奨学金の踏み倒しは危険!返済滞納のリスクと対処法
昨今は卒業後の低収入や収入減から奨学金の返済に苦しみ、踏み倒しを検討するまでに思い詰めてしまう方も少なくありません。
日本学生支援機構によれば、奨学金を利用している大学生は約5割にも上ります。
今回の記事では、大学生の半数以上にとって身近な借金とも言える奨学金の踏み倒しが可能かどうか、そのリスクや解決方法を解説します。
奨学金の踏み倒しが難しい理由
奨学金は、経済的に苦しい中で進学する人には頼りになる制度です。
しかしながら、奨学金を利用した方の中には、「大学を卒業しても就職できなかった」「就職後の収入が低かった」「思わぬ失業をした」などの理由から、奨学金の踏み倒しを考えるほど追い込まれている人もいるでしょう。
ですが、現実的に考えると奨学金の踏み倒しは非常に難しいと言わざるを得ません。
裁判を起こされる
なぜならば、奨学金の返済が滞ると奨学金の貸付元である日本学生支援機構や、同機構から債権譲渡を受けた債権回収会社に裁判を起こされるリスクがあるからです。
奨学金の返済の延滞を続けた場合、裁判所を通した強制執行の手続きに進みます。
奨学金を踏み倒したことで、裁判所から強制執行が認められれば、最終的には預金や給与、家などの不動産も、保有している財産を差し押さえされます。
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奨学金は時効が成立しづらい
奨学金は、2020年4月1日以降に借り入れた分については最終返済日から5年、2020年3月31日以前に借り入れた分については最終返済日から10年が経過すれば消滅時効が成立します(※民法改正により借り入れ時期で消滅時効が異なります)。
しかしながら以下の場合には、「時効の更新」により時効の進行がリセットされてしまいます。
- 裁判などの法的手続きで請求、支払督促を受けた
- 強制執行を受けた
- 債務承認をした
先に述べたとおり、日本学生支援機構や同機構から債権譲渡を受けた債権回収会社は、滞納が続く債務者に対し裁判を起こし、その結果、強制執行により財産を差し押さえます。
また、債務者が借金返済の意思を示したり借金を少しでも返済したりすると、時効のリセット事由である「債務承認をした」とされ、時効の進行がふりだしまで巻き戻ってしまいます。
つまり、奨学金の時効は成立がしづらいのです。
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保証人に請求が行く
奨学金の返済の滞納が続くと、奨学金借り入れ時に設定した連帯保証人・保証人に請求が行きます。
連帯保証人・保証人には家族・親族を設定している方が多く、つまり奨学金の返済を踏み倒せば、家族や親族に奨学金の返済を一括請求されるおそれがあるということです。
家族・親族への影響を考えると奨学金の踏み倒しはハードルが高いと言えます。
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奨学金の踏み倒しで発生するリスク
奨学金を踏み倒すと、以下のリスクがあります。
2ヶ月以上滞納で延滞金が発生する
奨学金の返済が2ヶ月以上滞ると、延滞金が課されます。
第二種奨学金の場合、延滞している割賦金(利息を除く)の額に対し、年3%(365日あたり)の割合で、返済期日の翌日から延滞している日数に応じた金額が延滞金として加算されます。
3ヶ月滞納でブラックリスト入り
また、返済開始から6ヶ月経過後に延滞3ヶ月以上となった場合、個人信用情報機関である「全国銀行個人信用情報センター」(KSC)に事故情報が登録されます。
奨学金返済の滞納により、いわゆるブラックリストに載った状態となるのです。
事故情報の登録期間は、延滞の場合5年です(自己破産・個人再生の場合は7年。任意整理は区分なし)。
事故情報が登録されると、KSCの加盟会員である金融機関で事故情報が共有され、新たな借り入れやクレジットカードの作成、住宅ローンやカーローンの利用などはできなくなります。
参考:全国銀行個人信用情報センター(一般社団法人全国銀行協会)
債権回収会社による回収に移行
機構が委託した債権回収会社が、本人、連帯保証人および保証人に対する奨学金回収手続きに入ります。
- 何度も取り立ての電話がかかって来る
- 督促状が届く
などするため精神的に追い込まれます。
半年以上滞納で裁判所による差押え手続きの開始
裁判所に強制執行を申し立てられ、預貯金や自宅などの不動産、給与の一部などの財産を差し押さえられます。
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奨学金の返済が難しい場合の対処法
こうした事態を避けるため、奨学金返済が難しい場合には、日本学生支援機構が設けている期限延長・減免制度を利用できる可能性があります。
その他、返済が難しい場合に考えられる対処法をまとめると、以下のものがあげられます。
返還期限猶予制度
返還期限猶予制度とは、一定期間について返済期限を延期する制度です。
返済すべき元金や利子が免除されるものではありませんが、利息を加算されることはありません。
延滞者であっても、現在、傷病、生活保護受給中等、真に返還が困難な場合は、現在の猶予と同時に申請することで、延滞期間のうち猶予事由に該当する期間について返還期限猶予を適用してもらえます。
返還期限猶予制度には、
- 一般猶予
- 猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予
の2種類があります。
一般猶予
適用期間は通算10年(120ヶ月)が限度ですが、以下の条件にあてはまる場合は10年の制限がありません。
- 災害(注)
- 傷病
- 生活保護受給中
- 産前休業・産後休業および育児休業
- 一部の大学校在学
- 海外派遣
ただし、返還期限猶予は、1年ごとに願い出が必要です。
(延滞している場合は、延滞開始年月より1年(12か月)ごとに猶予願・証明書を提出する必要があります。)
経済困難事由により制度を利用する場合、利用条件は、
- 給与所得のある場合:年間収入金額300万円以下
- 給与所得以外の所得がある場合:年間所得金額200万円以下
となっています。
なお、所得算定の際には、本人の被扶養者について1人につき38万円控除されます。
また、親等への生活費補助を行っている場合も同じく38万円が控除されます。
(注)災害原因が同一の場合は、災害発生から原則5年が限度です。
猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予
「猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」とは一定の収入・所得を得るまでの間、返済を待ってほしい場合に願い出る制度です。
(給与所得者の場合:年間収入300万円、給与所得者以外の所得の場合年間収入200万円)
適用期間に制限はありません。
ただし、本人が被扶養者であるときは一定の要件があります。
減額返還制度
減額返還制度とは、毎月の返済額を2分の1または3分の1に減額し、返済期間を延長しながら返済する制度です。
減額返還制度の対象者は、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返済が困難な方の中で、当初約束した毎月の返済額を減額すれば返済可能である方です。
1回の減額返還の願出につき適用期間は12か月で、最長15年(180か月)まで延長ができます。
経済困難事由により制度を利用する場合、利用条件は、
- 給与所得のある場合:年間収入金額325万円以下
- 給与所得以外の所得がある場合:年間所得金額225万円以下
となっています。
なお、所得算定の際には一律25万円を収入・所得金額から控除されます。
返還免除
返還免除制度とは、残債の全部又は一部の返済を免除することができる制度です。
適用条件は以下の2通りです。
- 本人が死亡し返還ができなくなったとき。
- 精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失、又は労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったとき。
奨学金以外にも借金があれば個人再生や自己破産を検討する
以上の制度を使っても返済が厳しく、奨学金以外にも借金があるなどの場合には、奨学金も含めて債務整理を検討しましょう。
この債務整理には
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
の3通りの方法があります。
奨学金を含んで債務整理をする場合、
- 借金を5分の1〜10分の1まで減額し分割返済する「個人再生」
- 借金全額を返済免除してもらう「自己破産」
のいずれかを選択するのが一般的です。
ただし、個人再生や自己破産をした場合には、連帯保証人や保証人に請求が行きますので、事前に連帯保証人や保証人に相談すべきです。
個人再生や自己破産を検討するほど困窮していれば、連帯保証人や保証人が金銭援助をしてくれるかもしれません。
もし連帯保証人や保証人が返済できない場合には、連帯保証人や保証人も別途、債務整理をするとよいでしょう。
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低利率の奨学金は任意整理の効果が低い
では、任意整理は奨学金の債務整理に有効な方法ではないのでしょうか?
結論から言えば、イエスです。
任意整理とは、裁判外で債権者と交渉し、借金の将来利息をカットして残元金を3年〜5年で分割返済する手続きです。
しかし、任意整理が借金減額に有効なのは、債権者が消費者金融やクレジットカード会社などの場合で、日本学生支援機構の奨学金については元々の利率が非常に低いため、将来利息をカットしても減額効果がほとんど見込めません。
奨学金以外の借金は任意整理の効果がある場合も
もし、任意整理で借金減額の効果を実現するならば、奨学金については返還期限猶予や減額返還の制度を使い、奨学金以外の高利率の借金(消費者金融やクレジットカード会社からの借金)のみを任意整理するのが有効でしょう。
奨学金以外の借金を減額できれば、浮いたお金を奨学金の返済に回せるようになりますし、個人再生や自己破産のように連帯保証人・保証人に請求が行くこともありません。
家族や親族に相談する
奨学金の連帯保証人・保証人には、家族や親族がなっているケースが多いです。
奨学金の踏み倒しによって家族・親族に影響を与える可能性があるなら、その家族・親族に事前に相談しましょう。
返済額を援助してくれたり、一時的に立て替えてくれたりするかもしれません。
また、連帯保証人・保証人である家族・親族にとっても、奨学金踏み倒しによって自分が一括弁済を求められるよりは、その前段階でいくらかの金銭援助や立て替えをするほうが負担も少ないとも考えられます。
まとめ
これまで見てきたとおり、奨学金の返済踏み倒しは非常にリスクが高い行為です。
踏み倒しを検討するほど追い詰められているなら、日本学生支援機構に相談し、返還猶予制度や減額返還制度などを利用するのが得策です。
そして制度利用をしている間に生活を立て直し、将来の返済再開につなげる準備をしましょう。
もし、制度利用ができない、制度利用をしても借金問題が解決しない場合は、債務整理を検討すべきです。
個人再生や自己破産の場合は借金減額効果が高いというメリットがありますが、連帯保証人や保証人に請求が行ってしまうなどのデメリットもあります。
任意整理で乗り切れそうなら任意整理を選択するのも一つの手です。
奨学金返済の踏み倒し前に弁護士に相談を
とは言え、どの債務整理方法がいいかは個々のケースによって異なり、一般の方には判断が難しいでしょう。
そこで頼れるのが、債務整理を得意とする弁護士です。
債務整理を得意とする弁護士は、相談者の状況を細かくヒアリングし、どの債務整理方法が最適かを判断してくれます。
奨学金の返済踏み倒しで悩んでいる場合には、一度弁護士に相談することをお勧めします。
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