遺族年金改正でどう変わる?2028年施行の変更点と影響を受ける人が取るべき対策

遺族年金改正でどう変わる?2028年施行の変更点と影響を受ける人が取るべき対策
2028年施行の年金制度改正法では、遺族年金の受給期間と対象が大きく変更されます。男女差をなくすことが主な目的ですが、受給期間が短縮される女性がいる一方で、男性の受給対象が広がることや、受給期間中の年金額が増額されるなどの利点もあります。ここでは遺族年金の改正で変わること、影響を受ける人と対策について見ていきます。

遺族年金とは?

遺族年金とは、公的年金の被保険者(年金に加入していた人)が亡くなったとき、残された遺族(配偶者や子)が受給できる年金です。

2025年6月13日に現行制度を見直す改正法が衆議院で可決され、2028年4月から施行予定です。現行制度(改正前の遺族年金)の支給要件や期間について、詳しくは下記の記事で解説しています。

遺族年金の目的は、遺族の生活保障です。亡くなった方の収入に依存していた家族が生活に困らないように、一定の生活保障を行う役割があります。

現行制度は「男性が働いて、女性が家族を支える」という家庭が一般的だった時代に制度設計されたものです。そのため、結婚している女性には終身給付が基本であるのに対し、男性は支給要件が厳しいものとなっています。

現在は女性の社会進出が進み、共働きの世帯が一般的になりました。このような社会の変化に制度を合わせるために、今回の改正法案が国会で可決されたのです。

遺族年金の種類

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、亡くなった方の年金加入状況や子がいるかによってもらえる年金が異なります。両方の遺族年金を受給できるケースもあります。

遺族年金を受け取ることができる遺族と年金の種類【PDF】遺族年金を受け取ることができる遺族と年金の種類(日本年金機構:遺族年金ガイド)より引用

また、遺族基礎年金を受け取れない場合には、寡婦年金または死亡一時金を受給できる場合があります。
現在の寡婦年金と死亡一時金の受給要件など、詳細は下記の記事で詳しく解説しています。

遺族年金改正による遺族厚生年金の変更点

遺族年金改正による遺族厚生年金の主な変更点は、給付期間の変更や、男女差の是正です。子がいる場合や収入が十分でない人への配慮なども盛り込まれています。

遺族厚生年金の見直し厚生労働省:遺族厚生年金の見直しについてより引用

原則5年の有期給付になる

遺族年金は終身給付が基本でしたが、改正後は原則5年間の有期給付へ変更されます。

これによって配偶者と死別した30歳以上60歳未満の女性への給付期間が大幅に短縮されます。

改正前→改正後の給付期間(夫と死別・18歳年度末までの子がいない妻の場合)
改正前 改正後
30歳未満で死別 5年の有期給付 5年の有期給付 ★変更なし
30歳以上で死別 終身給付 60歳未満で死別 5年の有期給付
60歳以上で死別 終身給付 ★変更なし

継続給付制度

ただし5年間の給付期間後も、収入が十分でない方や障害状況にある人については、引き続き給付を受けることができるとされています。

継続給付の対象となる予定の方
  • 障害年金受給権者
  • 収入が十分でない人(月収10万円以下で全額支給、それ以上は月収20万円~30万円程度まで段階的に調整される見込み)

子が18歳年度末に達するまでは現行制度から変更なし

また、子どものいるご家庭の場合、子どもを養育する間(18歳年度末までの子がいる場合)の給付については現行制度と変更がありません。
ただし、子が18歳年度末を迎えたあとは、5年間の有期給付に切り替わります。

改正前→改正後の給付期間(夫と死別・子がいる女性の場合)
改正前 改正後
子が18歳年度末までの間 遺族基礎年金+遺族厚生年金 子が18歳年度末までの間 遺族基礎年金+遺族厚生年金 ★変更なし
子が18歳年度末を迎えたあと 終身給付(遺族厚生年金) 子が18歳年度末を迎えたあと 5年間の有期給付(遺族厚生年金)

男女差がなくなる

今回の改正では男女差の是正が主な目的とされています。そのため、改正後は男女の支給要件が同じになります。

改正前→改正後の給付期間(妻と死別した18歳年度末までの子がいない夫の場合)
改正前 改正後
55歳未満 給付なし 60歳未満で死別 5年間の有期給付
55歳以上 60歳から終身給付 60歳以上で死別 終身給付

中高齢寡婦加算の廃止

現行制度では夫と死別した40歳以上65歳未満の女性に遺族厚生年金を上乗せする中高齢寡婦加算という制度があります。
この制度は妻限定の制度であり、男性は対象にならないことから、男女差の解消のために25年間かけて段階的に廃止するとされています。

有期給付化の具体的な施行イメージ
【PDF】厚生労働省:遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方より引用

有期の場合は年金額1.3倍に

改正後は有期給付加算が遺族厚生年金額に上乗せされます。5年間の有期給付期間の遺族厚生年金の額は、従来の遺族厚生年金額の約1.3倍になると発表されています。

従来の遺族厚生年金額は亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の3/4ですから、その額に1.3倍した金額が5年間に限り給付されることになります。

所得制限の撤廃

遺族厚生年金は従来、亡くなった方に生計を維持されていたことが支給要件とされており「年収850万円未満」という収入要件がありました。つまり、生計を維持する方の収入が850万円を越えていた場合、その方が亡くなった際、遺族は遺族厚生年金を受け取ることができませんでした。この所得制限が改正によってなくなります。

遺族が生計を同一としていた方の収入が多かった場合でも、遺族厚生年金を受けられるようになるのです。

こどもがいない60歳未満の妻・夫の遺族厚生年金
厚生労働省:遺族厚生年金の見直しについてより引用

死亡分割制度の創設

2025年度の改正では、死別した配偶者の厚生年金の給付実績の一部(約半分)を分割し、残された配偶者の年金を増額する制度(死亡分割制度)が新設されます。死亡分割制度は離婚時分割と似た制度ですが、分割割合などの詳細については現時点では発表されていません。

死亡分割のイメージ
厚生労働省:遺族厚生年金の見直しについてより引用

遺族年金改正による遺族基礎年金の変更点

今回の改正では子がいる場合の遺族基礎年金の加算額が増額され、給付要件が見直されます。

遺族基礎年金の子の加算額が増額

遺族基礎年金については、18歳年度末までの子がいる場合の加算額が増額されます。
遺族基礎年金は物価などの変動に合わせて毎年度改定されますので、年度によって増減がありますが、今回の改正ではベースとなる金額の増額が予定されています。

年間約23万5千円→約28万円に増額予定

遺族基礎年金の子の加算額が増額
厚生労働省:遺族厚生年金の見直しについてより引用

子の支給停止要件の見直し

現行制度では母親の再婚などにより子の生計維持にメドが立つと、遺族基礎年金は支給対象外となる決まりでした。

これを親の事情によって子の遺族基礎年金が支給停止とならないよう、支給停止規定の見直しが行われます。

子の遺族厚生年金受給要件 現行と改正後
  現行 改正後
生計を維持している親(亡くなった親の配偶者)の年収が850万円未満 親が受給できる(子は受け取れない) 親が受給できる★変更なし
生計を維持している親(亡くなった親の配偶者)の年収が850万円以上 受給できない 子が受給できる
生計を維持している親(亡くなった親の配偶者)が再婚 受給できない 子が受給できる
子が祖父母などの養子になる 受給できない 子が受給できる

遺族基礎年金の見直し
厚生労働省:年金制度改正法が成立しました(遺族年金制度)より引用

遺族年金改正の影響を受ける人

今回の遺族年金改正の影響を受ける人は、2028年4月以降に遺族年金の受給権が発生し、かつ施行時点で「40歳以下の女性」、「60歳以下の男性」、「年収850万円以上の人」などです。

2028年4月時点40歳未満の女性

2028年4月時点で「40歳未満」の女性で18歳年度末までの子どもがいない人は、配偶者が死亡した場合、遺族厚生年金は5年間の有期給付です。

20年かけて60歳未満まで対象を広げる

「40歳未満」という対象年齢は段階的に「60歳未満」まで引き上げられる予定です。これは2028年4月時点で40歳未満の方は60歳になるまでの間、常に有期給付の対象ということです。2028年に40歳の方が45歳になる5年後には、45歳未満が対象となるからです。なお、60歳以上で配偶者と死別した場合は、終身給付の対象です。

2028年4月時点で60歳未満の男性

2028年4月時点で60歳未満の男性で18歳年度末までの子どもがいない人は、配偶者が死亡した場合、新たに5年間の有期給付の対象となります。
女性の場合と異なり、男性は60歳未満の方が一斉に対象になります。

子のいる男性・女性で子が18歳以降

子がいる人でも、子の年齢が18歳年度末以降になった時点で、改正の影響を受けます。子が18歳までは期間の制限がありませんが、その後は原則5年間の有期給付です。

年収要件で対象とならなかった高所得者

現行制度では遺族年金受給の対象外だった年収850万円以上の人が、改正によって新たに受給の対象となります。

遺族年金改正の影響を受けない人

今回の改正では、すでに遺族厚生年金を受給している人は影響を受けません。終身給付から有期給付へは段階的な移行を予定しており、一定年齢以上の女性も影響を受けず現行制度(終身給付)が維持されます。また、高齢期に受給権が発生する方についても現行制度のままです。

すでに遺族厚生年金を受給している人

今回の改正は新たに受給権を得る人に対してのみ適用されます。つまり、すでに遺族厚生年金を受給している人には影響がありません。

60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人

55歳以上の夫が妻と死別すると、60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生します。すでに死別していて受給権が発生することが決まっている人についても、今回の改正の影響を受けません。

2028年度に40歳以上になる女性

今回の改正は30歳以上の女性にとって、終身給付から有期給付への移行という大規模な改正です。現行制度を前提に生活設計をしている方への配慮から、2028年時点で40歳以上の女性については現行制度(終身給付)を維持する予定となっています。

18歳年度末までの子を養育している人

18歳年度末までの子(高校卒業年度の3月31日まで)がいる人への影響もありません。
ただし、子が18歳年度末を迎えたあとは、有期給付など改正後の制度が適用されます。

遺族年金改正の施行時期

2025年に法案が成立した年金制度改正法については、2028年4月に施行されます。
改正した新制度の適用時期は次のように予定されています。

遺族年金改正の施工時期
60歳未満の男性(子がいない) 施行と同時に適用(2028年4月)
女性(子がいない) 40歳未満から段階的に適用
子のいる男女 子が18歳までは現行制度→18歳年度末を迎えたら適用
施行時、既に受給中の人 現行制度のまま継続

遺族年金改正に向けて取るべき対策

すでに遺族年金を受給している方は、改正に向けて準備することはありません。受給を開始していない方については、新たな制度に合わせた生活設計をしていく必要があります。

遺族年金は生活再建のための一時金と考える

万が一配偶者と死別しても、基本は5年間しか遺族年金を受給できません。遺族年金でその後の生活を賄うという考え方から、遺族年金は生活を立て直すまでの一時金と捉えるように考え方をシフトしていく必要があるでしょう。

共働き前提の社会と考える

現行制度は「働く夫と家で支える妻」といったモデルケースをもとに設計されたものなのに対し、改正後の制度は「共働き世帯」を基準として設計されています。時代の変化を捉えた上で生活設計をする必要があるでしょう。

NISAやiDeCoなどを活用した資産形成

今回の改正内容からもわかるように、今後は公的年金だけに頼るのではなく、自助努力が必要な社会になっていくと考えられます。
政府もNISA(少額投資非課税制度)を活用した資産運用や、iDeCo(個人型確定拠出年金)による老後資産の形成を推奨しています。
今回の改正でも、私的年金の見直しが併せて行われる予定です。

私的年金の見直し
厚生労働省:年金制度改正法が成立しました(遺族年金制度)より引用

まとめ

年金制度改正により今まで終身給付だった遺族年金が5年で打ち切られると聞くと、慌ててしまう方もいらっしゃるかもしれません。
ですが実際に終身給付から有期給付へと変更になるのは施行時点で遺族年金を受給していない、40歳未満の女性のみです。基本は5年間の有期にはなりますが給付額は従来よりも増額され、将来の年金額も死亡分割により上乗せされる予定です。

また、5年経過後も継続給付などの救済措置が設けられます。そして高校生までの子がいる家庭では期間の制限がありません。
さらに男性が従来は60歳になるまでもらえなかった遺族年金を、何歳でももらえるようになります。
改正後の受給イメージを明確にし、もしもの時に備えることが大切です。遺族年金に関して不安な方は弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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