死亡した人(死亡前)の預金をおろしたら罪になる?相続預金引き出しの扱いは?

ATMでお金引き出し
家族が病床にいて余命がわずかという場合や、急に亡くなってしまったとき、葬儀費用や病院への支払いはどうしたらよいのでしょうか。

手元に現金がないからといって死亡前や死亡後に家族の預金を勝手におろすことにはリスクがあります。民事上のリスク、刑事上の罪となるのかについて解説します。

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死亡前(生前)に預金を引き出した場合は罪になる?

銀行が口座名義人の死亡を知ると個人の口座は凍結されてしまいますので、死亡前に預金を引き出そうと考えるかたもいらっしゃいます。

死期が迫っているご家族によって扶養されていて預金をおろしておかないと生活費に困ってしまうケースもありますし、葬儀費用・病院や介護の費用を立て替えられない場合に、現金が必要になるのは当然でしょう。

本人の意思が確認できれば問題ない

罪になるか否かという点では、口座名義人本人の意思が確認できれば、問題ありません。

家族が代理で銀行へ赴き、本人に代わって預金をおろすようなことはよくありますし、本人の意思ならば使途も自由です。ただし、客観的に見て本人の意思が確認できない場合や、本人が理解していないような状況であれば、たとえ頼まれて行ったとしても勝手に引き出したと疑われてしまうリスクがあるでしょう。

勝手におろすとトラブルになる可能性

本人の意思が確認できない状況で勝手に現金をおろすと、あとあとトラブルになる可能性があります。カードと暗証番号さえあれば現金を引き出すことは可能ですが、使い込みを疑われるなどして、他の相続人との関係が悪化してしまうかもしれません。

罪になっても処罰なし

本人の意思とは関係なく勝手に預金を引き出すことは当然罪になりますし、窃盗罪で処罰されると考えられますよね。しかしこれが家族や親族による行為であった場合に窃盗罪や横領罪で告訴されることはありません。死亡直前の預金引き出しに限らず、家族・親族間の犯罪の一部には特例があり、基本的には処罰されないのです。

死亡後に預金をおろした場合は罪になる?

それでは、死亡後に預金をおろした場合はどうでしょうか?本人の意思は当然確認できませんので、問題になります。
ここでは、民事上の問題と刑事上の問題にわけてみていきます。

民事上の問題:罪になる可能性あり

不法行為として返還請求される場合も

口座名義人が死亡してしまった場合、預金は相続財産ですので他の相続人の相続分をおろしてしまったら不法行為となります。他の相続人に請求されたら当然返さなければなりません。

不当利得返還請求

ほかの相続人が受け取るべきだった相続財産を取得してしまうと、不当に利益を得たとして、不当利得返還請求されてしまいます。預金を勝手におろしてしまった場合にも請求される可能性があります。

損害賠償請求

相続財産を勝手に自分のものにしてしまった場合、不法行為により損害を与えたとして損害賠償請求されることもあります。
不当利益返還請求と損害賠償請求を同時に請求される可能性もあります。

相続放棄できなくなるリスクも

相続放棄をする場合には相続発生後3カ月以内に手続きをします。しかし、相続財産の一部でも使用した場合には相続を単純承認したとして、期間内でも相続放棄できなくなります。

預金をおろして使用することで単純承認したとみなされる可能性がありますから、故人に借金などがある場合には注意が必要です。
故人の葬儀費用に充てるなどした場合には、この限りではありませんが、領収書は必ず保存して何に使用したのか明確にする必要があります。

他の相続人の同意を得ること

また、故人名義の預金を葬儀費用などに使用する場合は不正に使用したと思われないよう、事前に他の相続人全員の了承を得ることをおすすめします。

刑事上の問題:罪にはならない

家族や親族による引き出しなら刑罰は課されない

死亡前に名義人の同意なく預金をおろした場合と同じく、家族や親族は死亡後に預金をおろしたとしても窃盗罪や横領罪で刑罰を課されることはありません。
これは親族相盗例という刑法の特例によるものです。「法は家庭に入らず」という考え方から、家族の間での窃盗や横領は罪に問わないことになっています。

ただし、親族以外の第三者が代理でおろす、あるいは相続人以外で名義人と同居していない親族(名義人の兄弟姉妹など)がおろす、といったケースは、特例の対象外になる可能性もあります。トラブルを避けるため、預金の引き出しは名義人に近い家族が行う方が良いでしょう。

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死亡後の預金引き出しに応じた銀行に罪はある?

死亡後に勝手に預金を引き出すことには問題がありますが、それに応じた銀行にも問題があるように思えますね。
しかし、銀行は罪に問われません。

銀行に責任が問われないのは「預金引き出しが誰の意思か」判断できないから

銀行側は、預金引き出しが名義人の意思により行われたものか、他人の意思によって行われたものかの判断ができないからです。
銀行へ責任を問うことはできませんので、相続発生後に預金を勝手におろされたくない場合は銀行へ連絡して口座凍結をしてください。

死亡前後の預金引き出しは弁護士に相談しましょう

家族の死亡前後に預金の引き出しが必要になるケースは少なくありません。しかし勝手に引き出すことには、さまざまなリスクがあります。

生活費や葬儀費用などのために、どうしても預金の引き出しが必要な場合は早めに弁護士などの専門家へ相談しましょう。
弁護士は、遺産分割協議や仮払い制度利用の手続きなど、安全に預金を引き出す方法を提案してくれます。

遺産分割協議を経て預金口座を相続する

遺産分割協議をして相続する人が決まれば、預金口座を相続(名義変更)して現金を引き出すことができます。

銀行預金が「遺産分割の対象となる」という最高裁の判例(平成28年)がありますので、相続分に応じてそのまま相続はできません。つまり相続人が複数いる場合に預金を相続するには、遺産分割を終えなければならないのです。

弁護士がスムーズな遺産分割、預金引き出しをサポート

ただし、遺言により預金を相続する人や相続割合が指定されていれば遺産分割協議をしなくても名義変更できる場合があります。

また、預金の相続では銀行へ「遺産分割協議書」「戸籍謄本」「印鑑証明書」「払戻請求書」などの書類を提出しなければなりません。スムーズな名義変更のためにも早めに弁護士へ相談するとよいでしょう。

仮払い制度の利用

民法の改正により2019年7月に施行された「相続された預貯金債権の仮払い制度」を利用すれば最大で150万円まで預金の引き出しが可能です。1金融機関ごとに最大150万円ですので、複数の金融機関に口座がある場合には、その合計額まで引き出せることになります。

必要書類を提出すれば、一人の相続人が単独で引き出すことも可能ですから、他の相続人の協力を得られない場合でも有効な手段です。

弁護士なら相続人の希望をふまえたアドバイスが可能

仮払い制度を利用して出金をすることで、単純承認したとみなされて相続放棄ができなくなることもあります。

出金したお金の使途が葬儀や故人の借金返済であれば、単純承認にはなりませんが、相続放棄の可能性がある相続では引き出した現金の取り扱いには注意が必要です。
弁護士に相談すれば、相続人の希望も考慮して預金の引き出しが行えるよう、どう対応すべきかアドバイスしてもらえます。

仮処分手続き

家庭裁判所への対応は弁護士へ早めに相談を

仮払い制度で出金できるのは預金残高のうち法定相続分の1/3と150万円の低いほうの金額までですから、預金残高によっては葬儀費用にも満たない、ということもあり得ます。

このような場合には家庭裁判所で仮処分手続きを行います。認められれば法定相続分までの出金が可能です。
仮処分手続きを希望する場合は、弁護士に早めの相談をおすすめします。

死亡直前・直後の預金引き出しで相続争いにならない方法

死亡直前あるいは死亡直後の預金引き出しは相続争いの種になりやすいです。死亡直前の場合は使い込みや使途不明金が原因となりますし、死亡直後についても葬儀費用が不透明であれば問題となりやすいです。

かつては被相続人死亡直後に相続人が法定相続分を引き出すことができましたが2016年の判例によって遺産分割協議が終わるまで勝手に被相続人の口座からお金を引き出すことが禁止になりました。

預金引き出しについて隠さない

預金引き出しについては隠さないこと、できれば相続人すべての同意をとってから引き出すことが求められます。いつ引き出したのか、何のために引き出したのかを明らかにすると相続争いが起きづらいです。

いくら相続人全員の戸籍謄本が必要でも誰かが代表して手続することが多いので、他の相続人への配慮に気をつけたいところです。

預金引き出しについては明細を記録する

被相続人の口座から預金引き出しが行われる場合については明細を記録することが無難です。明細の記録があれば残額だけでなくお金の使い道にも被相続人が納得しやすいです。

できれば被相続人がお元気なうちから明細を記録しておくことが望ましいです。相続税上は特に問題となりませんが、遺産分割において特別受益の問題解決につながります。特別受益とは他の相続人に比べてある相続人が得ている利益のことでそこに正当性がなければ特別受益を受けた相続人は遺産分割で不利に扱われます。

死亡前後の預金引き出しまとめ

家族の預金だからといって、死亡前後に勝手におろしてはいけません。他の相続人とトラブルになる可能性もありますし、あとで返金しなければならない場合もあります。自身の生活費などに使用することで相続放棄ができなくなる可能性もあります。

故人の預金は弁護士に早めに相談し、正式な手段で出金しましょう。遺産分割やその他の相続手続きについても専門家のサポートを受けるとよいでしょう。

被相続人の預金を誰かが管理しなければいけなくなったあたりで預金の使い方を弁護士と相談することがベストです。

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