遺産分割とは?4種の分割方法と手続きの流れ、相続・財産分与との違いも解説
遺産分割は、家族や親族が亡くなると発生します。故人の遺産と意志を引き継ぐ大事な手続きであると同時に、時には相続人の間で大きな問題にもなり得る遺産分割とは、どんなものなのでしょうか?
本記事では、遺産分割の定義と相続・財産分与との違い、具体的な財産の分割方法・手続きの流れなどを詳しく解説します。
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遺産分割とは
遺産分割とは、相続人全員による話し合い(遺産分割協議)で遺産を分配する手続きを言います。遺言書がない場合、遺産分割の方法や内容は、相続人全員が合意すればどのようにしても問題ありません。
相続では、遺言書がない場合、遺産は一旦、相続人全員の共有財産となります。
それを各相続人で分けるにあたり、
- 誰が
- どの遺産を
- どれだけ取得するのか
協議した上で、具体的に遺産を分けていく遺産分割の手続きが必要です。
遺産分割と相続の違い
相続は遺産分割と似た言葉ですが、意味合いは異なります。
相続とは、亡くなった方の財産に関する一切の権利と義務を承継することを言います。一切の権利と義務を承継するとは、預貯金・不動産などのプラスの財産と借金などのマイナスの財産を引き継ぐことを指します。
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遺産分割とは、この相続する全ての財産を相続人で分けること、誰にどれだけ遺産を配分するのか話し合って決めることを指します。
そのため、法定相続人が1人のときには、遺産は全てその方が相続するため、遺産分割は発生しません。一方で相続人が複数いる場合、通常は相続人同士での遺産分割が発生します。
遺産分割は、相続手続きの中の1プロセスとして捉えることができます。
遺産分割と財産分与の違い
遺産分割と混同しやすい言葉として財産分与がありますが、これもやはり意味合いは異なります。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築き上げた共有財産を、離婚の際に公平に分配することを指す言葉です。相続ではなく、離婚に関する法律用語です。
実際は婚姻期間中に築き上げた共有財産も、夫婦どちらか片方の名義にしているケースが多いですが、離婚に際しては、それを公平に分ける手続きとして財産分与を行います。
遺産分割と財産分与は全く別の手続きですが、公平を期して財産を分ける部分では似たところもあり、言葉として混用されることがあります。
遺産分割協議に参加すべき人
次に、遺産分割に参加すべき人を確認しましょう。
法定相続人
基本的には「法定相続人」となる人です。民法は、各ケースにおける法定相続人を定めています。
まず、配偶者は常に法定相続人です。それ以外の相続人には順位があり、子どもが第1順位の相続人となっています。子どもがいない場合には、第2順位の親が相続人となり、子どもも親もいない場合には、第3順位の兄弟姉妹が法定相続人です。
そして、遺産分割には、これらの法定相続人が全員参加しなければなりません。1人でも欠けると、遺産分割全体が無効になってしまいます。
包括遺贈を受けた人
「包括遺贈」を受けた人も、遺産分割に参加しなければなりません。包括遺贈とは、遺言によって「遺産のうち〇分の〇を遺贈する」などと書かれている場合の遺贈です。
遺贈には2種類があります。1つは特定遺贈、1つは包括遺贈です。「〇〇の不動産を遺贈する」などのように対象を特定して遺贈する特定遺贈の場合には、受遺者は遺産分割協議に参加する必要がありませんが、「〇分の〇を遺贈する」などと書かれている包括遺贈では、受遺者が具体的にどの遺産をもらうべきかが明らかにならないので、遺産分割に参加しなければならないのです。
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相続分の譲渡を受けた人
相続分の譲渡を受けた人も、遺産分割に参加します。相続分の譲渡とは、もともと法定相続人であった人が、自分の相続分を他者に譲渡してしまうことです。たとえば、相続分の4分の1を持っている子どもが、友人にその相続分を売ってしまったら、友人は相続分の4分の1の譲渡を受けたことになります。
この場合、友人がどの遺産をもらうかを決めないといけないので、譲渡を受けた友人が遺産分割に参加しなければなりません。
遺産分割の方法 4種類
遺産分割には以下の4種類の方法があります。
現物分割
土地建物は妻に、預貯金は長男に、有価証券は次男になどと遺産を現物で分割する方法です。
現物分割は手続きがシンプルというメリットがある反面で、各相続人の相続分を厳密に分割することが難しいため、相続財産によっては不公平感が生じやすいというデメリットがあります。
なお、分割する財産が土地の場合、土地の2/3を長男に、1/3を次男になどと、分筆して分配することも現物分割にあたります。
ただし、分筆し土地が細分化されることで不動産の価値が下がる場合もあります。不動産価値の変化などもあり、相続人間で相続評価額に差ができてしまった場合は、後述する代償分割も選択肢に入れましょう。
換価分割
遺産を売却し金銭に換え、その金銭を各相続人で分割する方法です。
換価分割には相続人の間で公平に遺産を分割しやすいというメリットがあります。一方で、財産そのものは売却してしまうため、遺産をそのままの形で残せない、処分費用や譲渡所得税がかかるなどのデメリットがあります。
代償分割
本来の相続分より多くの遺産を取得した相続人が、その代償として他の相続人に自己の財産(金銭等)を交付して分割する方法です。
代償分割には、換価分割と同様に、相続人の間で公平に遺産を分割しやすいというメリットがあります。しかしながら、多くの遺産を取得する相続人は、自己の財産から代償を用意できるだけの資力が必要というデメリットがあります。
共有分割
遺産を共有名義として、互いに共有物への権利を認める形で分割する方法です。
共有分割は、主に不動産相続で用いられる分割方法ですが、相続しても共有状態は解消されず、メリットはほぼありません。
一方で、売却や賃貸の際に共有者の間で意見がまとまらずトラブルになる、共有者が亡くなるごとにその子どもなど新たな共有者が増え、権利関係が複雑になるなど多くのデメリットがあります。
共有分割は、他の分割方法と比較するとあまりお勧めできません。実際、共有分割として手続きが進むのは、相続人間での意見の相違などから他の分割方法を採用できない場合、最後の手段として採用されるケースが大半です。
遺産分割で行う手続き
遺産分割をする際には3つの方法があり、以下の手順で手続きします。
遺産分割協議
亡くなった方が遺言書を残さなかった場合や遺言書が無効になった場合、第一の手順として「遺産分割協議」を行います。
遺産分割協議とは、相続人全員が
- どの分割方法で
- 誰が
- 何を
取得するのかを話し合うことを言います。
全員の合意が取れ協議がまとまれば、その内容で遺産分割協議書を作成し署名押印します。
遺産分割協議は、相続人個々人の感情が入りやすいため、話し合いがまとまらない場合もあります。そこで有効なのが弁護士への相談です。相続問題に通じた弁護士であれば、冷静かつスムーズに手続きを進めてくれます。より円滑な解決を目指すなら、弁護士への依頼を検討しましょう。
遺産分割調停
遺産分割協議がまとまらなかった場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。遺産分割調停とは、相続人が、家庭裁判所の調停委員を交えて遺産分割について話し合うことを言います。
遺産分割調停では、必要に応じて資料を提出したり、遺産について鑑定を行なったりしたうえで、調停委員が各当事者に対しどのような分割方法を希望しているか聴取し、解決案を提示したりアドバイスしたりして合意を目指します。
遺産分割審判
遺産分割調停でも話し合いがまとまらず調停不成立になった場合には、手続きは自動的に「遺産分割審判」に移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所の裁判官(審判官)が、遺産分割調停の内容や追加提出された資料など、遺産に関する様々な事情を総合的に考慮して、遺産の分け方について審判を下すことを言います。
審判内容は、原則的には法定相続分通りの分け方を基準にして決められます。
遺産分割調停を経ずに遺産分割審判を申し立てるのは実務上難しい
実は、遺産分割調停を行わず、いきなり遺産分割審判を申し立てることも法的には可能です。
ただし、通常、遺産分割審判は遺産分割調停を行ってから行われる手続きです。調停を経ずに申し立てると、家庭裁判所から理由を確認され、理由が不十分と判断されれば裁判所の職権で遺産分割調停に回されます。実務上は、調停を経ずに遺産分割を申し立てるのは困難だと言えるでしょう。
遺産分割の手続きの流れ
遺産分割は、以下の流れで手続きを行います。
遺言書の有無を確認
相続手続きは、遺言書の有無を確認するところからスタートします。と言うのも、有効な遺言は遺産分割協議の内容よりも優先されるからです。
遺言書は、亡くなった方の自宅や金融機関の貸金庫などのほか、法務局(遺言書保管所)に保管されている場合があります。
遺言書保管所に保管されているかどうかを確認するには、遺言書保管所に「遺言書保管事実証明書」を交付請求します。「遺言書保管事実証明書」では遺言書保管の有無しかわかりませんので、遺言書の保管が判明すれば、その内容を確認するために「遺言書情報証明書」を交付請求します。「遺言書保管事実証明書」「遺言書情報証明書」は全国どの遺言書保管所でも交付請求できますので、お近くの遺言書保管所に問い合わせてみるとよいでしょう。
また、遺言書を公正証書にしていれば、公証役場に原本が保管されています。全国の公証役場において、遺言公正証書の有無および保管公証役場を検索できますので、お近くの公証役場で確認してみるのも一つの手です。
遺言書があった場合
遺言書があった場合には、家庭裁判所に提出して検認の手続きをします。検認とは、遺言書の内容を明確にして、その偽造・変造を防止するための手続きです。ただし、「公正証書遺言」「法務局の自筆証書遺言所保管制度を利用した遺言書」の場合、検認手続きは不要です。
検認後は、原則的に遺言書の内容に沿って遺産分割します。
検認前の開封は過料に処せられる
遺言書があった場合に注意すべきは、検認前にはけっして開封してはならないという点です。検認前に遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料に処せられます。
遺言書の内容次第では無効になる場合も
また、遺言書が「民法所定の方式を満たしていない」「公序良俗に反している」などで無効になる場合もありますので、こちらにも注意が必要です。もし遺言書が無効になった場合には、相続人全員で遺産分割を行うこととなります。
遺言書がなかった場合
遺言書がなかった場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、話し合いで遺産分割の方法や各人の相続割合(相続分)などを決めていきます。
この際、相続人が一人でも欠けた状態で遺産分割協議を行うと、その協議は無効となりやり直しが必要ですので、注意しましょう。
なお、遺産分割協議は、相続人全員が対面でそろわなくても、電話やオンライン、書面などで全員とやりとりできれば行えます。遠方に住んでいる、多忙で対面ができないなどの相続人がいる場合には、こうした方法を使うのもよいでしょう。
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相続財産の確定
プラス・マイナスを含め、遺産(相続財産)全てを洗い出します。この際、相続財産に不動産が含まれる場合は評価額を算定します。なお、相続財産をリストアップした財産目録を作ると、内容が整理され把握しやすいのでお勧めです。
調査に漏れた財産があった場合、遺産分割協議はやり直しに
相続財産の確定で注意すべきなのは、相続財産の調査に漏れがあり、遺産分割後に新たな財産が発見されると、遺産分割協議をやり直す必要があるという点です。
しかも、新たな財産に不動産があった場合には、登記をやり直すために不動産取得税と登録免許税を再度納付しなければなりません。さらに、相続税申告後に新たな財産が発見された場合には、過少申告課税や延滞税などのペナルティが課せられる場合もあります。
相続人の確定
亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を取り寄せ、家族関係を確認して法定相続人を確定させます。
手順としては、最新の戸籍謄本を取り寄せ、改製や転籍歴を確認して、もし改製や転籍があれば過去に遡って一つ一つ戸籍謄本を収集します。
実は、戸籍の改製などで戸籍が作り替えられると、新たな戸籍には従前の戸籍に記載されていた内容が記載されないケースがあります。そのため、従前の戸籍謄本を取った際に、最新の戸籍謄本には載っていない認知や養子縁組の記載がある場合もあるのです。戸籍をたどる過程で、このように認知や養子縁組が見つかると、法定相続人の範囲が元々の想定と変わってくる場合もあるため、細心の注意が必要です。
また、戸籍謄本の解読にも注意しましょう。というのも、被相続人が高齢で亡くなった場合には戸籍謄本が手書きで書かれている場合もあり、ケースによっては旧字体や癖のある文字を読み解く必要があるからです。
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遺産分割協議の実施
相続財産と相続人が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を実施します。
遺産分割の割合はどう決める?
それでは、遺産分割を行う場合、具体的には何を指針にして決めたらよいのでしょうか?これについては、法律で基本となる割合(法定相続分)が決められています。具体的には、誰が相続人になるかで割合が異なります。
相続人が配偶者のみの場合には配偶者が100%ですし、子どものみの場合、親のみの場合、兄弟姉妹のみの場合も、それぞれが100%です。
子どもや親、兄弟姉妹が複数いたら、人数で頭割り計算します。たとえば子どもが2人いたら、2分の1ずつになります。
このように、法定相続人の相続割合の目安は家族構成によって大きく異なります。ご自身の家族・相続人の構成をふまえて確認する必要があります。
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法定相続分と異なる割合にすることも可能
このように、遺産分割をするとき、基本的には法定相続分に従って遺産を分け合うのが基本ですが、必ずしもその通りにしなければならないわけではありません。相続人が全員納得したら、法定相続分を無視した取り決めもできます。たとえば、妻と親が相続人になる場合において、お互いが2分の1ずつにすることもできますし、妻がすべての遺産を相続することも可能です。
もともと相続権があっても、遺産分割によってまったく相続しないことにすることもできます。このことを「相続分の放棄」と呼びます。たとえば、兄弟が相続人になるときに、妹が兄に相続分を集中させるために相続分の放棄をすることなどがあります。
遺言があっても遺産分割協議は可能
遺言によって相続分の指定がある場合も遺産分割協議をすることは可能です。必ずしも遺言内容に従う必要はなく、相続人全員が納得して指定と異なる割合で分配することに決めたら、その合意が有効となります。
遺産分割というと、「法定相続人が法定相続分に従って決めるもの」という固まったイメージがあるのですが、実際にはかなり柔軟に分け方を決めることができます。
遺産分割協議が難航しやすいケース
しかしながら、スムーズに協議できるケースばかりではありません。相続人にはそれぞれの主張があり、意見が分かれた際は身内だからこそ感情的になることも少なくありません。
特に以下のようなケースでは協議が難航しがちです。
- 相続人が多数いる
- 相続財産が多額である
- 疎遠な相続人がいる
- 協議に非協力的な相続人がいる
もし遺産分割協議が難航しそうな場合は、あらかじめ相続問題に詳しい弁護士に相談しましょう。
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遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で相続人全員の合意ができたら、その内容を盛り込んだ遺産分割協議書を作ります。
遺産分割協議書は
- 誰が
- どの財産を
- どれだけ取得するのか
を明記し、各相続人それぞれの相続内容を明文化したものです。
遺産分割協議書を作成する際の主な注意点としては以下のようなものが上げられます。
- 預貯金は、銀行名、支店名、口座番号、名義人の名前を仔細に記載する
- 有価証券は、預け先の証券会社名、発行会社名、株式数を仔細に記載する
- 不動産の表示は、登記簿謄本通りに記載する
- 後日、新たな財産が見つかった場合にどのように遺産分割するか明記する
- 相続人全員が署名し実印で押印する
- 複数ページになる場合は、契印する
遺産分割協議書は相続財産の名義変更にも使われます。
相続人全員の合意を示す法的効力も持つ書類となるため、遺産分割協議書には、プラス・マイナスを含めた財産内容を漏れなく、正確に記載しておく必要があります。
作成した遺産分割協議書は、相続人全員が1通ずつ保持する
遺産分割協議書は、相続人全員分を1通ずつ作成し、それぞれ保持します。複数作成された遺産分割協議書が全て同じ内容だと証明するために、相続人全員分の遺産分割協議書を少しずつずらし、全ての遺産分割協議書にまたがって当事者の印鑑を押します。これにより、遺産分割協議書の改ざんや複製を防ぐことができます。
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遺産分割協議がまとまらない場合、遺産分割調停の申し立て
遺産分割協議で相続人の意見が折り合わなかった場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
調停では、中立の立場である調停委員を介して遺産分割の話し合いを行います。この際、必要に応じて資料を提出したり、鑑定を行なったりする場合もあります。
遺産分割の話し合いがまとまり調停が成立した場合には、裁判所が調停調書を作成します。調停調書とは、調停で合意できた内容を証明する書面です。調停調書は相続財産の名義変更に必要です。また、調停調書には、後述する審判書と同様の強い法的効力があるため、調書の内容に従わない相続人がいる場合でも、相続登記や強制執行を行って調書の内容を実現することができます。
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遺産分割審判を欠席するとどうなる?
遺産分割審判は遺産分割調停と同様に、1ヶ月に1回程度の間隔で行われ、審判が下るまでには6ヶ月から1年程度の期間を要するケースが多いです。
この遺産分割審判を欠席すると、遺産分割調停よりも「寄与分」が認められにくくなります。遺産分割審判は、遺産分割調停よりも正確な法的知識が必要であり、遺産分割調停以上に寄与分の主張が通りにくくなるためです。寄与分で損をしないためには、遺産分割調停と同様に、遺産分割審判にもきちんと出席しましょう。
なお、遺産分割審判には、依頼者の代理人として弁護士が出席することもできます。自分自身の出席が難しい場合は、弁護士に相談してみましょう。
被相続人に対する自分の貢献・寄与分を主張しづらくなる
遺産分割調停は裁判所の調停員を挟んだ当事者同士の話し合いなので、当事者間で合意さえ取れれば、相続の内容は自由に決められます。そのため、調停では被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をしていた場合、相続人の貢献や負担をふまえた「寄与分」を主張することができます。
逆に遺産分割調停を欠席してしまうと、遺産分割審判に移行します。遺産分割審判については後述しますが、基本的に法定相続分に沿った遺産分割が行われるため、自らの「寄与分」を主張することは難しくなります。
被相続人の財産の維持や増加に寄与したのであれば、遺産分割調停に出席ししっかりと主張することをお勧めします。
もし出席できない事情が「遠方である」「体調が悪い」「はずせない仕事がある」などの場合には、弁護士に依頼することで代理人として出席してもらうことも可能です。
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遺産分割調停が不成立の場合、遺産分割審判による決定
遺産分割調停が不成立だった場合には、自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。
遺産分割審判では、各相続人の主張や提出された資料、家庭裁判所調査官の調査などを元に裁判官(審判官)が審判を下しますが、法定相続分に従って遺産分割するよう結論を出されることが通常です。
審判が下りたら、裁判所がその内容を記載した審判書を作成します。審判書には強い法的効力があり、相続人はその内容に拘束されますので、審判に従わない相続人がいたとしても相続登記や強制執行ができ、審判の内容を実現できます。
遺産分割審判を欠席するとどうなる?
遺産分割審判は遺産分割調停と同様に、1ヶ月に1回程度の間隔で行われ、審判が下るまでには6ヶ月から1年程度の期間を要するケースが多いです。
この遺産分割審判を欠席すると、遺産分割調停よりも「寄与分」が認められにくくなります。遺産分割審判は、遺産分割調停よりも正確な法的知識が必要であり、遺産分割調停以上に寄与分の主張が通りにくくなるためです。寄与分で損をしないためには、遺産分割調停と同様に、遺産分割審判にもきちんと出席しましょう。
なお、遺産分割審判には、依頼者の代理人として弁護士が出席することもできます。自分自身の出席が難しい場合は、弁護士に相談してみましょう。
審判に不服がある場合は即時抗告という方法も
なお、遺産分割審判の審判結果に納得できない場合、高等裁判所に「即時抗告」し不服を申し立てることができます。そのためには、審判結果の告知があった日から2週間以内に手続きをする必要があり、それを過ぎると不服申し立てができなくなりますので注意が必要です。
もっとも、即時抗告をしても、すでに一度出ている裁判所の判断を覆すのは容易ではありません。ですから、最初から抗告をあてにすることはせず、遺産分割調停や遺産分割審判で最善を尽くすようにしましょう。
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遺産分割は必要?やらないとどうなる?
結論から言えば、遺産分割はすべきです。
人が亡くなり相続が発生した段階で、亡くなった方のすべての遺産は、相続人全員が共有した状態になります。しかしながら、遺産を分割せず共有したままだと、その管理・処分について意思決定するまでに時間がかかったり、そもそも相続人の間で意見がまとまらなかったりする恐れがあります。
いつまでも相続の手続きができない
遺産分割をやらないと、いつまでも相続の手続きができません。たとえば、遺産の中に預貯金があっても払い戻しが受けられず、銀行に預けられたままになってしまいますし、不動産がある場合でも、名義が被相続人のままになってしまいます。不動産の相続人が決まらないと、賃貸に出したり売却したりする活用も難しくなるので、放置されて固定資産税だけがかかり続けてしまいます。
悪用されるおそれがある
また、名義変更ができないで放置され続けると、誰かが悪用するおそれがあります。たとえば、不動産が被相続人名義のままになっていると、第三者が「私が真の権利者です」と言って、勝手に不動産を売却してしまうおそれがあります。このとき、きちんと登記をしていなかったことにより、相続人が不動産の所有権を主張できなくなってしまうおそれもあります。
権利関係が複雑になる
さらに、遺産分割をしないで長期間が経過して、次の相続が起こったらさらに問題が複雑になります。不動産の場合などには、子どもの代と孫の代が共有者となるため、お互いにコミュニケーションがとりにくく登記の手続きなどがより困難になりますし、そもそも誰が真の権利者なのかが非常にわかりにくくなってしまいます。
もともと相続によって共有状態になっていたところ、さらに相続が起こって権利が細分化されてしまっているためです。こうして、遺産分割をしないことにより、法律関係がどんどん複雑になって、トラブルの種になります。
財産の共有状態が将来的な相続トラブルのもとに
不動産の共有がその最たるものです。不動産は、共有者単独では、売却はおろか貸し出しや増改築もできません。自分の共有持分だけを売却することはできますが、他の共有者の中には他人との共有を快く思わない人もいるかもしれず、人間関係にヒビが入る可能性があります。
また、共有者が亡くなるごとにその子どもなど新たな共有者が増え、共有持分が細分化されます。そしてそのまま相続登記をしないでいると、権利関係が複雑になることも考えられます。
このように、遺産分割をやらずにいると多くのトラブルが起こります。トラブルを回避するためには、きちんと遺産分割することをお勧めします。
遺産分割後に遺言書が出てきた場合の対応
遺産分割を終えたあとに有効な遺言書が出てきた場合、遺産分割協議の内容は無効となり、遺言書の内容で遺産分割をやり直す必要があります。と言うのも、遺言は、遺言者が亡くなったと同時に効力が発生するため、遺産はその時点ですでに遺言書の内容通りに承継されたことになるからです。
ただし、遺言書がある場合でも、相続人全員の合意がある場合は、遺産分割協議で合意した内容を有効にでき、遺産分割協議をやり直す必要はありません。
もっとも、これにも例外もあり、
- 出てきた遺言で認知された
- 出てきた遺言で相続人が排除された
- 出てきた遺言で法定相続人以外の受遺者が指定された
など、相続人そのものが変更となるケースの場合は、従来の相続人全員の合意があっても、遺産分割協議をやり直させねばなりません。
遺産分割後に遺言書が出てきた場合の対応は複雑なため、弁護士等に相談の上、正しい法的知識に基づき慎重に判断する必要があります。
遺産分割でよくあるトラブル
遺産分割でトラブルになりやすい代表的なケースとしては、たとえば以下のものが挙げられます。
- 不動産の分割方法でモメる
- 生前にマイホーム購入資金を援助された分について相続分を減らすと言われた
- 生前の介護に対する貢献で遺産を多く要求してきた
- 未成年の相続人がいる
- 認知症の相続人がいる
- 遺産分割協議に参加してくれない相続人がいる
- 借金を含む相続で債務の負担をめぐって相続人同士の間でモメる
- 遺産分割後に新たな財産の存在が判明した
- 寄与分を主張する相続人がいる
- 半血の兄弟(前妻の子など)がいる
- 特別受益を受けた相続人がいる
遺産分割には様々なトラブルが起こり得ます。しかしながら、これらについて正しい法的知識を持ち、相続人それぞれの主張を冷静に整理して解決まで導くのは一般の方には容易ではありません。
もし、遺産分割でモメそうな場合には、なるべく早い段階で、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
遺産分割を弁護士に依頼するメリット
遺産分割をすすめる際、弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか?確認しておきましょう。
トラブルを予防できる
まず、弁護士を活用すると、遺産トラブルを予防しやすいです。遺産分割では、相続人同士が話合いをする遺産分割協議の段階でトラブルになってしまうことが多いです。このとき、お互いに感情的になって言い合いになったり、相手に対して疑心暗鬼になったりすると、双方がヒートアップして引っ込みがつかなくなり、熾烈な相続争いに発展します。
ここで、遺産分割協議に入る前、当初の段階から弁護士に相談をしてアドバイスをもらっておけば、自分の方から無茶な請求をすることもありませんし、相手の言っていることについても客観的に判断できるため、話が間違った方向にずれていくことがありません。
交渉ごとには「落ち着きどころ」というものがあるので、弁護士に状況を説明した上でどういった解決方法が良いのか意見を出してもらい、その内容に従って話し合いをすすめたら、お互いが妥協して協議をまとめやすくなります。
スムーズに遺産分割協議ができる
遺産分割協議をすすめるとき、自分たちだけで話し合っているとどうしても譲り合うことが難しく、トラブルになりやすいです。ここで弁護士に遺産分割協議の代理人を依頼すると、相手と直接話をしなくて済むので、一歩離れたところから冷静に考えることができます。自分の考えが極端な場合、弁護士から指摘してもらって修正することも可能ですし、相手の性格や主張内容によって、適切な対応方法を選択していくことができます。
また、遺産分割協議で一方に弁護士が就いたら相手にも弁護士が就くことが多いので、弁護士同士の話し合いになり、よりスムーズに解決することができます。
調停や審判になっても安心
遺産分割協議をしても、お互いに納得ができない場合、遺産分割調停や審判をしないといけません。こういった手続きを自分一人ですすめることには大きな不安がつきまといます。口下手な人は、調停委員に自分の希望をうまく伝えられるかが不安でしょうし、相手が弁護士をつけてきたら、自分の側に弁護士がいないと不利になってしまうのではないかが心配です。
審判になると、裁判所から「書面を提出するように」とか「資料を用意するように」などと言われますが、具体的にどのような書面や資料を用意したら効果的なのかがわからないことが多いでしょう。こんなとき、弁護士が代理人になってくれていると、調停でも一緒に来てくれて自分の代わりに調停委員に意見を言ってくれるので安心ですし、審判になっても、法的な主張をまとめた書面を作成してくれて適切な資料収集についてもアドバイスをしてくれるので、不利になることがありません。
このように、遺産分割調停や審判では、弁護士の助けが非常に役立ちますし、特に審判の場合には、ほとんど必須です。当初から弁護士に依頼していると、調停や審判になっても安心で有利にすすめられるメリットがあります。
簡単に確実な遺産分割協議書を作成できる
遺産分割協議書を作成するとき、相続人が自分たちで作成すると、どのようにしたら良いのかがわからないため、ネットで書式を調べたり作成方法などを調べたりして、手探りで作っていかないといけません。非常に手間がかかる割に、できあがったものが正確かどうかもわかりません。不備があったら作り直しになってしまいます。
ここで弁護士に遺産分割協議書の作成を依頼したら、間違いの無い確実なものを作ってもらうことができます。自分では何もしなくて良いので手間も大きく省けるため、日常生活が忙しい相続人でも余計な労力をかける必要がなく、メリットがあります。
まとめ
遺言書がない場合、遺産分割の方法や内容は、遺産分割協議で相続人全員が合意すればどのようにしても問題ありません。しかしながら、相続人それぞれに主張がありますし、協議がまとまらず人間関係にもヒビが入るといったケースも起こり得ます。
こうしたトラブルを避けるためには、相続問題に詳しい弁護士への相談がお勧めです。相続問題に詳しい弁護士に相談すれば、遺産分割をするにあたって必要な相続人調査や相続財産調査からサポートしてくれますし、遺産分割の方法や内容も的確にアドバイスしてくれます。一人で悩まず、弁護士という専門家の手を借りて、より円満な遺産分割を目指しましょう。
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