交通事故の通常裁判中の和解~多くの場合結審前に示談する
民事訴訟においては口頭弁論が繰り返される間に、裁判官より和解案が提出されます。多くの場合はこの時点で和解し、結審し判決が下されるところまでは行きません。多少の譲歩は必要となりますが、「本人訴訟」ではこの和解案の重大さを知り、慎重に検討したいところです。
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民事訴訟における和解案は非常に重要
特に「本人訴訟」を行っている場合は、慎重に検討する必要がある
民事訴訟においては、第1回口頭弁論が終わった後は、原告と被告のお互いの言い分に対して答弁書を提出するというやり取りが何度も繰り返されます。
争点がはっきりして、双方が主張を展開し、反論も出尽くした後に裁判官が結審すると判断し、後に判決が言い渡されることになります。しかしこの過程で、多くの民事訴訟の場合において、裁判官が和解案を提示し、和解を勧めてきます。
実は非常に重要な和解案
せっかく訴訟を起こし、万全の準備をして裁判での勝利を目指して争っているのに、和解に応じるのは不本意と見えるかもしれません。しかしこの痛み分けにも見える和解は、民事訴訟においては非常に重要な落としどころなのです。
裁判の進み方とともに、和解の重要性について見てみましょう。
裁判における和解とは?
そもそも、裁判における和解とは、民法第695条に規定されているものです。
民法第14節 和解
和解
第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
和解の効力
第696条 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。
これらの条文から分かるように、当事者双方の譲歩によって成立するものが和解です。
示談も和解の一種
交通事故が発生し、被害者が加害者に損害賠償を求め、双方による話し合いで賠償金や慰謝料の支払い金額や支払い方法について合意することを示談と言います。これも和解の一種で、双方が納得して署名捺印した示談書は、和解契約書となるものです。
和解契約書は、この問題においてこれ以上争いません、と宣言する契約書でもあり、一度成立した示談は、追加で請求することは困難となります。
和解契約書の法律的な効力は非常に強く、裁判においてもこの内容は極めて重視されるものとなります。
調停による和解あっ旋
示談交渉が決裂した場合、通常は調停という手続きに進みます。
調停の舞台は簡易裁判所の場合とADR機関である場合がありますが、いずれにしても第三者が介入して、和解の道筋を探るものです。裁判所での調停によって締結される調停調書には、裁判の判決と同じ効力があり、支払いに応じない加害者に対する強制執行が可能となります。
このように、示談交渉から調停へと進んでいく過程で、数度にわたり和解のチャンスがありますが、問題解決の最終手段である裁判の場でも、和解を勧められることがあるのです。
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「本人訴訟」で和解を受け入れられるか?
先に述べたように、和解は当事者双方の譲歩によって成立するものです。
一方、裁判が結審し出される判決は、裁判官の考えによって下されるもので、ある意味では一方が勝ち、一方が負けるものです。
双方に弁護士がついて裁判を争う場合、数多くの判例から判断するそれぞれの落としどころがあります。
和解の条件がその落としどころであれば、和解を受け入れることが多くなるでしょう。
一方、難しい裁判に「本人訴訟」で挑み、勝つまで戦うという意思が強いであろう原告にとっては、和解は受け入れがたいかもしれません。
しかし、裁判官による判決は、原告の言い分だけを反映するものではありません。
勝訴したとしても、和解よりも条件が悪くなるケースさえあるのです。その場合には控訴すれば良いと考えるのでしょうが、それでも法廷闘争を続けるのは「本人訴訟」では分が悪いと言わざるを得ません。
和解条件を示されたら、交通事故の判例に詳しい弁護士に内容を精査してもらい、アドバイスをもらうことも必要でしょう。
民事訴訟における和解とは?
民事訴訟において通常の裁判が始まった後でも、裁判官は原告と被告に和解を勧めます。
双方の主張を展開し、お互いに言い分を書類に出し切った頃を見計らって、裁判官が和解案を提示するのが一般的です。
この時期は、第三者である裁判官からみて事件の争点が明確となり、和解の落としどころがわかってきたころ、と言い換えることもできるでしょう。
和解協議は裁判と並行して行われる
何度目の口頭弁論が終わった後に和解案が提示されるかは、交通事故の内容や原告が求める損害賠償内容の複雑さなどによって変わってきますが、裁判官は双方の主張を理解したうえで和解案を提案してきます。
和解案は一般的に、原告が譲歩しなければならないものです。
弁護士を雇っている場合は、和解案について、それが妥当なものかどうかの判断はすぐにできると考えられます。
この場合、「本人訴訟」を進めていて、自分ひとりで判断しなければいけない場合は、かなり慎重に検討する必要があります。
和解に応じるかどうかは当事者双方の自由ですから、譲歩はしないと拒むことは簡単です。
しかし判断が難しいと考えたならば、和解案に関して弁護士などの専門家にアドバイスを求めた方が良いでしょう。
「本人訴訟」の場合、和解案をどう受け入れるか
ここで「本人訴訟」を進めている場合の、和解に対する注意点を明確にしておきましょう。
敗訴のリスクを考慮すること
絶対に勝訴するという意気込みで、自分ひとりで裁判に臨んでいるのは良いのですが、和解案では少し譲歩した内容で損害賠償を受けられたのに、それを拒み判決を迎えた場合には、敗訴して相手の言い分が通ってしまうことがあります。
冷静な判断をしたら和解案以上の結果を求めるのは無理だった、と後で後悔することのないように、専門家のアドバイスを受けておきましょう。
裁判の長期化を覚悟すること
和解案を拒むということは、裁判がより長期化するという覚悟を持っていなければなりません。
例え判決が自分の思っていた通りだったとしても、被告が控訴すればさらに裁判は長引きます。
裁判に割ける時間がまだあるのか、仕事を犠牲にしても裁判を続ける金銭的な余裕があるのか、冷静に考えましょう。
和解の合意が得られない場合、裁判は結審まで続く
原告と被告の双方共に和解案に合意すれば、判決が下されることはなく裁判は終了します。
しかし原告と被告のいずれかが和解案を受け入れなければ、裁判はまだまだ続くことになります。
民事訴訟における証拠調べ
原告および被告が提出するのは自らの主張だけではなく、証拠や証人の申請も含まれているため、裁判所はこれらを検証する証拠調べが行われます。
民事訴訟の場合、提出される証拠に対して、原告や被告が相手の出した証拠を認めるかどうか(同意または不同意)という意見は求めません。
また、よほど信憑性のないもの、明らかに関係性のないもの除き、たいていの証拠は採用され、審理されることになります。
そのため、民事訴訟は複雑なケースになると相当の時間がかかり、判決まで数年を要する場合もあります。
裁判を有利に進めるための証拠
証拠調べは、当該事故の際の交通事故証明書や実況見分書といった公的な鑑定書類から、原告あるいは被告が自分に有利な状況を証明するための自費鑑定証拠などを提出するほか、必要であれば証人の申請も行われます。
これらの証拠の検証や証人尋問は、提出する側だけが一方的に話すのではなく、相手側の反証や反対尋問がありますので、この段階でようやく裁判らしい裁判と言えるものになります。
以上のような証拠調べの段階に入ってしまうと、法廷のテクニックが必要となる法律のプロの世界です。
「本人訴訟」では戦えないとは言えませんが、やはり弁護士を雇うか、せめてアドバイスを求めた方が良いでしょう。
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