土地の形状・環境で土地の評価額が変わる場合も
間口が狭く奥行きが長い土地や形がいびつな土地は、住宅などを建てるときに使い勝手がよくないので土地の評価が減額されます。また、騒音が酷い、日照時間が少ないなどの住環境が良くない土地についても、評価が下がります。評価額の計算は非常に難しいため、遺産相続に詳しい弁護士などの専門家にお任せするのがおすすめです。
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間口が狭く奥行きが長い土地の評価額が下がる
土地の評価額はきれいな四角の形をした土地を想定してつけられたものですが、現実的にはきれいに形の整った土地はそうありません。実際には、細長い土地や三角形の土地などさまざまな形の土地があります。相続税額を計算するためにそれらの土地の評価額を算出するときは、補正率をかけて実際の評価額に近づけるようにしています。
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間口が狭い土地
間口とは、土地が道路に面している部分です。一定の面積まで評価額が80%も減額される小規模宅地や、評価を大幅に下げられる広大地ほどではありませんが、間口が狭く奥行きが長い立地は使い勝手がよくないため、評価額が下がります。
間口の狭い土地の評価額を計算する際には、「間口狭小補正」という補正がなされます。これは、普通住宅地で間口が8メートル以下の場合に適用される補正率のことを指します。評価額を計算するときに使用する計算式は以下の通りです。
間口狭小補正率は、間口が狭いほど大きくなります。また、地区区分(住宅地や商業といった土地の種類)と間口の距離によって変わってきます。
奥行きが長い土地
奥行きが長い土地は、細長い家屋しか建てられません。正方形の建物に比較して長方形の建物は使い勝手がよくないため、「奥行長大補正率」という補正をかけて計算され、正方形の土地よりも評価額が低くなる傾向があります。
奥行が極端に長い土地の評価額を算出するときに使用する計算式は以下の通りです。
奥行価格補正率は、ビル街地区、繁華街地区、普通住宅地区などの土地区分の種類や奥行きの長さによって異なります。
間口が狭く奥行きが長い土地
間口が狭い土地は、俗に「うなぎの寝床」といわれる町屋のように、奥行きが長い家屋が建てられる傾向があります。その場合は、間口狭小補正率と奥行長大補正率の二つを使って評価額を計算します。
間口が狭く、なおかつ奥行きが長い土地の計算方法は以下の通りです。
ただし、当該土地が商業地にある場合は、間口が狭くて奥行きが長い土地であってもあまり評価額が下がらないことがあります。家屋ではなく店舗として使うことには、あまり不都合がないからです。
不整形な土地やがけ地なども評価額は下がる
きれいな四角形ではない形状の土地のことを「不整形地」と言いますが、それら不整形地は形の整った土地と比較すると一般的に宅地として利用がしにくいので、その分評価額が安くなります。また、土地の一部が斜面になっている「がけ地」と呼ばれる土地も同様に、評価は下がります。
不整形地の評価方法
その土地が仮にきれいな長方形または正方形の土地(整形地)であった場合の想定図を描き、その想定整形地と元の土地との間に生じる「かげ地」と言われる土地面積の割合を算出します。かげ地の割合が大きければ大きいほど減額率が高くなり、相続税の評価額は下がります。
不整形地の評価は次のような手順で定められます。
- 整形地としての路線価の算定
- 地積区分を調べる
- かげ地割合の算定
- 不整形補正率の確認
- 評価額の計算
①整形地としての路線価の算定
その土地の形状がきれいな四角形であると仮定して、路線価を算出します。路線価は国税庁のホームページか税務署でだれでも閲覧することが可能となっているので、どちらかで調べてみましょう。
②地積区分を調べる
国税庁のホームページに記載されている地積区分表で、当該土地の立地と面積から表のどこにあてはまるかを調べます。
地積区分 | A | B | C |
---|---|---|---|
地区区分 | |||
高度商業地区 | 1,000㎡未満 | 1,000㎡以上 1,500㎡未満 |
1,500㎡以上 |
繁華街地区 | 450㎡未満 | 4500㎡以上700㎡未満 | 700㎡以上 |
普通商業・併用住宅地区 | 650㎡未満 | 650㎡以上1,000㎡未満 | 1,000㎡以上 |
普通住宅地区 | 500㎡未満 | 500㎡以上7500㎡未満 | 750㎡以上 |
中小工場地区 | 3,500㎡未満 | 3,500㎡以上5,000㎡未満 | 5,000㎡以上 |
③かげ地割合の算定
次に、当該土地を長方形で囲むように線を引き、かげ地の割合を出します。想定整形地は道路に対して垂直になるように取るのが正確にかげ地割合を計算する秘訣です。計算式は以下のようになります。
(想定整形地の面積―評価対象地の面積)÷ 想定整形地の地積 = かげ地割合
④不整形補正率の確認
かげ地割合と、地積区分および地区区分との組み合わせから、不整形地補正率を確認します。不整形地補正率表についても、国税庁のホームページに記載されているので見てみましょう。
⑤評価額の計算
当該土地の実際の評価額を計算します。評価額は、整形地であるとした場合の1㎡あたりの路線価額に不整形地補正率をかけて計算します。
1㎡あたりの路線価 × 不整形地補正率 × 地積 = 評価額
がけ地を含む土地
一部が斜面になっている土地を「がけ地」と呼びます。平らな土地と比較すると利用価値が低くなるので、相続税評価を下げることができます。このような土地を評価する際には、全体の面積に対して、がけ地がどのくらいを占めているのかを計算します。
がけ地の割合が10%以上の場合に減額可能
がけ地の割合が全体の10%以上を占めている場合、がけ地補正率をかけて土地の評価額を減額することができます。がけ地の方位がどちらにあるかによっても補正率は変わります。最も減額率が大きいのは、がけ地が北側にある場合です。
がけ地の評価方法
がけ地の評価方法は次のように求めます。
路線価 × がけ地補正率×土地の面積=評価額
ただし、がけ地の状況によって補正率が異なるため、遺産相続に詳しい弁護士や税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士などに相談することが必要です。
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その他、土地の利用価値が著しく下がるケース
騒音が酷い、日当たりが悪いなど決して住み良いとは言えない土地については、「その利用価値が著しく低下している」として、本来の評価額より約10%減額されることがあります。その他、土壌が汚染されている土地や地下鉄が走っている土地も同様に、評価が低くなります。
住環境が良くない土地、用途に制限のある土地は評価が下がる
以下のように、住環境が良くない土地や用途に何らかの制限がかかるような土地は評価が下がる傾向があります。ただし、すでに土地の評価方法のひとつである「倍率方式」で使用される倍率や路線価がそれらのマイナス要素を反映している場合は、評価減の対象とはならないため注意が必要です。
- 住環境が良くない土地
- 土壌が汚染されている土地
- 地下に鉄道や高速道路などが通っている土地
- 埋蔵文化財がある土地
住環境が良くない土地
以下のような環境にある土地は住みやすいといえないため、評価が下がります。
- 道路より低い位置にある(それぞれが周辺の宅地に比べて著しく高低差がある場合)
- 道路より高い位置にある
- 地盤に著しい凹凸がある
- 震動が甚だしい
- 騒音がある
- 日照が阻害されている(法律の基準を超えた日照阻害がある場合)
- 異臭がする
- 墓地に隣接している
- 高圧線の下にある
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土壌が汚染されている土地
土壌が有害化学物質などで汚染されている土地は、人への健康被害をもたらす危険性があるため、評価は低くなります。しかし、評価が低くなるのは「課税時期において評価対象地の土壌汚染が判明している場合」のみであり、「土壌汚染の可能性がある」など、はっきりしたことがわからない段階では土壌汚染地と評価することができないことに注意が必要です。
地下に鉄道や高速道路などが通っている土地
鉄道や高速道路のトンネルの上にある土地には、「区分地上権」が設定されています。「区分地上権」とは、鉄道や高速道路のトンネルなどが地下にある場合の空間部分の権利のことです。この権利が設定されている場所では、建物を建てる場合に高さや荷重などが制限されるため、制限の度合いに応じて土地の評価額が下がります。
埋蔵文化財がある土地
埋蔵文化財がある土地については、過去の調査や試掘調査等から文化財がその土地に確実に存在すると判断された場合に限り、「必要な発掘調査費用相当額」の80%をその土地の路線価から控除することが認められています。ただし、住宅を建設する場合の工事の出来る範囲や建物の建築制限については反映されていないことに留意することが必要です。
土地の評価額で分からないことは弁護士に相談を
土地の評価は、どのケースも判断や計算の仕方がとても複雑です。土地はどれをとってもひとつとして同じものはなく、株式の評価などと比べても難しさが違います。そのため、相続税の計算に使用する土地の評価額を算出する際には、遺産相続に強い弁護士などの専門家に委ねたほうがよいと言えます。その場合は、不動産鑑定士や土地家屋調査士など土地評価に強い専門家と連携している弁護士などに相談するとベストでしょう。
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