奨学金を返せないとどうなる?延滞で起こる事態と返さなくていいケース

奨学金を返せない~延滞で起こる事態と返さなくていいケース
大学や大学院への進学のため奨学金を借りたはいいものの、いざ奨学金の返済をはじめると、毎月の返済を厳しく感じる方は少なくありません。もし奨学金が返せなくなった場合、財産を差し押さえられるのではないか、保証人である親戚や友人に迷惑がかかるのではないかと、不安な気持ちになることでしょう。

借り入れ型の奨学金であれば当然、返済の義務があります。もし返済が難しくなった場合は、なるべく早めに対策を施しておく必要があります。

この記事では、奨学金を返せないとどうなるのかを解説した上で、奨学金を返さなくてもいいケース、奨学金を返せない場合の対処法について、わかりやすく解説していきます。

奨学金を返せないとどうなる?

毎月の奨学金返還を滞納すると、以下に挙げるようなことが起こる可能性があります。

  1. 督促の連絡が来る
  2. 延滞金が加算される
  3. 連帯保証人へ支払いの請求が来る
  4. 裁判を起こされる
  5. 銀行口座や給与を差し押さえられる
  6. 信用情報に傷がつく

奨学金を返せないまま滞納を放置すればするほど事態は悪化していきます。
ひとつずつ詳しく解説していきます。

督促の連絡が来る

返還期日までに奨学金の返還ができず、そのままにしておくと、奨学金の支給元から、書面および電話で返還の督促が届きます。

はじめて支払いが遅れた段階では、まだ財産の差し押さえ等の強硬手段には至りません。
督促の連絡がきた時点で支払う、いつまでに返還すると返済予定を約束するなど、適切に対応できれば大きな問題にはならないでしょう。

督促の連絡を無視する、約束した返還期日に返還せずに放置すると、督促の連絡は何度も届きます。2回目の督促からは奨学金を利用した本人だけではなく、連帯保証人にも督促の連絡が行きます。

返還が厳しい場合は事情を真摯に伝えた上で、支払い猶予や減額返還・返還免除制度等の利用など、どんな対応が取れるか相談するのが良いでしょう。

延滞金が加算される

2回目の返還期日でまだ奨学金を返せない場合、延滞金が発生し、毎月の返済負担が増えてしまうおそれがあります。

延滞金の金利は、奨学金の種類や返済額・返済プランなどの契約内容によって異なります。たとえば日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、延滞金の金利として年3〜10%前後が課される可能性があります。

ただでさえ返還が厳しい状況であるにもかかわらず、延滞金まで課されてしまうと、より返還を継続していくのは困難になります。返還期日に支払いが遅れそうであれば、早いうちに対策を施しておくことが重要です。

参照:日本学生支援機構|延滞金

連帯保証人へ支払いの請求が来る

2回目の支払い遅れからは、延滞した本人だけでなく連帯保証人に対しても督促の連絡がいき、その後も2カ月・3カ月と奨学金返済の未払いを続けると、奨学金を借りた本人からは回収不能と判断され、まず連帯保証人、ついで保証人への支払い請求が発生します。

連帯保証人への支払い請求では、未払いとなった数ヶ月分だけではなく、残った奨学金残債の全額が一括請求されます。(保証人の場合は残債を保証人人数の頭数で等分)
当然ですが高額になるので、最悪は連帯保証人の方も連鎖的に自己破産となるケースもあります。

連帯保証人になってくれた親戚や友人に迷惑をかけたくないのであれば、返還期日に遅れてしまう前に支給元に相談しておくことが重要です。

裁判を起こされる

督促の連絡を無視し、奨学金の滞納が3カ月以上続いた場合、裁判を起こされ、奨学金全額の一括返済を求められます。

ただし、裁判を起こされたとしても、判決が出る前に今後の返済に関する話し合いがまとまれば、和解で終局するケースが一般的です。

話し合いでの和解もできないまま、判決が出てしまうと、強制的に財産を差し押さえられてしまう可能性があります。たとえ裁判を起こされてしまった場合も、支給元に最後まで交渉することをおすすめします。

銀行口座や給与を差し押さえられる

裁判の結果、支払いを命ずる判決が出てしまうと、銀行口座や給与差し押さえの手続きを取られるおそれがあります。

銀行口座を差し押さえられれば、預けてある預金は全額差し押さえられます。また、不動産や家財道具などの財産も換価可能な財産は差し押さえの対象となります。
給与を差し押さえられた場合は、強制的に毎月の給料から4分の1に当たる金額を差し引かれてしまいます。また、給与の差し押さえが行われる時点で、会社に滞納の事実も知られてしまうことでしょう。

この段階まで行ってしまう前に、弁護士等に相談し対応を施しておく必要があります。

信用情報に傷がつく

奨学金の滞納をおおよそ3ヵ月以上続けると、信用情報に事故情報が登録されます。いわゆるブラックリストに載ってしまうことになるでしょう。

ブラックリストに掲載されてしまうと、経済的な信用を失い、クレジットカードが使えなくなる、新たにローンを組むことができなくなるなど、日常生活にさまざまな悪影響を及ぼします。

傷がついた信用情報は、延滞を解消してから5年程度経過することで回復します。回復するまでの不利益を考えれば、滞納する前から支給元に相談するのがベストでしょう。

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奨学金を返さなくてもいい3つのケース

奨学金の種類や各制度を有効に利用することで、借りていた奨学金を返さなくてもいいケースがあります。代表的なものとしては、

  • 給付型の奨学金
  • 企業の奨学金返還支援(代理返還)制度
  • 返還免除制度

などが上げられます。
利用する奨学金の種類や支給団体によっても異なりますが、これらの奨学金を返さなくてもいい代表的なケース3つを解説していきます。
 

給付型の奨学金

自分が借りている奨学金が、返済義務のある「貸与型奨学金」ではなく「給付型奨学金」であれば、返済義務がないため奨学金を毎月返済する必要はありません。

給付型の奨学金は、誰でも無条件で利用できる訳ではなく、給付元が規定している厳しい条件を満たさなければ、利用することはできません。たとえば、学業成績が優秀であることや低所得世帯であることなどが、おもな利用条件として挙げられます。

ただし、近年奨学金の滞納者が増えていることもふまえ、奨学金を支給する多くの団体では、所得的に中間層にあたる世帯でも給付型奨学金を利用できるよう、利用条件の見直しも検討されています。

就職したあと、一定の年収に達した段階で返済する「出世払い型貸与奨学金」などの新しい制度も登場しています。こうした利用しやすい奨学金の利用条件に自分が当てはまるかどうか、事前に確認しておくと良いでしょう。

企業の奨学金返還支援(代理返還)制度

各企業の奨学金返還支援(代理返還)制度を利用すれば、奨学金の返還を企業が代わりにおこなってくれるため、本人が返還する必要がなくなります。

企業が福利厚生の一環として導入するこの制度は、社員と会社のエンゲージメント・ロイヤリティ強化に繋がり、離職防止や人材確保などを目的にさまざまな企業で導入されています。

また、似たような制度で、各地方公共団体とその地元に本社を置く企業が提携し、地元企業に就職した方の奨学金返還を肩代わりする「地方公共団体による奨学金返還支援制度」という制度もあります。

奨学金返還に不安を持っているのであれば、これらの制度を利用できる企業を志望・就職するのも有効です。

返還免除制度

特定の条件を満たせば、返還免除制度を利用することで奨学金の返還を免除してもらうことができます。

返還が免除になる条件はさまざまですが、たとえば日本学生支援機構(JASSO)では、「死亡、精神もしくは身体の障害による免除」や「特に優れた業績による免除」などの制度があります。

返還がどうしても難しい場合には、返還免除の条件に該当するかどうか、相談してみると良いでしょう。

参照:特に優れた業績による返還免除の手続き|日本学生支援機構(JASSO)

奨学金を返せない場合の対処法

奨学金を返せない場合のおもな対処法は、次の4つです。

  • 奨学金の支給元に相談する
  • 任意整理は奨学金の債務整理には不向き
  • 個人再生で借金を圧縮する
  • 自己破産をして生活を立て直す

奨学金を返せなくなってしまった場合、まずは支給元に返済の期限猶予や減額などを相談するのが基本です。

それでも問題が解決しないようであれば、任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理を検討すると良いでしょう。
 

奨学金の支給元に相談する

奨学金の返還が困難になった場合、まずは奨学金の支給元に相談してください。

病気や健康面、経済的な事情から、奨学金の返還が困難になってしまった方は決して少なくありません。時期をずらせば支払いを行えるのであれば、返済期日などについては相談で柔軟に対応してくれるケースもあります。

また、奨学金を支給する多くの団体では、債務者が無理なく返還を継続できるよう、さまざまな支援制度が設けています。

たとえば、日本学生支援機構(JASSO)では、「奨学金相談センター」(ナビダイヤル0570‐666‐301)で奨学金の返還に関する相談を受け付けています。
奨学金の返済が苦しい場合は、

  • 減額返還制度
  • 返還期限猶予制度
  • 死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除

などの制度を利用することができます。

減額返還制度

減額返還制度とは、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方が、毎月の分割代金を減額してもらえる制度です。

この制度を利用すれば、病気が理由で極端に収入が減ってしまった場合や、家族の介護などを理由として家計が厳しい場合などでも、無理なく返還を継続することができます。

1回の願出につき適用期間は12ヵ月なので、減額を継続するためには1年ごとに願い出る必要があります。

また、減額期間の延長は最大で15年(180ヵ月)までとなっています。

参照:月々の返還額を少なくする(減額返還制度)|日本学生支援機構(JASSO)

返還期限猶予

返還期限猶予とは、災害、傷病、経済困難、失業など奨学金の返還が困難となる事情が生じた場合に、返還の期限を猶予してもらえる制度です。

この制度では返還すべき元金や利子が免除される訳ではありませんが、審査に通ると、一定期間、返還の支払いが猶予されます。
支払い期間を先送りする制度であり、猶予を受けた分だけ、返済期間は延長されます。

願い出は1年ごとの申請が必要で、猶予可能な返還期限は最大で10年(120ヵ月) までとなります。

参照:返還を待ってもらう(返還期限猶予)|日本学生支援機構(JASSO)

死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除

本人が死亡した場合、もしくは精神や身体の障害により返還が困難になった場合には、まだ返還していない奨学金の全部または一部の返還を免除してもらえる制度があります。

心身の病気・怪我等の影響により就労困難な状況に陥ってしまい、収入を得ることができない状態の場合、返還免除を申し出ることができます。

参照:死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除|日本学生支援機構(JASSO)

任意整理は奨学金の債務整理には不向き

奨学金の返還が難しくなってしまった場合でも、任意整理をするメリットはほとんどありません。

任意整理とは、弁護士などの専門家が借り入れ業者と直接交渉することで、将来的に支払う利息をカットしたり、残っている借金の分割回数などを調整してもらい、毎月の返済を無理なく継続して行っていく制度です。

任意整理最大のメリットは、将来利息をカットできる点にありますが、奨学金の場合、もともとの利息が1%前後と低金利であるのが通常で、中には無利子のものもあります。

任意整理を行っても、利息カットで借金総額を減額できるメリットがほとんどなく、あえて任意整理手続きを利用する意味がないのです。

奨学金以外の借金問題の解決には任意整理も有効

ただし、奨学金以外にも借金があり、その返済の影響で奨学金の返還が困難なのであれば、奨学金以外の債務を任意整理することで、借金問題を解決できる可能性はあります。

個人再生で借金を圧縮する

個人再生を利用すれば、借金総額を5分の1〜10分の1に圧縮することができるため、毎月の返済負担を大幅に軽くすることができます。

個人再生は、裁判所を通した公的な手続きです。自己破産と同じく提出書類を収集する必要はありますが、持ち家や車を手放すことなく手続きを進めることができる点が、大きなメリットであるといえるでしょう。

ただし、個人再生をする場合、奨学金だけを手続きの対象とすることはできません。他の金融業者からの借り入れ、個人間の貸し借りも含めて、今ある借金全てを手続きの対象とする必要があることに注意が必要です。

自己破産をして生活を立て直す

奨学金を含め今ある借金をどうしても返せない場合、自己破産で生活を立て直す必要があるでしょう。

自己破産は、個人再生と同じく裁判所を通した公的な手続きで、今ある借金を0にすることができる、債務者救済を目的とした制度です。
裁判所に自己破産を申し立て、認められると、借金は0になります。その代わり、持ち家や車などの財産を手元に残しておくことはできません。大きなメリットがある反面、明確なデメリットもある制度です。

また、奨学金を借りた本人が自己破産をしても、連帯保証人の奨学金返還義務までは免除されません。そのため、自己破産した後の奨学金の残りの債務は、連帯保証人に対して一括請求される可能性が高まります。

連帯保証人に迷惑をかけたくないのであれば、自己破産は避けたほうが良い解決方法といえるでしょう。

若者が奨学金を返せなくなる原因は?

近年、若年層で奨学金の返還ができなるケースが増えています。奨学金を返せなくなる理由としてはおもに次のようなものが挙げられます。

  • 低収入
  • 生活費の高騰
  • 病気や健康面の問題

低収入

若者が奨学金を返せなくなってしまう原因の一つとして、就職後の収入が低い点が挙げられます。

就職してすぐに高額な給料を得られるわけではありませんし、新しい生活を始めたばかりで何かと出費がかさんでしまうと、奨学金の返還に回すお金が残っていないということもあるでしょう。

とくに、非正規雇用や臨時採用などの場合、正規雇用の場合と比べても給料が低く、奨学金の返還に回すお金がないケースも少なくありません。

生活費の高騰

低収入とあいまって、食料や電気・ガス・水道などの生活必需品の値上げによる生活費の高騰も、奨学金の返還を困難にしている原因の一つであるといえます。

また、就職を機に親元を離れて1人暮らしをしている場合、生活費を自分で管理していく中で、ついつい生活費がかさんでしまうケースも多々あります。
そこまで多くない収入で食費や遊びでお金を使いすぎ、奨学金を返還する分が残っていない、といったケースです。

就職したばかりの新社会人の場合、収入と支出のバランスの保ち方をまだよくわかっていないことが、奨学金を返還できなくなる大きな原因となります。

病気や健康面の問題も

近年では病気や健康面の問題が若者の奨学金返還を難しくするケースもよくあります。

身体的、精神的な病気が原因で健康状態が悪化してしまうと、満足に働けなくなってしまい、奨学金の返還に手が回らなくなってしまうケースがあります。

現代において健康問題は、年齢は関係のないひとつの社会的課題です。病気の発症は前触れなく突然に訪れます。
もし病気や怪我などが原因で奨学金を返せなくなってしまった場合は、返還期限の猶予や返還免除といった支援制度を利用することをおすすめします。

奨学金について弁護士に相談するメリット

奨学金の給付元に相談し、各種制度を検討したにもかかわらず奨学金の返還が厳しい場合には、なるべく早い段階で専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

奨学金含む借金問題をスムーズに解決できる

 
借金問題に精通している弁護士であれば、奨学金を延滞したときのリスクや、延滞を回避する方法、奨学金を返済できない場合の対処法について、適切なアドバイスをもらうことができます。

返済義務のある貸与型の奨学金である以上、契約時に約束した通りの返済を継続していく必要があります。生活状況の変化で、どうしても借金の返済が難しいケースもあるかもしれませんが、何か対策を施さない限り、そのまま放っておいても状況は改善しません。

また、奨学金だけでなくほかの借金問題も解決したい場合であれば、任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理から、自分に合った手続きを提案してもらうこともできるでしょう。

まとめ

奨学金の返還が困難になると、延滞金が加算されたり、連帯保証人に迷惑をかけることになるだけでなく、最悪の場合、銀行口座や毎月の給料を差し押さえられるおそれがあります。

返済の督促の連絡がきている状態であれば、返還期限の猶予や返還免除の手続きなどをおこなうことで、強制執行を免れる可能性もあるでしょう。

もし、各種制度の要件を満たさず制度を利用できなかった場合でも、借金問題に精通している弁護士に相談することで、その人に合った借金問題の解決方法を提案してもらうことができます。

裁判を起こされて判決が出てしまうと、財産の差し押さえを止めることが難しくなってしまうため、奨学金の返済が難しくなってしまった場合には、なるべく早い段階から弁護士に相談してみることをおすすめします。

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