による交通事故の損害賠償交渉である示談が、話し合いで合意に至らなかった場合、次の問題解決手段は「民事調停」となります。
裁判所で行われる「民事調停」ですが、民事事件と対になっている刑事事件には調停に該当する手続きはありませんので、普通に「調停」といえば「民事調停」のことになります(以下、「調停」と記します)。
トラブルの円満解決を目指す「調停」
「調停」は交通事故だけではなく、売買、金銭の貸し借り、近隣関係、建物の明け渡しをめぐる争いなどのトラブルを、裁判所において、「裁判」以外の方法で解決を目指すものです。
「裁判」と比較すると、申し立てが簡単で、費用も安く抑えられ、手続きは非公開で行われるためプライバシーを守ることもできます。
「裁判所ホームページ」によると、「民事調停」では6割以上が調停手続きで解決し、解決までの期間は約2.4カ月と、スピーディな解決が図られているようです。
「調停」を申し立てる先は、原則として相手先の住所を管轄する簡易裁判所となり、交通事故の被害者および加害者どちらでも申し立てることが可能となっています。
実際の「調停」手続きの進め方を見てみましょう。
「調停」の申し立て先は簡易裁判所
「調停」は、裁判に比べると非常に簡単な申し立て申請によって申請を行うことが可能です。
また「調停」の申し立ては、加害者でも被害者でもどちらでもできます。
原則として、相手の住所を管轄する簡易裁判所に申請
「調停」を申し立てる人は、原則的には交渉を行う相手の住所を管轄する簡易裁判所へ行って、申し立て手続きをします。
この際、双方が合意すれば、話し合いで決めた地方裁判所や簡易裁判所、人身事故の場合は請求者の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てを行うことも可能となりますので、最寄りの簡易裁判所に問い合わせてみましょう。
なお、裁判所の場所や連絡先は、裁判所ホームページで検索が可能です。
交通事故に遭ってしまう前は縁もゆかりもなかった裁判所だと思いますが、さまざまなトラブルに「調停」を利用してもらえるように努力を続けている様子です。
「調停」の利用方法についても、上記ホームページに詳しく説明されていますので、示談交渉がうまく進まず困っているならば、一読すると良いでしょう。
「調停」申立書の書き方
また、裁判所ホームページからは、交通調停に使用する「調停申立書」もダウンロードできます。
記入例もアップロードされていますので、参考にしてみてください。
記載事項に難しいことはなく、以下の点さえ押さえておけば大丈夫です。
- 作成年月日
- 申立人住所、氏名、連絡先電話番号
- 法定代理人(当事者が未成年の場合)
- 相手方の住所、氏名、連絡先電話番号(分かっている場合)
- 申立ての趣意(金額がはっきりしている場合はその金額、または相当額としても良い)
- 紛争の要点
交通事故の内容
発生年月日、発生場所、加害車の種類、加害車の所有者、加害車運転者氏名、加害車運転者と相手方の関係、被害者の氏名・年齢・職業、被害者と申立人との関係、被害の程度、後遺症
損害額
治療費、休業損害、慰謝料、修理費など、損害額の一部の支払いを受けている場合はその金額
以上、たいていの項目は〇を付けるか、示談交渉を進めるにあたって把握している内容であるため、簡単に書けると思われます。
「調停」申し立てに必要な書類は?
「調停」の申し立て申請には、前述の申立書のほか、下記の書類を添付する必要があります。
いずれも、示談を進めていくうえで必要な書類ですから、揃えることは難しくないでしょう。
「調停」申し立てに必要な書類
- 調停申立書(裁判所ホームページからダウンロード可)
- 交通事故証明書(写し)
- 診断書(写し)
- 商業登記簿謄(抄)本または登記事項証明書(申立人または相手方が会社の場合)
以上のほか、裁判所において申立書を記入する際には印鑑が必要となります。
また、病院の診療明細書、収入証明書(確定申告書の控えまたは源泉徴収票など)、などを添付して申し立て申請を行っても良いのですが、この段階では必須ではないため、裁判所にお問い合わせください。
「調停」申し立てにかかる費用は?
ADR機関を利用する「調停」においては、法律相談や和解あっ旋は無料で行われるところが多いのですが、裁判所で行う「調停」には、賠償金額に応じた手数料が必要です。
また、書類を郵送するための経費などの費用、書類を準備するための費用、弁護士などを雇って手続きを進める場合はその費用が必要となってきます。
「調停」の手数料金額と納め方
裁判所へ「調停」の申し立てをする際には手数料が必要となります。
手数料分の収入印紙を申立書に貼ることで納付します。
手数料の金額は、「調停」にて相手方に支払いを求める金額(訴額)によって変わります。
次に一例を紹介しておきますが、実際には細かく決められていますので、裁判所に問い合合わせてください。
訴額 | 手数料額 |
---|---|
50万円 | 2,500円 |
100万円 | 5,000円 |
300万円 | 10,000円 |
500万円 | 15,000円 |
上記の金額はいずれも、訴えの提起(訴訟を起こす)に必要な手数料の半額となっていますので、「裁判」と比べ費用面では割安です。
加えて、相手方に呼出状を送付する際の郵便切手(予定郵券)が必要となりますので、裁判所の窓口で確認してください。
また損害賠償額が決まっていない場合も、裁判所にお問い合わせください。
「調停」の調停委員会とは?
「調停」が申し立てられると、裁判所は調停委員会を立ち上げます。
裁判所は、当該の交通事故に関する調停委員会を立ち上げますが、その事故のためだけに専門の委員が召集されるわけではありません。
どのような人が「調停」に関わるのか、説明します。
裁判官1名と調停委員2名が「調停」を進める
調停委員会とは、簡易裁判所の裁判官1名と、民間から選ばれた2名以上の調停委員によって構成されるものです。
裁判所ホームページによると、調停委員は次の基準で選ばれています。
「調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させるため、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。具体的には、原則として40歳以上70歳未満の人で、弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などの専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など、社会の各分野から選ばれています。」
交通事故に強い調停委員かどうかは分からない点に注意
ここで気をつけておきたいのは、この基準は交通事故の「調停」だけではなく、すべての「民事調停」に適用されるということです。
裁判所ホームページではまた、「事件の内容等に応じて、最も適任と思われる調停委員を指定するなどの配慮をしています。」と謳っていますが、必ずしも交通事故の示談交渉に詳しい人が任命されるわけではないでしょう。
この点が、複雑な事故やこじれた示談交渉の和解あっ旋には交通事故に特化したADR機関を利用した方が良いとされる理由です。
調停委員会が当事者双方を裁判所に呼び出すことから始まる
「調停」申立書を受け取った裁判所は調停委員会を立ち上げ、話し合いによって問題を解決するために、交通事故の当事者双方を裁判所に呼び出します。
まず裁判所の調停委員会から日時を決めるための連絡が行われ、日時が決定すれば相手方に「調停申立書」の副本を呼出状が送られます。
ここから、本格的な「調停」が始まります。
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