不当判決|刑事裁判は有罪の確率が高い。交通事故被害者は不当判決と感じることも

判決

交通事故の刑事裁判には、被害者が関与する方法はほとんどありません。公訴権は検察にしかなく、判決に対して控訴や上告を行う権利も検察か被告人(加害者)にしかない。唯一重大事故で認められる、被害者参加制度で後半において証言を行うくらいしかないのが実情です。

※交通事故の過失割合や損害賠償をめぐる民事裁判については下記の記事をご参照ください。

刑事裁判では有罪となる可能性が非常に高い

しかし交通事故の被害者が不当判決と感じることも

交通事故において、人身事故となった場合はほぼ自動的に刑事事件として警察が捜査を行います。

そして警察の捜査が終了し、事故内容が事件として検察に送検されると、検事官が事件の加害者を起訴するか不起訴にするかを判断します。

示談が成立しているかどうかもポイント

加害者を不起訴にするか、あるいは軽い罰金刑で済ませる略式手続きにするかの基準のひとつとして、被害者と和解できているかどうかという点があります。

加害者に謝罪の意思と反省の色が見られ、被害者に対する十分な損害補償の約束ができていれば、交通事故では示談と呼ばれる和解が成立しているはずです。

被害者が強い処罰意識を持っている場合、すなわち被害者が加害者を許そうと思えるほどの謝罪と反省の念と償いが示されていない時には示談が成立せず、加害者が起訴されて正式な刑事裁判が開かれる可能性が高くなると言えます。

その他、事故の程度や被害者が受けた損害の大きさ、加害者が重大な交通違反を犯した末の事故かどうかも刑事裁判が行われるかどうかのポイントとなります。

以上のような要素が勘案され、実際に加害者が起訴されて刑事裁判となった時の流れについて見てみましょう。

処罰感情を持っていても、判例以上の結果は出ない

交通事故が起こり起訴されてから刑事裁判は始まるまでは時間がかかりますが、始まってしまえば意外と早く決着が着いてしまいます。

加害者が逮捕されて身柄を拘束されている場合を除き、一般的に交通事故の裁判は事故が発生してから約半年後となり、1年後くらいに初めて裁判が開かれることも珍しくはないようです。

但し、実際に裁判が開始されてからは、だいたい1カ月に1回のペースで公判が開かれ、被告人となった加害者が全面的に罪を認めている場合は、3回くらいの公判で判決まで進んでしまいます。

交通事故の加害者の罪は?

交通事故を起こしたことにより、加害者が問われる罪状には次のようなものがあります。

過失運転致死傷罪

交通事故によって被害者を死傷させた場合に問われます。

量刑は7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金となります。

危険運転致死傷罪

交通事故が発生した原因が悪質だと考えられる場合に問われます。

飲酒・薬物などで酩酊している状態で運転した場合、法定速度を50km/時超過した状態で起こした事故の場合、無免許運転で事故を起こした場合、信号無視や走行禁止区域で事故が生じる速度で運転していた時に起こした事故の場合、などが相当します。

量刑は、被害者が負傷していた時は1月以上15年以下の懲役、被害者が死亡していた時は1年以上20年以下の懲役と、非常に重いものとなります。

その他に加害者が問われる罪は?

被害者の負傷の程度に関わらず、加害者が交通事故後に適切な措置を行わないと、次の罪が問われることになります。

負傷者の救護義務違反

交通事故の直後に現場にとどり負傷者の救護をせず、ひき逃げをした場合に問われます。

量刑は10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

事故報告義務違反

交通事故を起こしたにもかかわらず、警察に通報しなかった場合に問われます。

量刑は3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。

判決を下すのは裁判官 被害者の望み通りの判決が下るとは限らない

以上のような罪状で審理が行われ、最終的には被告人(加害者)に対して裁判官から判決が下されます。

そして日本の刑事裁判では、有罪になる確率が非常に高いと言われています。

検察が有罪の見込みがなければ起訴しないとも言われており、特に交通事故では被告人が事故の事実を覆すのは難しいのです。

しかし現実の裁判では、被害者がいくら厳罰を望んでも、先に記したようなよほど悪質な違反行為がない限り、たいていは罰金刑か執行猶予付きの禁錮もしくは懲役刑になってしまうのが現状です。

いきなり禁錮や懲役の実刑判決が出て、加害者が刑務所送りなる事はあまりないのです。

加害者に甘い裁判制度?

日本の裁判制度は加害者に甘いとよく言われるのですが、こうした量刑は交通事故に限らず、過去の刑事裁判で下された判例に従っていて、よく似たケースを参考にして判決を出しているに過ぎないのです。

加害者に反省の色が見られず、十分な損害補償を提示してこないために被害者の処罰意識が強烈であっても、過去の判例から極端に逸脱した判決は公平性を欠いてしまいますので、裁判官は加害者に甘いわけではない、ということを知っておきましょう。

やはり交通事故の被害者になってしまったら力を入れるべきは民事裁判と言えます。

事故の直後から交通事故に強い弁護士に依頼し示談交渉を進めて少しでも有利な内容を引き出すようにし、もし相手が応じなければ民事訴訟で戦うことがより重要となってくるのです。

被害者が刑事裁判に関われる制度がある

交通事故の刑事裁判においては、公訴権も検察にしかなく、原則的には被害者が直接的に裁判に関わることができません。

しかし2008(平成20)年に導入された被害者参加制度により、一定の重大な事件について、被害者の刑事裁判への参加が認められています。

かつては、交通事故に限らず刑事裁判に被害者が参加することはできず、傍聴席で裁判の行方を見守ることしかできなかったのですが、重大事件における犯罪被害者を軽視してはいけないという考えが強まったために導入された制度です。

なおこの制度は権利ですから、加害者の顔も見たくないという人が出廷する必要はありません。

被害者参加制度とは?

刑事訴訟では検察しか起訴が行えないことから、被害者の感情や意思がないがしろにされるという問題がありました。

この問題を解消するために被害者参加制度が導入され、一定の罪名についての裁判で、被害者が刑事裁判手続きに参加できることになったのです。

交通事故における対象犯罪は危険運転致死傷罪などで、被害者が亡くなっている場合もしくは心身に重大な故障がある場合には、被害者の配偶者、直径の親族もしくは兄弟姉妹、あるいは被害者の法定代理人となります。

また公判中に、検事が必要と判断すれば被害者自身を証人として出廷させることも可能です。

証人として呼んだ検事が、事前にいろいろと助言をしてくれますので、変に緊張せず思いのたけをぶつけるのも良いでしょう。

交通事故の刑事裁判で控訴・上告は期待できない

日本の裁判は三審制が採用されていますので、第一審の判決が不服ならば控訴、第二審の判決にも上告して裁判をやり直すことは可能です。

しかし公判を重ねた結果に裁判官が下した判決が不満でも、刑事裁判で控訴または上告ができるのは被告人と検察だけです。

下された判決に被害者ができることはほぼ皆無

刑事裁判で控訴や上告といった上訴ができる権利を持っているのは、被告人である加害者と起訴した検察だけで、被害者自身が上訴することはできません。

もちろん検察側の検事に面会して、相手を控訴するように訴えることはできます。

ただ被告人が有罪になった、つまり勝訴した事件において検察が積極的に上訴することはほぼありません。

検事を説得するには相当な覚悟と、控訴して確実に加害者の罪が重くなる証拠が必要となります。

逆に、被害者にとっては軽い判決でも、加害者本人は重すぎると考え、加害者側が控訴してくることはあります。

そうなれば検察側が控訴しなくても控訴審は開かれますが、そこで下される判決がより重くなることは、ほぼ期待できないと言って良いでしょう

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