生前の相続対策~遺言書の作成・エンディングノートの活用を~
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生前の相続対策は遺された遺族に送る最後の指南
人が亡くなるということは、想像以上に大変なこと。葬儀の準備など親子関係など、関係が近ければ近いほどやらばければならないことは山のようにあります。葬儀の準備などに気を配りすぎて「きちんとお別れをすることができなかった…」「きちんと悲しむ時間がなかった…」という話しは良く聞くことです。葬儀は遺族が故人と向き合い、きちんとお別れをする時間なのにこれでは本末転倒ですよね。しかし、これが多くの場合の葬儀の実情なのです。
葬儀の準備自体にもかなりの時間と労力が必要となりますが、これに加えて発生するのが相続の問題です。相続は被相続人(故人)が亡くなった瞬間から発生します。つまり、葬儀と同時進行で相続についても考えなければならないということです。
遺族の負担を軽くする「終活」
みなさんは「終活」という言葉をご存知でしょうか?「終活」とは自分の人生の終わりをより良いものにするためにあらかじめ準備しておくことです。終活は自分の人生のエンディングを考えるとともに、遺族のために元気なうちにできるだけ準備しておくこと。それが終活であり、生前の相続対策に繋がるというわけです。
葬儀の準備に追われる遺族に少しでも、悲しみを実感する時間を、心からのお別れを行う時間を持って頂くためにも、生前にできることはやっておくという考えで準備されておくのは遺族のためにも、最良のエンディングを迎えるためにも最善策といえるのではないでしょうか?
もめ事を起こさないためには「遺言書」の作成が一番
生前の相続対策としてまず、頭に浮かぶのは「遺言書の作成」ではないでしょうか?故人が遺す遺産に対して親族同士がもめないようにするには一番確実な方法です。
遺言書は故人の意思。意思表示をきちんと行うことで、親族間のもめ事はほとんど回避することができるといえます。ただし、この「遺言書がもめ事の火種」となる場合も。それは、その遺言書に法的な効力があるものかどうかという点にあります。
遺言書の種類
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
デメリットの多い「自筆証書遺言」
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」は自分ひとりで作成することができる最も簡単な遺言書です。最近では、遺言書に関するさまざまな情報が流れているので、この自筆証書遺言で遺言書を作成する人も少なくありません。用意するものも印鑑とペンと紙だけ。特段、費用が必要になることもないので、一番、手軽に作ることのできる遺言書といえるでしょう。
ひとつでも不備が見つかったら無効
しかし、簡単に作成できる反面。ひとりで全てを完結させるので「不備」が発生することも少なくないのです。自筆証書遺言は文字通り自筆でないと成立しません。つまり、ワープロ打ちや代筆などは一切認められないということです。何らかの事情で自分の手で遺言書が書けない場合でも代筆は認められません。この時点で法的な効力はなくなります。
家庭裁判所による検認が必要になる
さらに、自筆証書遺言は家庭裁判所による検認が必要になります。そして、その検認には被相続人とその両親の生まれてから死亡までの戸籍謄本と兄弟の戸籍謄本、附票を全て揃えて提出する必要があります。遺族がこれらの書類を集めるのはかなりの労力を要してしまいます。しかも、この自筆証書遺言で不動産などの名義変更登記ができるかどうかもわからないというデメリットも。これは、自筆証書遺言の有効性が問題になるためです。
専門家によるチェックが必須
このように、さまざまな問題が起こりやすい「自筆証書遺言」。自己完結するのではなく、やはり一度専門家にきちんと書けているのかどうかをチェックしてもらった方が確実といえるでしょう。自分だけで作成してしまうと、作るのには費用はかかりませんが、その遺言書を執行させるために費用が発生してしまうことも考えられます。
遺言書の作成にはこの方法がベスト
公正証書遺言
遺言書を作成する際はこの「公正証書遺言」で作成するのがベストです。公証人に作成してもらい、原本を公証役場で保管してもらうのが公正証書遺言です。公証人に作成してもらうので、もちろん不備などが起こることもありません。ただし、公証人と一緒に作成するので、すべてを秘密裏に行うということはできないのでそこが気になるという方にはマイナス要素になるかもしれませんね。
公証人には二人の公証人が必要になります。公証人には弁護士や司法書士など、法律のプロにお願いするのがベストといえるでしょう。
公正証書遺言は登記手続きがスムーズ
公正証書遺言で作られた遺言書は家庭裁判所での検認の必要がないので、不動産関係の遺産がある場合も名義変更手続きなどをスムーズに行うことができます。しかも、遺言書の原本は公証役場で保管されているので、勝手に改ざんされたり、破棄されたりする心配もありません。
病気で遺言書が書けなくても大丈夫
公正証書遺言は公証役場に行くことができなくても、公証人が遺言作成者のところに出向いて遺言書を作成することができるので、病気で体力がなくても遺言書を作成することができます。
デメリットは費用がかかる点
遺言書としてはメリットの方が多い公正証書遺言ですが、唯一デメリットを挙げるとしたら作成するのに費用がかかるという点でしょうか?ただし、自筆遺言書は作成自体には費用はかかりませんが、その後の手続きに費用がかかる面が多々あるので、どちらの方がメリットが大きいかを考えれば、公正証書遺言の方が利点が大きいといえると思います。
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遺言書の作成にはこの方法がベスト
秘密証書遺言
ワープロ打ちでも代筆でもいいのが「秘密証書遺言」の最大の特徴です。ただし、署名は自筆での署名に限ります。秘密証書遺言が完成したら公証人立会いのもと、公証人役場に持ち込み保管を依頼して終了です。遺言書も封印も公証人役場で行ってもらいます。
二人以上の証人必要
また、秘密証書遺言では公証人の他に、二人以上の証人が必要になります。ですので、秘密証書遺言を公証人役場へ持ち込む時、証人も同行し本人確認のできるものを提出する必要があります。
遺言書の内容を誰にも知られない「秘密証書遺言」
遺言書の内容を先に知られると何かと問題がある場合は、すべてを秘密裏に処理することができるので、秘密証書遺言はメリットがあるといえますが、すべてを自分の手で行い、専門家のチェックが入るわけではなくので、後に不備が発覚し、遺言書自体の有効性が疑われたり、親族間のもめ事に発展したりする危険性も孕んでいます。
秘密証書遺言は家庭裁判所の検認が必要
これは自筆遺言書と同じ手続きで、家庭裁判所にて検認してもらわなければなりません。そのため、戸籍などの書類も必要になってきますし、被相続人の戸籍、被相続人の両親の戸籍、相続人全員の戸籍や附票、これを全て揃えるだけでもかなりの労力を必要としますし、弁護士や司法書士にお願いすると、労力はかかりませんが、それなりの費用がかかります。
さらに、遺言書を開封する際も家庭裁判所で、相続人の立会いのもと、開封しなくてはなりません。
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最もリスクが少ないのは「公正証書遺言」
上記のことを踏まえた上で、一番リスクが少ないのは「公正証書遺言」での遺言書作成がベストといえるでしょう。他の方法では遺言書が遺言書としての役割を果たさない場合もありますし、必要以上に労力がかかったり、費用が必要となったりする場合もあるので、遺言書を作成しようと思ったら公正証書遺言での作成を一番におすすめします。
遺言書は定期的に書き換えましょう
人の生死は誰にも予知することはできません。遺言者も自分の死期を予測することはできませんよね。時間が経てば遺言書に記したい内容も変わってくる可能性は否定することはできません。ですから、遺言書は定期的に見直して、その時に最適な内容に書き換える必要があるといえるでしょう。それは、自筆遺言書でも公正証書遺言でも、秘密証書遺言でも同じことです。
生前贈与という相続対策
生前贈与は「相続税対策」に最も有効な相続対策です。これは、相続する財産、相続税のかかる財産をあらかじめ減らしておくという方法です。しかし、ここで問題になるのが、「生前に贈与したはずなのに、生前贈与されたことになっていない可能性がある」ということです。生前に贈与されたはずなのに、税務署が認めず、生前に受け取ったものにも相続税を課してしまう…。これでは生前贈与を行う意味がまったくありませんよね。では、生前贈与を成立させるにはどうしたらいいのでしょうか?
生前贈与の書類をきちんとつくる
生前贈与があったことを証明するにはきちんと書類として残すことが一番です。「贈与契約書を作成し、あげる人、もらう人が署名捺印をした書類」を作り、もらった人があげた人から通帳などを受け取り、もらった人が自由にそのお金を使えているかがポイントとなります。
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預金の持ち主は「名義」で決まるものではない
よく勘違いされているのが、「故人の名義のもの=故人の遺産」という考えですが、実は、名義が故人(被相続人)のものでなくても、被相続人の稼ぎがその預金のもとになっているのであれば、相続税は発生してしまいます。つまり、名義の確認だけでなく、預貯金の内容もきちんと確認する必要があるということですね。
贈与税だけで生前贈与を証明するのは難しい
お金の贈与は110万円以下では贈与税は発生しません。贈与税が発生するのは110万円以上。贈与があったことを証拠として残すために、110万円以上の贈与を行い、税務署に贈与税の申告を行って、贈与税を納税したとしても、それが生前贈与の証拠になるとは限りません。
しかも、贈与税には時効があるので、名義を被相続人から他者に移しても、その内容(自由にお金を使っている人)が変わっていなければ意味がありません。
生前贈与を成立させるためには
- 贈与契約書の作成
- 印鑑・通帳の管理、そして自由な使用
- 贈与税の申告納税
上記の内容が生前贈与を成立させるための条件です。贈与したつもりでもそれが認められなければ、相続税の対象となり、もめ事の火種となることは明らか。相続税を少しでも軽くしたいのであれば、きちんと調べてから生前贈与を行うようにしましょう。
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エンディングノートの活用
エンディングノートというものをご存知でしょうか?エンディングノートは法的には何の効力も持たないものです。しかし、このノートがあるのとないのでは遺族にとっては大きな違いがあります。
遺言書には相続など法的な手続きを記すものですが、エンディングノートには「些細な故人の意思を明確に記入する」ことができるのです。
エンディングノートに書くこと
- 名前や血液型、病歴など
- 介護が必要になった場合について
- ペットについて
- 保険などについて
- 葬儀について
- 財産について
- お墓などについて
- 知人リスト
- 加入しているサービスについて
- 形見分けについて
- 遺影について
- 遺言書について
- 自分史など
- 大切な人へのメッセージ
エンディングノートには決められた形式などはありません。遺される遺族のことを思って、必要なことを記すのがエンディングノートの役割です。なので、近しい人には「私に何かあったらこのノートを見てね」と伝えておく必要があるといえるでしょう。
︎名前や血液型、病歴など
名前や血液型、生年月日や病歴、かかりつけのクリニックなど、今、どんな状態にあるのかを詳しく書いておくと、突然、倒れてしまった場合などに非常に役に立ちます。
︎介護が必要になった場合について
介護が必要になった場合、どういったことを望むのかを記すことも重要です。もしもの場合、延命処置を望むのかどうか、身体が不自由になった場合、自宅での介護を望むのか、施設での介護を望むのか、認知症になった場合どうした方がいいのか。家族はあなたの意思を尊重したいと考えています。何を望むのかをきちんと記してあれば、悩むことなくスムーズにことを運ぶことができるのではないでしょうか?
ペットについて
飼っているペットがいた場合、その子の所在も大切な決め事です。誰に任せたいのか、また、ペット保険に入っている場合はそのこともきちんと記しておきましょう。さらに、かかりつけの獣医さんなども掲載しておきましょう。
保険などについて
生命保険は相続の対象にはなりませんが、保険の受取人は生命保険会社に連絡しなければなりません。どんな保険に入っているのかをきちんと記し、必要な書類がどこにあるのかを書き残しておきましょう。
葬儀について
どんな葬儀を望むのか、それを提案することで遺族の負担も軽くなります。また、葬儀の費用を残してある場合はそのことも明記しておきましょう。
財産について
どんな財産を保有しているのかどうかは、遺産相続に関する重要なことです。預金や株式、不動産や金融資産などのプラスの財産だけでなく、ローンや借入金など、マイナスの資産も記載しておきましょう。
お墓などについて
菩提寺やお墓について、出生地の宗教の違いによって分骨など、希望することは人それぞれ違います。火葬後、お骨をどうされたいのかを明記しておきましょう。
知人リスト
もしもの時に知らせて欲しい人を書き残しておくことも重要です。このリストがあれば、年賀状から辿るといった遺族の負担も軽くなります。
加入しているサービスについて
何かお金が発生しているサービスに加入している場合は、そのことをきちんと書き残しておきましょう。もしものことがあってもそのサービスに連絡しなければ、ずっと費用が発生してしまう場合が多々あります。
形見分けについて
持ち物を形見分けとして分配する場合、あげたい人がいる時はきちんと文章として残しておくことで、もめ事を抑えることができます。また、どんなものが残っているのかもリストアップしておくとより、スムーズに形見分けが進むでしょう。
遺影について
最近は葬儀社などが合成して綺麗な遺影を作成しているところも多いですが、ご自分の気に入った写真がある場合はこの写真を遺影として使って欲しいと残しておくのもいいと思います。
遺言書について
遺言書があるのかないのか。どういう形式で保存されているのか。もし、弁護士や司法書士に作成をお願いしている場合は、お願いしているところの連絡先などを掲載しておきましょう。
自分史など
自分がどういう人生を歩んできたのか、それを残すことで葬儀の際に喪主のスピーチに故人の人生を盛り込むこともできますし、遺族にどんな人生を送ってきたのかを残すこともできます。
大切な人へのメッセージ
大切な人へのメッセージは遺族に向けたメッセージです。これを読んだ遺族にとってはこれほど嬉しいことはないでしょう。エンディングノートだからこそ、盛り込むことのできるものですね。
エンディングノートは生前からできる相続対策
前述したようにエンディングノートには法的効力はありません。しかし、遺された遺族が困らないように準備することもとても重要なことです。相続問題が発生した場合、まず問題になるのは「遺言書の有無」そして「財産の全貌」などです。エンディングノートをきちんと書かれていると、遺族の負担はグッと軽くなります。
エンディングノートは遺族に残せる最後のメッセージです。相続にも役に立ちますが、ご遺族の気持ちを悲しみだけにさせないという効果のあるものでもあります。生前の相続対策を考えるのであれば、遺言書とともに、エンディングノートの活用も考えてみてはいかがでしょうか?
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