離婚後、新しい戸籍を作るメリットとデメリットを比較|どちらを選ぶべき?
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離婚後、新しい戸籍を作ることにはメリットとデメリットあり!
何らかの理由で離婚する場合、婚姻中は夫婦一緒だった戸籍が別々になる、ということは皆さんがご存じかと思います。では、離婚後の戸籍は、夫婦それぞれ、具体的にどのようになるのでしょうか?
日本の夫婦の多くは、婚姻時、妻が夫の氏を称するかたちで戸籍を編製しますので、本記事ではこれを前提に話を進めますが、「妻が夫の氏を称するかたちで戸籍を編製した」パターンで離婚をすると、夫はもとの戸籍にとどまる一方で、妻は婚姻前の戸籍に戻ります。
けれども、これはあくまで原則論であり、実は、妻が婚姻前の戸籍に戻らず新しい戸籍を作ることも可能です。
本記事では、妻が婚姻前の戸籍に戻らず、新しい戸籍を作る場合のメリット・デメリットを検討していきます。
離婚後、新しい戸籍を作ることができる条件とは
新しい戸籍を作る場合のメリット・デメリットをご説明する前に、まず、離婚で新しい戸籍を作れるのはどんな場合か、その条件について見ていきましょう。
婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製の申し出る
妻が婚姻前の氏に戻り、自分を筆頭者として新しい戸籍を作ることを離婚届提出時に申し出ると、新しい戸籍を作ることができます。
特に申し出をしない場合は、妻が婚姻前に属していた戸籍(妻の両親の戸籍など)に復籍することになります。
なお婚姻前の戸籍が、戸籍内の全員が死亡しているようなケースでは、すでに妻が戻る戸籍がなくなって(除籍されて)いますので、離婚届提出時には必然的に、妻を筆頭者とした新しい戸籍を作ることになります。
婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う
妻が婚姻時の氏を名乗りたい場合、離婚日より3ヶ月以内に、本籍地または住所地のいずれかの市区町村窓口に「婚氏続称届出」を提出します。これにより、妻は従前どおりの氏を使用しながら、新しい戸籍を取得できます。
この届け出には、離婚した夫の許可は不要です。3ヶ月以内に届け出るのみで、当然に婚姻中の氏を名乗れます。期限を過ぎてから、婚姻中の氏を名乗りたいと思った場合には、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」をする必要があります。
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離婚後、新しい戸籍を作るメリット
離婚後、新しい戸籍を作るメリットは、「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合と、「婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う」場合とで少々異なりますが、以下に代表的なものを挙げます。
「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合
本籍地を好きな場所にすることができる
この場合、本籍地を好きな場所にすることができます。例えば、自分の住所地と本籍地を同じにしておけば、今後、戸籍謄本を取る必要が出た際に、最寄りの市区町村の役所で取ることが可能です。
子どもと同じ戸籍に入ることができる
妻が婚姻前の戸籍に戻ると、子どもを一緒の戸籍に入れることができません。戸籍は、一組の夫婦とその子どもまでを一単位として構成するため、例えば婚姻前の戸籍が妻の親の戸籍であれば、そこに入れるのは妻の親と妻までです。つまり、妻の子どもは入れないのです。
しかし、妻を筆頭者とする新しい戸籍を作れば、妻は子どもと同じ戸籍に入ることができます。
「婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う」場合
本籍地を好きな場所にすることができる
「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合と同様に、下記の場合には、本籍地を好きな場所にすることができます。
- 離婚届と婚氏続称届を同時に出す場合
- 先に離婚届を提出して、婚姻前の戸籍に戻ってから婚氏続称届を出す場合
- 先に離婚届を提出して新しい戸籍を作り、その戸籍に同籍する人(同じ戸籍に入る人)がいる場合
子どもと同じ戸籍に入ることができる
「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合と同様に、子どもと同じ戸籍に入ることができます。
仕事場などに離婚したことを知られづらい
妻が離婚時に、新しい戸籍を取得せず婚姻前の戸籍に戻ると、名字も旧姓に戻ってしまい、仕事場など周囲に離婚した事実を知られてしまう可能性が高くなります。
離婚は恥ずかしいことではありませんが、必ずしも、周囲にプライベートを知ってもらう必要がない場合、婚氏続称し新しい戸籍を取得することで、名字を変えずにプライバシー情報を守ることができます。
銀行口座などの名義変更が不要
離婚後も従前の名字を使用できますので、銀行口座の名義変更など面倒な手続きが不要です。
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離婚後、新しい戸籍を作るデメリット
婚姻前の戸籍に戻らず、新しい戸籍を作る場合のデメリットですが、先に見てきたメリットと同じく、「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合と、「婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う」場合とで異なります。以下に代表的なものを挙げます。
「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合
両親とは別戸籍になるため、両親に戸籍謄本を取ってもらうことが簡単にはできません。
「婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う」場合
夫の氏を名乗ることで、夫のことを思い出してしまう
夫の氏を名乗れば、夫とのことを思い出してしまうこともあるでしょう。離婚原因が、夫のDVやモラハラなど、夫側に多くの原因があった場合、夫のことを思い出すのは辛いものではないでしょうか。
家族に戸籍謄本を取ってもらうことができない
「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合でも述べましたが、両親等に戸籍謄本を取ってもらうことが簡単にはできません。
離婚後に作った新しい戸籍に子どもを入籍させる方法
離婚後に新しい戸籍を作るメリットの一つに、「子どもと同じ戸籍に入ることができる」を挙げました。
これに魅力を感じる方も多いと思いますので、本章では、離婚後に作った新しい戸籍に子どもを入籍させる方法について、少し触れたいと思います。
子の氏の変更許可の申立てを行う
妻の新しい戸籍に子どもを入籍させるファーストステップは、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に、「子の氏の変更許可の申立て」を行うことです。
これは、「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製を申し出る」場合と、「婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う」場合のどちらにも必要です。
これにより、妻と子どもの氏が同じになります。申立人は、子ども本人です。ただし、子どもが15歳未満の場合、親権者または後見人が代理人となる必要があります。
親権者が上記の事情により「子の氏の変更許可の申立て」を行う場合、書面審査のみでスムーズに認められることが多いです。。
「子の氏の変更許可の申立て」が必要な理由
子どもの氏は、父母が婚姻中に共同で称していた氏とされます。よって、父母が離婚し、父母の片方の氏が変わっても、子どもの氏は原則的に変更されません。
しかし、このままでは、氏の違う母子は同じ戸籍に入ることができません。日本の戸籍制度には、「同氏同籍の原則」があり、氏を同じくする者で同じ戸籍を作ることになっているためです(母が婚氏続称した場合、氏の呼び方は離婚前と同じであっても、氏そのものは離婚前と異なるとされているため、やはりこのままでは、母子が同じ戸籍に入ることは不可能です)。
そこで、「子の氏の変更許可の申立て」を行います。この申立てで子どもの氏を母と同一にすることにより、母子が戸籍を同じくすることができます。
入籍届をする
「子の氏の変更許可」が降りたら、子どもが「母の氏を称し母の戸籍に入籍する」という入籍届を、市区町村の役所に提出します。
届出人は、原則として、「子の氏の変更許可の申立て」をした子ども本人です。ただし、子どもが15歳未満の場合、親権者または後見人が代理人となる必要があります。
離婚後、新しい戸籍を作るメリットとデメリットを徹底比較
これまで、離婚後に新しい戸籍を作るメリット・デメリットについて見てきました。
新しい戸籍には、
- 婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製の申し出る
- 婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う
という2つのケースがあり、新しい戸籍を作るメリット・デメリットは、2つのケースで重複する部分もあるものの、いくつかの違いがありました。これらを整理したものは下記のとおりです。
「婚姻前の氏に戻った妻が新しい戸籍の編製の申し出る」場合
メリット
- 本籍地を好きな場所にすることができる
- 子どもと同じ戸籍に入ることができる
デメリット
- 両親等に簡単に戸籍謄本を取ってもらうことができない
「婚姻時の氏を名乗りたいと、妻が婚氏続称の届け出を行う」場合
メリット
- 本籍地を好きな場所にすることができる
- 子どもと同じ戸籍に入ることができる
- 仕事場などに離婚したことを知られない
- 銀行口座などの名義変更が不要
デメリット
- 夫の氏を名乗ることで、夫のことを思い出してしまう
- 両親等に簡単に戸籍謄本を取ってもらうことができない
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離婚後、新しい戸籍を作るべきか否かは、個々の案件で違う
離婚後、新しい戸籍を作るメリットとデメリットを比較したとき、その項目の数から、一見するとメリットのほうが大きいように思えます。しかし、単純にその項目の数だけで、新しい戸籍を作るか否かを決めてしまうのはオススメできません。
例えば、デメリットの一つである「夫の氏を名乗ることで、夫のことを思い出してしまう」ことを強く問題視する方の場合、メリットがどんなに多くてもデメリットを気にする気持ちは拭いきれないでしょう。
また、これまでに述べたメリット・デメリットは代表的なものに過ぎません。離婚は夫婦の数だけ事情があり、百人百通り、一つとして同じ事案はありませんので、その意味でも、ご自分の事案に照らし合わせてメリット・デメリットを検討すべきです。
弁護士は、離婚後の新しい戸籍についての専門家
離婚では、慰謝料・財産分与・親権などの問題をフォーカスしがちですが、これらはもちろんのこと、離婚後の新しい戸籍も非常に重要な問題です。戸籍は、生まれてから死ぬまでついて回ります。戸籍謄本は再婚するときには必ず必要になりますし、パスポートを取ったり、生命保険の請求をするときなど日常生活でも必要な場面は出てきます。
しかし、離婚後の新しい戸籍をどうすべきか適切に判断するのは、素人には困難です。その点、離婚を専門に取り扱う弁護士は、離婚後の新しい戸籍の問題についても、個々の事案に合わせたメリット・デメリットを詳しく説明してくれます。
離婚は単なる法律問題ではなく、心の問題でもありますが、離婚を専門に取り扱う弁護士は、相談者がそのような心理状態にあることもきちんと理解した上で相談に乗ってくれます。離婚後の新しい戸籍についてお悩みの場合には、ぜひ弁護士に相談なさって下さい。
今は相談料無料で対応してくれる弁護士も多いですので、一人で悩むことはありません。弁護士は、きっと、あなたの心強い味方となってくれます。
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