本人訴訟とは~個人で起こす交通事故の民事裁判
交通事故の民事裁判では、必ずしも弁護士を雇う義務はありません。弁護士に依頼したくない場合、弁護士費用を節約したい場合には「本人訴訟」という方法を選べます。但し、相手が弁護士を立ててきた場合の勝算は低く、かなりの準備と覚悟を持って挑まなければなりません。
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自身だけで裁判を起こす「本人訴訟」の選択肢がある
交通事故の民事裁判において、弁護士を雇うのは義務ではない
判といえば弁護士がすぐに思い付くほど、裁判には弁護士の存在が必須であるという思い込みをしている人が多いのではないでしょうか。
しかし民事裁判においては、弁護士に依頼せず、当事者自身で裁判を起こす「本人訴訟」という方法があり、特に交通事故においては「少額訴訟」と呼ばれる、60万円以下の損害賠償を求める訴訟に用いられる方法です。
そして当然ながら、それ以上の損害賠償金を求める通常の裁判においても、弁護士を雇わずに自身で提訴し裁判を戦うことも可能なのです。これは何も、弁護士並みの法律の知識を持った人だけが行う行為ではなく、少なくないケースで一般人による「本人訴訟」が行われています。
本項では、交通事故の損害賠償請求における「本人訴訟」について説明します。
「本人訴訟」ができるのは民事裁判のみ
一般的な裁判として知られているのは刑事裁判です。警察官が犯罪を捜査し、犯人だと疑われる人を検察官に報告し、検察官が起訴相当だと判断すれば刑事裁判となります。
一方、交通事故においては、すべての事故で刑事裁判が行われるわけではありません。ひき逃げ、飲酒運転、過度なスピード違反、死亡事故など悪質な違反行為を犯した加害者がいる場合に限られています。
交通事故の損害賠償問題は、民事裁判で争われる
刑事裁判の争点となるのは、被告人となる加害者が有罪か無罪か、どれくらいの量刑かとなり、被害者への損害賠償に関する問題は争われません。刑罰は罰金、懲役あるいは禁錮となりますが、直接被害者の利益となることはなく、被害者に代わって、国が加害者に罰を与えることになるだけです。
交通事故の被害者が受けるべき損害賠償の問題は、民事裁判で争われるのです。
民事裁判は誰でも起こせる
刑事裁判の場合、被告人を起訴できるのは検察官だけで、被害者が加害者に刑罰を与えたいと考えるならば、検察あるいは警察に告訴しなければなりません。
一方の民事裁判では、日常生活で起こる法律上の争いを解決する場で、刑事裁判とは違い誰でも訴えを起こすことができることが特徴です。すでに成人であれば1人で、未成年であっても法定代理人が代わりに裁判を起こすことが可能です。
民事裁判の手続きは個人でもできる
裁判を起こすとなると、手続きが分からない、また自分だけで法廷に立って良いのかという不安などから、弁護士に依頼することが必須だと考えている人が多いのではないでしょうか。しかし実際には、民事裁判においては弁護士に依頼しなくても訴訟を起こして裁判の場で争うことができるのです。
テレビドラマや映画では、裁判の場面で必ず弁護士が登場します。
しかし現実の民事裁判では、弁護士の資格を持たない一般人が原告となって裁判を起こす「本人訴訟」がひんぱんに行われています。
被告の立場から見た裁判では?
刑事裁判の場合は、訴える側が検察という法律のプロになりますので、公正な公判を行うために必要的弁護事件(※)には、被告人に弁護人をつけることが義務付けられていますし、それ以下の刑罰の裁判でも被告人の要請があれば国選弁護人がつけられます。
そのため、たいていの刑事事件で被告人は弁護人をつけることとなり、一般的なイメージとしての、弁護士が登場する裁判が行われているのです。
(※)予想される刑罰が死刑または無期懲役、あるいは懲役3年を超えるような罪状の事件などにおいては、弁護人がいなければ開廷することができない
民事裁判は弁護士を雇わない「本人訴訟」が基本
弁護士を雇うのは個人の自由
日本の民事裁判は、弁護士を雇わない「本人訴訟」が基本です。
民事訴訟法において弁護士強制主義が採用されていないことから、交通事故の裁判において本人自ら訴訟を行うことができるのです。法律のプロである弁護士に依頼するかどうかは裁判にかかわる人の自由で、雇ってもいいし雇わなくても問題はありません。
弁護士とは?
弁護士とは、司法試験に合格し司法修習を終了し、各地の弁護士会を通じて日弁連(日本弁護士連合会)に名簿登録されている人を指します。
弁護士は、刑事事件の場合は弁護人と呼ばれ、民事事件の場合は代理人と言われます。
民事裁判において弁護士は、原告(または被告)に代わって公判を行う人という意味で、裁判を起こすのはあくまでも原告本人であるという考え方に基づいています。
弁護士を雇うメリットは?
一般的に、交通事故の民事裁判に臨む際には、弁護士を雇う人が多いでしょう。
>弁護士を雇う理由は簡単で、裁判に勝つため
最初から負けるつもりで裁判を起こす人はいません。
自分の主張を貫き勝訴するために裁判をするのですから、勝つためにできることは何でもするのが普通でしょう。そうなれば法律のプロであり交通事故問題に詳しい弁護士を代理人として雇うのは当然の成り行きです。
「本人訴訟」で裁判を起こし、相手の被告側が弁護士を立ててき場合、勝ち目はかなり薄くなるでしょう。裁判で必ず勝つ気であれば、弁護士を代理人として雇うのは正しい選択だといえます。
「本人訴訟」を選ぶ理由は?
弁護士を雇って代理人として手続きなどを依頼し、裁判に臨んだ方が勝訴の確率は明らかに高いのです。しかし交通事故の民事裁判では、弁護士を雇わず、原告自ら裁判を起こす「本人訴訟」を選択する人がいます。
その理由は何なのでしょうか?
大きく分けると、2つの理由があります。
弁護士が苦手
過去に悪徳弁護士に騙されて、もう弁護士を信用できなくなった、という人がいます。
信頼していた人に裏切られて損失を被ってしまったり、法外な弁護士費用を請求されたりした経験があれば、二度と弁護士には依頼したくないという気持ちは理解できます。このような感情的な理由で、「本人訴訟」を選ぶこともあるでしょう。
また、何でも自分でやらないと気が済まない性分の方もいます。いくら優秀で評判の良い弁護士がいたとしても、自分が巻き込まれた交通事故の損害賠償問題は、自分で調査し、自分で訴訟を起こし、決着を着けたいという人もいるはずです。
示談がこじれ、調停も不調となって裁判に臨むわけですから、もう他人は信用できなくなって自分で勉強して裁判をする、という心意気で「本人訴訟」を選ぶのでしょう。
費用を節約したい
しかし上記のような感情論はごく一部の方だと考えられます。
「本人訴訟」を選択する最も多い理由は、弁護士費用のことを考慮すれば、採算がとれない、というものでしょう。刑事裁判の場合は有罪か無罪か、あるいは執行猶予か実刑か、といったお金の問題ではない所で裁判の勝敗が決まりますので、ある意味で採算は関係ないのです。
しかし民事裁判は、主にお金の問題です。
従って、仮に裁判で勝ったとしても、その裁判にかけた費用が受け取る金額を上回ってしまったら意味がないのです。
弁護士を代理人として雇ったら、弁護士費用の方が高くなってしまうようなケースの場合のみ、「本人訴訟」で裁判を戦う意味があるわけです。
かなりの覚悟を必要とする「本人訴訟」
裁判は最初の計算通りに進むわけではありません。
勝算があって、費用を計算していたとしても、思いもよらず裁判が長引いてしまったり、弁護士を雇った相手が思わぬ手に出てきたりすることで要らぬ費用がかかってしまうことも考えられます。
「本人訴訟」を行う際には、何が何でも、あらゆる手段を講じても勝訴することを念頭に、かなりの覚悟を持って挑む必要があります。
弁護士を相手に法律の舞台で戦うわけですから、簡単ではありません。
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