貯金を残して債務整理は可能?家族の貯金を残す方法はある?
債務整理をしても貯金は残せる!
借金問題で苦しい時、弁護士や司法書士に依頼して債務整理を行うことは、有効な解決法の一つです。
そこで気になるのが、「貯金を残して債務整理をすることは可能なのか?」ということです。結論から言えば、債務整理をしても貯金を残すことは可能です。ただし、残る貯金の金額、残す方法は、債務整理の中でもどの方法を選ぶかによって異なります。ここでは、債務整理の4つの方法と貯金の関係について説明します。
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任意整理と貯金
貯金を残して任意整理を行うことは可能です。
まずは任意整理とは何か、次に、任意整理では貯金を含む財産をどこまで残せるのかについて見ていきましょう。
任意整理とは
任意整理は、裁判外で債権者(貸金業者等)と返済方法や返済額について交渉し、支払いが可能になるような条件で和解を成立させる手続きです。
自己破産や個人再生と違い自由度の高い手続きのため、裁判所に財産状況を申告する必要もなく、債務者(借り入れをした人)が所有している財産を残して和解を成立させることができます。
また、債権者(貸金業者等)に財産状況を知られることもありません。
任意整理で残せる財産
債務者(借り入れをした人)が残せる財産は、現金や銀行預金といったいわゆる「貯金」だけではなく、株券等の有価証券や生命保険、自動車や不動産等の財産を含む債務者(借り入れをした人)が所有する財産全てです。
ただし、残せる財産は、あくまで自己が所有しているもののみなので、「所有権が債権者に留保されているもの」についてはその限りではありません。例えば、カーローンを組んでいて返済が終わっていない場合、自動車の所有権はローン会社にあります。自動車は引き上げ後に換価され、借金の返済に充当されます。
また、住宅ローンを組んでいて返済が終わっておらず、「抵当権がついたままの住宅」についても、担保権者である金融機関が抵当権を実行し競売にかけてしまう可能性があるため、手元に残すことができません。
しかしながら、任意整理では、一部債権者(ローン会社等)を除いて手続きを行うこともできるため、ローン会社を手続きから除外して従来どおりの返済を続けながら、ローンが残っている自動車や住宅を手元に残すこともできます。
個人再生と貯金
貯金を残して個人再生を行うことは可能です(ただし一部に限ります)。
まずは個人再生とは何か、次に、個人再生では貯金を含む財産をどこまで残せるのかについて見ていきましょう。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に「再生申立書」と「再生計画案」を提出して「再生計画認可決定」の認可をもらい、借金を減額した上で分割払いにする手続きのことです。
任意整理ほどの自由度はなく、裁判所に個人再生の申立てを行う際に「財産目録」を提出し、財産状況を申告する必要があります。
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個人再生で残せる財産
債務者(借り入れをした人)が残せる財産は、個人再生手続きにより減額された借金総額(返済総額)以内です。例えば300万円の借金が100万円まで減額された場合、残せる財産は100万円までです。これは、現金や銀行預金といったいわゆる「貯金」だけではなく、株券等の有価証券や生命保険等も、換価された場合の価値が、減額された借金総額(返済総額)以内であれば残すことができます。
ただし、カーローンを組んでいて返済が終わっていない自動車は、ローン会社が引き上げてしまうため残すことができません。
ローンの残っている住宅については、「住宅資金特別条項」(※)の要件を満たすことで、従来どおり(あるいは返済方法に若干の変更を行って)残りのローンを支払いながら、手元に残すことができます。
では、仮に借金が100万円まで減額できるとして、手元に150万円の財産があった場合はどうすればよいでしょうか。一つには、超過する50万円を返済に充てるなどして処分する方法があります。もう一つは、超過する50万円を含む150万円をまるまる残すため、借金の返済額を、100万円ではなく150万円まで引き上げる方法があります。本来、このケースであれば100万円まで借金を圧縮することができますが、それを超えて返済をすることも可能なため、手元に残す財産を150万円に引き上げることができるのです。
住宅資金特別条項とは
「住宅資金特別条項」とは、個人再生手続きにおける特別な制度で、「住宅ローン特則」とも呼ばれます。これは、住宅ローン等の住宅資金貸付債権については従来どおり(あるいは返済方法に若干の変更を行って)返済を続けることによって、自宅を手放さずに、その他の借金だけを減額し分割払いにすることができる制度です。
その主な要件は下記のとおりとなります。
1.住宅の建設もしくは購入に必要な資金(住宅に使うための土地または借地権の取得に必要な資金を含む。)または住宅の改良に必要な資金で、分割払いの定めのある債権である。
住宅ローンの借り換えをしていた場合を含め、一般的な住宅ローンは、ほぼこれに該当します。諸費用ローンも、登記料などの税金や不動産仲介手数料など、住宅購入に不可欠なものは、裁判所が使途と金額などを勘案し、総合的に判断した上で認められる場合があります。
2.対象となる住宅に、住宅ローン債権(または保証会社の求償債権)を被担保債権とする抵当権が設定されている。
対象となる住宅に、銀行や保証会社の抵当権が設定されておらず無担保の場合には、住宅資金特別条項は使えません。
3.対象となる不動産に、住宅ローン以外の担保権設定登記や差押登記がない。
住宅ローン以外の債権(カードローンなど)を担保するため、抵当権などの担保権が第2順位以降で設定されている場合には、住宅資金特別条項は使えません。
また、住宅ローンの滞納により住宅が競売にかけられていたり、税金の滞納にもとづく公売(官公庁が滞納税金回収のために行うもの。民間の競売に当たります。)にかけられている場合には、差押登記がなされます。この差押登記がある場合も、住宅資金特別条項は使えません。
4.対象となる住宅が、本人が所有している建物である。
個人再生の申立て時点で、本人が所有している建物である必要があります。 ここでの「住宅」とは、自己の居住用の建物で、床面積の半分以上が居住用になっているものを指すため、自宅兼店舗になっている物件であっても、半分以上を居住のために使っていれば問題ありません。
また、本人以外の誰かと持分を共有している場合も「所有」に該当するため、住宅資金特別条項を使うことができます。例えば、夫婦で住宅ローンを組むペアローンの場合でも問題ありません。
5.本人が居住の用に供する住宅である。
個人再生の申立て時点で、本人が住んでいる、または住む予定の住宅である必要があります。ただし、別荘やセカンドハウスなど、生活の本拠地でない住宅の場合は住宅資金特別条項が使えません。
6.保証会社による代位弁済後、6ヶ月以内である。
住宅ローンを滞納した場合、保証会社が債務者(借り入れをした人)に代わって住宅ローン債権者(銀行等)に金銭を支払います。これを代位弁済と言いますが、代位弁済後、6ヶ月以内でなければ住宅資金特別条項は使えません。
7.本人が対象となる住宅の所有権を失う見込みがない。
本人が、対象となる住宅の所有権を失う見込みがある場合には、住宅資金特別条項は使えません。例えば税金等の滞納があり、対象となる住宅に対し官公庁による滞納処分が行われた場合には、滞納処分が解除されない限り、住宅資金特別条項は使えません。
一方、一般の債権者による差押えや仮差押えが行われた場合は、個人再生手続きの過程でそれらが中止・失効するため、住宅資金特別条項を使うことができます。
自己破産と貯金
貯金を残して自己破産を行うことは可能です(ただし一部に限ります。)
まずは自己破産とは何か、次に、自己破産では貯金を含む財産をどこまで残せるのかについて見ていきましょう。
自己破産とは
自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出して「免責」の許可をもらい、借金の返済義務の全てを免除してもらう手続きのことです。
あらゆる債務整理の方法の中で、最も自由度の低い手続きになります。裁判所に破産申立てを行う際に「資産目録」を提出し、財産状況を申告する必要があります。
自己破産で残せる財産
債務者(借り入れをした人)が残せる財産は、「自由財産」と呼ばれ、具体的には以下のものが該当します。
- 破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産)
- 99万円以下の現金
- 差押え禁止財産
- 破産管財人(※)が放棄した財産
- 自由財産の拡張により許された財産
1.破産手続開始決定後に取得した財産(新得財産)
破産手続き決定後に取得した財産については、基本的に残すことができます。
2.99万円以下の現金
99万円以下の現金も基本的に残す事が可能です。
3.差押え禁止財産
- 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具
- 一か月の生活に必要な食料および燃料
- 農業や漁業を営む者にとって欠くことのできない器具等
- 給料、退職年金、賞与等の3/4
などを指します。ただし、民事執行法により差押えが許されたものおよび破 産手続開始後に差押えることができるようになったものは除きます。
4.破産管財人(※)が放棄した財産
破産管財人が権利を放棄した財産についても残すことが可能です。
5.自由財産の拡張により許された財産
裁判所は、破産手続開始決定があった時からその決定の確定後1ヶ月までの間、破産者の生活状況や財産・収入などの個別の事情を考慮し、自由財産の拡張をすることができます。
ただし、破産管財人(※)の意見を聴かねばなりません。
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※破産管財人とは
「破産管財人」は、裁判所より選任されます。具体的な業務としては、負債の調査・確定、財産の調査・管理・換金処分など行って、財産を配当します。
しかし、配当すべき財産がない場合は「破産管財人」を選任する必要がなく、選任されないケースもあります。
一般的な個人の方で自己破産手続きを行う場合は、このケースが多く、これを「同時廃止事件」と呼びます。
一方、法人破産や法的に複雑な事件、本人申立て事件、個人の方でも20万円以上の財産がある事件などは破産管財人が選任されます。これを「管財事件」と呼びます。
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特定調停と貯金
貯金を残して特定調停を行うことは可能です。
まずは特定調停とは何か、次に、特定調停では貯金を含む財産をどこまで残せるのかについて見ていきましょう。
特定調停とは
特定調停とは、裁判所に「特定調停申立書」を提出して債権者(貸金業者等)との間の仲裁役になってもらい、返済方法や返済額について調整し、支払いが可能になるような条件で和解を成立させる手続きです。
自己破産や個人再生よりも自由度が高く、その意味では任意整理に近い手続きですが、任意整理と違って、裁判所に「財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料」を提出して財産状況を申告する必要があります。
なお、特定調停は原則として債務者(借り入れをした人)本人が申立てを行います。弁護士や司法書士が申立ての代理をするケースはほぼありません。
特定調停が成立すると、裁判所が「調停調書」という書面を作成しますが、これは裁判の判決と同じ効力があるため、債権者(貸金業者等)との合意どおりに支払うことができなかった場合は、給料差押え等の強制執行をされる可能性があります。
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特定調停で残せる財産
債務者(借り入れをした人)が残せる財産は、現金や銀行預金といったいわゆる「貯金」だけではなく、株券等の有価証券や生命保険、自動車や不動産等の財産を含む所有している財産全てです。
ただし、残せる財産は、あくまで自己が所有しているもののみなので、「所有権が債権者に留保されているもの」についてはその限りではありません。例えば、カーローンを組んでいて返済が終わっていない場合、自動車の所有権はローン会社にあります。自動車は引き上げ後に換価され、借金の返済に充当されます。
また、住宅ローンを組んでいて返済が終わっておらず、「抵当権がついたままの住宅」についても、担保権者である金融機関が抵当権を実行し競売にかけてしまう可能性があるため、手元に残すことができません。
しかしながら、特定調停では、一部債権者(ローン会社等)を除いて手続きを行うこともできるため、ローン会社を手続きから除外して従来どおりの返済を続けながら、ローンが残っている自動車や住宅を手元に残すこともできます。
貯金を残して債務整理したいなら弁護士に相談を
貯金を残して債務整理を行うことは可能ですが、債務整理方法ごとに貯金を残す条件や金額は異なります。
また、債務者の方が抱えている債務の状況によっても、最適な債務整理方法は異なります。
債務整理に精通した弁護士に相談すれば、ご相談者の状況をふまえて、貯金の確保・生活保護の活用などふくめ、生活再建に向けた道筋について、総合的なアドバイスをもらうことができます。
もし貯金を残した形で債務整理を行いたいなら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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