親が亡くなったらすること~役所・銀行・相続その他必要な手続きの期限と流れ

親が亡くなったらすること。役所・銀行・相続その他必要な手続きの期限と流れ

親が亡くなると、遺言書の確認や相続人の確定、財産の調査から税務手続きまで、短期間の間に多くの手続きが発生します。
悲しみの中で冷静に対応していくことは簡単ではありませんが、親が亡くなった後に行う手続きそれぞれの内容や期限、全体の流れを理解しておくことで混乱を避けられます。

本記事では、相続の手続きや年金・税金関連の申告など、親が亡くなったときに必要な手続きを時系列に沿って全体的に解説していきます。

親が亡くなったらすることリスト(手続き一覧表)

はじめに、親が亡くなった場合にすることを一覧でまとめて見てみましょう。
リストは基本、時系列の順で並んでおり、クリックするとそれぞれの説明に飛びます。

  1. 死亡診断書(死体検案書)の受け取り
  2. 近親者への連絡
  3. 葬儀社選びと葬儀の打ち合わせ
  4. 遺体の搬送・安置所への移動
  5. エンディングノートの確認
  6. 死亡届の提出
  7. 火葬許可証の取得
  8. 葬儀(通夜・告別式・火葬)
  9. 葬儀代の精算
  10. 世帯主の変更手続き
  11. 年金受給停止手続き
  12. 介護保険資格喪失届の提出
  13. 国民健康保険・後期高齢者医療制度の資格喪失届
  14. 親が契約していた各種サービスの確認・解約(公共料金・通信費・サブスクリプション等)
  15. 保険会社への連絡(生命保険(死亡保険金)の請求)
  16. 相続内容の確認(相続財産と相続人の調査、遺言書の有無の確認・検認)
  17. 単純承認、相続放棄、限定承認の検討と届け出
  18. 遺産分割協議
  19. 遺産分割調停・審判
  20. 不動産の相続登記・遺産の名義変更
  21. 相続した自動車の名義変更
  22. 相続税の申告・納税
  23. 遺留分侵害額請求
  24. 雇用保険受給資格者証の返還
  25. 所得税の準確定申告・納税
  26. 固定資産税の納税
  27. 高額医療費の還付申請(高額療養費制度)
  28. 遺族年金

親が亡くなった日にするべきこと(1日目)

まず、親が亡くなったその日、最初にするべきことをまとめていきます。
亡くなった当日は、まず様々な手続きを行う際にも必要になる死亡診断書(死体検案書)の受取り、あとは1週間程度の間で行う葬儀の方針立てと準備が中心です。

死亡診断書(死体検案書)の受け取り

死亡診断書(死体検案書)とは、人の死亡を医学的かつ法律的に証明する文書です。
死亡診断書(死体検案書)が役所に提出されて、はじめて人の死亡が法的に確定します。

そのため、医師が作成した死亡診断書(死体検案書)の受け取りは、親が亡くなった際の一番最初の手続きと言えます。

死亡診断書と死体検案書の違い

死亡診断書と死体検案書は書類そのものは同一です。
医師の診察を受け治療を行っていた疾病等が原因で亡くなった場合、死亡診断書が発行されます。

逆に、

  • 医師の診断や治療を受けていなかった場合
  • 死亡原因が不明な場合
  • 医師の診断や治療を受けていても、異なる原因で亡くなった場合
  • 自殺や事故、事件性のある死亡

などのケースでは、医師による死亡後の診察・警察など捜査機関による検視を経て、死亡の原因を確認した上で、死体検案書が発行されます。

通常であれば、親が亡くなったその日のうちに、医師や病院から受け取ることが一般的です。

死亡診断書(死体検案書)の費用

死亡診断書(死体検案書)を作成できるのは医師または歯科医師のみで、病院等で発行されます
死亡診断書の場合、発行にかかる費用は病院の場合5,000円程度、介護施設で10,000円程度が相場です。

死体検案書の場合、死亡後の診察・死因調査を行う費用が加わることから、おおよそ30,000円~100,000円程度と、死亡診断書に比べ金額は大幅に上がります。

死亡届とセットで7日以内に役所へ提出

死亡診断書(死体検案書)は死亡届と1枚の紙に合わせて印刷されるのが通常です。(左半分に死亡届、右半分に死亡診断書(死体検案書)が印刷されます。)

死亡診断書(死体検案書)は、左半分の死亡届に必要事項を記入の上、親の死後(死亡を知ってから)7日以内に役所に提出することになります。

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近親者への連絡

親が亡くなったら、近親者に訃報を伝えていきます。
ここでいう近親者とは、三親等の範囲を指すのが一般的です。
三親等とは、亡くなった本人(親)の位置から見ると、直系血族なら曾祖父母・ひ孫、傍系血族ならおいめい、おじおばまでが、その範囲にあたります。

訃報を連絡するタイミング

通常、訃報を連絡するタイミングは、大きく3つの段階に分けて整理できます

  1. 亡くなった当日、遺体の安置場所が定まった際
  2. 葬儀の日時・場所が決定した際
  3. 葬儀が終わった後

まず、亡くなった当日は、近親者に親が亡くなった旨を簡潔に連絡します。
葬儀の日時・場所が未確定でも、決まり次第連絡する旨を伝え、まずは関係の深い身内に親が亡くなったことを知らせるのが重要です。
また、あらかじめ葬儀社の担当者がついていれば、このタイミングで連絡を入れ、葬儀の準備を開始します。

連絡は近親者から故人との関わりが深い順で進める

葬儀の日時・場所が決定すると、訃報の準備も同時に整います。
まず特につながりの深い友人、その他友人・知人、会社等に所属していれば会社関係者や取引先、町内会・自治体などの知り合いと、故人との関わりが深い順に連絡していきます。

連絡の進め方は基本的に遺族の判断次第になりますが、故人と関係の深い相手には喪主が自ら連絡するのが通常です。
友人グループであれば仲間内で連絡を回してもらえることもあれば、会社等は葬儀会社が連絡を代行してくれるケースもあります。

もちろん、遺族にとっても心身ともに辛い時期でもあります。
葬儀社や他の家族・親戚など周囲の協力も仰ぎながら、無理がない形で行うようにしましょう。

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葬儀社選びと葬儀の打ち合わせ

親が亡くなった場合、なるべく速やかに葬儀社を選定し、葬儀の日程や内容について打ち合わせを行います。

葬儀社は、故人本人や遺族側が事前に決めておいた葬儀社を選ぶことができる他、特に指定や希望がなければ病院と提携する葬儀社を紹介してもらうことも可能です。

費用や対応内容などふまえ比較しながら葬儀社を選べれば理想ですが、当然ながら親が亡くなる日を特定することはできませんし、いざ亡くなればその後の準備は一気に慌ただしくなるものです。葬儀社の選定とはいえ、心理的にも物理的にも、遺族に迷っている時間は基本ほとんどないものです。

葬儀内容に希望があるなら事前の葬儀社探しを

故人本人および遺族に、費用面や葬儀内容で明確な希望があるならば、あらかじめ希望条件にかなう葬儀社を探しておく方が、いざというタイミングで動きやすいでしょう。

葬儀社には

  • 死亡届・火葬許可証の提出
  • 遺体の搬送・安置・納棺
  • 枕飾りの設置
  • 葬儀(通夜・告別式)の設営、準備、進行
  • 僧侶、棺、霊柩車の手配

など、葬儀(通夜・告別式)の当日に向けて、様々な手続き・準備を代行してもらえます。
早い段階で葬儀社選びを済ませることで、以後の準備もスムーズになるでしょう。

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遺体の搬送・安置所への移動

病院で亡くなった場合、病院内の一室または霊安室に遺体を安置しておける時間は限られます。
遺体をどこに置くか、安置する場所を決め、搬送する必要があります。

一軒家住まいの人も多かった以前は本人が住んでいた自宅の仏間や畳部屋に遺体を安置する自宅安置がごく普通のことでした。
マンション・アパート住まいが多い現在は、仏間や畳部屋がない居宅の増加、近隣住民への配慮などから、遺体の安置は葬儀社や葬儀場・火葬場などの安置所で預かり安置するのが一般的です。

遺体の搬送は葬儀社に依頼するのが通常

自宅安置・預かり安置どちらの場合でも、遺体の搬送は葬儀社に相談・依頼するのが通常です。

遺体の搬送が認められるのは

  • 自家用車
  • 8ナンバー車輌

のいずれかです。

8ナンバー車両は「特殊用途自動車」と分類され、キャンピングカーや霊柩車、寝台車、放送者など通常の自動車と異なる目的を持つ車輌が該当するカテゴリで、ナンバープレートは緑色のものを使用します。

なお、遺体を搬送できるのは、貨物自動車運送事業法の定めにより国土交通大臣から一般貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者のみと限定されています。
一般のタクシー等を利用しての遺体の搬送は認められていません。

遺体の搬送だけを依頼することも可能

遺族や本人所有の自家用車を使うことは可能ですが、遺体の保護・安全性の観点からも、葬儀社に依頼し、寝台車を手配しての搬送をおすすめします。
寝台車とは、主に病院から安置所への遺体搬送で利用される車で、遺体を固定するストレッチャーが備え付けられており、遺体を安全な状態で搬送できます。

葬儀の内容・方針がまだ定まらない場合は、ひとまず遺体の搬送だけを葬儀社に相談する、あるいは遺体の搬送だけを行っている業者もあるので、相談してみると良いでしょう。

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親の葬儀までにするべきこと(2日目~7日目)

親が亡くなり、葬儀の方針が定まれば、以後は葬儀社が中心となって葬儀の準備を進めてくれます。
遺族は、公的な手続きの準備を進めながら、葬儀社からの指示に基づき必要な写真や遺品等を準備、故人と過ごせる最期の時間を感じながら、葬儀当日を迎えます。

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エンディングノートの確認

親がエンディングノートを残していた場合、早い段階で確認しましょう。

エンディングノートとは、亡くなる本人が生前に自分の意思や希望を残すために作成するノートです。
財産に関する引き継ぎ情報や相続に際した本人の想い、家族や友人に向けたメッセージなどを自由に記載できます。

以後の葬儀・相続準備を進めるヒントに

エンディングノートは、遺言書と異なり法的な拘束力こそないものの、遺言書よりもわかりやすくフランクな形式で本人の気持ちや希望を書き留めることができます。

エンディングノートには、葬儀についての希望や、相続財産のありか、遺産分割に関する本人の想いなど、故人がどのように考えて、どういう最期を望むか、実用的な情報が得られます。
なるべく早いタイミングで確認することで、以後の葬儀準備や相続の進め方などの方針が定まり、準備をスムーズに進められます。

デジタルで使えるエンディングノートも

故人の生前にエンディングノートを渡された方は問題ありませんが、エンディングノートの保管場所が分からない場合、故人の身近な場所(机の引き出しや書類棚など)を探してみると良いでしょう。
また、近年ではデジタルで使えるエンディングノートもあります。紙のエンディングノートが見つからない場合、故人のパソコンやスマートフォンに伝言がないかを確認してみるのも良いでしょう。

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死亡届の提出

親が亡くなったら、市役所・区役所あるいは町村役場に死亡届を提出します。
先述の通り、死亡届は死亡診断書(死体検案書)と一体となったものを病院等医療機関から受け取ります。
死亡診断書(死体検案書)の範囲は病院が記入してくれているので、左半分の死亡届に必要事項を記入して提出します。

死亡届は、次のいずれかの役所で提出が可能です。

  • 故人の死亡地:亡くなった場所の役所
  • 故人の本籍地:故人が戸籍を置いていた場所の役所
  • 届出人の住所地:死亡届を提出する人の住所がある役所

通常は故人が住民票を持つ自治体の役所で手続きを行うことが多いですが、上記いずれの場所でも届出できます。

死亡届の提出期限:死亡を知ってから7日以内

死亡届は、故人が亡くなったことを知った日から7日以内に提出します。
なお、親が国外で亡くなった場合は3ヶ月以内の提出が必要です。

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火葬許可証の取得

死亡届を提出すると、役所からは火葬許可証が交付されます。
その名の通り、故人の火葬・埋葬に必要な書類となり、火葬許可証がなければ、火葬場で遺体の火葬が行えません。
葬儀のスケジュールにも影響が及ぶことになるため、なるべく速やかに死亡届を提出し、火葬許可証を受け取る必要があります。

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葬儀(通夜・告別式・火葬)

火葬許可証が手に入ると、実際の葬儀の準備が進みます。

葬儀の一般的な流れ

故人が亡くなった後、葬儀までの流れはおおまかに以下の通りです。

  1. 逝去
  2. 安置
  3. 納棺
  4. 通夜
  5. 葬儀(告別式)
  6. 火葬
  7. 初七日法要
  8. 精進落とし
  9. 四十九日法要
  10. 納骨

これらのうち、(8)精進落としまでの手続きについて、おおよそ親が亡くなった後、2日目から7日目位の間に行うことが一般的です。

具体的な葬儀の日時は、葬儀社が手動で、火葬場や葬儀場の予定や参列者の都合もふまえ、喪主と相談の上で決定します。
通夜は故人が亡くなった翌日、葬儀告別式は翌々日に行うものとされるのが通例です。

初七日法要は葬儀当日に行われるのが一般的

初七日法要は本来、故人が亡くなった日を含めて7日目に行う法要ですが、現在では葬儀(告別式)の当日、火葬前または火葬後に行うケースが一般的です。
初七日法要を火葬前に行う形は繰り込み初七日、火葬後に行う形は繰り上げ初七日と呼ばれています。

両者は遺族の意向や葬儀形式、地域の習慣もふまえ葬儀社と相談で決めるものですが、火葬をしている最中~火葬後の時間で精進落とし・四十九日法要のスケジュール調整を合わせて行える利便性から、火葬前に繰り込み初七日が選ばれるケースが多いと言われています。

火葬場や葬儀場の空き待ちで、葬儀日程が先になるケースも

近年の東京近郊の場合、火葬場や葬儀場のスケジュールが混んでいるケースが多く、火葬場や葬儀場の空いたタイミングで3日先・4日先に設定されることも少なくありません。

葬儀日程が先になると、その分、遺体を安置する期間も延びます。安置所の利用料やドライアイス代など費用面も変更となるため、スケジュールと合わせて葬儀社に確認しておくと良いでしょう

火葬許可証は火葬・納骨で必要に

なお、火葬許可証は火葬の際に火葬場の管理事務所に提出、火葬後に火葬執行済の押印を受け、故人の遺骨と併せて返却されます。
その後、四十九日法要の後に納骨する際に、墓地・霊園管理者に提出することになります。

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葬儀代の精算

葬儀にかかった費用の支払いは、おおよそ葬儀の終了後1週間から10日程度までに支払います。
葬儀費用は参列者の数や葬儀のプラン、形式などにより異なりますが、おおよそ100~200万円程度が一般的と言われています。

大手の会社や支店や斎場を多く持つような葬儀社であればクレジットカードに対応しているのが大半ですが、古くから営業している会社の場合、支払い方法が現金のみというケースも少なからずあります。
支払いの段階で困ってしまうおそれもあるので、実際の葬儀の準備に差し掛かる前の段階で、見積もりと併せて支払い方法についても確認しておきましょう。

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親の葬儀後にするべき手続き(~14日目)

親が亡くなって2週間程度、親の葬儀後にするべき手続きを確認していきます。

必要な手続きは多岐にわたりますが、実際に役所等で相談すれば、どの手続が必要で、どこの窓口に行けばいいかは教えてもらえます。
中には放置することで罰則を受ける可能性のあるものもあるため、どんな手続があるか全体を把握して、漏れがないように対応を進めていきましょう。

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世帯主の変更手続き

亡くなった親が世帯主であった場合、世帯主の変更手続きが必要です。世帯が住む家にある市区町村の役所・役場に世帯変更届を提出します。
窓口の名称は自治体により異なりますが、市民課・区民課、戸籍課などの住民戸籍を扱う窓口に、死亡届とあわせて提出するのが通常です。

世帯主の変更手続きの期限:親の死後 14日以内

期限は世帯主である親が亡くなった日(=世帯を変更した日)から14日以内です。

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年金受給停止手続き

故人が年金を受給していた場合、本人死亡によって年金の受給権は消滅します。受給停止手続きを行わずに死亡後も年金の振り込みを受け続けると、不正受給とみなされるおそれがあります。

年金の不正受給は法律に罰則の定められた犯罪行為です。年金の不正受給が発覚した場合、5年以内に受け取った分の一括返済(利息を含む)を求められる他、国民年金法に基づき3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、あるいは、同法に付帯する刑法を優先する条文に基づき、詐欺罪として10年以下の拘禁刑を受けるおそれがあります。そのため、親が亡くなった際は速やかに年金の受給停止手続きを行うことが重要です。

手続きは、故人の住所地を管轄する年金事務所または年金相談センターに受給権者死亡届(報告書)を提出します。

年金受給停止手続きの期限:厚生年金の場合10日以内・国民年季の場合14日以内

年金受給停止手続きの期限は厚生年金の場合は死亡後10日以内、国民年金の場合は14日以内が提出期限とされています。
ただし、日本年金機構にマイナンバーが登録されている方の場合は、受給権者死亡届(報告書)の提出は省略が認められます。

未支給年金の請求手続き

また、故人の死亡時点で支給されるはずだった年金(未支給年金)がある場合、その分は遺族が請求できます。未支給年金とは、故人の亡くなったタイミングの都合、まだ振り込まれていなかった分の年金を指します。
未支給年金を請求できるのは、故人の死亡当時に同居していた配偶者や子、父母、孫などの遺族で、支給を受けるには年金証書・未支給年金、未支払給付金請求書、住民票除票または世帯の住民票など必要書類の提出が必要です。

さらに、故人に一定の条件に該当する遺族がいる場合には、遺族年金や死亡一時金などを受け取れます。該当する方は、年金受給停止の手続きとあわせて受給手続きを行うと良いでしょう。
どの手続きが必要かは年金の種類や加入状況によって異なります。詳細は日本年金機構や年金事務所で直接ご確認ください。

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介護保険資格喪失届の提出

故人が介護保険の被保険者であった場合、死亡に伴いその資格が喪失します。

介護保険制度は、

  • 要介護認定で介護が必要と認定された65歳以上の方
  • 特定疾病により要介護認定を受けた40歳~64歳までの方

に、介護サービスを提供する制度です。

介護保険資格喪失届の提出の期限:親の死後14日以内

亡くなった親が65際以上あるいは要介護・要支援認定を受けている40歳~64歳の方だった場合、介護保険資格喪失届を死亡日から14日以内に、亡くなった方の住民票のある市区町村窓口に提出し、あわせて介護保険被保険者証を返却します。

市区町村によっては、死亡届の提出と同時に介護保険の喪失手続きが完了する場合もあり、別途届出が不要、介護保険証の返却のみ または 介護保険証の返却も不要というケースもあります。
自治体によって対応が異なるため、担当窓口で確認してください。

介護保険料の精算

介護保険の資格を喪失すると、その年度の介護保険料は月割で再計算されます。未納分があれば、相続人が納付義務を負うことになりますが、逆に納め過ぎていた場合には、相続人に対して超過分が還付されます。保険料の精算は、市区町村から通知書類(還付通知書あるいは納付書)が送付されてくるので、その書類をもとに確認・対応します。

相続人は、故人の死亡後に介護保険料に関する通知や請求書が届いた際に内容をよく確認し、納付または還付の手続きを適切に行うことが求められます。手続きに不明な点がある場合は、速やかに市区町村の介護保険担当窓口へ問い合わせるとよいでしょう。

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国民健康保険・後期高齢者医療制度の資格喪失届

亡くなった親が国民健康保険あるいは後期高齢者保険に加入していた場合は、届け出が必要です。

国民健康保険・後期高齢者医療制度の資格喪失届の提出期限:国民健康保険は14日以内、厚生年金は5日以内に会社が手続きを実施

国民健康保険の場合は国民健康保険資格喪失届(国民健康保険異動届出書)、後期高齢者医療保険の場合は後期高齢者医療障害認定申請書及資格取得(変更・喪失)届書を、亡くなった親の住んでいた市区町村役場へ、死亡日から14日以内に提出します。
なお、亡くなった親が世帯主である場合、国民健康保険の世帯主も変更する必要が出るため、従来の世帯全員分の保険証は返納します。返納後、世帯主の変更手続きを行った上で、家族分の保険証も再発行してもらいます。

一方、亡くなった親が会社の社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入していた場合は、死亡日の翌日から5日以内に、会社が手続きを行います。故人が在籍していた会社に連絡すれば、必要な対応を指示してもらえるでしょう。

葬祭費(埋葬費)の手続きを忘れずに

また、これら保険関係の手続きを行う際は、あわせて葬祭費(埋葬費)の手続きを進めるのがおすすめです。葬儀費用の補助として、国保の場合で3~7万円の葬祭費、社会保険の場合は埋葬費(一律5万円)の給付を受けられます。自治体や加入組合により金額の大小、付加給付の有無があるため、詳しくは国民健康保険あるいは故人が加入していた社会保険の窓口までお問い合わせください。

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親が契約していた各種サービスの確認・解約(公共料金・通信費・サブスクリプション等)

市区町村役場などでの公的な手続きが一段落した後は、親が契約していた各種サービスの整理・見直しを進めます。

家賃・電気・ガス・水道などの光熱費は、亡くなった親の住居が空き家となる場合でも、遺品整理や清掃などに一定の期間がかかる場合は、すぐに解約するのではなく、まずは相続人の名義に変更し、一時的に契約を継続する方法も検討しましょう。

家賃・光熱費以外の、親が日常的に利用していた契約サービスについても順次整理していきます。

  • NHK受信契約
  • インターネット回線
  • 自宅の固定電話・携帯電話
  • 各種サブスクリプション(音楽・動画配信サービス等)
  • クレジットカード
  • 新聞・雑誌の定期購読

上記のような個人契約のサービスで、本人死亡により自動的に解約されるものはほとんどなく、個別で利用停止の連絡や解約申請を行わなければ、費用の請求は続いてしまいます。

毎月の支払い内容はできれば生前に一覧の作成を

こうした各種サービスの解約手続きには、特に期限が定められているわけではないものの、放置すれば請求額ばかり増えていくだけです。翌月の請求が発生する前として、親が亡くなってから2週間~4週間程度をメドに整理を進めるなど、できる限り早期に対応するのが良いでしょう。

また、故人が契約していたサービスを遺族が完全に把握するのは現実的に難しいため、できれば生前中に自身が契約しているサービス・毎月の支払い内容を整理した一覧を作成してもらい、共有してもらっておくのがベターです。もちろんエンディングノート等にまとめてもらう形でもOKです。

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保険会社への連絡(生命保険(死亡保険金)の請求)

亡くなった親が生命保険に加入している場合は、親の加入していた生命保険会社に対して電話や書面にて「死亡保険金受け取り事由の発生」に関して連絡を行います。

この連絡に対して、保険会社からは、死亡保険金を請求するための請求書が到着します。請求書に署名捺印の上、亡くなった親の住民票や死亡診断書、受取人の戸籍抄本などの必要書類と併せて返送してください。(必要書類について詳細は請求書と合わせて保険会社から届く案内に記載されています。)
必要書類を提出すると、保険会社の審査が行われ、支払いが認められると、死亡保険金が支払われます。必要書類の提出から支払いまでの期間はおおよそ5~7営業日程度と言われており、生命保険の契約時の約款に支払期限が定められているため、適正な内容の請求であれば、大幅に支払いが遅延することはありません。

親が生命保険に加入しているかわからない場合

亡くなった親の遺品に保険証券や生命保険関係の書類、保険料支払いの形跡などが見当たらず、親が生命保険に加入しているかどうか、あるいは、どこの生命保険に加入しているかハッキリわからない場合、生命保険協会に対して、生命保険会社全社に関して親(照会対象者)の契約状況を照会できる「生命保険契約紹介制度」があります。

生命保険契約紹介制度を利用できるのは、亡くなった方(照会対象者)の法定相続人・法定代理人に限られ、1回3,000円でインターネットまたは郵送で申し込みが可能です。詳細は生命保険協会のホームページをご確認ください。

https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/

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親の財産の相続にまつわる手続き

亡くなった親の葬儀、生前の契約関係の整理を進めつつ、遺産相続に関する準備も着実に進めていきます。
相続人の調査や遺産全体の把握には、想定より時間を要するケースが多々あります。また、相続の手続きには期限があるものも多く、相続の準備着手が遅れると相続税の納付遅延や延滞金の発生、さらには故人の借金・債務を相続してしまうケースなど、想定外の問題につながる恐れがあります。

期限が近づいてから取り掛かるのでは間に合わなくなる可能性もあるため、親が亡くなった後、なるべく早い段階から、ひとつずつ準備を進めることをおすすめします。

相続内容の確認

相続手続きで最初に行うのは、相続の内容全体の確認です。具体的には、以下の内容を調査の上、確定させていきます。

相続人の確定

まず、誰が相続するのか、相続する人を確定する必要があります。
相続財産を受け取る相続人は、法律で優先順位が定められており、基本的には以下の親族が法定相続人とみなされます。

  • 必ず相続人になる:亡くなった方の配偶者
  • 第1順位:子ども
  • 第2順位:父母
  • 第3順位:兄弟姉妹

たとえば自分の父親が亡くなった場合、母親が存命なら母親とその子ども、母親も亡くなっている場合は子どもだけが法定相続人にあたります。

父親が亡くなった場合の法定相続分
相続人が母親と長男・次男 母親が2分の1 長男が4分の1 次男も4分の1
相続人が長男・長女 長男が2分の1 長女も2分の1

亡くなった方の遺族に誰がいるか、家族構成・人数によって、法定相続分(民法に定められた相続割合)も決まります。
子どもが受け取る財産は兄弟間で公平に分割します。

ただし、亡くなった親の遺言書がある場合、遺言書の指示に従って分配されます。

法定相続分は、法定相続人が最低限受け取れる相続割合として定められているもので、法定相続分と異なる割合での遺産分割も当事者全員の合意が取れれば設定可能です。

故人が遺言書で、法定相続分をふまえずに割合を指定することも可能です。
その場合、本来の法定取り分より少ない遺産を割り当てられた相続人には、不足する分を他の相続人に対して請求する権利があります。
この権利のことを遺留分侵害額請求権と呼びます。

遺言書の有無の確認~検認

亡くなった親が遺言書を残していた場合、相続手続きは基本的に遺言書の内容に基づいて行われます。
遺言書の有無は被相続人の財産の分け方や遺産分割の方法に直接影響を及ぼし、相続人間での遺産分割協議の必要有無など以後の手続きが大きく変わります。

よくある遺言書の保管場所

よくある遺言書の収納場所・方法としては以下が挙げられます。

  • 被相続人の自宅(机の引き出し、金庫など)
  • 銀行の貸金庫
  • 弁護士や司法書士、行政書士事務所での保管
  • 公証役場(公正証書遺言の場合)
  • 法務局(自筆証書遺言保管制度を利用している場合)
自筆証書遺言は法務局で保管されているケースも

近年は自筆証書遺言保管制度が2020年(令和2年)7月からじまり、作成した自筆証書遺言は法務局に預ける形がポピュラーとなりました。
公証役場に保管してもらう公正証書遺言、法務局に預けた自筆証書遺言については、家庭裁判所での検認が不要となる点も便利なポイントです。

見つけた遺言書は家庭裁判所で検認を行う

言書が見つかった場合、勝手に開封してはいけません。
遺言書を自宅等で保管する自筆証書遺言や秘密証書遺言は、民法に基づき家庭裁判所で検認を行うことになっています。検認前に開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があります(民法1005条)。

相続財産の確定

亡くなった親が遺した相続財産として、どんな財産がどれくらいあるか、財産全体を正確に把握することは、相続の大前提として必要です。

親が残した財産の確認は、遺言書がある場合は、あわせて準備される財産目録を確認するのが一番確実です。
遺言書がない場合、あるいは遺言書のみで財産目録がない場合は、相続人が亡くなった親の財産調査を行うことになります。

財産調査の方法は決して難しいものではなく

  • 亡くなった親の自宅を調べる
  • 届いていた郵便物をチェックする
  • パソコンやスマートフォンの確認(ネット取引の調査)

といった地道なやり方で故人の財産をあたっていくのが基本です。

また、不動産の確認方法としては、市町村役場が作成している固定資産課税台帳(名寄せ帳)を確認することで、亡くなった親の所有していた不動産をまとめて把握できます。
固定資産課税台帳の閲覧は、法定相続人であれば閲覧を認められますが、死亡届・戸籍謄本等を提示し相続人であることを証明する必要があります。

相続内容の確認は並行して速やかに

これら相続内容の確認までが行えるまで、遺産分割協議を進めることはできません。

(親が亡くなり)相続が発生してから3ヶ月で、次に解説する相続方法の選択・届け出を行わなければならないため、相続人・相続財産・遺言書の確認については並行して、なるべく速やかに準備を進めていきましょう。

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単純承認、相続放棄、限定承認の検討と届け出

相続が発生すると、相続人は単純承認・相続放棄・限定承認 3つの相続方法の中からいずれかを選択する必要があります。

  • 単純承認:財産も負債もすべて無条件で相続する方法
  • 相続放棄:財産も負債も一切相続しない方法
  • 限定承認:相続財産の範囲内で負債を弁済する方法

相続方法選択の判断に最も影響するのが、相続財産に債務・借金が含まれるケースです。
たとえば、亡くなった親に住宅ローンの借り入れがあり、親が亡くなってもその家に住み続けたい場合や、事業用ローンを借り入れて親が経営していた会社・個人事業を相続人が承継する場合などが該当します。
マイナス財産を受け入れるか、拒否するかは相続人間で考え方の違いも起きやすく、相続放棄や限定承認の判断は他の相続人の相続分や負担に直結します。

相続方法の選択の期限(熟慮期間):3か月以内

事前の財産調査で遺産相続による相続財産のプラス・マイナスを正確に把握した上で、こうした相続方法の選択を、相続の開始を知った日から3か月以内(熟慮期間)に行わなければなりません。(民法915条)
なお、この期限を過ぎると、原則として「単純承認」したものとみなされるため、3か月以内、なるべく早い段階で、相続人間での協議まで済ませ、方針をひとつにまとめる必要があります。

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遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、最終的な分割方法を決める手続きです。

遺言書がない場合は、相続財産を誰が、どの財産を、どれだけ相続するか、遺産分割協議を通じて話し合いの上、決定します。遺産分割協議は、法定相続人全員が対面で行うことはもちろん、メールや手紙などのやり取り通じて協議を進めることも可能です。

遺言書がある場合は、基本的には遺言書の内容に従って分割するため、遺産分割協議は必須ではありません。ただし、全相続人が合意すれば遺言と異なる分割も可能です。その場合は、遺留分侵害や税務面の影響にも留意しながら遺産分割協議で合意を目指します。

遺産分割協議を通じて、相続人全員の同意の下、相続財産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成し相続内容を書類にまとめます。
遺産分割協議書は、後になってからの相続トラブルの防止、対外的に遺産分割を行った事実の証明書として使われ、銀行や不動産の相続手続きを行う際に提出を求められます。

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遺産分割調停・審判

遺産分割についての合意が得られない場合は、家庭裁判所を通じて遺産分割調停を申し立てます。

遺産分割調停では、裁判所の調停委員が申立人・相手方の意見を聞き取る形で話し合いを継続します。
調停委員は、法的な観点および両者の希望等をふまえ妥協点や解決案を提示し、合意形成を図ります。

調停で合意できず、不成立となった場合は、遺産分割審判へと移行し、裁判所が遺産分割の方法を決定します。
最終的に審判となった際、裁判所は基本的に法定相続分に従った遺産分割を指示します。


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不動産の相続登記・遺産の名義変更

親が所有していた不動産を相続する場合、不動産の所有者を変更する不動産登記の手続きが必要です。また、銀行口座や株式なども、相続に伴う解約・名義変更のための手続きが必要になります。

不動産の相続登記

不動産の相続登記とは、親が所有していた土地や建物などの不動産を、相続人の名義に変更する手続きです。

相続した土地や家を売却する、あるいは改築やリフォームをするにしても、基本的に権利者以外がその不動産を取り扱うことはできません。
不動産登記の手続きは、法務局で行います。不動産登記することで、親の不動産は正式に相続人のものとなります。

相続登記の必要書類

相続登記には、主に以下の書類が必要です。

  • 亡くなった親(被相続人)の戸籍(亡くなった親の出生から死亡まですべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
  • 亡くなった親の住民票の除票または戸籍の附票(登記簿上の住所および本籍地の記載のあるもの)
  • 法定相続人全員の戸籍
  • 不動産を相続する相続人の住民票または戸籍の附票
  • 相続する不動産の固定資産課税明細書または固定資産評価証明書(相続発生した年の4月頃に市区町村から送付されているもの)
  • 登記申請書
  • 遺言書(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言に基づく相続の場合)
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議による相続の場合)
  • 法定相続人全員分の印鑑証明書(遺産分割協議による相続の場合)
  • 相続関係説明図

※法定相続人が相続する場合の代表的な必要書類です。上記以外の書類が必要になる場合があります。

2024年4月より相続登記は相続人の義務に

令和6年(2024年)4月の法改正により、相続登記は相続開始を知った日から3年以内に申請することが義務化されました。
正当な理由なく申請を怠ると、最大10万円過料が科される可能性があります。

預貯金の相続手続き

親名義の銀行口座は、死亡の届け出をすると凍結され、引き出しや振込はできなくなります。凍結解除のためには、各金融機関で相続手続きが必要です。

銀行への連絡

亡くなった親の利用していた金融機関に、名義人が亡くなり相続手続きを希望する旨、連絡を入れます。
連絡先は、亡くなった親の口座があった支店が窓口になる他、あるいは銀行が設置している相続事務窓口に連絡するケースもあります。

郵送でのやりとりとなるか、窓口へ出向いての手続きになるかは銀行ごと、および個別の事情により異なります。連絡時に、以後の手続きの進め方や必要書類等の案内を受け、対応を進めてください。

必要書類の提出

金融機関に必要書類を提出します。提出する書類は、

  • 遺言書がある場合
  • 遺産分割協議による場合
  • 遺言書も遺産分割協議書もない場合
  • 家庭裁判所での調停・審判に基づく場合

と相続の内容によって異なります。

遺言書がある場合
相続届 様式は金融機関ごとに異なる
遺言書
検認調書または検認済証明書 検認が必要な遺言書の場合
亡くなった親の死亡の記載がある戸籍謄本 親(口座の名義人)の死亡の確認が取れるもの
預金を相続する相続人の戸籍謄本
預金を相続する相続人の印鑑証明書
遺言執行者の選任審判書謄本 裁判所により遺言執行者が専任されている場合
遺産分割協議による相続の場合
相続届
亡くなった親の出生から死亡までの戸籍謄本 出生から死亡まで連続するものすべて
法定相続人全員の戸籍謄本
法定相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書 法定相続人全員の署名・捺印が必要
遺言書も遺産分割協議書もない場合
相続届
遺産分割協議書
亡くなった親の出生から死亡までの戸籍謄本 出生から死亡まで連続するものすべて
法定相続人全員の戸籍謄本
法定相続人全員の印鑑証明書
家庭裁判所での調停・審判に基づく場合
相続届
家庭裁判所の調停調書・審判書の謄本 審判書上に確定表示がない場合、さらに審判確定証明書も必要
預金を相続する相続人の印鑑証明書

相続の内容・状況により、上記以外の書類が必要となる場合もあります。詳しくは金融機関への問い合わせ時にご確認ください。

相続した口座は名義変更または解約払戻し

親の銀行口座を相続する場合、

  • 親名義の口座を相続人名義に名義変更する
  • 親名義の口座を解約し、相続人は預金の払戻しを受ける

どちらかの方法で相続財産を受け取ります。

必要書類の提出から2週間~1か月程度で、名義変更なら相続人名義に変更された通帳が送付されます。
解約払戻しの場合は、指定口座への払戻金の振込みが行われ、解約済みとなった親名義の通帳が送付されます。

株式・投資信託など有価証券の相続手続き

親が所有していた上場株式・投資信託・社債などの有価証券は、金融資産の一種であり、相続財産に含まれます。
これら有価証券を相続人が相続した場合も、名義変更や解約換金手続きをしない限り、売却や分配はできません。

上場会社か非上場会社で手続きが変わる

相続する株式が上場会社の株式か、非常所会社の株式かによって、手続きの進め方が大きく変わってきます。

特に非上場株式の相続には譲渡制限があり、評価・譲渡の手続きも複雑です。
事業承継等の目的がない限り相続するメリットはあまりなく、他の相続財産もふまえ、相続放棄した方が良いケースも考えられます。

上場株式・非上場株式の相続について詳しくは、以下の記事をご参照ください。


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相続した自動車の名義変更

亡くなった親が自動車に乗っていた場合も名義変更が必要です。

自動車を引き継ぎ乗り続ける場合はもちろん、不要なので売却あるいは廃車するにしても、自動車の名義が親のままでは、手続きを進めることはできません。

遺言書や遺産分割協議で自動車を相続する人が決まったら、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 警察署に車庫証明を申請し、交付を受ける
  2. 運輸支局(陸運局)で名義変更(移転登録)の手続きをする
自動車の名義変更(移転登録)の必要書類

自動車の名義変更を行う際は、主に以下のような書類が必要となります。

  • 亡くなった親の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑証明書
  • 相続人の実印
  • 車検証
  • 車庫証明書
  • 遺産分割協議書(相続人が複数人いる場合 / 自動車の評価額100万円以下の場合、遺産分割協議成立申込書でも可)
  • 相続人の印鑑証明書(共同相続する場合、相続人全員の分が必要)

自動車の評価額が100万円以下の場合、遺産分割協議成立申込書による簡易的な手続きも可能です。
遺産分割協議書には相続人全員の捺印が必要ですが、遺産分割協議成立申込書は自動車を相続する相続人の実印のみで有効となります。
ただし、自動車が100万円以下であることの証明として、査定証の提出が求められます。

また、親が乗っていた自動車が軽自動車だった場合、遺産分割協議書・戸籍謄本は不要です。
これは中古の軽自動車が一般的に安価であり、相続争いの対象にはならないと考えられるためで、自動車を売買した場合と同じ手続きで名義変更が行えます。

自動車の名義変更の期限:15日以内

自動車の所有者である親が亡くなった場合の名義変更の期限は、道路運送車両法により15日以内と定められています。

15日を越えてしまった場合、法律上は50万円以下の罰金に処されるおそれがあります。
現実的には、期限を過ぎたことを理由に罰金を課されるケースは稀と考えられますが、名義変更が終わらなければ、自動車の売却も自動車保険の契約更新もできません。
名義変更を行わないことで実用面での不都合は様々起こり得ます。親の相続財産に自動車がある場合は、法律に則り15日以内で行っておくのが穏便でしょう。

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相続税の申告・納税

相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります(相続税法27条)。
同時に、その申告に基づく納税も同じ期限(10か月以内)に行わなければなりません。

相続税の申告・納税期限:10か月

10か月の期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課されます。
対応を先延ばしにしていると、思いがけないところで手続きに時間がかかり、相続税の申告・納税期限に間に合わなくなるおそれがあるため、親が亡くなったら早い段階からひとつずつ相続手続きを進め、期限内に必ず手続きを終えるようにしましょう。

相続税申告が必要なケース

なお、相続税の申告はすべての相続で必要なわけではありません。
相続財産が基礎控除額を超える場合に、相続税申告の義務が発生します。

基礎控除額の計算式:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、相続人が子ども2人の場合 → 3,000万円+600万円×2=4,200万円が基礎控除、相続財産の総額が4,200万円を超える場合に申告が必要となります。

相続税の計算方法などより詳しくは、以下のページをご参照ください。

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遺留分侵害額請求

亡くなった親の遺言や生前贈与により、自分以外の相続人に多くの財産が渡り、遺留分が侵害されている場合は、遺留分侵害額請求を行うことが可能です。

遺留分とは、一定の相続人に保障される最低限の相続分のことです。
たとえば亡くなった親の法定相続人が3人の子(長男・次男・長女)のみの場合、亡くなった親が遺言や生前贈与でその長男に相続財産を集中させたとしても、次男と長女は、法律で定められた割合の遺産を遺留分として長男に対して請求することが認められます。

亡くなった親の財産を子のみが相続する場合、相対的遺留分は2分の1となります。個別的遺留分としては、この相対的遺留分(亡くなった親の財産全体の1/2)を、長男・次男・長女の3人で公平に分配するので、

  • 長男:6/1
  • 次男:6/1
  • 長女:6/1

の相続が、それぞれへの遺留分として認められます。
このケースの場合、次男・長女が受け取った相続財産が全体の 1/6 以下だった場合、不足分の金額を遺留分侵害額として長男に対して請求する権利があります。

遺留分侵害額請求の請求時効

遺留分侵害額請求には時効があり、

  • 相続開始および侵害を知った日から1年以内
  • 相続開始から10年を経過したとき

いずれか早い方の時点で権利が消滅します。

遺留分侵害額請求について、詳しくは以下の記事もご参照ください。

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親の死後2週間後以降に行う手続き(期限のあるもの)

親が亡くなった後2週間後以降、相続関係の手続きと並行して進めるべき手続きを解説していきます。
確定申告や納税など、本来であれば亡くなった親本人が行うはずだった手続きも、親が亡くなった場合はその相続人が代わりに行うことになります。

雇用保険受給資格者証の返還

雇用保険受給資格者証とは、雇用保険を受け取る資格があることを示す証明証です。
雇用保険受給資格者証は、勤務していた会社で雇用保険に加入していた方を対象として、失業保険(失業給付)を受ける際に、ハローワークから交付されます。
失業保険(失業給付)の他、再就職手当や傷病手当など、離職中の給付金を受給するのに必要な書類です。

雇用保険受給資格証の返還の期限:1ヶ月

亡くなった親が、雇用保険受給資格者証を受け取っている失業給付の受給者だった場合、死亡から1か月以内に雇用保険受給資格者証を返還する必要があります。
返還先は、受給資格者証を交付したハローワークの窓口に直接持参するのが一般的です。

親が亡くなる前日までの失業給付は受け取れる(未支給失業等給付)

また、その親と同居し、生計を同じくしていた法定相続人は、親が亡くなる前日までの失業給付(基本手当)を受け取れます。

この未支給失業等給付の請求期限は、死亡した日の翌日から6か月以内と定められています。

離職時にハローワークから交付される書類であり、意外と忘れやすい手続きでもあります。
忘れ去る前に、なるべく早めの手続きをおすすめします。

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所得税の準確定申告・納税

準確定申告とは亡くなった方(被相続人)が生前に得た所得に対して行う、最期の所得税の確定申告です。
通常の確定申告は翌年の2月16日~3月15日までに行いますが、死亡した場合はそれを待たずに「準確定申告」を相続人が代わりに行います。

準確定申告が必要となるのは、被相続人が確定申告義務者であった場合です。具体的には以下のようなケースです。

  • 自営業者・個人事業主
  • 複数の会社からの給与所得があった場合
  • 給与所得・退職金以外の所得が計20万円以上あった場合
  • 公的年金による収入が400万円以上あった場合
  • 2,000万円以上の年間収入がある場合
  • 同族会社の役員やその親族などで、給与のほかに貸付金の利子や家賃などを受け取っていた場合
  • 生前に株式・不動産などを売却し譲渡所得を得ていた場合
  • 生命保険の満期金や一時金を受け取っていた場合

生前に確定申告を行っていた方は、準確定申告が必要となります。
また、以下のような条件にあてはまる方は、準確定申告は必須ではありませんが、還付金がもらえる場合は準確定申告をした方が良いケースです。

  • 医療費控除や配偶者控除、生命保険料控除などの所得控除により、還付金が発生する場合
  • 年金から源泉徴収税額が差し引かれている場合
  • 特定口座で株式や投資信託などを運用していたが、損失の繰越控除や配当控除が適用できる場合

一方、給与所得者で年末調整のみで完結している場合は、準確定申告の必要がないこともあります。

準確定申告の期限:4か月以内

準確定申告は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。

準確定申告の手続きについて、詳しくは以下の記事もご参照ください。

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固定資産税の納税

固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有している人に課される市町村税です。
毎年1月1日時点の所有者が、その年1年分の固定資産税を納める義務を負います。納税通知書は、4~6月頃に市町村から送付され、年4回の分納または一括納付が可能です。

不動産の固定資産税は相続人に引き継がれる

不動産を所有していた親が亡くなった場合、親が負っていた納税義務はその相続人へと引き継がれます。

亡くなった親の遺産分割協議が終わっておらず、誰が不動産を相続するか定まっていない場合でも、法律上は、相続人全員で連帯で納税義務を負います。所有者の死亡や相続を理由とした特別な猶予・免除はありません。
そのため、実際には、

  • 遺産分割協議を経て新たな不動産所有者となる相続人が支払う
  • 代表相続人ひとりが引き受けて納税し、後で他の相続人の支払い分を精算する

いずれかの形で納税に対応していくのが一般的です。
固定資産税の支払い期限は、納付書に記載の期日を確認の上、ご対応ください。

相続登記後は新しい相続人に課税される

親が亡くなった年は、親宛てに届く納税通知書に基づいて納税を行います。
遺産分割を経て、相続登記を行った翌年からは、新たに登記した相続人宛てに納税通知書が届きます。

親の所有していた不動産を相続して引き継いだ子にとって、固定資産税は毎年発生する維持コストとなります。
遺産分割を進める際は、先々の固定資産税の負担が継続的に発生することもふまえ、不動産の取り扱いを検討することが重要です。

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親の死後に請求できるお金

ここまでに説明したもの以外で、親が亡くなった後に請求できるお金について解説していきます。
他の手続きに比べれば期限の余裕はありますが、親が亡くなった後の慌ただしい中で放置しておくと忘れてしまいやすい手続きでもあります。これらの手続きも、親の没後の整理を進める流れで、あわせて対処しておく方が結果的にスムーズでしょう。

高額医療費の還付申請(高額療養費制度)

親(被相続人)が亡くなる前に病院で多額の医療費を支払っていた場合、高額療養費制度による還付金が発生する可能性があります。
本来は本人が申請して受け取るものですが、亡くなった後は相続人が代わって請求することで、親の治療や入院でかかったお金のうち自己負担限度額を超えた支払い分を還付金として受け取ることができます。

高額医療費の申請は、親が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合、亡くなった方の住んでいた市区町村役場、健康保険に加入していた場合は、加入していた健康保険組合に申請します。

還ってきた還付金は相続財産として相続税の課税対象に

なお、高額療養費精度で戻ってきた還付金は、亡くなった親が遺した相続財産として扱われます。そのため、他の相続財産と合算し、基礎控除額を上回る場合は、相続税がかかります。

期限は2年間も間を空けすぎると不都合も

高額療養費の還付請求には、最後に診療を受けた月の翌月1日から2年間の期限があります。
他の相続手続きと比べるとやや時間の余裕はあるものの、あまり間を空けてしまうと

  • 医療費・治療費の領収書など資料の紛失
  • 治療や費目内容を忘れてしまうおそれ
  • 還付金は相続財産であるため、相続税の申告対象になる

など、別の問題につながるおそれがあります。
手続きそのものを忘れてしまう前に、健康保険関係の手続きなどとあわせて、早めに対応するのが良いでしょう。

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遺族年金

残された遺族が、亡くなった親の収入に頼って生計を営んでいた場合、条件を満たすと遺族年金を受け取れる場合があります。

遺族年金とは、年金を受給していた人、あるいは年金に加入していた人が亡くなったときに、その家族が生活保障を受けられる制度で、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 遺族基礎年金(国民年金から支給)
  • 遺族厚生年金(厚生年金から支給)

どちらが支給されるかは、亡くなった親の年金制度加入状況と遺族の条件によります。

遺族年金を受け取れる遺族

遺族年金を受け取れるのは、亡くなった親の収入で生計を営んでいた遺族のうち、以下の条件を満たす方です。

  • 子どものいる配偶者
  • 子ども
  • 年収850万円未満または年間所得655万5,000円未満の遺族

また、遺族年金を受け取れる遺族には以下のような条件・優先順位が決まっています。

  1. 配偶者(夫は55歳以上のみ対象)・子
  2. 父母(55歳以上のみ対象)
  3. 祖父母(55歳以上のみ対象)

遺族年金の請求は、お住まいの市区町村役場や年金事務所・年金相談センターに必要書類を提出して申し込みます。

なお、遺族年金の申し込みから実際の年金の支給までは約4ヶ月弱のタイムラグがあります。
年金が支給されるまでの間で生計に問題が生じる恐れがある場合、遺族年季の手続きは早めに行った上で、市区役所の福祉課の窓口、または自治体の福祉事務所等での相談をおすすめします。

遺族年金の受け取り期限:5年以内

遺族年金を請求できるのは、親が亡くなった日の翌日から5年以内です。5年の期限を越えると年金を受け取る権利が時効となり、基本的に年金を受け取ることはできなくなります。

遺族年金について詳しくは以下の記事をご参照ください。

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まとめ

親が亡くなると、残された遺族は一気に多忙を極めます。葬儀の準備にはじまり、役所でのさまざまな公的手続き、相続の調査に話し合い、家や遺品・契約など故人の身の回りの整理まで、対応は非常に多岐に渡り、まとめて一片に片付けられるものでもありません。手続きには必要な順序のあるものも多々あり、遺族は対応の抜け漏れがないよう確認しながら、ひとつずつタスクを消化していくことになります。

親を失い悲しみに包まれる時期ながら、慌ただしくも確実に手続きを進めていくことで、故人の意志を尊重し、適切な形で遺産を引き継ぐことができるでしょう。

今回の記事では、その手続きを時系列に沿ってまとめてありますので、親が亡くなった後の手続きをスムーズに進める一助となれば幸いです。ご冥福を心からお祈りいたします。

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