交通事故で書類送検されてしまうのはどんな時?

サイン

交通事故が発生し、警察に通報し警官が到着した後の流れは、被害者が死亡しているのか軽い怪我なのかなどの被害者の状況、迅速な通報や被害者救済を行ったかどうかなどの加害者の状況、また現場に駆け付けた警察官の判断や現場の状況など、さまざまな要素が関係します。

そのため、加害者が逮捕されるのかどうか、書類送検などされ裁判まで行くのかどうかなどは、一概に説明することはできません。ここでは、ごく一般的な交通事故のケースを取り上げ、加害者と被害者の示談に与える影響を説明します。

交通事故において刑事裁判にまで持ち込まれるケースは決して多くありませんが、被害者となってしまった時、裁判の進め方やスケジュールを理解しておけば、加害者がなぜ示談を急ぐのかなどの理由が分かります。

交通事故発生から書類送検までの流れ

一般的な刑事事件の場合には、事件が発生した後に検察官などが裁判官から令状(逮捕状)を取り、警察が容疑者を捜して逮捕します。 交通事故の場合は、ひき逃げを図った場合を除き、大抵は事故現場で容疑者は警察に確保されます。そして死亡事故のような重大事故だったり、加害者が逃亡する可能性があったりする場合のみ、警察は加害者を現行犯逮捕して身柄を拘束するのです。

逮捕された場合、72時間以内に拘留の要不要を判断

逮捕

交通事故の加害者は、逮捕された後、容疑者として留置場で身柄を拘束され、取り調べを受けます。そして警察は逮捕後48時間以内に必要書類を作成し、検察官に事件を送検します。その後24時間以内に、交通事故の加害者は、拘留と呼ばれる身柄拘束が行われるかどうかが決定されます。

逮捕直後から検察官により拘留が行われるか決定されるまでの間は、事故直後の現場検証や取り調べ、証拠作成など重要な期間となるため、基本的には弁護士だけしか面会できません。その後、拘留して捜査する必要がなく、加害者に逃亡や自殺の恐れがなければ、加害者の身柄は釈放されて、いわゆる書類送検という手続きになります。

拘留手続きを経て、身柄送検

一方、加害者が罪を認めなかったり、逃亡する恐れがあったりする場合には、身柄送検と呼ばれる手続きとなり、検察は引き続き加害者の身柄を拘束するため勾留手続きを行い、10日間から最長で20日間、加害者は警察の留置場で拘留されます。 拘留期間中、加害者は外部と連絡を取ることができず、連日の取り調べを受けます。拘留期限が終われば、事件発生から最長で23日間が経過することになります。

加害者が起訴されるかどうかが決定されるタイミングは?

交通事故を起こして逮捕された後、ここまで最長で23日が経過しています。ここで検察官は加害者を起訴するか不起訴にするかを決定しますが、交通事故の場合はたいていの場合において証拠が明らかで、ここまで拘留されたケースでは、まず起訴されてしまうと考えて良いでしょう。

身柄を拘束されず、書類送検で済んだ加害者も、同じ頃までには起訴か不起訴かの判断が下されます。

略式起訴、または公判請求へ

起訴のうち略式起訴の場合は、裁判所の法廷での公判は行われず、罰金処分の通知が送付され、刑事手続きは終了です。 公判請求が行われた場合は、裁判所で公判が開かれ、加害者が有罪か無罪かと、量刑が決定されます。留置場に入れられたままの加害者は、保釈金を積んで保釈されない限り、公判が行われるまでの期間、ずっと勾留されたままになります。

交通事故の裁判においては、被告人となった加害者が罪状を否認していない限り、公判開始から1カ月ほどで判決が決定されるのが通例です。

裁判において、示談の成立は重要な減刑要素

人身事故の被告人となった交通事故の加害者は、裁判において減刑を得るために、減刑の条件とされる被害者との和解(示談)をなんとか成立させようとします。

運転手はほとんどの場合に任意保険に加入しているため、拘留されている加害者に代わり保険会社の担当者が、被害者との間に示談を成立させるべく交渉を開始します。示談がまだ成立していないということは、被害者に対する誠意が足りず、反省もしていないと判断されるため、裁判官は示談の成立を重視するようです。

しかし、これはあくまで加害者の事情で、逮捕から裁判まで事の成り行きとはまったく無関係で、事故で負った怪我の治療に専念してきた被害者にとっては、なぜいきなり示談の話が来るのかと不思議に思えることでしょう。

軽い交通事故の裁判は短期で結審してしまう

交通事故の裁判は、単純に刑の重さだけを決める量刑裁判となり、何回も公判が開かれることはあまりありません。たいていの場合は第1回公判で判決以外の全ての審理を終了させてしまいます。

弁護側が、量刑の斟酌を訴える情状証人を何人か呼び、時間を引き延ばしたとしても1回で終わる公判が2回になるだけで、実際には1カ月程度判決が延びるだけでしょう。 さまざまなケースがあり一概には言えませんが、事故発生から裁判の判決が出るまで3~4カ月という短期間で終了してしまうこともあります。そのため、加害者の代理人である保険会社の担当者は示談成立を急ぐのです。

重大な交通事故では年単位の時間が必要なケースも

交通事故の加害者が逮捕され、起訴となった場合は正式な裁判をするか、略式起訴にするかは担当となった検察官が決定します。このため、検察官によれば通常のケースよりも長期間を要する場合もあります。 裁判となった場合も、裁判所にその後の審理日程は委ねられるわけですが、死亡事故などの重大な事故の場合は1年以上かかる場合もあります。

症状固定を急がせる保険会社には、決して応じてはいけない

交通事故で被害者が病院で怪我の治療を受け、後遺障害の症状固定の診断をされるのは、重症の場合では6カ月程度となるケースが多いため、このペースでは症状固定の時期にはもう裁判が終わってしまうことも考えられます。 裁判が開かれるまでに示談を行い、損害賠償額や慰謝料金額で合意すれば、裁判官の心証が良くなるため、減刑の可能性も出てきます。

症状固定を急がせる担当者には注意

加害者の裁判のため、という事情で示談を成立させるためには、多くの場合は症状固定前に示談に合意するというタイミングになってしまいます。

原則として、示談書を作成し加害者と被害者双方が納得し署名捺印すれば、その後にかかった治療費や、明らかになった後遺障害については賠償されません。裁判のために示談を急ぐ加害者のために、被害者が早期の示談合意をすることはこういうリスクを背負うということを知っておきましょう。

示談における十分な知識のないままに合意してしまうことは、重大な損失につながってしまうこともあるのです。

示談書に、後の後遺障害について記載する方法

それでも、加害者に重い刑罰を科したくないと考える被害者もいるでしょう。場合によれば、刑務所に入っているよりもしっかり働いて示談金を払ってもらう方が良いと判断される時もあります。その際には、示談書に後に発生した後遺障害についての文言を加えておく方法があります。

「示談後に発生した治療費や、明らかになった後遺障害については別途協議すること」と記載しておけば、早期に示談に応じる余地はあると考えられます。 示談の交渉相手が加害者の保険会社担当員である場合、示談書の書き方などで不利益を被らないように、被害者も弁護士などの専門家に相談すべきでしょう。

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