交通事故の示談交渉がうまく進まないときには、ADR機関を利用するという選択肢がある

ADRに相談

当事者同士の話し合いによる損害賠償交渉が「示談」、裁判所を介した解決方法が「調停」「裁判」で、その間にあるのがADR機関の利用と言える。費用も安くスピーディな決着が期待されるため、近年注目が高まっている交通事故損害賠償における紛争解決方法です。

交通事故の示談交渉が不調または決裂した場合

調停や裁判の前にADR機関の利用を考えてみよう!

交通事故の損害賠償交渉は、事故当事者双方による示談から始まり、ここで合意が得られなければ裁判所における調停、そして裁判へと発展していくのが通例です。

しかし一方で、費用を抑え、どうしても早く決着を着けたいと考える場合の手段として、ADR機関の利用があります。

一般的にはあまり馴染みのない方法ですが、本項では交通事故の損害賠償交渉の決着に有用なADR機関の利用について説明します。

交通事故発生からADR機関利用までの流れ

交通事故が発生すると、直後から事故当事者双方による損害賠償交渉が始まります。

まずは当事者同士により解決を図る「示談」と呼ばれる話し合いとなりますが、多くの場合は加害者が加入する保険会社の交渉担当員と、被害者本人の間で進めることになります。この場合、被害者自身が交渉できない状態であったり、交渉に不安があったりする場合には弁護士にお願いして「示談」を進めることも有効な方法です。

まずは「示談」で早期の決着を模索する

交通事故の損害賠償交渉の約90%は、「示談」で合意がなされていると言われています。

加害者が加入する保険会社は早期の決着を模索し、被害者としてもいつまでも事故の後処理に関わっていることは辛く、早く新しい生活のスタートを切りたいところでしょう。

しかし加害者側は損害賠償金をなるべく低く抑えたい、被害者側は事故で受けた損害を少しでも多く金銭で賠償してもらいたいという考えから、交渉が長期化しまとまらない場合があります。

示談交渉には期限があることに注意

交通事故の損害賠償は、民法724条に定められた損害賠償請求権に基づくものです。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)

第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

以上の定めのように、3年間権利を行使しないと時効により消滅してしまいますから、いくら相手が不誠実であっても、損害賠償金額に不満があっても、いつまでも交渉を長引かせるわけにはいかないのです。

「示談」がまとまらない場合は、「調停」や「裁判」に

「示談」交渉がまとまらない場合は、一般的には第三者に仲介を依頼する「調停」や「裁判」に進めることになります。しかし「調停」や「裁判」は、裁判所の都合によって日程が定められ、また費用も増加してしまいます。

また自身が被害者となってしまった交通事故を「裁判」沙汰にしたくないという意識を持つ人も多いでしょう。

このような場合、交通事故の損害賠償交渉を決着させるための「和解」をあっ旋してくれるADR機関の利用が考えられるのです。

ADR機関とは?

ADR機関とは、ADRを用いて紛争の解決を図ってくれる機関です。

ADRは特定の機関の名称ではなく、Alternative(またはAppropriate) Dispute Resolutionの頭文字を取った略語で、訴訟手続によらない紛争解決方法を示し、一般的には「裁判外紛争解決手続」と訳されています。

裁判所を介さず、和解のあっ旋や仲裁案提示を行う

ADRとは、当事者同士の交渉と、裁判所による法律に基づいた裁断の中間に位置する紛争解決方法です。

交通事故においては、さまざまなADR機関が、当事者同士の間に第三者を交えて、和解の仲介や仲裁案を示して紛争の解決を目指すことになります。

代表的な交通事故のADR機関には、公益財団法人 交通事故紛争処理センター、公益財団法人 日弁連交通事故相談センター、日本損害保険協会のそんぽADRセンター、外国損害保険協会の一般社団法人 保険オンブズマンなどがあります。

ADR機関利用と調停との違いは?

ADR機関を利用して紛争の解決を図ることも、裁判所に「調停」を求めることも、和解を目的とすることでは同じです。

実際、ADRと「調停」は、ほぼ同じ流れで当事者同士の和解を図りますので、裁判所が介入しない和解あっ旋をADRと呼んでも良いかもしれません。

もともとADRは、増え続ける民事問題に裁判所の対応能力が限界に近づいたため、裁判所の負担を軽減させるために取り入れられたという経緯もあるのです。

ADR機関利用ならではのメリットがある

第三者の介入により和解を求めるという点では、ADR機関利用も裁判所の「調停」も同じですが、そのプロセスにおいて、費用や時間、また幅広い選択肢があるという点で違ってきます。

ADRのメリットを理解して、「示談」交渉が長期化し決裂した場合に、すぐに裁判所の「調停」に持ち込まずにADR機関の利用を考えてみてはいかがでしょうか。

さまざまなADR機関から選ぶことができる

ADR機関には、公的団体から民間組織まで、さまざまな形態があります。

ADRは交通事故に限ったものではありませんから、どのような紛争でもADR機関を利用することが可能なのです。

交通事故専門、あるいは交通事故に強いADR機関を選ぶこと

たいていのADR機関は民事トラブル全般の紛争処理を取り扱っています。

そのため、どこのADR機関でも交通事故の問題解決に対応してくれますが、交通事故専門、あるいは交通事故に強いADR機関を利用した方が良いでしょう。

各機関のホームページで取り扱い実績を調べたり、ポータルサイトを利用して比較してみたり、あるいは実際に電話で問い合わせて確認してみてください。

ADR機関利用のメリットは?

交通事故の「示談」交渉が長期化し決裂してしまい、裁判所での「調停」に進む前にADR機関を利用するメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 費用が安く済む可能性がある
  • 調停や裁判に比べて、時間が自由に設定できる
  • スピーディな対応が可能
  • 非公開のため、プライバシーが守られる

費用面でのメリット

裁判所で行う「調停」「裁判」には、相当額の費用が発生します。

「示談」交渉を個人で行っていたとしても、このステージになれば弁護士を雇わなければ有利に進めることは難しく、そのための弁護士費用も発生します。

一方、ADR機関で和解のあっ旋を受ける場合、多くの機関では無料相談から始めることが可能です。

非常にうまく進めば無料相談だけで問題が解決してしまうこともありますので、「調停」や「裁判」に進む前にADR機関を利用する価値は十分にあると考えられます。

時間面でのメリット

裁判所を介した「調停」や「裁判」は、基本的に裁判所側のスケジュールに沿って行われます。

従って裁判所から呼びだされるのは、基本的に平日の昼間が多くなります。

交通事故から社会復帰を果たし、仕事を始めている人にとっては、なかなか呼び出しに応じることが難しくなります。

一方で多くのADR機関では、利用者に合わせた時間帯で話し合いの場を持つことが可能となります。

また話し合いのペースも、裁判所のように1カ月に1回といったスローペースではなく、スケジュールさえ合えば、どんどん話し合いが進められるのです。

プライバシー面でのメリット

「調停」や「裁判」では、損害賠償交渉の過程や結果が公となってしまいます。

交通事故の損害賠償交渉で「裁判」を避けたいという思いは、被害者であっても裁判結果を一般に知られたくないという意識もあるのではないでしょうか。

多くのADR機関では、和解内容は公に知られることなく、当事者同士の間であっ旋が行われるため、プライバシーを守ることができる可能性が高い方法となります。

以上のようなメリットを考慮すれば、「示談」が難しくなった場合にADR機関を利用する価値は大いにあると言えるでしょう。

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