生前贈与の配偶者控除は条件を満たすなら利用すべき?
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生前贈与の配偶者控除とは
生前贈与の配偶者控除とは配偶者に対し
- 居住用の不動産
- 居住用の不動産を買うためのお金
いずれかを贈与した場合、2000万円までの非課税枠が加わる制度です。配偶者は贈与でも相続でも他の人より優遇されています。
また、婚姻期間が20年以上であるという条件があります。非課税枠を使っての節税対策や安定した住居を保つ手段として使われます。
贈与税の申告を忘れずに
配偶者控除は最大で2000万円の控除が受けられ、これに毎年の基礎控除額である110万円を加えれば2110万円までが非課税となります。これだけの額であれば贈与税がゼロとなることも考えられます。
しかし、配偶者控除の適用は申告が条件となっています。つまり、配偶者控除に適用するだろうと申告を怠ると大きな贈与税を払うことになりかねないです。
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生前贈与における配偶者控除の手続き
配偶者控除の手続きは通常の贈与税申告と同じく税務署で行います。配偶者控除を希望するときは以下のものが必要です。
- 財産の贈与を受けてから10日より後に作成された戸籍謄本(あるいは抄本)
- 財産の贈与を受けてから10日より後に作成された戸籍の附票
- 居住用不動産を取得したことの証明(登記事項証明書など)
さらに、配偶者控除の対象となる財産が金銭でなく住居そのものである場合は固定資産評価証明書など価値を評価する書類も必要となります。
手続きを忘れてしまった時の対処について
配偶者控除を知らず、すでに住居や住居の購入資金を贈与してしまった場合は、更正の請求を税務署に行うことで配偶者控除をあとから適用できます。
更正の請求は期限が6年とされています。配偶者控除を使いたかった人も諦めないでください。
生前贈与の配偶者控除のメリット
生前贈与の配偶者控除のメリットはこのようなものがあります。
- 最大2110万円まで控除額が広がる
- 相続開始前7年(3年)以内の贈与でも相続財産としてカウントされない
- 売却した時の所得税対策にもおすすめ
最大2110万円まで控除額が広がる
配偶者控除を使うメリットはなんといっても最大2110万円まで控除の枠が広がることです。この枠を広げて、贈与できる限りのものを無課税で移転させてしまいましょう。通常の贈与税であれば2000万円に対して700万円ほどの贈与税が付くためこれはかなりの節税効果を発揮します。
相続開始前7年(3年)以内の贈与でも相続財産としてカウントされない
生前贈与で注意すべきポイントとして相続開始7年前の贈与(2024年1月以前は3年前の贈与)が無効となるルールがあります。しかし、配偶者控除を受けた財産はその対象外です。相続開始7年以内の贈与であっても贈与のまま扱われ、相続財産が増えることはありません。
よって亡くなる直前の贈与となってしまった時の心配は要りません。
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配偶者控除でないものは贈与が無効になる
相続開始前7年(2024年1月以前は3年)以内に行われた贈与は無効となります。仮に、配偶者控除を使わず贈与税を支払った場合であっても贈与が無効となる以上贈与税も無効となります。
このルールが適用された財産は相続財産として課税対象となり、すべての財産を合計した相続税と相続開始前7年以内に支払った贈与税が差引されます。
(2023年税制改正の後、現在移行中にある生前贈与無効の対象期間は、2024年から段階的に延長されていきます。2031年以降は相続開始前7年以内の贈与すべてが相続財産と同等のものと扱われ課税対象となります。)
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売却した時の所得税対策にもおすすめ
不動産は、時に売却することが考えられます。例えば引っ越しをするときや夫婦そろって老人ホームに入る場合などは不動産が必要なくなってしまいます。たとえ売却するかもしれない建物でも持分を贈与しておけば所得税を安くできます。
財産の売却に対しては売却益のうち3000万円までが非課税となります。もし、不動産を夫婦で共有しておけば
まで非課税とすることができます。
持分を分ける契約とは?
持分とは、家の物理的な所有割合でなく「権利を所有している割合」です。したがって家を夫婦でそれぞれ2分の1という持分にした場合でもお互いが家全体を利用することができます。権利の所有が問題となるのは家を改築する時や、人に貸し出すときなどです。この時は持分を持っている人が法に基づいて話し合います。
持分を分ける契約は誰に持分をいくら与えるという贈与契約で、持ち分に応じたお金を税務署に申告します。家と土地のどちらかを贈与することも考えられます。
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生前贈与の配偶者控除のデメリット
生前贈与の配偶者控除は2000万円の非課税枠がとても魅力的に映ります。しかし、生前贈与の非課税枠にとらわれて、かえって多くの税金を支払う場合があることも忘れないでください。例えばこのようなデメリットがあります。
- 配偶者が先に亡くなると相続税が増える可能性
- 不動産取得税や登録免許税がかかる
- 一生に1度しか使えない
配偶者が先に亡くなると相続税が増える可能性
生前贈与の配偶者控除は配偶者に贈与することで相続税を節約する方法です。しかし、配偶者が先に亡くなってしまえば節税効果がなくなるどころか配偶者の財産が増えたことで相続税の問題となりかねません。
また、配偶者である本人に財産が戻ってきますからその登録免許税が0.4%無駄になります。
そもそも配偶者は相続税で最低1億6000万円の控除を受ける
とはいえ、配偶者は相続の際に最低1億6000万円の非課税枠が設けられていますから配偶者控除を使って生前贈与した分をまた相続したから相続税が上がるという場合は多くありません。
また、不動産を同居している親族に相続する場合は8割引きで相続できますから不動産そのものについては生前贈与の配偶者控除を無理に使わなくて良いでしょう。
不動産取得税や登録免許税がかかる
そもそも、配偶者に不動産を贈与する場合に不動産取得税や登録免許税がかかります。不動産取得税は価格の1.5~3%、登録免許税は価格の2%となっています。これも、無理に配偶者控除を使わなくて良い理由となることが少なくありません。
一生に一度しか使えない
生前贈与で配偶者控除を使えるのは一生に一度だけです。もし、110万円を少し超えるくらいで配偶者控除を使ってしまった場合でも、もう二度と利用することができません。
配偶者控除の枠いっぱいまでの贈与を決めてから、制度の利用を考えましょう。
一生に一度は、配偶者一人につき
配偶者控除における一生に一度とは、配偶者一人に対する決まりです。つまり配偶者が二人いた場合は一章で二度、生前贈与の配偶者控除を使うことができます。
とはいえ、配偶者控除には婚姻20年以上という縛りがあるので大抵の人は一生に一度しか使えない制度となっています。
生前贈与の配偶者控除の利用条件
生前贈与の配偶者控除はこのようにメリットとデメリットが両方とも大きいため必ずしも利用すべき制度とは言い切れません。家族の事情に合わせて利用を判断してください。
ここでは、生前贈与の配偶者控除をどのような条件で利用できるのかを詳しくご説明します。
婚姻期間が入籍してから20年以上
婚姻期間の20年とは入籍してからの期間です。つまり、婚姻届を出さずに婚姻関係を続けていた期間、すなわち事実婚の期間は算定されません。今一度、入籍をいつしたのか、いつから戸籍によって婚姻関係となっているのかを確認してください。
居住用の不動産であること
居住用の不動産であれば、住居でなく土地だけでも構いません。敷地の一部を贈与する場合や持分を贈与する場合にもこの制度が使えます。
居住用の不動産を購入するお金を贈与される場合もこの制度が使えます。
ただし、居住目的の不動産しか認められないため誰かに貸す目的や投資・転売目的の不動産であれば生前贈与の配偶者控除の対象となりません。
居住用の不動産やそのためのお金を贈与した事実が認められればこのような場合もOKです。
店舗と自宅が兼用の場合も生前贈与の配偶者控除の適用対象
居住用の不動産が配偶者控除になるのであれば自宅でお店を営んでいる場合が気になります。この場合でも居住用の部分から優先的に贈与を受けたとして配偶者控除の枠が使えます。90%以上が居住用部分であればすべてが居住用不動産となります。
もともと住んでいた借家を配偶者のお金で購入した場合
家に住んでいる=持家とは限りません。借家を買い上げて持ち家とすることも居住用不動産の購入といえます。
よって配偶者からもらったお金で今住んでいる借家を購入した場合はそのお金が生前贈与の配偶者控除の対象となります。
贈与を受けた翌年の3月15日まで
居住用の不動産だと証明する方法はシンプルで、本当に住んでいることが証拠となります。具体的には受贈者が贈与を受けた翌年の3月15日まで住み、引き続き住む見込みがあればOKです。
すぐに申告できなくても配偶者控除の適用は可能です。贈与税の更正の請求は6年の期限が設けられているからです。
同じ配偶者間では一生に一度だけ
繰り返しますが配偶者控除は一生に一度しか使えません。しかし、このルールは夫婦ごとに一生に一度と決められているので夫あるいは妻が変われば、婚姻20年以上などの条件によって利用できるようになります。
したがって、贈与をする配偶者が元配偶者から配偶者控除を利用した贈与を受けていた場合には、配偶者控除の利用が可能です。
生前贈与の配偶者控除を検討するなら弁護士に相談を
節税対策は一つの制度によって有利になっても他の制度で不利になるケースがよくあります。生前贈与の場合は常に理想通りに進まないことを覚悟して最善の選択肢を見つけましょう。贈与税と相続税の比較計算は難しく、適用される控除が配偶者控除だけとは限りません。税金を減らして財産を多く遺したいと考えているなら弁護士と一緒に財産分割を検討しましょう。間違いなく弁護士費用より大きな財産を守ることができます。
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