訴状の準備・提出~「本人訴訟」の手順①

訴状

交通事故の民事訴訟は、まず訴状を書いて裁判所に提出することから始まります。訴状自体は簡単なフォームだが、書き方や添付書類については、ぜひとも弁護士など専門家のアドバイスを得たい。特に「少額訴訟」の場合は審理が1回で終了するので、万全を期すようにしましょう。

交通事故の民事訴訟は、訴状を裁判所に提出することから始まる

記載方法や添付書類については、専門家のアドバイスを得よう

交通事故に限らず民事訴訟は、訴状を出す前に十分に準備が可能となる原告側が有利に裁判を進められる可能性が高くなります。その理由は、特に「少額訴訟」において原則的に審理は1回で終了しすぐに結審してしまうため、その際に十分な証拠を揃えておかないといけないからです。

損害賠償問題の示談や調停が上手く進まず、裁判にまでもつれ込みそうになったら、できるだけ早期に証拠をまとめ、訴状を作成し提出し、原告となって裁判に臨むのが良策です。

本項では、裁判の訴状作成の手続きから裁判所の手数料などを、通常の裁判と「本人訴訟」による「少額訴訟」とを比較して見ていきます。

訴状の書き方

通常の民事裁判においては、訴状の書き方はそんなに難しいものではありません。

但し、訴状の書き方ひとつで訴えが受け入れられるかが決まり、その後の裁判の行方も左右してしまう大切な書類です。そのため、訴状の書き方についての関連書籍が多数出版され、インターネットには訴状の書き方に関して解説した情報が多く掲載されています。

それらを参考にして書けば良いのですが、裁判関係の書類には独特の決まり事や慣習がありますので、可能であれば法律の専門家に一度確認してもらってから提出する方が良いでしょう。

「少額訴訟」の場合は費用が気になるところですが、裁判の元になる訴状の作成には、万全を期して慎重に取り組むべきです。

「少額訴訟」の訴状の書き方

「少額訴訟」の訴状については、裁判所ホームページに「損害賠償(交通事故による物損)請求」の書式、ならびに「損害賠償(交通事故による物損)請求の記載例」が掲載されていますので、これらをダウンロードして使用することが可能です。

簡易裁判所には書式が準備されている所もありますので、事前に問い合わせのうえ受け取りに行くのも良いでしょう。

以下に、主な記載内容を列挙します。

「少額訴訟」であること、またその回数を記載

「少額訴訟」は、通常の裁判とは違った形式が取られますので、まず「少額訴訟」による審理および裁判を求めること、そしてこの求めが何回目であるかを書き込みます。

「少額訴訟」は、1人が同じ裁判所に、年間10回まで訴訟を起こすことが可能です。

訴状を提出する裁判所名と訴状の作成日

交通事故の民事訴訟においては、訴額(相手に求める損害賠償の金額)が140万円以下の場合は簡易裁判所、それを超える場合は地方裁判所となります。

「少額訴訟」の場合は簡易裁判所へ提訴することになりますが、被害者の住所地、加害者の住所地、または交通事故が発生した住所地、のいずれかを管轄する簡易裁判所に訴状を提出します。

簡易裁判所の管轄や所在地は、裁判所ホームページで確認できます。

原告(申立人)の住所、氏名、電話番号、FAX番号、書類を届ける場合の住所など

以上の事項を記入して押印しますが、住所などは省略しないできっちりと書く必要があり、当然ながらシャチハタ印は認められません。

被告(相手方)の住所、氏名、電話番号、FAX番号、勤務先など

運転者と使用者など、被告が複数名いる場合は、それぞれの住所、氏名、電話番号なども記入します。

訴訟物の価額、貼用印紙額、予納郵便切手

金額については、訴状を送付する裁判所で確認してください。

請求の趣旨

損害賠償請求の金額、遅延損害金などを記入します。この際、訴訟費用について被告の負担とする旨も書き込んでおきます。

紛争の要点(請求の原因)

事故発生日時、発生場所、車両の種類など、当該交通事故の様態を書き込み、損害金額の内訳や参考事項も書き込みます。

以上のように、訴状は比較的簡単な事項を分かりやすく記入するだけです。

それだけに、不備がないように作成しておきたいものです。

訴状は、一般的には裁判所に提出するもの、被告人に送付するもの、自身の控えの3通を作成します。

被告人が多くなれば、その分多く作成することになります。

「少額訴訟」に必要な手数料は?

「少額訴訟」を含め、民事訴訟を起こすには裁判所の手数料と予納郵券が必要となります。この手数料は、勝訴した時に被告に負担させられますが、起訴する際には原告があらかじめ支払うことになっています。

なお、弁護士費用については、ここで言う訴訟の費用には含まれません。

手数料は印紙として訴状に貼り付け、予納郵券は郵便切手で納めることになりますが、納付方法については、訴状を出す裁判所に問い合わせてください。

裁判所の手数料は?

裁判所の手数料は、民事訴訟費用等に関する法律に定められており、加害者(被告)に訴訟物の価額(請求する損害賠償金の金額)によって変わってきます。

具体的には、同法別表第1に規定されている金額となります。

(民事訴訟費用等に関する法律別表第1)

訴訟の目的の価額に応じて,次に定めるところにより算出して得た額

(1)訴訟の目的の価額が100万円までの部分、その価額10万円までごとに1,000円

(2)訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分、その価額20万円までごとに1,000円

(3)訴訟の目的の価額が500万円を超え1,000万円までの部分、その価額50万円までごとに2,000円

(4)訴訟の目的の価額が1000万円を超え10億円までの部分、その価額100万円までごとに3,000円

(5)訴訟の目的の価額が10億円を超え50億円までの部分、その価額500万円までごとに1万円

(6)訴訟の目的の価額が50億円を超える部分、その価額1,000万円までごとに1万円

具体例を挙げると、損害賠償金額が50万円の場合は5,000円(1,000円×5)、損害賠償金額が100万円の場合は1万円(1,000円×10)、損害賠償金額が200万円の場合は1万5,000円(1万円+1,000円×5)、損害賠償金額が500万円の場合は3万円(1万円+1,000円×20)、損害賠償金額が1,000万円の場合は5万円(1万円+3万円+1,000円×10)となります。

「少額訴訟」においては、訴訟の目的の価額の上限が60万円となっていますので、その場合は6,000円(1,000円×6)となります。
なお、控訴の提起には上記の手数料金額の1.5倍、上告の場合は2倍の手数料が必要となりますが、「少額訴訟」には控訴が認められていませんので、気にすることはありません。

予納郵券の金額は?

予納郵券とは、裁判所から訴状などを被害者(原告)や加害者(被告)に郵送する郵便料金をあらかじめ、切手によって納めておくことです。

東京地方裁判所の場合は、当事者が原告と被告の2人だった場合は6,000円で、当事者が1人増えるごとに2,144円が加算されます。また当裁判所は現金予納を選択することも可能となっており、この場合は当事者が1名増すごとに2,000円を加算すればよいこととされています。

しかし予納郵券がいくら必要なのかは裁判所ごとに違いますので、訴えを起こす裁判所にお問い合わせください。

訴状と共に提出する必要書類は?

訴状には、請求の趣旨や紛争の要点を記載し提出しますが、それだけで裁判所が交通事故の内容を理解することはできません。

添付書類として、交通事故証明書、自動車の損傷部分の写真、経費の領収書、自動車の修理代金見積書、事故状況説明図などを提出します(※)。

人身事故では、「少額訴訟」は利用しにくい

「少額訴訟」においては、訴額の上限が60万円となっているため、当該事故によって負傷してしまった場合には、損害賠償金額が簡単にこの額を超えてしまうため、物損事故のケースを想定して、裁判所の記入例は作成されているようです。

もちろんそれらを算入しても60万円を超えない場合は、人身事故であっても「少額訴訟」の利用は可能ですので、その場合は負った負傷の診断書、入通院の費用を示す領収書、後遺障害診断書、休業損害証明書、源泉徴収票などを添付します。

(※)交通事故の状態や、起訴内容によって記載事項、提出書類は違ってきますので、必ず事前に裁判所に問い合わせるか、交通事故に強い弁護士に相談することをお薦めします。

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