「民事裁判」開始の手続きと費用~交通事故の民事裁判①
交通事故の民事裁判を起訴する場合、最初に必要となる費用は、裁判所手数料、予納郵券、そして弁護士費用となる。裁判所手数料は訴額によって計算方法が定められており、予納郵券は裁判所によって違う。弁護士費用は事前にいくら必要なのか明確にしておくこと。
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交通事故の民事裁判
起訴段階に必要な費用は、裁判所手数料、予納郵券、弁護士費用
民事裁判を起こすには、刑事裁判とは違い費用がかかります。
刑事裁判の場合、被害者が直接「裁判」を起こすわけではありませんので、加害者が起訴されても被害者には費用はかかりません。逆に、公判で証人として出廷して証言すれば、交通費と日当が裁判所から支払われるのです。
民事裁判では、被害者(原告)がまず費用を負担
一方、民事裁判では、自ら「裁判」を起こすわけですから、弁護士を雇わなくても「裁判」を行う費用は、まず被害者(原告)側が負担します。
しかし原則として、原告が全面勝訴した場合は被告がすべての費用を負担することになっているため、訴状において加害者(被告)に請求する金額に裁判費用を上乗せしておけば、損害賠償金の一部として支払われ相殺されることになります。
この場合、弁護士費用はここで言う訴訟費用には含まれないので注意が必要です。
起訴手続きを行い、「裁判」を始めるにあたって、必要な費用には何があるのでしょうか。
民事裁判の手続きに沿って、費用がどれくらいかかるのか見てみましょう
民事訴訟法によって敗訴側の負担と定められている
交通事故の民事裁判において、訴訟費用は原則的に敗訴側が負担するものと定められています。また、不必要な行為、訴訟を遅滞させた場合、一部敗訴の場合についても、次のように規定されています。
民事訴訟法
第4章 訴訟費用
第1節 訴訟費用の負担
(訴訟費用の負担の原則)
第61条 訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。
(不必要な行為があった場合等の負担)
第62条 裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。
(訴訟を遅滞させた場合の負担)
第63条 当事者が適切な時期に攻撃若しくは防御の方法を提出しないことにより、又は期日若しくは期間の不遵守その他当事者の責めに帰すべき事由により訴訟を遅滞させたときは、裁判所は、その当事者に、その勝訴の場合においても、遅滞によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。
(一部敗訴の場合の負担)
第64条 一部敗訴の場合における各当事者の訴訟費用の負担は、裁判所が、その裁量で定める。ただし、事情により、当事者の一方に訴訟費用の全部を負担させることができる。
「裁判」は、勝たなければ意味がない
以上のように、裁判にかかる費用は敗訴した方が負担しなければなりません。また敗訴となった場合は、示談交渉においていくらか合意の道筋があったであろう損害賠償金の金額でさえも、まったく得られない可能性もあるのです。
「示談」や「和解」では、不十分な金額であれ損害賠償金を得られる可能性があったものが、敗訴してしまったらゼロになることもあり得るということです。そのため、「裁判」をするからには、勝訴するためにあらゆる手段を尽くすことを考えましょう。
交通事故に強い弁護士に依頼することも、もちろん必要となってくることです。「裁判」となれば、弁護士費用を節約しようという考えは持つべきではありません。
起訴の段階で必要な費用①~裁判所手数料~
交通事故の民事裁判は、自分の住所、あるいは加害者(被告)の住所、もしくは事故発生場所のいずれかの簡易裁判所、または地方裁判所へ訴状を提出することから始まります。
訴状を提出する前には、多くの事前準備が必要です。
訴状に記載しなければならない事項は?(※)
訴状には、以下の事項を記載して提出します。
- 訴状を提出する日付、提出する裁判所名
- 被害者(原告)、加害者(被告)の住所、氏名
- 請求する損害賠償の金額、手数料(印紙)の金額
(請求の趣旨)
損害賠償金の金額や支払い方法、費用の負担方法について記載
(請求の原因)
交通事故が発生した日時、場所、事故車の種類、事故の態様など
(加害者(被告)が問われる責任)
加害者(被告)が訴えられるべき理由
(被害者(原告)の状態)
交通事故によって負った怪我の病名、加療期間、後遺障害など
(被害者(原告)の損害)
治療費、入通院費、休業損害、入通院慰謝料、逸失利益、後遺障害慰謝料などの金額
訴状と同時に提出しなければならない書類は?(※)
訴状と共に、交通事故証明書、交通事故によって負った怪我の診断書、後遺障害診断書、休業損害証明書、源泉徴収票などを提出しなければなりません。
訴状に記載する金額などを、証明するための書類はすべて提出することになります。
裁判所手数料の金額は?
裁判所に訴えを起こす場合には、裁判所に手数料を納める必要があります。
手数料の金額は、民事訴訟費用等に関する法律に定められており、加害者(被告)に請求する損害賠償金の金額によって変わってきます。具体的には、同法別表第1に規定されている金額を、収入印紙で訴状に貼り付けて提出します。
民事訴訟費用等に関する法律別表第1
訴訟の目的の価額に応じて,次に定めるところにより算出して得た額
(1)訴訟の目的の価額が100万円までの部分、その価額10万円までごとに1,000円
(2)訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分、その価額20万円までごとに1,000円
(3)訴訟の目的の価額が500万円を超え1,000万円までの部分、その価額50万円までごとに2,000円
(4)訴訟の目的の価額が1000万円を超え10億円までの部分、その価額100万円までごとに3,000円
(5)訴訟の目的の価額が10億円を超え50億円までの部分、その価額500万円までごとに1万円
(6)訴訟の目的の価額が50億円を超える部分、その価額1,000万円までごとに1万円
少し計算が面倒ですが、具体例を挙げると:
損害賠償金額が50万円の場合 | 5,000円(1,000円×5) |
---|---|
損害賠償金額が100万円の場合 | 1万円(1,000円×10) |
損害賠償金額が200万円の場合 | 1万5,000円(1万円+1,000円×5) |
損害賠償金額が500万円の場合 | 3万円(1万円+1,000円×20) |
損害賠償金額が1,000万円の場合 | 5万円(1万円+3万円+1,000円×10) |
なお、控訴の提起には上記の手数料金額の1.5倍、上告の場合は2倍の手数料が必要となります。
起訴の段階で必要な費用②~予納郵券~
裁判所に納める手数料と同時に、訴状を提出する際、予納郵券を求められます。
裁判所から訴状などを被害者(原告)や加害者(被告)に郵送する郵便料金を予め、切手によって納めなければならないというものです。
予納郵券がいくら必要なのかは裁判所ごとに違いますので、訴えを起こす裁判所にお問い合わせください。
東京地方裁判所の場合
東京地方裁判所の場合、当事者が原告と被告の2人だった場合は6,000円で、当事者が1人増えるごとに2,144円が加算されます。
また当裁判所は現金予納を選択することも可能となっており、この場合は当事者が1名増すごとに2,000円を加算すればよいこととされています。
いずれにしても、予納の方法などの詳細は裁判所にお問い合わせください。
起訴の段階で必要な費用③~弁護士費用~
先に述べたように、「裁判」では勝訴するためにあらゆる手段を尽くすべきです。
交通事故に強い弁護士に依頼し、すべての手続きを正しく行ってもらい、万全の体制で訴状を提出し、「裁判」に臨むことをお薦めします。
弁護士費用を明確にしておくこと
弁護士費用は、着手金や報酬金に分かれ、報酬金は最終的に獲得した損害賠償金(訴額)の〇〇%と決めている弁護士が多いようです。
きちんと弁護士と交渉し、弁護士費用がいくら必要になるのかを明確にしておきましょう。
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