ゴルフ会員権で負担付贈与を行えば効果的な節税対策になる
生前贈与で節税するポイントは、相続税評価額が通常の取引価格より低くなる財産を与えることです。ゴルフ会員権は評価額が通常の取引価格の70%になり、現金で贈与するより税額を抑えられます。さらに、借金などマイナスの財産も同時に与える「負担付贈与」を活用すれば、プラスとマイナスが相殺され贈与税の大幅圧縮が可能です。
ゴルフ会員権とは
ゴルフ会員権を持っているのはゴルフ好きの人だけとは限りません。会員権はかつてバブル期に投資の対象になったため、ゴルフはしないけれど会員権は持っていて、相続・贈与に際しどう扱うか悩んでいるという場合もあります。まずはゴルフ会員権について説明します。
ゴルフ会員権とは?メリット・デメリットは?
ゴルフをやっていない人やバブル期を知らない世代にとって、ゴルフ会員権と聞いてもピンとこない人が多いのではないでしょうか。そもそもゴルフ会員権とはどんなもので、会員権を持つとどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ゴルフ会員権とは
ゴルフ好きの中でも「月に何度もプレーしたい」「自分のホームコースを持ちたい」という場合、ゴルフ会員権を購入してコースのメンバーになることができます。近年は誰でも好きなコースを自由に予約してプレーできますが、一昔前は会員でないと予約でいきないコースも多かったのです。また、会員権を持つことは一種のステータスでもありました。バブル期は会員権投資対象となり価格が1億円を超えることも珍しくありませんでした。会員権の価格はバブル崩壊後は大きく値下がりし、塩漬けになっているケースも多いです。
メリット・デメリット
会員になると、プレー料金が割安になり月に何度もラウンドしやすくなる、また春や秋などのゴルフシーズンでもビジターより優先的に予約できるといったメリットがあります。一方、会員権の価格はバブル期より大幅に下がった現在でも全国平均で100万円を超え、会員になった後は年会費の負担もかかります。また、購入時から値段が下がるリスクもはらんでいます。
ゴルフ会員権は売却できる
ゴルフ会員権は相続・贈与することが可能です。しかしプレー料金や予約面でメリットがあっても、ゴルフ会員権を引き継いだ人がゴルフをしない場合は魅力を感じないでしょう。そんな時はゴルフ会員権を売却することも可能です。ただし時期や手続き費用に注意が必要です。
ゴルフ会員権の売却は相続後3年以内に
ゴルフ会員権の相続には相続税が、売却で利益が出ると所得税がかかり、二重の負担が発生します。このため、相続税の申告期限から3年以内に相続財産を売却した場合は税負担を軽減する措置が用意されています。ゴルフ会員権を相続・贈与で受け取ったものの使わない場合は、3年以内の売却を検討しましょう。
ゴルフ会員権は売却できるが費用がかかる
ゴルフ会員権の売却は専門業者を利用するのが一般的ですが、業者に依頼する前にゴルフ場に名義書換えの必要性や年会費の扱いなどを確認する必要があります。名義書換えにかかる費用は数十万円、場合によっては100万円程度かかるケースもあるため、注意が必要です。
生前贈与するなら現金よりゴルフ会員権
生前贈与を検討している場合、現金をゴルフ会員権に換えて贈与するほうが、節税効果が得られます。生前贈与で節税するポイントは、相続税評価額が通常の取引価格より低くなる財産を与えることなのですが、それが可能な財産が「ゴルフ会員権」なのです。
ゴルフ会員権の節税効果
では、仮に1,000万円分の財産を「現金」「ゴルフ会員権」の2パターンで生前贈与した場合、どれくらい違いが出るのでしょうか?
ケース1:現金で生前贈与した場合
贈与税の場合、通常の取引価格ではなく相続税評価額をもとに課税額を計算します。現金で生前贈与するなら、当然のことながら1,000万円の評価額はそのまま1,000万円となります。
ケース2:ゴルフ会員権で生前贈与した場合
一方、ゴルフ会員権の相続税評価額は、通常の取引価格の70%で評価されます(取引相場があるゴルフ会員権の場合)。つまり1,000万円分のゴルフ会員権の評価額は700万円となり、現金で贈与するより評価額を300万円も下げることができるのです。
評価方法は取引相場の有無で異なる
前述のケースは取引相場があるゴルフ会員権について説明しましたが、ゴルフ会員権の中には取引相場がないものもあります。取引相場の有無で評価方法がどのように異なるのか説明しておきます。
取引相場があるゴルフ会員権
取引相場があるゴルフ会員権は、取引価格の70%を評価額とします。取引価格に含まれない預託金がある場合は、ケース別に以下のように計算します。
評価額 = 課税時期の取引価格 × 70% + 返還される預託金
<課税時期から一定期間を経過した後に預託金の返還を受ける場合>
評価額 = 課税時期の取引価格 × 70% + その期間に預託金を運用した場合に返還を受ける額(現在価値)
取引相場がないゴルフ会員権
取引相場がないゴルフ会員権の評価方法は、会員権の種類によって異なります。
ゴルフ場を経営する法人の課税時期における株式を評価した価額を相続税の評価額とします。
<B:株主であり、預託金等を預託しなければ会員となれない会員>
Aの株式の価額と取引相場がある場合に計算した預託金の額を足したものが評価額となります。なお、預託金が一定期間の経過後に返還される場合は、現在価値が評価額となります。
<C:預託金等を預託しないと会員になれない会員権>
預託金がすぐに返還される場合は預託金額が評価額です。返還まで時間がかかる場合は現在価値が評価額となります。
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ゴルフ会員権は負担付贈与で節税効果あり
負担付贈与とは、贈与をする人(贈与者)が贈与を受ける人(受贈者)に一定の負担を条件に財産を与える贈与方法です。この場合の負担とは、具体的には「自宅を譲るのでローンの返済を引き継いでほしい」「亡くなるまで身の回りの世話をしてほしい」といった内容です。
ゴルフ会員権の負担付贈与
譲りたいゴルフ会員権がありローンの返済が終わっていない場合、負担付贈与を活用すれば、受贈者にプラスの財産(会員権)とマイナスの財産(ローン返済)を同時に渡すことになります。この手法を活用すれば贈与税を大幅に圧縮できるのです。
ローンで購入したゴルフ会員権を負担付贈与すると…
例えば父親が自己資金300万円、ローンで700万円を借り入れて1,000万円のゴルフ会員権を購入したとします。このゴルフ会員権を負担付贈与で長男に与える場合、相続税評価額は70%なので700万円となります。
贈与税がゼロになる
このとき評価額は700万円ですが、借金も700万円あるので差し引きゼロとなり、長男にかかる贈与税は0円となります。つまり1,000万円分の財産を贈与しているのに合法的に贈与税がかからずに済むのです。このようにゴルフ会員権の負担付贈与を活用すれば効果的な節税対策となります。
不動産の負担付贈与
「同様の手法を不動産の贈与にも活用すれば、相続対策として大いに役立つのでは?」と考えた方もいるかもしれません。しかし不動産を負担付贈与してもゴルフ会員権の場合と同じ効果は得られないのです。
不動産は通常の取引価格で評価される
実は、かつては不動産の負担付贈与で贈与税をゼロにできる時代がありました。しかし相続税対策として広く知られるようになったため現在は税制改正が行われ、節税効果は失われました。現行の制度では、不動産を負担付贈与した場合の相続税評価額は時価に変更されています。
現金からゴルフ会員権に変えておくのがベストなのか?
では、相続税を減らしたい人は今すぐ現金をゴルフ会員権に変えておくべきなのでしょうか?ゴルフ会員権は現金よりも評価額を下げられる点では節税に有利です。しかし贈与したゴルフ会員権がその後売却できるかどうかは別問題ですし、節税方法は他にもあるのです。
ゴルフ会員権を使った節税対策について詳しく知りたい方や、相続財産にゴルフ会員権が含まれていてどう扱うべきか迷っている方は、ぜひ遺産相続に強い弁護士に相談してみてください。
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