交通事故による自動車の修理代はどこまで請求できる?

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事故の状況により請求できる修理代は大きく異なります

修理代の請求については加害者側と争うケースが非常に多いため、交渉の早い段階で弁護士が介入することで交渉がスムーズに進むケースもございます。
交通事故に強い弁護士を探す」よりお気軽にご相談ください。

交通事故の示談で払ってもらえる「修理代」の相場

多くの交通事故で修理代を請求できる

交通事故で加害者側と示談するとき、ほとんどのケースで修理代を請求できます。「物損事故」の場合にはもちろんのこと、人身事故でも車やバイクが破損したら修理代を請求できます。

交通事故がなければ車が壊れることはなく修理代も不要だったので、修理代は「交通事故によって発生した損害」と言えるからです。相手の保険会社との示談が成立したときに支払いを受けられます。

修理代の相場、決定方法

示談における修理代の金額は、どのようにして決まるのでしょうか?

修理代は、事故後に被害者が車両を修理工場に持ち込み修理工場が見積もり金額を出し、その金額を基準に保険会社のアジャスターと呼ばれる調整員と話し合いをして最終的な金額を決定しています。このとき当初の見積もり額より減額されるケースも多々あります。

車の種類や破損状況にもよりますが、修理代の相場は10~50万円程度となるのが多数です。
※修理代が50万円を越える場合「全損」扱いとなる可能性があります。後述しますが、全損扱いとなると、修理代ではなく「買換費用」の支払いに変わります。

過失相殺によって減額される

修理工場と保険会社の話し合いによって修理費用が決まっても、全額支払ってもらえるとは限りません。多くの交通事故では被害者側にも「過失割合」が認められるからです。被害者に過失割合があれば、その分加害者に請求できる賠償金額を減額されます。このことを「過失相殺」と言います。

たとえば30万円の修理費用が発生していても、被害者の過失割合が3割であれば、21万円しか払ってもらえません。残りの9万円は被害者の自腹となります。

交通事故の示談で修理代を「払えない」と言われるケース

交通事故に遭ったとき、加害者側から自動車の修理代を支払えないと言われるケースはあるのでしょうか?

全損の場合

車両が「全損」した場合には、修理代を払ってもらえません。全損とは、車やバイクが完全に壊れて修理不可能な場合を意味します。交通事故の「全損」には2つのパターンがあります。

物理的な全損

車が物理的に完全に破壊されており、そもそも修理ができない場合です。

経済的な全損

物理的には修復可能でも、修理をすると車の時価より修理費用の方が高額になってしまう場合です。このようなときには修理費用を全額払うと実際に発生した損害(車の価値)より多くの支払いをすることになって不合理なので、修理費用の全額は支払ってもらえません。

全損の場合に支払われる賠償金は「買換費用」

ただし全損の場合でも、何の賠償も受けられないわけではありません。車が全損して使えなくなったのですから、車の時価相当の損害は発生しています。そこで中古車の相場などを参考にして、車の時価に相当する賠償金を払ってもらうことは可能です。この車の時価相当の賠償金のことを、一般に「買換費用」と言います。買換費用と言っても新車を購入する費用ではなく、「事故車の時価相当の補償金」と理解しましょう。

なお車の買い換え費用(時価)が払われる場合には、以下のような費用も合わせて支払われます。

  • 登録費用
  • 車庫証明費用
  • リサイクル費用
  • 自動車取得税
  • 廃車費用
  • 登録手続きの代行費用
  • 車庫証明の代行費用
  • 納車費用
  • 未経過分の自動車重量税

被害者の過失割合が高すぎるケース

交通事故の示談では過失相殺が行われるので、被害者の過失割合が高すぎると修理費用をほとんど払ってもらえなくなる可能性があります。たとえば修理費用が15万円で被害者の過失割合が9割であれば、相手から払ってもらえるのは15000円だけです。0円にはならなくても、過失割合が高いと修理はほとんど自腹になってしまうので、過失割合は非常に重要です。

もらい事故の修理代はどれくらい?

もらい事故とは、100%加害者に過失のある交通事故のことです。たとえば相手が赤信号でこちらが青信号のケースや相手が一方的に後方からぶつかってきた追突事故などがもらい事故の典型例です。
もらい事故の場合には、車の修理代をどのくらい払ってもらえるのでしょうか?

被害者に過失のないもらい事故なら修理代は全額請求可能

もらい事故であっても修理代の決め方自体は一般の交通事故と同様ですが、被害者側に過失がないので過失相殺が行われません。そこで発生した修理費用を相手に全額請求できます。実際に修理をするときに被害者が自腹を切ったり被害者側の保険を使ったりする必要はありません。

交通事故で被害者が加害者の車の修理代を負担すべきケース

交通事故が起こったとき、車が破損するのは被害者だけとは限りません。加害者の車が壊れた場合、被害者は加害者の車の修理代を負担しなければならないのでしょうか?

被害者にも過失割合がある場合

交通事故で被害者が加害者の車の修理費用を支払わねばならないのは、被害者側にも過失割合があるケースです。この場合、被害者も自分の過失割合に相当する部分の賠償金を相手に払わねばなりません。
たとえば加害者の車の修理費用が20万円で被害者の過失割合が3割であれば、6万円は被害者の負担となります。

被害者が対物賠償責任保険に加入していない場合

ただし現実には、被害者に過失割合があっても被害者自身が自腹で加害者の修理費用を支払う事例は少数です。被害者の多くは「対物賠償責任保険」に加入しているからです。対物賠償責任保険に入っていたら、相手に発生した物損は被害者の加入している保険会社が負担してくれます。被害者が自腹で加害者にお金を払う必要はありません。

被害者が自分で加害者の修理代を払うのは、被害者に過失があり、かつ対物賠償責任保険に加入していないケースです。そこで自動車を運転するのであれば「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」には必ず入っておきましょう。

実際には保険会社間での「払い合い」で解決するのが一般的

交通事故が発生したときに被害者にも加害者にも過失があると、お互いに発生した損害額を「払い合う」結果となります。ただ現実に被害者と加害者が相互に振込手数料を負担してお金の振り込みをし合うのは非効率です。

実際には保険会社同士のやり取りにおいてすべて決済されるので、被害者と加害者がお金を払い合うことはほとんどありません。被害者の負担すべき金額は保険会社が相手に払ってくれて、被害者の受けとるべき示談金は相手の保険会社から直接被害者に振り込まれます。

ただし被害者が保険に入っていなかったら、自分で自分の負担分を相手に支払わないといけなくなります。

高額修理費を伴う示談に有効な対物超過補償特約

車の修理費用の示談をするときに知っておきたい保険があります。「対物超過補償特約」です。これは事故の相手に発生した修理費用の損害が相手の車の時価額を超えるとき、差額を補填してくれる保険です。

対物超過補償特約は、交通事故の示談を円滑に進めるために作られている保険です。法律論としては車の時価を限度とした賠償額しか認められませんが、それでは被害者が納得せずに示談を進められなくなることがあります。そこで対物超過補償特約によって差額を補償することにより、被害者を納得させて示談の成立を目指します。

対物超過補償特約によって補償されるのは、差額の8割程度であり限度額は50万円となっていることがほとんどです。相手がこの特約をつけていれば、経済的全損だからと言って「修理費用を払えない」と言われずに済む可能性があります。

また自分としてもこの特約があれば、相手の車がレトロ車や高級車、マニアの改造車などのケースでも示談しやすくなります。自動車保険を契約するときに、対物賠償責任保険の特約としてつけておくと良いでしょう。

交通事故で修理しなくても修理費をもらえるのか?

交通事故で車が破損したとき、破損部分が致命的なものでなければ放置してそのまま乗っていても違法ではありません。

しかし実際には修理をしないのに、修理費用を払ってもらえるのでしょうか?

一般には「修理しないなら修理費用を払ってもらえない」と思われていることが多々ありますが、示談における修理費用の支払いと実際に修理するかどうかは無関係です。車が事故に遭って破損した時点で「修理費用」や「買換費用」の損害が発生していると考えられるので、その後被害者が実際に修理や買換を行うかどうかは関係がありません。

そこで相手から修理費の支払いを受けても、お金だけもらって実際に修理せず壊れたまま乗っていてもかまいませんし、そのことで相手から「修理費用を返還しろ」などと言われるおそれもありません。

修理代はいつ払ってもらえるのか?

車が壊れて早く修理したい場合など、「いつ修理代を払ってもらえるのか?」と気になるケースもあるでしょう。

修理費用は、物損の示談が成立した後で支払われます。交通事故後物損の示談が成立するまでは、以下のような流れとなります。

  1. 被害者と加害者が保険会社に連絡を入れて、示談交渉開始
  2. 被害者が車を修理工場に持ち込む
  3. 修理工場が見積もりを出す
  4. 修理工場と保険会社のアジャスターが調整協議を行う
  5. 修理費用が決まる
  6. 修理費用以外の損害額や過失割合が決まる
  7. 示談が成立する

上記のようなステップが必要なので、最低でも1~2か月はかかります。修理代についての話し合いがついても評価損などの他の損害部分でもめてしまったら示談が成立しないので修理費用も払ってもらえません。過失割合についてもめた場合にも時間がかかります。

スムーズに修理代の支払いを受けたいなら、早期に示談を成立させる必要があります。

古い車の場合、事故車の修理代はどうなる?

事故に遭ったのが古い車の場合「こんな車では修理代を払ってもらえないのでは?」と心配される方もおられます。しかし古いからと言って修理代や補償がないとは限りません。

物損事故では、①実際に修理にかかる金額と②車の時価のどちらか低い方の金額が支払われます。一般的に、車が古いと時価が低くなって修理費用より時価が低くなるケースが多いので、修理費用ではなく時価の支払いとなる可能性が高くなります。

車があまりに古く時価が「0円」であれば、修理代を払ってもらうのは不可能ですし買換費用も払ってもらえません。一方古い車でもまったくの無価値でなければ、時価の分の買換費用を払ってもらえます。時価より修理代が低ければ修理代を請求可能です。

修理代以外の物損事故の示談金について

物損事故と言えば、車の修理代を払ってもらえるイメージが強いのですが、現実には修理代以外にもいろいろな損害が発生します。以下で物損事故の示談金でどのような損害賠償を受けられるのか、まとめてご説明します。

修理代

ここまで詳しく説明してきた修理代です。車が全損していない限り、修理工場の出した見積もり額を基準に損害賠償を受けられます。

買換費用

車が物理的全損あるいは経済的全損してしまったケースで支払われます。新車購入費用ではなく車の時価が限度となります。買換をする際には、登録費用や自動車取得税、ディーラーの手数料など買換諸経費も認められます。

代車費用

物損事故に遭って車を修理に出したり買換のために新しい車を探したりしている間、代車が必要になるケースがあります。そういった場合には、レンタカー代を基準として代車費用を請求できます。ただしいつまでも払ってもらえるわけではなく、長引くと代車費用の支払いを打ち切られてトラブルになる場合もあります。

またレンタカーのランクは小型車などの低いものとなり、自己判断で高級車を借りた場合の差額は自己負担となります。

評価損

評価損とは車が破損したり事故車扱いとなったりすることで価値が低下する損害です。どのような車でも評価損が認められるわけではなく、外車で登録年数が新しく、走行距離も少ない車などで認められやすいです。また実際に低下した価額ではなく修理費用の1~3割程度となるケースが多数です。

保険会社との示談では相手は評価損を認めてもらえないことが多く、トラブル要因になりがちです。

積荷の損害

トラックなどが物損事故に遭って積荷に損害が発生したときには、そういった損害も相手に請求可能です。

営業損害

タクシー会社や運送会社などの車が壊れて営業に使えなくなり、売上げが低下した場合には、売上予定額からガソリン代などの経費を差し引いて営業損害を請求可能です。

建物や施設の破損費用

車が建物や施設にぶつかって破損させた場合、建物などの修理費用も物損内容となります。

追突事故の示談金相場

一般の物損事故では上記のような物的損害を合計した金額を相手に請求できますが、追突事故の場合、何か異なる点はあるのでしょうか?

追突事故では被害者の過失割合が0になるケースが多数ですので、発生した損害賠償金を全額請求できます。一般の交通事故のように過失割合による減額がないので、受け取れる示談金が高額になります。たとえば修理費用も代車費用も買換費用も評価損も、発生した損害を全額払ってもらえるということです。

実際の金額は破損した車の価額や破損状況によって大きく異なります。自分の車両の時価などにあてはめて計算してみて下さい。

修理代を確実に獲得するために

交通事故で修理代を確実に獲得するには、以下のような工夫を行いましょう。

交通事故対応に慣れている修理工場に依頼

物損事故における修理代請求で損をしないためには、交通事故処理に詳しい修理工場に対応を依頼することが重要です。事故車の修理費用の見積もりを出すのは修理工場ですし、保険会社と修理代金の調整を行うのも修理工場です。また物理的に修理不可能かどうかを判断するのもまた、修理工場ですから、修理工場は修理費用の金額決定に非常に重要な役割を果たします。

修理工場が被害者にきちんと説明をしていれば避けられるトラブルも多くなるので、車を修理に持ち込む際、注意してみて下さい。

弁護士に相談する

物損事故で被害者が損をしないためには、弁護士に相談することが非常に重要です。物損事故の損害の内容や計算方法、修理費用の相場などについては一般に正しく理解されていないことも多いのが現状です。「実際に修理しないと修理費用を請求できない」「買い換えるときには新車の費用を全額払ってもらえる」などと誤解されているケースもあります。過失割合のことが頭にないため、突然大きく金額を差し引かれて示談の際に戸惑ってしまう被害者の方もおられます。

このようなリスクを防止して保険会社の対応を予測し先回りして対応し、有利な解決方法を導くには弁護士によるサポートが必要です。

物損事故の場合、弁護士に実際に依頼すると弁護士費用の方が高額になって足が出る可能性もありますが、無料相談を上手に利用すれば費用負担なしにアドバイスを受けることが可能です。また弁護士費用特約を利用できる場合、無料で相手との示談交渉などを任せられるので、是非とも利用すべきです。

物損事故であっても相手とトラブルになると納得できない気持ちが強くなってストレスもたまります。お困りの際には、早めに交通事故トラブルに強い弁護士を探して相談してみて下さい。

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