交通事故の示談交渉が決裂してしまった場合はどうなる?

調停

交通事故の示談交渉が決裂した場合、次に進むべき段階は「調停」となる。ADR機関による和解あっ旋とは違い、裁判所の「調停」で合意した調停調書には強制力がある。費用も「裁判」と比べて割安となるため、すぐに訴訟を起こさずに「調停」での合意を求めたい。

交通事故の示談交渉が決裂した場合、次に進むべき段階は「調停」へ。ADR機関による和解あっ旋とは違い、裁判所の「調停」で合意した調停調書には強制力があります。費用も「裁判」と比べて割安となるため、すぐに訴訟を起こさずに「調停」での合意を求めます。

交通事故の示談も和解あっ旋もまとまらない!裁判所での「調停」に

交通事故の損害賠償交渉は、まず当事者同士による話し合いの示談によって決着が図られます。しかしさまざまな理由で交渉が長引き、お互いに納得のいく示談内容で合意に至らなかった場合は、裁判所による「調停」に持ち込まれることとなります。

「調停」を経ずに「裁判」へと進むのも可だが

交通事故の示談交渉がまとまらず、交通事故の相手方に何の誠意も見られない場合などは、「調停」を経ずに一気に「裁判」へと持ち込むことも可能ですが、「裁判」は交通事故の損害賠償問題解決の最終手段であり費用もかかるため、まずは「調停」を求めることが一般的です。

また示談がまとまらない場合、同じく第三者による和解あっ旋を求めるADR機関の利用という手段もあります。

まず裁判所の「調停」とはどのようなものなのかを理解し、ADR機関による和解のあっ旋と比較し、自分のケースではどちらが良いのかを判断し、損害賠償交渉を先に進めましょう。

交通事故における裁判所の「調停」とは?

「調停」も「裁判」も、裁判所が紛争解決に介入するもので、本質的には同じものと言えるかもしれません。しかし、紛争当事者の姿勢と結論の出し方に大きな違いがあります。

「調停」は、あくまで当事者同士の話し合い

交通事故の損害賠償問題における「調停」は、あくまでも事故当事者同士の話し合いで円満に解決することが目的です。解決に導くための方策を、裁判所の調停委員が双方の話を聞きながら導き出すものです。

「裁判」は、当事者同士の争い

一方、「裁判」になると、交通事故の被害者と加害者が原告と被告に分かれて争うことになります。一般的なケースでは被害者が原告となり訴訟を起こし、「裁判」を経て判決が下されます。

「裁判」では、判決を下す前に和解を勧告することもありますが、一方が勝ち、一方が負けという結果になります。

交通事故の当事者双方が自らの主張を裁判官に訴え、最終的に裁判官が判決を下すので、そこには双方が納得できる結論はあり得ません。不満があっても判決が確定してしまったら、それに従わなければならないのです。

裁判所の「調停」と、ADR機関による和解あっ旋の違いは?

「調停」はADR機関による和解あっ旋と同様に、裁判所が第三者の仲裁役として当事者双方の言い分を聞き取り、歩み寄れる調停案を当事者双方に示し、話し合いによって問題を解決するものです。

裁判所が仲裁する場合と、ADR機関が間に入る場合とでは違いを比較してみましょう。

費用はADR機関利用の方が明らかに少ない

裁判所の「調停」の場合、賠償希望金額に応じて調停費用を支払う必要があります。

一方、交通事故問題に特化したADR機関である交通事故紛争処理センターや、日弁連交通事故相談センターでは、必要経費などを除いて原則として無料で、法律相談および示談成立のための和解あっ旋を受けることができます。

調停委員、弁護士の専門性の違い

裁判所の「調停」の場合、2名の調停委員が仲介し、和解案を探ります。

調停委員は、豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれ、原則として40歳以上70歳未満の人で、弁護士、医師、大学教授など、各分野から選ばれることになっています。そのため、交通事故の損害賠償問題に詳しい人が調停委員となるとは限りません。

一方、交通事故問題に特化したADR機関では、交通事故問題に詳しい弁護士が和解あっ旋を行いますから、専門性においてはADR機関の方が高い場合があります。

結果の強制力にも違いがある

ADR機関の和解あっ旋の場合、和解条件に十分な拘束力がない場合があります。

損害保険会社や共済と協定を行っているADR機関であれば、下された審査結果や裁定についてある程度拘束力があるとされています。しかしこれは、あくまでも一定の拘束力や、結果を尊重するという立場であり、強制力はありません。

一方で裁判所の「調停」の結果、調停案に基づいて作成された調停調書には、裁判の判決と同じ効力があるため、支払いに応じない加害者に対して強制執行が可能となります。

迷った時には、まず専門家に相談するのも一手

以上のように、ADR機関の利用は費用を抑えられる反面、導き出された和解案の強制力が弱いという側面があります。

一方、裁判所の「調停」は費用がかかりますが、調停調書は強制力を持つものになります。

それぞれの特徴を理解して、自身のケースならばどちらが適しているのかを判断して利用しましょう。

判断がつかず迷った時には、どのような進め方が良いのか、弁護士など交通事故問題の交渉の専門家に相談するのも一手です。

交通事故で「調停」を行うメリットは?

ここで、裁判所による「調停」のメリットをまとめてみましょう。

「調停」のメリット

  • 「裁判」に比べて費用が割安で、手続きも簡単
  • 合意された調停案は、「裁判」と同じ強制力がある

示談交渉が決裂し、いよいよ「裁判」に進むしかない! 訴訟を起こす! と行動する前に、一度第三者に間に入ってもらい、「調停」の場で話し合うことができるのです。

示談交渉ではお互いの考えを主張し合い平行線をたどることになっても、公正・中立な立場の第三者が間に入ることによって、少し冷静になって考え直すことが大切なケースがあると考えられます。

「裁判」は費用も手間もかかる。その前に冷静に交渉を

「裁判」は、実際の公判を戦うための資料集めを始めとし、準備が大変になります。

交通事故の被害者自身で訴訟を起こすことも可能ですが、確実に勝訴し、望む損害賠償金を得るためには、弁護士を雇うことが必須となるでしょう。その結果、費用は「調停」に比べて増加してしまいます。

「調停」に臨む前に弁護士に相談するのも効果的

交通事故当事者同士の示談交渉が決裂し、次の段階に進む場合、「調停」の手続きも弁護士にお願いして、より有利に交渉を進めることができます。

「裁判」ほどの時間も費用もかかりませんので、いざ「裁判」になってから弁護士を探して雇うより、「調停」段階から弁護士に依頼した方が費用は安く済むかもしれません。

「調停」の場で双方が裁判所の出した調停案に同意し、和解が成立すればその決定事項は裁判で下された判決と同じ拘束力を持ちますから、費用面を考えればかなり効率的と言えるでしょう。

交通事故で「調停」を行うデメリットは?

費用も安く、合意した調停著書には強制力がある「調停」ですが、一方で、「調停」は時間の無駄だと言われることもあります。

その理由は、「調停」には次のようなデメリットがあるからです。

「調停」のデメリット

  • 調停委員が必ずしも交通事故に精通していない
  • 相手の参加、合意が必要

先にも述べた通り、「調停」の場を取り持つ調停委員は、交通事故の専門家ではない可能性があります。

複雑な要素が絡んだ事故や、後遺障害認定について揉めている場合は、妥当な調停案が示されないことも考えられます。また、交渉相手が「調停」に参加しなければ、そもそも和解の合意は行われません。そのため、お互いの主張があまりにもかけ離れている場合には、「調停」で合意に達する可能性は低いのです。

相手が「調停」の話し合いに出て来ないことも

「調停」では、最悪の場合、交渉の相手方が、話し合いを全て欠席するという事態もあり得ます。

その場合には、当然「調停」は成立しませんから、訴訟を起こして「裁判」に臨むしかありません。

それでも、示談交渉が決裂したからといって、いきなり訴訟を起こすよりも、「調停」から順序を踏んで進めた方がいいでしょう。

裁判所から「調停」の呼出状が届いたら、考えを改めるかもしれないのですから。

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