自宅を相続することになったら、相続財産としてどう評価する?

家を相続するイメージ

土地の相続税評価には、路線価と倍率方式が使われます。市街地には路線価が適用され、それ以外の地域は倍率方式によって算定されます。一方、家屋は固定資産税の評価がそのまま該当します。庭木や庭石、庭の池の高級な鯉や門、塀などは別評価となります。それぞれ細かなルールが決まっているので専門家に評価してもらったほうがよいでしょう。

土地の相続税評価額は路線価と倍率方式で算出される

土地につけられる価格は、4種類もあります。その4種類とは、取引価格、地価公示価格、相続税評価額(路線価方式)、固定資産税評価額のことを指します。中でも、相続税評価額は、「路線価方式」と「倍率方式」のいずれかの方式で算定されるものです。

路線価方式とは

路線価とは、市街地を形成する地域の路線(不特定多数が通行する道路)に面する宅地の1㎡当たりの評価額を指します。路線価は毎年7月1日に更新され、国税庁のホームページで確認することができます。

路線価の評価額は低い

相続税の評価額は、取引価格や公示価格よりも低い金額で評価されています。同じ土地でも公示価格を100とすると相続税の評価額は、その8割程度に収まります。その理由とは、相続税評価額等が高いとそれにともない相続税が高くなるので、相続税を納めるために売却を急いでしまい、相続財産の土地が安く買いたたかれてしまうことを避けるためです。

土地の形状・立地によっては調整が必要になることも

土地の形状や立地はすべて同じわけではありません。間口の狭い土地もあれば、道路に面している土地もあります。そのため、土地の形状や立地に応じて補正を加え、より適正な土地の評価額を割り出す必要があります。

倍率方式とは

一方、倍率方式とは路線価が定められていない土地の評価に使用されます。倍率方式で土地の価格を決めるときは、市町村によって定められた土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。

固定資産税評価額とは

土地や建物を持っている人はだれでも、その土地や建物のある市町村に対して「固定資産税」という税金を納めます。市町村でその固定資産税を算定するための基準となる価額が、固定資産税評価額と言われるものです。固定資産税評価額は3年に1回改訂されます。

宅地の評価は固定資産税の1.1倍

宅地については、固定資産税の1.1倍で評価されます。固定資産税評価額が公示価格の70%相当、相続税評価額が公示価格の80%相当になっているため、固定資産税評価額の8/7が相続税評価額に相当することから「1.1」倍になっているのです。

宅地以外の土地は固定資産税×倍率で計算

宅地以外の土地は、「固定資産税×倍率」で計算されます。該当地の倍率は、国税庁のホームページに記載されている「財産評価基準書」で確認することが可能です。たとえば、倍率が2.0で固定資産税評価額が3千万の土地だと、評価額は以下のようになります。

3000(万円)× 2.0 = 6000(万円)

自宅の評価方法とは

自宅の評価の仕方は全国一律

土地(宅地)の評価額の計算には「路線価方式」と「倍率方式」が用いられますが、自宅(家屋)の評価額の算出は「倍率方式」のみ使用されます。自宅の評価は全国一律で固定資産税評価額の1.0倍となっているため、固定資産評価額がそのまま相続財産としての評価になります。

そのため、路線価方式では補正が必要となるような土地(間口が狭い土地、正面と側方に道路がある土地、1割以上がけ地のある土地など)に家屋が立っている場合でも、評価額は固定資産税評価額と同じになります。

また、相続した自宅にあった家財道具や絵画も評価の対象となります。調達価格がないものは、新品の商売価格から経過年数に応じた売却費を差し引いて計算します。

建築中の家屋を相続する場合の評価額は?

では、相続を開始した時点で相続財産となる家屋が建築中の場合は、どのように評価すればよいでしょうか?完成していない家屋には固定資産税の評価額がついていないため、人が住めるようになっている家屋とは別に評価をする必要があります。

費用現価とは

費用原価とは、被相続人が死亡した日(相続が開始される日)までにかかった費用(建築費)を、金額に換算したものです。主に、建築材料費や施工費などが費用原価の対象となります。建築中の家屋を相続する場合は、「費用現価の70%」で評価します。

建築業者から「進捗率証明書」をもらうこと

費用原価は、家屋の総工費に工事進捗率を掛け算した値で算出します。そのため、建築業者に工事進捗率証明書をもらえるよう依頼することが必要です。
例えば「2000万円の建築費用の家屋で進捗率50%」の場合、費用原価は

2000万円 × 50% = 1000万円

相続税評価額は、費用原価の70%となるので

1000万円 ×70% = 700万円

となります。

自宅の庭や家の設備はどう評価される?

家屋には住まいの建物だけでなく、それに付随するものがあります。例えば電気やガス、給湯器などの附帯設備は家屋の評価額に含まれますが、庭木や庭石、庭の池の高級な鯉や門、塀などは家屋とは別に評価されます。

庭園やそれに付随する設備の相続財産としての評価は?

庭園にある設備など(庭木や庭石だけでなく、庭池など)は、相続時にその財産を中古で入手する場合の金額、すなわち調達価額の70%が評価額となります。これらの設備は年数とともに劣化していることから原価償却が認められるため、次のように計算されます。

調達価額 = {再建築価額(相続時にその設備を新たに作る場合にかかる費用)-(経過年数に応じた償却費)}×70%

調達価額とは、相続税の課税時点でその財産を現状のまま取得する場合の評価額のことを指します。例えば相続する家屋の庭に庭木があった場合は、その庭木が植木屋さんで売っているときの価格で評価をするのではなく、その庭木を相続税の課税時点の状態にするための購入費用や運送費用、植林手数料などもすべて含めた金額で評価します。

ただし、相続税額を算出するために庭が財産評価の対象となるのは、歴史的・文化的価値のあるような庭園に限られます。一般家庭にあるごく普通の庭を財産評価の対象として扱うことは、ほぼないと言えるでしょう。

駐車場の評価はどうすればいい?

駐車場に関しては、どのように使われているかによって計算方法が異なります。相続税の節税対策として、「土地を貸し駐車場にすれば貸付地として評価が下がるのではないか」と考える人は多いかもしれません。しかし、個々のケースよって評価は異なるため、遺産相続に強い弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

自宅の駐車場として使っている場合 自用地として路線価方式または倍率方式で計算します。
貸し駐車場として貸している場合 自用地として路線価方式または倍率方式で計算します。

自宅の敷地にアパートを建て入居者が駐車場として利用している場合 貸家建付地としての評価になります。「自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合)」という形で算出できます。
自分が貸した土地で他人が駐車場を経営している場合 貸付地として評価されるため、評価額が減額されます。

自宅を相続財産として評価する必要があるなら早めに弁護士に相談を

相続はいつ起こるかわかりません。「相続なんてまだまだ先」。そう思っていて相続対策を先延ばしにしていると、相続する時になって自宅を相続するときに何が財産となるのかについての判断に困ることでしょう。

いざというときに慌てないように、被相続人が元気なうちに、何が相続財産になって何が相続財産にならないのかについて、遺産相続に強い弁護士や税理士などの専門家に聞いておくといいでしょう。また相続財産を評価する際の方法についても、細かなルールや例外があります。そのことも併せて、弁護士などの専門家に速めに相談することをおすすめします。

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