生前贈与をするなら贈与契約書を交わしておくのが安心。注意すべきポイントを解説
贈与税の基礎控除を適用してもらうには、金銭の授受が贈与であることを認めてもらう必要があります。その際に有効になるのは、贈与契約書です。贈与契約書を作成する際は、誰が(贈与者)、誰に(受贈者)、いつ(贈与時期)、何を(贈与財産の内容 )、どうやって(贈与の方法)といった5つの点は必ず明確にしましょう。
贈与税と贈与契約
被相続人が子供などの相続人に現金を渡すことは、相続税の軽減策として有効です。ただし一定額を超えた場合は、贈与税の対象となります。また贈与する際にいくつか注意すべき点があります。
贈与税とは
贈与税は、個人から現金や不動産等の価値のある財産を贈与されたときに課される税金のことであり、被相続人に生前贈与を受けた場合とそうでない場合の不公平さを解消するために設けられています。
贈与税に関する基礎控除額とは
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。したがって、たとえば2人の子供に毎年110万円ずつ10年間贈与し続けると
となり、合計2200万円の財産を無税で贈与することができます。
基礎額控除は無条件で使えない
ただし毎年、同じ時期に同じ金額を継続的に子供に渡していると、最初からまとまった金額を贈与するつもりだったとみなされてしまうことがあります。そのように判定されてしまうと、多額の贈与税が取られることもあります。
基礎控除が使えないとどうなる?
仮に10年間毎年110万円を贈与したとします。基礎控除があるため1年間に110万円までは非課税となり、本来であれば贈与税はかからないはずです。しかし、最初からまとまった金額を贈与するつもりだったとみなされてしまうと1,100万円を一括で贈与したこととなってしまい、以下の計算式で求められるだけの贈与税を収めることになってしまう恐れもあります。
贈与は契約によって成立する
贈与という行為は「贈る人」と「もらう人」がそれぞれ合意することで成立する一種の「契約」と同じです。それを証明できない場合は、税務上では贈与と認められない場合があります。
受け取った側が認識しておく必要がある
例えば父親が子どもに財産を残してやろうと子どもの銀行口座にお金を預けていても、子どもがそれを知らない場合、贈与とは認められず贈与税が課税されることがあります。子どもには、贈与のつもりでお金を口座に入れていることを伝えておきましょう。
贈与契約書
贈与は口約束でも成立します。ただし贈与税の基礎控除を受けるためには、贈与契約書を交わしておいたほうが安心です。その際には以下の点も確認しておきましょう。
- 金融機関の通帳と印鑑は贈った相手に渡しておくこと
- 株式は名義変更をしておくこと
- 現金での受け渡しではなく銀行振り込みにして証拠を残しておくこと
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贈与契約書で抑えておくポイント
贈与契約書さえ作成しておけば確実に贈与したことの証拠となるため、税務署に贈与契約そのものが否認されることはなくなります。そこで、贈与契約書を作成する際の注意点についてみていきましょう。
贈与契約書の書き方を知っておこう
贈与契約書の書き方は特に形式は決まっていません。文章はパソコンで作成しても構いませんが、日付と住所、氏名は自筆のほうが望ましいとされています。そして、この贈与契約書を2通作成し、贈与者と受贈者のそれぞれが1通ずつ保管しておきます。
5つの要素は必ず入れる
誰が(贈与者)、誰に(受贈者)、いつ(贈与時期)、何を(贈与財産の内容 )、どうやって(贈与の方法)といった5つの点は必ず明確にしてください。この5つに関する記載がないと、贈与契約書を作成しても認められないことがあるので注意が必要です。
不動産や家屋を贈与する場合はここに注意!
土地や家屋などの不動産を贈与する場合は、対象となる土地や家屋を登記する必要があります。「この土地は次男に贈ろう」と心づもりをしていても、しっかりと登記がされていないと贈与とはみなされません。贈与契約書には、不動産の所在地を明記する必要があるので、事前に法務局で「登記事項証明書」を取得して調べておきましょう。
贈与契約書の贈与内容の箇所に以下のように記載しておきます。
家屋番号 ○番地○○
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 ○○平方メートル
その土地や物件をいつまでに引き渡し、移転登記を行うかも書いておきます。また土地や不動産を贈与する際には、印紙を貼る必要があるので注意しましょう。
生前贈与を賢く使う
生前贈与は、計画的に行うことが必要です。あまりに多額の財産を贈与してしまうと、自分の老後の生活が厳しくなるという問題も発生します。生前贈与を行う際に知っておきたい注意点についてみていきましょう。
財産の贈与を行うときの注意点とは
親が子供名義の口座を開設して貯金した場合などは、贈与として認められないことがあるので注意が必要です。また相続前に3年間に行った贈与は、相続財産に加算されることがあります
贈与する人の通帳に残る形で振り込む
贈与する人の口座にお金のやりとりがあったことが分かるように振り込みましょう。子供名義の通帳に預金している場合には、印鑑登録は子供名義にしておく必要があります。子供の通帳から父親が勝手に出し入れをしていると子供の預金でないとみなされてしまい、贈与があったとは認められないことがあります。
相続前3年以内の贈は相続対象の財産となる
被相続人が亡くなる前の3年以内に相続人に贈与した財産は、相続税の対象として加算されます。基礎控除の110万円以内であっても同様に相続税がかかってくるため、生前贈与を行うなら早いうちに行うのがベストです。
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贈与し過ぎにも注意
日本人の平均寿命は年々延びており、90歳以上まで生きる人も珍しくなくなってきました。それに伴い、生きていくために必要なお金も増えています。相続税を軽減するために贈与するのはよいですが、自分が使うお金が不足してしまったら元も子もありません。
ライフプランを立てる
毎年生活するのに必要なお金と年金などの入ってくるお金を試算し、ライフプランを立ててみましょう。そうすれば、何にいくら必要になるのかが見えてきて、金銭の贈与のしすぎを防ぐことができます。
老人ホームへの入居費用や医療費も考慮する
超高齢化の時代を迎え、要介護状態になったときに老人ホームへの入居を希望する人が増えています。入居の際には、何百万という費用がかかることもあります。また加齢に伴い、病気にかかる頻度も高くなるため、介護や医療費に関するお金を確保しておくことが必要です。
現代の高齢者は多くの資産を持っているため、その資産を下の世代にどんどん移行させようと、政府は色々な控除制度を作っています。生前贈与をおこなうときは、それらの制度を上手に利用しながら、計画的に行うようにしましょう。わからないことがあれば、遺産相続に強い弁護士にアドバイスを受けながら行うのがおすすめです。
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