等価交換方式による相続税の減税はメリットが多い?

等価交換方式とはどういうもの
使わない土地を持っているので、うまく活用をしたいけれど、どうしたらいいのか分からない。また、やる気はあるけれど資金がないため、手を付けられない…そういう人は少なくないでしょう。土地の活用方法はいろいろありますが、どれも資金が必要そうです。その中でもメリットの多い土地活用手法のひとつが等価交換方式です。
等価交換方式とは
等価交換方式とは、土地を持っている人と土地開発業者(デベロッパー)とが共同で賃貸マンションや貸ビルを建設する事業の方式のことをいいます。
土地を持っている地主が土地を出資し、デベロッパーは建築費を出資するかたちで建築物をつくります。つまり土地所有者とデベロッパーのそれぞれが土地を有効活用していく方法なのです。
建設後、土地の一部と建物の一部が等価になるように、それぞれが土地と建築物の所有権を交換して事業をスタートします。この方式によって、土地所有者は資金を負担せずに、(借入なしで)建物を取得でき、デベロッパーは高額な土地を取得するための資金やリスクを軽減できます。
等価交換方式のしくみの実例
ここで簡単に、等価交換方式の具体例を示しましょう。
評価額が8億円の土地に2億円の建築費でマンションを建てるとします。その場合、かかる費用の総額は10億円になります。この条件を等価交換方式にあてはめてみます。
土地は所有者が提供し、建築費はデベロッパーが負担するので負担割合は土地所有者とデベロッパーで8:2になります。
土地の所有者8億円:デベロッパー2億円
建物が完成した後に等価交換をすると、土地所有者は土地と建物の8割の所有権を持ち、デベロッパーは土地と建物の2割を持つことになります。
具体的に式にすると以下のようになります。
土地所有者 土地の8割=6億4000万円、建物の8割=1億6000万円
デベロッパー 土地の2割=1億6000万円、建物の2割=4000万円
等価交換方式のメリット
等価交換方式を使うメリットは様々です。それぞれのメリットを見ていきましょう。
- 借入金が必要ない(ローンなしで賃貸マンションの経営ができる)
- 土地が貸家建付地として評価される。
- 土地を譲渡することになるものの、贈与税などがかからない。したがって無税で譲渡できる。
- ローンの負担なしで賃貸収入を得ることができる。
- 貸家の評価減ができることで、節税になる。
- 設計や施工、建築後のメンテナンスなどをブローカーに一任できる
土地を持っているだけで、建物の設計や施工の知識がなければ、うまくできないでしょう。そこで設計、施工、建築後の管理まで一貫してデベロッパーに任せることができれば、時間的にもロスがありません。また、今まで知ることがなかったデベロッパーの情報やノウハウを知ることができるのも、大きなメリットと言えるでしょう。活用していない土地を持っているけれど、資金がない土地所有者でも、デベロッパーと手を組むことで、持っている土地に資産価値の高い物件を建てることができます。さらに、家賃収入という毎月定期的に入ってくる利益まで得ることができるのです。
デベロッパーの良し悪しをきちんと見極めよう
等価交換が成功するかしないかは、デベロッパーの質や力にも左右されます。どんなに立地のよい土地を持っていたとしても、設計や施工が上手くなければ、いい物件は立ちません。また、運用のノウハウを豊富に持っているデベロッパーであるかは、きちんと調べて見極める必要があります。
等価交換方式のデメリット
メリットが多い等価交換方式ですが、もちろんデメリットもあります。
- 土地の一部を手放さないといけない。
- 設計や施工、土地の評価額について、デベロッパーに主導権を握られてしまうことが多い。
- デベロッパーが取得部分を譲渡した場合、権利者が多人数になってしまうことも。
- デベロッパーのビジネススタイルに影響されてしまい、自分が望む不動産を得られないことがある。
- 等価交換比率に基準がないため、デベロッパーの言いなりにされそうになる
このように等価交換方式はいいことばかりではありません。そのため、デベロッパーから提案があっても安易に飛びつかず、冷静にやるかやらないかを判断する必要があります。
等価交換方式を利用して土地の評価額をさげる
等価交換方式を利用することで、土地の評価額を下げ、結果節税が期待できます。
例えば、土地所有者は8億円の土地を更地で持っている場合、相続時に8億円の評価額になってしまいます。そうなると、その相続税は大変なものです。そこで、等価交換方式で賃貸マンションを建てることで次のように評価額を下げることができます。
8億円の土地に2億円の賃貸マンションを建設した場合の等価交換方式
| 土地所有者 | 土地の8割=6億4000万円、建物の8割=1億6000万円 |
|---|---|
| デベロッパー | 土地の2割=1億6000万円、建物の2割=4000万円 |
土地の評価額
等価交換で6億4000万円 ⇒ さらに借地権割合60%、3億8400万円の評価額になります。
建物の評価額
等価交換で1億6000万円 ⇒ さらに借家権割合30%、4800万円の評価額になります。
土地と建物の合計は4億3200万円となりますから、当初の8億円よりも評価額を3億6800万円も減らすことに成功しました。
しかも、等価交換での建設なので、借金はありません。さらに、条件があえば、「小規模宅地等の特例」を受けることができ、さらに評価額を下げることもあります。
小規模宅地等の特例とは、相続した自宅の土地の評価額が80%減額される制度です。土地の広さは330平方メートルまでという条件はありますが、節税効果は非常に大きなものになります。
譲渡所得税を100%繰り延べできることも
等価交換は土地と同じ価値のある資産を交換するしくみです。本来は土地の譲渡には譲渡所得税がかかりますが、特例により一定の条件に当てはまれば、譲渡所得税の課税を100%繰り延べできるのです。
土地を渡して建物をもらうため、相続税評価も低くなるため、相続税の節税が期待できます。
等価交換方式について詳しく知りたいときは弁護士に相談
等価交換方式を成功させるためには、デベロッパーの言いなりにならないことがポイントです。本当は貸しビルを建てたかったのに、デベロッパーの意向で分譲マンションになってしまったなどは、よくあることです。
等価交換方式を利用するときは、法律の知識のある専門家にアドバイスをあおぐことも大切です。せっかくの土地を上手に活用するためにも、慎重に検討することをおすすめします。
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