狡猾な方法で忍び寄る、交通事故の「示談屋」に気をつけよう
「示談屋」はまだ存在します。昔ほどあからさまな手口ではありませんが、今でも巧妙かつ狡猾な方法で近付いてくるという。資格を持っていない者が報酬を得て示談交渉を代行することは違法となるため、甘い話には決して乗らず、毅然とした態度で拒否することが大切です。
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示談交渉に勝手に首を突っ込んでくる「示談屋」に要注意!
最近の交通事故の示談交渉には、必ずと言っていいほど保険会社の交渉担当員が加害者の代理人として交渉を行いますので、昔ほど幅を利かせることはなくなりましたが、「示談屋」あるいは「事件屋」と呼ばれる連中は今でも実在します。
恐喝や脅しを働く示談屋も
彼らは交通事故の加害者や被害者とは何の関係もないのに、代理人として示談交渉を進め、違法な報酬を得ようとするのです。
通常の示談金に、「示談屋」たちの報酬が上乗せされて交渉が進められるのが常ですから、「示談屋」が絡むことでまとまる話もまとまらなくなってしまう事も珍しくはありません。
その上、交渉において脅しや恐喝行為を働くヤクザ紛いの連中もいるようです。
交通事故の示談交渉における「示談屋」とはどのような存在なのか、実際に交渉を迫られたときにどう対応すれば良いのか、ここで説明します。
「示談屋」とは?
「示談屋」が交通事故における示談交渉で幅を利かせ、頻繁に現れていたのは、まだ保険会社による交通事故処理のノウハウが確立していなかった時代のことです。
「示談屋」は病院などで網を張り、交通事故を起こした加害者や被害者に声をかけ、負傷の治療費や車の修理代などの問題を解決してあげると言って近寄り、勝手に示談交渉に首を突っ込んできたものです。
加害者・被害者の関係なく、「示談屋」は近寄ってくる
加害者が依頼人になれば事故の賠償金や慰謝料を値切る交渉をし、逆に被害者が依頼人の場合は1円でも高く加害者から賠償金を取ろうと交渉し、最終的に示談屋はどちらの依頼人からでも報酬を受け取って儲けていたのです。
最近はさすがにこのようなあからさまな手口は無理だと思われますが、両方に善意を持った振りをして近付き、円滑に示談交渉を進めるようなことを口にし、狡猾に報酬を得ることがあるようです。
立場を偽って、あたかも交渉代理人のような名刺を持って、「示談屋」は近寄ってきます。
本当に当事者の代理人として交渉を行うならば、正式な委任状を持っているはずですので、きちんと書類を確認するようにしましょう。
交通事故が起こったら、必ず警察に通報すること!
「示談屋」は、交通事故が起こったのに警察に通報せず、内々に示談を済ませてしまおうとしたところに現れます。
被害者となってしまった場合、加害者側が「十分な修理費や慰謝料を払うから警察には連絡しないで欲しい」と言い出し、後に「示談屋」が交渉に出てくるというケースがあるようです。
被害者側にも警察に連絡しなかったという負い目がありますから、相手の思うままに違法な示談交渉が進められてしまいます。
いくら相手が渋っても、交通事故が起きてしまったら必ず警察に通報し、負傷者がいれば救急車を要請し、加入している保険会社への連絡を速やかに行っておきましょう。
「示談屋」の行為は違法行為
例え善意を持って行ったとしても、「示談屋」の行為は違法行為です。具体的には弁護士法72条で定められている「非弁行為(ひべんこうい)」にあたります。
非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
「非弁行為」には、罰則が定められている
また弁護士法第77条により、この法律違反意には罰則が定められており、非弁行為を行った者は、次の処罰を受ける可能性があります。
第77条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
三 第七十二条の規定に違反した者
(以上、弁護士法第77条より抜粋)
このように、資格を持っていない者が示談交渉を代行することは違法です。
加害者となってしまった場合「示談交渉を有利に進める」と近寄ってくる者に対しては、きちんと所属や資格を確認し、少しでも不信感があれば話をしないことが大切です。
無報酬の「示談屋」は、違法ではない?
「示談屋」とか「事件屋」と呼ばれる者は、存在そのものが違法と言いたいところです。しかし「非弁行為」は、弁護士法において「報酬を得る目的で」と定められていますから、無報酬の「示談屋」は違法とは言えないのです。
無報酬であっても「示談屋」の話は聞かないこと!
無報酬で他人の示談交渉に首を突っ込んでくるものはいないと思われます。
一方で、交通事故を起こしたばかりの加害者や被害者は、精神的にも辛く、経済的にも苦しい立場に追い込まれることは確かです。
交通事故の現場で、あるいは病院で、身元が分からない人が近づいて来て示談の話を始めたら、疑ってかかった方が良いかもしれません。
「示談屋」の被害に遭ってしまったら?
いくら「示談屋」に脅されたからといっても、一度署名捺印してしまった示談書を取り消すのは難しいことです。
善意を装い、立場を偽って交渉を進め、最後に裏切りのような形で相当に不利な条件の示談内容を飲まされそうになった場合は、署名捺印を拒否する、あるいは脅されて仕方なく応じてしまったことを記録に残しておくことが必要です。
そして脅迫があれば警察に届け出る、あるいは弁護士に相談し有効なアドバイスをもらいましょう。
有難いけれども断りづらい、善意の助け舟
加害者であっても被害者であっても、交通事故に遭ってしまった場合、家族や友人・知人が示談を有利に進めるために、あれやこれやと法律的なアドバイスをしてくれたり、時には交渉の場に同席しようとしてくれたりすることがあります。
「法律のことを勉強していたから」「知り合いに保険会社の人がいるから」「頼りになる人だから」といろんな理由で、助け舟を出してくれることでしょう。
交通事故に遭う前はまったく縁のない、保険会社の交渉担当員や、弁護士、司法書士などと比べて、接しやすいですし、より親身になって動いてくれそうな気がしますが、こういう人たちを頼って良いものなのでしょうか?
報酬を得なければ、「非弁行為」に該当しない
本来ならば、交通事故の示談交渉は、民法でいう和解のための交渉となりますので、代理人として活動できるのは、弁護士などの資格を持った者に限られます。
そのため、家族や友人・知人が交通事故の当事者に対して法律的なアドバイスをすると、「非弁行為」に該当しそうですが、「示談屋」のケースと同様に、報酬を得なければ「非弁行為」にはなりません。
家族や友人・知人は交通事故の当事者のことを心配して色々アドバイスしてくれるだけで、結果として報酬を要求することはないと思われますが、少し困った問題が起きる可能性があります。
最初から、弁護士など専門家に相談を
それは、示談交渉が長引いてしまったり、知識が足りずに困ってしまったりしても、なかなか断りづらいということです。
また、助け舟を出してくれる人の知識が法律的に正しいとは限りません。
示談交渉が決裂してしまった場合、責任を問うこともできません。
交通事故の当事者となってしまった場合は、善意ある人に頼る前に、あるいは悪意を持った人が近づいてくる前に、きちんとした法律知識と経験を持った弁護士に依頼するか、少なくとも相談をしてみるべきでしょう。
交通事故に強い弁護士には、初回の相談を無料で引き受けてくれるところも多いので、示談交渉の進め方だけでも聞いてみるのが良いかもしれません。
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