相続の弁護士費用の相場とは?複雑な料金体系をわかりやすく解説
相続分野での弁護士費用は、事務所ごとに異なります。しかし、弁護士費用の相場を把握するのに使える目安はあります。それは「日弁連の旧報酬規程」です。
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相続手続きの弁護士費用の相場
相続にかかる弁護士費用・料金体系は法律事務所や弁護士によって違う
現在は弁護士報酬が自由化されているため、法律事務所や弁護士ごとに料金体系は異なります。
しかし、弁護士費用の目安となる基準は存在します。
それは日本弁護士連合会(日弁連)が定めていた弁護士報酬の基準。この「旧報酬規定」をもとに料金体系を決めている法律事務所や弁護士が多いので、以下に紹介しましょう。
弁護士費用の目安となる日弁連の弁護士報酬規定(旧報酬規定)
①法律相談 | 相談料 | 30分ごとに5000円から2万5000円の範囲内の額 |
---|---|---|
②訴訟事件 | 着手金 | 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:(経済的利益の)8% 300万円を超え3000万円以下の場合:5%+9万円 3000万円を超え3億円以下の場合:3%+69万円 3億円を超える場合:2%+369万円 ※事件の内容により、30%の範囲内で増減額できる ※着手金の最低額は10万円 |
報酬金 | 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:(経済的利益の)16% 300万円を超え3000万円以下の場合:10%+18万円 3000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円 3億円を超える場合:4%+738万円 ※事件の内容により、30%の範囲内で増減額できる |
|
③調停および示談交渉事件 | 着手金・報酬金 | ②に準じる。ただし、それぞれの額を3分の2に減額できる ※示談交渉から調停、示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は②の2分の1 ※着手金の最低額は10万円 |
④日当 | 半日(往復2時間を超え4時間まで) | 3万円以上5万円以下 |
1日(往復4時間を超える場合) | 5万円以上10万円以下 |
遺産分割における「経済的利益」とは、依頼者が相続する遺産の時価相当額です。
ただし、「分割の対象となる財産の範囲および相続分について争いのない部分」については、その相続分の時価相当額の3分の1の額になります。
この日弁連の弁護士報酬規定は平成16年4月1日に廃止されるまで、国内の弁護士共通の報酬基準として使用されていたものです。
現在もこの旧報酬規定のルールを報酬計算の基準としている弁護士や、別の料金形態を採用している場合でも、総額感としてはほぼ同等の金額を設定している法律事務所が多数あります。
そのため、相続の弁護士費用の大枠の相場感を判断する上では、上記のルールにより試算することができるでしょう。
ただし、実際の相続の実務では、相続される財産の額や法定相続人の数、弁護士が対応する手続きの範囲もケースバイケースで事案により大きく異なります。
そのため、この手続きはいくらといった、相談者問わず一律の金額相場を設定することはできません。
その線引きや計算は難しいため、相続手続きを弁護士に相談・依頼する場合は
- どれくらい相続分が増えそうなのか
- その場合の報酬金(弁護士費用)はいくらになるのか
という2点をセットで弁護士に確認しておきましょう。
相続の弁護士費用でかかる5つの項目
それでは、弁護士に相続手続きを相談する際に発生する費用項目の内訳を見ていきましょう。
相談料
弁護士への法律相談に必要な費用です。「30分あたり5000円」が目安ですが、「1時間まで5000円」や「初回相談は無料」という法律事務所もあります。なお相談後に依頼すれば、相談料は無料になる場合もあります。
着手金
事件を着手する前に支払う初期費用です。基本的には依頼時に一括で支払いますが、分割払いが可能な場合もあります。報酬金とは異なり、事件の結果によって金額が変わることはありません。
報酬金
事件が解決した後に支払う費用です。金額は一律ではなく、「経済的利益の○%」というふうに結果に連動しています。つまり、経済的利益が得られなければ、基本的に報酬金もゼロになります。
手数料
書面作成や裁判所への申し立てなど、単発の業務に対して発生する費用です。具体的には「遺言作成の手数料」「遺言執行の手数料」「相続放棄の申立手数料」などがあります。
日当
弁護士が遠方へ出張した際に発生する費用です。ただし、着手金の中にあらかじめ一定の日当を含めている法律事務所もあります。遠方の弁護士に依頼する場合は、日当が発生する範囲を確認しましょう。
実費
弁護士費用とは別に発生する諸費用です。具体的には「交通費」「郵便料金」「裁判印紙代」などがあります。
おもな相続の弁護士費用は「着手金」と「報酬金」
現在の法律事務所では、金額感をわかりやすくするために、相談料や日当を総額費用の中に含めて提示する事務所も増えています。
手数料も必要な手続き次第で一定額を越えることはなく、上記の項目の中では
- 着手金
- 報酬金
が弁護士費用の大小に大きく影響するのが一般的です。
相続問題の分野別でわかる!弁護士費用の目安
遺言書の作成
手数料 | 10~20万円 |
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弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、「遺言作成手数料」がかかります。その相場は10~20万円ほど。遺産額や遺言内容の複雑さによって手数料が変わる場合もあります。なお「公正証書遺言」を作成する場合は、公証人への手数料(5000円~10万円程度)も必要です。
遺言の執行
手数料 | 30万円~ |
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遺言の執行とは、相続人への遺産分配などの遺言内容を実現させることです。この「遺言執行手数料」は遺産額や相続人の数によって金額が変わります。旧報酬規程では「300万円以下であれば30万円」「300万円~3000万円の部分については遺産の2%」「3000万円~3億円の部分は1%」「それ以上の部分は0.5%」と定められています。
相続放棄
手数料 | 10万円 |
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借金などマイナスの財産が多い場合や相続争いをさけたい場合に「相続放棄」が有効です。この手続きを弁護士に依頼する場合、10万円ほどの手数料(家庭裁判所への申立手数料)が生じます。なお事前に相続財産や相続人を調べる場合、5万円ほどの調査費用がかかります。
遺産分割協議
着手金 | 20万円~ |
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報酬金 | 経済的利益によって変動(日弁連の旧報酬規定が目安) |
遺産分割協議とは、相続財産の分け方を話しあうこと。ほとんどの相続トラブルはこの分野に入ります。その代理人を弁護士に依頼する場合、おもに着手金と報酬金が生じます。遺産の金額やトラブルの内容によって料金は異なりますが、最低着手金を20~30万円としている弁護士が多いでしょう。報酬金は日弁連の旧報酬規程が目安となります(上図②③を参照)。
遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)
着手金 | 経済的利益によって変動(日弁連の旧報酬規定が目安) |
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報酬金 | 経済的利益によって変動(日弁連の旧報酬規定が目安) |
内容証明郵便の作成手数料 | 3~5万円 |
遺留分とは(遺言の内容にかかわらず)相続人が最低限相続できる財産のことです。この権利が侵害された場合、その事実を知ってから1年以内に「遺留分侵害額の請求」をしなければ、遺留分を得られません。
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この遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)を弁護士に依頼する場合、請求額や獲得額によって着手金と報酬金が変わります。ここでも日弁連の旧報酬規定が目安となります(下図を参照)。
経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下の場合 | 8% | 16% |
300万円を超え3000万円以下の場合 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円を超え3億円以下の場合 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
相続トラブルの着手金は20万円以上
相続の場合、手続きの多少に関わらず、着手金が20万円以上で設定されることが一般的です。
遺産相続の弁護士費用は誰が払う?
遺産分割に関する弁護士費用を支払うのは、基本的に依頼した人です。依頼内容ごとに詳しくみていきます。
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遺産分割協議の弁護士費用は依頼者が負担
遺産分割協議の代理人を弁護士に依頼した場合、依頼者が費用を負担します。他の相続人がトラブルの原因となっていた場合でも、依頼者が他の相続人に弁護士費用を請求することはできません。
遺留分侵害額請求・相続放棄は申立人が負担
遺留分侵害額請求を弁護士へ依頼する場合、その費用は申立人が負担します。相続放棄や限定承認の費用についても、各申立人が支払うのが原則です。
複数の相続人が同じ弁護士へ依頼する場合は、それぞれの負担額について話し合いで決めることも可能です。
遺言書の作成費用は遺言者が払う
遺言書の作成を弁護士に依頼する場合の費用は、遺言者が支払います。公正証書遺言を作成する場合に公証人へ支払う手数料も遺言者が負担します。
遺言執行費用は相続人全員で負担
遺言執行者への報酬は、相続財産から支払うことが民法で決まっています。つまり、特定の相続人ではなく相続人全員で負担することになります。
弁護士などの専門家が遺言執行者の場合は、相続財産から遺言執行費用を支払い、残りを相続人に分配するのが一般的です。
相続の弁護士費用を払えない場合。費用を抑える方法
相続手続きを弁護士へ依頼したいと考えても、その費用が支払えない方や費用負担が不安で弁護士に相談しにくい、という方も多いでしょう。ここでは弁護士費用負担を抑えるコツについてみていきます。
複数事務所を比較
相続手続きにかかる弁護士費用の料金体系は事務所によってまちまちです。相続人の人数や相続財産の金額、トラブルの内容によっても費用が大きく異なってきますので、契約前によく確認することをおすすめします。
無料相談などを活用して、複数事務所を比較すると良いでしょう。
分割払いや後払いを相談
依頼時にまとまった額を用意できない場合には、分割払いや後払いができないか相談してみましょう。
着手金や報酬を分割払いにするなど、柔軟に対応してくれる事務所もあります。
法テラス
弁護士費用を抑えるには、法テラスの利用もおすすめです。相場より費用が安くすみ、着手金を分割払いにできるなどの利点があります。
ただし、利用には一定の収入要件などがあり、依頼できる弁護士も限られますので注意しましょう。
準備できることはしておく
依頼したい内容や希望する結果をまとめておくなど、依頼前に準備できることはしておくとよいでしょう。弁護士への相談がスムーズに進み、手間を省くことで費用を軽減できる可能性があります。
相続で弁護士費用が高額になるケース
相続手続きを弁護士に依頼することで適切な解決が期待できますが、費用が高額になりすぎるリスクも気になりますね。ここでは、弁護士費用が高額になりやすいケースについてみていきます。
相続財産や相続人が多い
弁護士費用は一般に相続財産や相続人の人数が多ければ多いほど、高額になりがちです。
遺産が高額
遺産分割協議や遺留分侵害請求の報酬金は経済的利益によって変動しますので、遺産の額が多ければ、費用も高額になります。
遺産の種類や数が多い
遺産の数が特に多い場合や、種類が多いなど複雑な場合は、費用が上乗せされることがあります。
不動産が多い
遺産に多くの不動産が含まれている場合や、不動産が遠方にある場合などは追加の費用が発生する可能性があります。
相続人が多い
相続人などの相手方が特に大人数の場合は、手続きが煩雑となり費用が高額になる場合があります。
調停や審判になる
遺産分割協議がまとまらず調停や審判になると、費用が高額になります。調停が長引くことで追加の費用がかかることもあります。
また、弁護士が遠方の裁判所へ出向く必要があるようなケースではさらに費用がかさみます。
追加の手続きが発生
遺言無効や生前贈与無効請求を主張された場合や、使途不明金の調査が必要なケースなど、通常の遺産分割協議以外に必要な手続きがあると、その分弁護士費用は高額になります。
まとめ
- 法律事務所や弁護士によって料金体系が異なる
- 弁護士費用の目安は「日弁連の旧報酬規程」
- おもな弁護士費用は「着手金」と「報酬金」
- 一般的な相続トラブルの「着手金」は20万円以上
- 依頼者が相続する金額によって「報酬金」は変動する
- 弁護士費用は依頼者が支払う
- 争いがあると費用が高額になりやすい
相続の弁護士費用は法律事務所によって様々
相続の弁護士費用は弁護士によって料金体系が異なりますが、過去には日弁連の旧報酬規定によりどの弁護士も共通の金額となっていたこともあり、法律事務所の違いで大きく費用感が変わることはありません。
ただし、相続手続きで扱う金額が高額、財産の種類が多いほど報酬金も大きくなります。
また、相続人が多い場合や親族間での相続分を巡るトラブルがある場合や、相続手続きの前段階で調査が必要なケースなど、要は複雑な相続ほど弁護士費用は高額となります。
可能な範囲で相続財産や相続人の状況を整理、自分の希望とあわせてまとめ、弁護士の対応する負担を軽くすることで、弁護士費用を抑えられる可能性もあります。
最終的には、弁護士費用にかかる金額と、弁護士に依頼して増額できる経済的利益をふまえて、依頼を検討することになるでしょう。
とはいえ、相続財産が多岐にわたる場合、自分で整理できる内容にも限度があります。
法律事務所の中には相続の無料相談を受け付けているところもあります。
弁護士費用の支払い方についても、相談に乗って柔軟に対応してくれる事務所も多いでしょう。
相続でお悩みの方は、まずは費用のことも含めて弁護士に相談し、手続き全体の見通しを立てた上で準備を進めていくことをおすすめします。
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