通常の裁判に進んだ場合~「本人訴訟」の手順
交通事故の損害賠償問題は民事訴訟であり、法廷では書類の応酬。「本人訴訟」で戦う選択肢もありますが、法律に詳しく、裁判の経験がないと難しい。弁護士費用を節約したいということだけで「本人訴訟」を選ぶことは危険で、敗訴してしまってから後悔しても遅い。
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通常裁判では弁護士の助けが必要となる
「本人訴訟」を選択する時は慎重に!
交通事故の損害賠償問題において、示談交渉が決裂し、調停も不調となり裁判にまでもつれ込むケースは非常に少ないという現状があります。
示談交渉で決着が着かないのが全体の10%程度、また調停などで和解に至らず裁判になってしまったとしても、そのうち75%は判決が下される前に和解が成立していると言われています。
裁判を起こすことを躊躇しないで
しかし心情的に裁判で争いたい、もしくは加害者の対応に誠意が見られずに、どうしても納得がいかない場合は裁判に持ち込むべきでしょう。
通常裁判において「本人訴訟」で挑むことには慎重を期するべきですが、弁護士の力を借り、被害者として当然の権利を主張することを考えるべきです。
何の罪もないのに交通事故の被害者となってしまい、多くのものを失ってしまったのですから、正当で十分な損害賠償を求めるのは当然で、泣き寝入りする必要はないのです。
通常裁判にまで持ち込まれるのは?
通常裁判にまで話がこじれてしまう揉め事といえば、交通事故で被害者が亡くなってしまった時に、遺族と加害者の間で起こる示談金の問題が想像できます。しかし死亡事故だけに限らず、被害者に高度な後遺障害が残ってしまった場合など、損害賠償金が高額となった場合も裁判に持ち込まれることが多いでしょう。
双方の合意が得られなければ、いずれは裁判となる
また「本人訴訟」で「少額訴訟」を提起しようとした時、被告が同意しなければ、通常裁判となってしまいますし、「少額訴訟」において争点の一致が見られない時や内容が複雑すぎる時には、裁判官が通常裁判への移行を命じる場合もあります。
どのような場合でも、原告となる被害者と、被告となる加害者の主張や言い分が合わず、お互いの合意が得られない時には、最終的な問題解決方法は裁判となってしまうのです。
通常裁判を「本人訴訟」で戦うのは難しい
交通事故の損害賠償問題は、一般的に裁判と言って想像する刑事訴訟ではなく、民事訴訟で行われます。
日本の民事訴訟においては、諸外国にある弁護士代理の強制制度がありませんので、必ずしも弁護士を立てる必要はありません。そのため、どのような裁判でも自身がすべての手続きを行う「本人訴訟」が可能なのですが、「少額訴訟」のケースを除き、お薦めはできません。
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法律に詳しく、訴訟手続の経験がある人で、日常生活において訴訟にかける時間や金銭の余裕がある人なら別ですが、一般人が書籍やインターネットの力を借りただけで戦える世界ではないのです。
軽々しく「本人訴訟」は行うべきではない
訴状や答弁書の作成、証拠の整理などにおいて適切な手続きが行われず、本来なら勝てるはずの訴訟で負けてしまう可能性があります。
原告がどのような主張や立証が必要かというのは、交通事故や損害賠償の内容によって違うものであり、専門的かつ必要十分な手続きを行わなければ、裁判官が勝手に事情を斟酌して判断はしてくれないのです。
また弁護士が不在の訴訟では感情論や争点がはっきりしない展開になることが多いとも言われ、条件が良いはずの和解案を飲まないばかりに敗訴し、結局は損をしてしまうこともあるようです。
弁護士費用を節約するという理由だけで軽々しく「本人訴訟」を行うことは避けた方が良いでしょう。
どうしても弁護士費用を節約したいと考えるならば、法テラスで弁護士費用の立て替え制度などの利用を検討してみるのも一案です。
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通常裁判までの手順は?
民事訴訟は、基本的に被告(加害者)に対して、原告(被害者)が交通事故によって起きた損害の賠償を求める裁判です。
被告の不法行為によって、原告が受けた損害を金銭に換算して支払いを求める形になりますので、原告が証明するのは被告の不法行為になります。それを具体的に文書化した訴状を提出することが民事訴訟のスタートとなります。
弁護士を立てて民事訴訟を戦う際には、弁護士がすべての手続きを代行してくれるため、原告本人は弁護士の求めに応じて動くだけで良いのですが、もし「本人訴訟」を行う場合はすべての書類の準備や手続きを自身で行わなければなりません。
民事訴訟の手続きを簡単に説明していきます。
訴状の作成と提出
通常訴訟を提起する際、裁判所に提出する訴状の作成方法は、基本的に「少額訴訟」と同じです。
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なお、「少額訴訟」における訴状の提出先は簡易裁判所ですが、訴額(損害賠償を求める金額)が140万円を超える場合は地方裁判所となります。
原告、または被告の住所地、あるいは交通事故が発生した住所を管轄する簡易裁判所、もしくは地方裁判所に訴状を作成し、提出します。
簡易裁判所の管轄や所在地は、裁判所ホームページで確認しください。
裁判所の手数料などが必要
訴状の提出には、民事訴訟費用等に関する法律に定められる手数料を納付する必要があります。
具体例を挙げると、損害賠償金額が100万円の場合は1万円(1,000円×10)、200万円の場合は1万5,000円(1万円+1,000円×5)、500万円の場合は3万円(1万円+1,000円×20)、1,000万円の場合は5万円(1万円+3万円+1,000円×10)となります。
裁判所の手数料はまず原告が立て替え、勝訴した場合は被告に支払いを求めることが可能となっています。
訴状の提出には、この手数料に加えて、予納郵券と呼ばれる訴状などの郵送料金をあらかじめ納めておく必要があります。
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訴状の受理と被告への送付、答弁書の作成
裁判所に訴状が届くと、訴状に誤りや添付すべき証拠に不備がある場合には書き直しや整理を求められます。
訴状が裁判所に受理された段階で、正式に裁判が始まります。
訴状の写しが訴えられた人に送付され、被告となったことを知ります。
被告は原告の訴状に書かれた起訴事実に対する反論を答弁書に記して裁判所に提出し、これが原告にも写しが送られます。
この書類のやり取りは、裁判が始まってからも基本的な流れとなります。
通常裁判の様子は?
訴状が被告に送付される際、最初の期日(裁判などの手続きが行われる日)が指定されています。
第1回口頭弁論では
最初の期日には、第1回口頭弁論が行われます。
この場では、訴状陳述と答弁書陳述という手続きが行われます。
陳述という言葉が付いていますが、実際に訴状や答弁書をドラマの裁判劇のように法廷内で読み上げることはありません。
関係者は前もって訴状と答弁書を読んでいて、裁判官が「原告は訴状を陳述します」と確認して書類を受け渡しするだけです。
答弁書も同様に書類が提出されるだけで、民事訴訟は淡々とした書類のやり取りだけで手続きが進んでいきます。
第1回口頭弁論は儀式のようなものでもあり、一般的には数分で終了してしまいます。
この際、被告が答弁書を提出せず、期日を欠席してしまった場合には、原告の主張がすべて認められたものとなり、原告の勝訴となります。
判決は、後日に判決言い渡し期日が指定され、その場で言い渡されます。
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民事訴訟は準備書類の応酬となる
通常裁判はだいたい1カ月に1回のペースで、口頭弁論が開かれるのが標準です。
第1回口頭弁論で被告からの反論である答弁書が提出されたら、今度は原告がその答弁書に対する反論を作成します。
このように第2回口頭弁論以降は、双方がお互いへの反論を繰り返していくことになり、そして法廷でお互いの主張を言い合うのではなく、法廷の外で書かれた書面で争うのが民事訴訟の基本となります。
書面で自分の主張をするというのは難しい作業となり、裁判には裁判らしい書式や言い回しが必要となってきます。
裁判を有利に進めるためには、書類作成においても専門家のアドバイスを受けた方が良いでしょう。
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