債務整理(任意整理)で保証人や連帯保証人はどうなる?恐ろしいリスクを紹介

債務整理の影響のイメージ

たとえ家族でも、保証人になっていない限り借金の肩代わりをする必要はありません。債務整理で最も大きな影響を受けるのは、個人再生・自己破産の保証人です。

主債務者は債務整理をして借金が減額または免除されても、保証人は全額返済の義務を負います。支払いが不可能なら保証人も債務整理に踏み切るしかないのです。

債務整理をすると保証人はどうなる?

任意整理や特定調停では、保証人付きの債務を整理の対象にしなければ、保証人の返済義務を回避できます。

任意整理の保証人に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧になって下さい。

しかし個人再生と自己破産の場合は、大きな影響が避けられないため注意が必要です。

個人再生の場合は保証人の債務は減額なし。一括返済を求められる

個人再生の場合、債務者が裁判所に再生計画を提出し認められれば、借金を5分の1程度まで減らすことができます。また、住宅ローンが残っていても、家も手放すことなくローンの返済を続けることが可能です。

保証人には一括返済が求められる

主債務者の借金は減額されても、保証人の債務は減額されません。個人再生の再生計画案が認可されると、貸金業者などの債権者は保証人に一括返済を求めます。

一括が難しい場合は、交渉して分割返済にしてもらうケースが多いです。

保証人の負担が増えたら、主債務者に返還を求めることも

保証人が分割返済をするのと同時に、主債務者も計画に従って返済を開始し、両者で完済を目指します。注意したいのは、保証人の返済ペースが早く、主債務者の返済額が計画で定めた目標額に達する前に完済した場合です。

この場合、保証人の負担が大きくなりすぎてしまうので、保証人は主債務者に対し、多く支払った分の返還を求めることができます。

保証人が返済できない場合

保証人も経済状況が苦しく分割でも借金を肩代わりすることが困難な場合は、保証人も債務整理を行います。

任意整理の手続きを用いて債権者に利息や返済期間の変更を依頼することになりますが、それでも返済が難しいようなら保証人も個人再生もしくは自己破産せざるをえないでしょう。

自己破産の場合は債務者は面積されても保証人の債務は残る

自己破産とは借金の支払いが不可能な場合に、債権者が裁判所に申し立てて認められれば、家などの財産を手放す代わりに債務が免除される制度です。

債務者は免責されても、保証人の債務は残る

自己破産すれば債務が消えてなくなるイメージがあるかもしれませんが、実際は違います。免責は債務者本人に対してするものであり、保証人の債務は残ります。

そもそも保証人を立てる制度は、主債務者が支払不能に陥った場合に備えるためにあるのです。

特に保証人が連帯保証人であった場合、本来なら与えられている3つの抗弁権が存在しないので大きな負担を強いることになります。

保証人には一括返済が求められる

個人再生の場合と同様に、債権者は保証人に一括返済を求めます。返済額が高額なため一度に返済することができない場合は、債権者との交渉次第で分割返済にしてもらえることもあります。

保証人が返済できない場合はどうする?

自己破産は、債務整理手続きの中で最も保証人への負担が大きくなります。保証人も借金返済ができない事態も十分ありえるでしょう。

その場合は、保証人も債務整理に踏み切るしかありません。配偶者・子ども・親が保証人で主債務者と同時に自己破産すれば、裁判所の手続きも家族で同時に進めることができ、事情を理解してもらいやすくなります。

連帯保証人の場合は重い責任が生じる

詳しくは次の項目で書いていますが、保証人よりも連帯保証人の方が債務整理をするとより重い責任を背負うことになります。

具体的には保証人と違い、支払いの請求が届いた場合は無条件で応じなければいけません。

そもそも保証人と連帯保証人の違いとは?

保証人とは、主たる債務者(お金を借りた人)が債務の履行を行わない場合に、債務者に代わって債務の返済を行うと約束した人のことです。保証人には保証人と連帯保証人の2種類がありますので、まずはその違いから見ていきましょう。

保証人は3つの権利を持っている

連帯保証人ではない保証人には、3つの抗弁権(相手側に主張できる権利)が認められています。この抗弁権によって、債権者からの返済請求に対抗することが可能です。

催告の抗弁権とは

催告の抗弁権とは、債権者が保証人に対してお金の返済(保証債務の履行)を求めてきたときに、まず主たる債務者に請求するよう主張できる権利です。ただし、主たる債務者が自己破産したり行方知れずになったときは、保証人はこの権利を主張できなくなるため、この点を留意しておく必要があります。

検索の抗弁権とは

検索の抗弁権とは、保証人が債権者に対し、主たる債務者が所有している取り立て可能な財産を先に取り立てるよう要求できる権利です。この結果、債権者が主たる債務者の財産を先に差押えするまでは、保証人は債権者に返済を要求されても拒否することができます。

分別の利益とは

分別の利益とは、保証人が複数存在する場合に主たる債務(借金額)を保証人の頭数に応じた平等の割合で分割し、各保証人はその分割された金額分しか責任を負わなくてよい権利のことです。例えば、主たる債務が120万円で保証人が3人なら、各保証人が責任を負うのは40万円のみとなります。

連帯保証人は責任の重さが主たる債務者と同じ

通常の金銭消費貸借契約では、「保証人」といえばほとんどの場合「連帯保証人」を指しています。

前述した通り連帯保証人の責任は単なる保証人よりもずっと重く、法的には主たる債務者と責任の重さは同等です。つまり、連帯保証人を引き受けることは連帯保証人本人が借金をすることと同じとも言えます。

よく、「間違っても連帯保証人にはならないように」などと言われるのはそのためです。

連帯保証人は3つの抗弁権がない

連帯保証人には、3つの抗弁権が認められていません。そのため、債権者の請求に対してまず主たる債務者に請求するよう対抗することができないようになっています。さらに、各連帯保証人が主たる債務全額の請求を受けても拒否できません。

例えば、主たる債務額が120万円で3人の連帯保証人がいても、各連帯保証人は、それぞれ120万円の保証債務を負う事になります。もちろん、主たる債務者や保証人の誰かが全額返済すれば債務は消滅します。

債務整理後に影響を受けるのは同じ

保証人は3つの権利で守られていますが、前述のとおり「債務者に代わって債務の返済を行うと約束した人」であることには違いありません。

そのため、主債務者が債務整理を行った場合は、保証人も連帯保証人も債権者から残りの返済額を請求されるなどの影響を受ける可能性があります。

債務整理と保証人については以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧になって下さい。

債務整理の保証人や連帯保証人が家族だった場合に与えるリスク

映画やドラマのように夜逃げをしても、借金返済は免除されません。家族のために借金問題を根本的に解決できる方法は、債務整理です。

では債務整理の手続きを行うと、配偶者や子どもにどんなリスクがあるか知っておきましょう。

配偶者へのリスク|結婚自体で返済の義務は生じない。ポイントは保証人かどうか

結婚して家庭を持っている場合、最も身近な家族は配偶者です。配偶者にはどんなリスクがあるのでしょうか?

保証人でない限り返済の義務はない

任意整理・特定調停・個人再生では、債務者は減額された借金を返済していきます。保証人になっていない限り、配偶者だからという理由で債務者とともに借金返済に応じる義務はありません。

保証人になっていた場合、離婚しても返済義務あり!

逆に、配偶者が保証人になっている場合は、たとえ離婚しても借金を返済する責任が残ります。借金の保証人関係まで戸籍や住民票に記録されることはないため、婚姻関係と保証人としての借金返済の義務は関係がないのです。

債務者が死亡した場合は自動的に債務を負う

債務者本人が完済前に亡くなった場合、配偶者は債務者の財産を相続すれば、自動的に債務まで相続することになります。相続を放棄すれば借金から逃れることはできますが、同時に財産も受け取ることができなくなるので注意が必要です。相続放棄するかどうかは、遺された債務と財産を慎重に比較検討して決めましょう。

信用情報が配偶者のカード利用に影響することも…

債務者本人については、信用情報機関に事故情報が記録されます。配偶者の信用情報まで傷がつくわけではありませんが、クレジットカードの使用に支障が出る場合があります。カード会社が個人の信用情報を確認する際、名前や住所をもとにその人の配偶者に事故情報があるとわかると、経済状況を危ぶみ、限度額引き下げを行うなどの可能性があるのです。

子どもへのリスク|親の債務を負うリスクは小さいが、奨学金の利用時には要注意!

債務整理を行った時点で子どもがまだ小さければ、将来には進学・就職・結婚など様々なライフイベントが待ち受けています。債務整理が子どもの人生にどんな影響を与えるのか知っておきましょう。

保証人でない限り返済の義務はない

配偶者と同じく、保証人でない限り子どもが借金の肩代わりをする必要はありません。もし貸金業者が債務者の子どもであることを理由に返済を要求しても、子どもにはそれを拒否する権利があります。

進学や就職へのリスクは少ない

子どもが通う学校や進学先が、保護者が債務整理を行ったかどうか知る機会はまずありません。

就職の場合も同様で、官民や業種を問わず自由に職業を選択できます。就職に向けた国家資格の取得などに影響することもないでしょう。

奨学金を利用するときは要注意!

進学先で奨学金を借りる際には、連帯保証人が必要です。通常は親が連帯保証人になるケースが多いのですが、親の信用情報が事故情報として信用情報機関に登録されている間は、その親は保証人になることはできません。

他の家族や親戚に頼んだり、保証料を払って保証会社を利用する必要があります。

結婚に影響することは少ない

債務整理をしても、戸籍や住民票といった公的書類に記録は残りません。親が債務整理をしたことは、結婚相手に言わない限りまずわからないでしょう。

そのため、親の債務整理が直接子どもの結婚に影響を及ぼすことは考えにくいです。

 債務整理による保証人や連帯保証人へのリスクは甚大!行う前に弁護士へ相談を

債務整理の際、最も気をつけたいのは保証人への影響です。

保証人の負担はあまりに大きく、保証人だけでなくその家族にも迷惑をかけることになります。

特に連帯保証人になっている場合、相手の人生や家庭そのものを完全に破壊してしまう可能性すらあります。

そのため、債務整理の際にどの方法を選ぶかについては、弁護士などの専門家に相談して慎重に検討しましょう。

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