生前贈与を上手に取り入れることで相続税がどの程度変わるのか?
生前贈与は、高額な相続税を抑える上で有効な節税方法と言われています。
実際のところ、生前贈与を行った場合と相続税を支払った場合で、税金はどのくらい変わるのでしょうか。
この記事では、生前贈与を取り入れることによる相続税に対する節税効果を具体例にもとづき実際に計算しながら確認していきます。
生前贈与での節税効果
生前贈与することで相続税はどれくらい軽減できるのでしょうか?次のケースで計算してみましょう。
被相続人Aさんの相続財産3億円を妻、長男、長女の3人で相続する場合
生前贈与せずに相続した場合
相続財産(3億円)-基礎控除(4800万円)=2億5200万円
2億5200万円が課税遺産総額になります。
妻は相続財産の2分の1を、長男、長女はそれぞれ4分の1を相続するので、妻の課税対象額は1億2600万円、長男・長女の課税対象額は6300万円になります。
相続税の速算表に基づいて計算すると以下のようになります。
妻 | 1億2600万円×40%-1700万円=3340万円 |
---|---|
長男・長女 | それぞれ6300万円×30%-700万円=1190万円 |
各人の相続税の納付税額を[相続税の総額×(各人の課税価格÷課税価格の合計額)]で計算します。
妻 | 5720万円×(1億2600万円÷2億5200万円)=2860万円 |
---|---|
長男・長女 | それぞれ5720万円×(6300万円÷2億5200万円)=1430万円 |
ただし、妻は配偶者の税額軽減があるため納付税額は0になります。この場合の相続税の総額は長男と長女が納める1430万円×2=2860万円となります。
一方、妻と長男、長女の3人に毎年110万円ずつ10年間贈与した場合の計算は次のようになります。
10年後の相続財産は3億円-3300万円=2億6700万円
そこから基礎控除額4800万円を差し引くと課税遺産総額は2億1900万円になります。
妻の課税対象額:1億950万円、男・長女の課税対象額:5475万円
納付税額をイと同じ要領で計算をします。
妻の相続税額 | 2680万円 |
---|---|
長男・長女の相続税額 | それぞれ942.5万円 |
相続税の総額の元となる額
各人の相続税の納付税額
妻 | 4565万円×(1億950万円÷2億1900万円)=2282.5万円 |
---|---|
長男・長女 | それぞれ 4565万円×(5475万円÷2億1900万円)=1141.25万円 |
ただし、妻の納付税額は0となるため、相続税の総額は長男・長女が納める1141.25万円×2=2282万5000円となります。……(ロ)
まったく生前贈与をしない場合(イ)と比べると
生前贈与をした場合(ロ)は577万5000円の節税効果があることがわかります。
あえて贈与税を納める場合の節税効果
(ロ)のケースは贈与税が非課税となる年間110万円を10年間贈与した場合で計算していますが、次のケースのように贈与税がかかっても毎年の贈与額を増やす方が相続税の節税につながる場合もあります。
妻と長男、長女の3人に毎年310万円ずつ10年間贈与する場合、110万円は基礎控除となるので実質の贈与税課税対象額は200万円になります。
200万円以下の贈与税の税率は10%なので、20万円が1人当たりの1年間の贈与税額となり、10年間で3人では600万円を贈与税として納めることになります。
一方、3人が10年間に受ける贈与額は310万円×3人×10年間=9300万円なので、相続財産は3億円-9300万円=2億700万円になります。
そこから基礎控除額(3000万円+600万円×3人)=4800万円を差し引くので2億700万円-4800万円=1億5900万円が課税対象の相続財産となります。
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妻の課税対象額:7950万円
長男・長女の課税対象額:3975万円
そこから同様に相続税の計算をすると、相続税の総額は1437万5000円になります。……(ハ)
(ハ)の場合は贈与税を10年間で600万円納めていますが、それを足しても2037万5000円になります。
(イ)の生前贈与をまったくしない場合より822万5000円
(ロ)の贈与税を納めない生前贈与の場合より245万円も納付税額が少なくなります。
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まとめ
このように生前贈与を上手に取り入れることで相続税の節税が可能です。
実際には、相続財産の金額や種類などにより、効率の良い相続税節税方法は異なります。
詳細な検討は弁護士や税理士などの相続税に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
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