固定資産税を滞納するとどうなる?払えない場合の問題と対処法

固定資産税の滞納

家や土地などを所有していると毎年発生する固定資産税。もし納付を忘れてしまったり、何らかの理由で納付ができず滞納となってしまった場合どうなるのでしょうか。

今回の記事では固定資産税を滞納するとどうなるのか、払えなくなってしまった場合の対処法、滞納を避けるための方法について解説していきます。

固定資産税の滞納で延滞金・財産差し押さえのリスクも

固定資産税を滞納すると延滞金が発生し、場合によっては財産を差し押さえられてしまうリスクもあります。

しかし固定資産税を滞納してしまってもすぐに財産が差し押さえられてしまうというわけではなく、督促状、催告書、財産調査、身辺調査など順をおって行われていきます。

延滞金の発生

固定資産税を滞納した際に発生する延滞金は納付期限の翌日から発生します。

固定資産税の延滞金は納期の翌日から1ヶ月までと、1ヶ月経過以後で課税割合が異なり、基本的に1ヶ月経過後から税率は高くなります。

東京都の例)令和4年1月1日から令和5年12月31日まで
納付期限の翌日から1ヶ月を経過する日までの期間 2.40%
納付期限の翌日から1ヶ月を経過した日以降の期間 8.70%

ただし、本来納付する税額が2,000円未満の場合や算出した延滞金額が1,000円未満の延滞金については納付を要しません。

財産の差し押さえ

固定資産税の滞納が続くと差し押さえなどの法的な手段を取られ、差し押さえの後も滞納を続けた場合に、滞納者の不動産などの財産が競売にかけられてしまうこともあります。
しかし、実際に差し押さえに至るまでには順序があり、滞納してしまったからといってすぐに財産が差し押さえられるという訳ではありません。

延滞金~差し押さえまでの流れ

ではどのような場合に差し押さえになるのでしょうか。実際に差し押さえに至るまでの流れを確認していきましょう。

  1. 延滞金の課税
  2. 督促状の送付
  3. 催告書の送付
  4. 財産調査・身辺調査
  5. 財産の差し押さえ

納付期限を過ぎると延滞金が課税

固定資産税の納付書は毎年、登記簿に登記されている固定資産税の所有者に納付書が郵送されます。
東京都の場合、納付書の発送が6月1日、全部で4回あるうちの初回(第1期)の納付期限が6月30日までとなっています。

納付期限を過ぎた時点で延滞金が発生していきます。
先ほどご紹介したように納期の翌日から計算が始まり、本来の納期限から1ヶ月を経過すると税率が高くなります。

納期限を過ぎていても従来の納付書は使用可能

納期限を過ぎてしまった場合でも従来の納付書を使用することができ、その場合には延滞金部分について後日納付書が送付されることとなります。

督促状が届く

何らかの理由で固定資産税の支払いが遅れ、自分から役所に相談に行くなどの行動をしていないと、督促状が市町村から郵送で届きます。

法律上では納付期限から20日以内に督促状が発送されることと定められています。

督促状が届いた場合、何かしらの対応を滞納者はしなければなりません。
法律では「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは財産を差し押さえなければならない」とされています。

しかし実際には差し押さえの前に納税の催告などが行われることとなります。

なお、固定資産税の納付から確認まで4~5日程度かかる場合があるため、行き違いにより督促状が発送されてしまうケースもあります。

催告書が届く

督促状が届いた後もそれに対応しなかった場合、催告書が届きます。

督促状と同じように支払いを促す文書となりますが、催告書は法的手段を取る前の最終通告となります。
督促状よりも厳しい文面で送られてくることが一般的で、期日までに支払いがない場合には財産の差し押さえが行われるという旨が記載されています。

催告については文書だけでなく電話や訪問などで数回行われることが一般的です。

財産調査・身辺調査

督促状や催告にも対応しなかった場合、差し押さえの前段階として財産調査や身辺調査が行われます。
これらが行われる目的は、

  • 滞納者の周りにお金に替えられるものがないか
  • 支払い能力があるかどうか

を審査することです。

財産調査では延滞の対象となる不動産だけでなく、預貯金など全ての財産が対象になります。

これらの調査は法律に基づいているので滞納者からの了承を得ることなく強制的に行われるものとなります。

また身辺調査が行われると家族や勤務先、取引先にまで調査が及ぶ可能性もあるため、税金滞納者であることが多くの人に知られてしまう可能性があり、ここまで来ると社会的信用を大きく失うこととなります。

財産の差し押さえ(強制執行)

財産調査や身辺調査によって差し押さえる財産があると分かった場合、実際に財産の差し押さえが行われます。

税金の滞納による差し押さえは裁判所に申し立てを行う必要はなく、行政処分として即行うことができます。

不動産も差し押さえの対象に

滞納者に財産を売却されてしまうことを防ぐために不動産の差し押さえも行われます。

滞納金額にもよりますが、すぐに不動産が競売にかけられるということは稀で、実際の滞納金額を回収するために、預貯金や給料等を差し押さえて延滞金と固定資産税部分を回収していくような形になります。

また住宅ローンの残債が残っている場合は、金融機関に抵当権が設定されているため売却はできません。

滞納した固定資産税を払えない場合の対処法

滞納した固定資産税を払えないという場合、放置したままにせずなるべく早めに動き始めることが重要です。

具体的に何をしなければならないのかを解説します。

まずは自治体に連絡する

まずは固定資産を保有していて税金を滞納している自治体に連絡します。
固定資産税の納付書や督促状には連絡先が記載されているためそちらに連絡しましょう。

また自治体の窓口で直接相談することもできます。
もし傷病や失業など何かしらの理由によって支払いが難しいという場合、診断書や失業認定書など、それらの理由を証明できるものを持っていくと良いでしょう。

通常の分納

固定資産税を支払うことができない場合にまず相談すべきことは「分納」ができるかどうかです。
事前に相談することで分納を認めてもらう可能性があります。
分納の手続きは電話や窓口で相談が可能です。分納の額をいくらにするかは相談によって決まります。

通常の分納は特に書類等を準備するなどのことは必要なく、市区町村の徴収係と決めた支払い計画通りに進めていく形となります。
しかし延滞金が免除されるというわけではないので、延滞金も含めた額を分割して支払っていきます。

またここで作成した計画通りに支払いができない場合、すぐに差し押さえが行われる可能性もあるため注意が必要です。

納税の猶予

次に検討すべきことは納税の猶予です。

先ほどの通常の分納に比べ手続きや提出書類は多くなりますが、納税の猶予が認められた場合には延滞金の免除が受けられるなどの場合もあります。

納税の猶予は

  • 災害や盗難にあった
  • ご家族や近親者が怪我または病気
  • 事業を休止、廃止した
  • 事業で大きな損失を負った

などという場合に認められるもので、全ての人が使えるというわけではありませんが、認められれば50%〜100%の延滞金の免除が受けられます。

近年の健康問題の影響により納税が困難な方についても、延滞金を全額または一部免除するという猶予制度が設けられています。

換価の猶予

換価の猶予とは差し押さえられている財産が強制的に売却されるのを猶予してもらえる制度のことです。

財産の換価を一時的に猶予してもらえます。
また、換価の猶予の間は延滞金が50%免除になります。

換価の猶予を受けるためには、

  • 財産を売却されると生活に困る、または事業を継続できなくなる
  • 換価の猶予にかかる固定資産税の他に税金を滞納していない
  • 税金を納めることを誠実に考えていると認められる

などの条件を満たしている必要があります。

猶予の期間は原則1年以内

換価の猶予については原則1年以内などと猶予期間が定められています。

こちらも納税義務者による申請が必要になり、申請書のほか、猶予に該当する事実を証明する書類や収支状況、所有財産を明らかにする書類などが必要になります。

固定資産税の課税に不服がある場合

固定資産の価格について不服がある場合、納税通知書を受け取ってから3ヶ月以内に固定資産評価審査委員会に審査の申し出をすることができます。

審査の結果固定資産課税台帳に登録された価格が不適当であると認められる場合、登録された価格が修正され税額も修正されます。

しかしこの場合でも固定資産税は一度納めなければならず、納めないでいると延滞金が発生することになります。

固定資産税の滞納は自己破産・債務整理でも解決できない

もし自己破産や債務整理をしているのであれば固定資産税の滞納は免除されるのではないかと考える方もいます。

しかし、実際は異なります。
自己破産をすると金融機関への返済などは免除となりますが、固定資産税などの税金は自己破産をしても支払い義務は無くなりません。

滞納した固定資産税は自己破産による免責の対象外

これは破産法という法律で、税金など「租税等の請求権」が「非免責債権」とされているためで、この非免責債権は自己破産による免責の対象外となっています。

この非免責債権には固定資産税だけでなく所得税や住民税、贈与税、相続税、自動車税などの税金、国民年金や国民健康保険料なども含まれています。

固定資産税の滞納を避けるために

固定資産税を滞納してしまう理由としては経済的に支払いが難しいという理由もありますが、うっかり納税を忘れてしまったという場合もあります。

そのような理由だとしても1日でも期限を過ぎると延滞金は発生してしまいます。

ここでは固定資産税の滞納を避けるための方法をいくつかご紹介します。

納税の時期を確認

固定資産税は毎年同じ時期に通知書が届きます。

納税通知書は1月1日時点の所有者に対して、東京都の場合6月1日(土曜日の場合は翌開庁日)に発送されます。

納税通知書には1年分まとめて支払う納付書と第1期から第4期までの1年分を4分割にしたものが送られてきます。

東京23区の場合、納付期間と納付期限は以下のようになります。

東京23区の固定資産税 納付期間と納付期限
第1期 令和元年6月1日から6月30日まで (納付期限 6月30日)
第2期 令和元年9月1日から10月2日まで (納付期限 10月2日)
第3期 令和元年12月1日から12月27日まで (納付期限 12月27日)
第4期 令和2年2月1日から2月28日まで (納付期限 2月28日)

自治体によって支払い時期は異なり、4月から納付が始まる地域など納付時期は様々なので、ご自分の地域の納付期限がいつなのかを確認しましょう。

基本的には毎年この納付時期は変わりませんので、この時期にまとまった支払いが発生するということを覚えておいて、事前に資金を準備しておくと良いでしょう。

固定資産税も一括で支払うことができますが、国民年金などのように一括払いすることで割引になるなどということはありません。

口座振替により支払い忘れを防ぐ

固定資産税の支払い方法は、口座振替を選択することもできます。

納付書を無くしてしまった、忙しくて振り込みを忘れてしまったということを防ぐために、口座振替を選択しておくことも検討すると良いでしょう。

口座振替はWEBや口座振替依頼書で申し込むことができ、納期限に預貯金口座から自動的に引き落とされるため納付の手間が省け、納め忘れがありません。

振替日は基本的には納付期限と一緒になります。振替日前に口座残高があるかどうかを確認しましょう。

あらかじめ諸経費として組み込んでおく

固定資産税の納付時期にまとまったお金がないという事態に備えて、住宅に毎月かかる管理費、修繕積立金、住宅ローンの返済などと合わせて固定資産税の金額も資金計画に組み込んでおくと良いでしょう。

土地や家屋の固定資産は3年に一度評価が見直されますが、おおよその金額は納付書から確認できます。

年間の支払額を月で割って少しずつ積み立てておくという方法もおすすめです。

まとめ

今回は固定資産税を滞納してしまったらどうなるのか、またその場合の対処方法についてもご紹介しました。

固定資産税の支払いができなかった場合にすぐに財産の差し押さえが行われるということはありませんが、差し押さえまでの間の財産調査や身辺調査により社会的信用を失ってしまう可能性があります。

事前に相談することで分納などの対応を取ってもらうこともできるので、支払いを忘れてしまった、支払いが難しいという場合でも早めに行動することが大切です。

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