孫への生前贈与で相続税を節税するには?非課税で渡す方法と注意点

孫を囲むおじいちゃんおばあちゃん


孫への生前贈与は、いまも相続税の節税に役立つ方法です。孫は原則として相続財産への「持ち戻し」の対象にならないため、亡くなる直前に贈与した分でも相続税の計算に加えられにくい、という強みがあります。

ただし、贈与のルールは近年変わり、まとまった額を一気に非課税で渡せる制度は縮小しました。これからは、学費や生活費をそのつど渡す方法や暦年贈与を組み合わせ、計画的に進めることが節税の鍵になります。

この記事では、孫への生前贈与で相続税を抑える具体的な方法と、渡し方の注意点をやさしく解説します。

孫への生前贈与は相続税の節税になる?

孫への生前贈与は相続税の節税になります。孫は「持ち戻し」の対象になりにくく、生前に渡した財産を相続財産から切り離しやすいためです。ただし、贈与を正しく成立させておかないと、節税どころか後で課税されることもあるため、しくみと手順を押さえておきます。

孫は「持ち戻し」の影響を受けにくい

孫への贈与は、原則として相続財産への持ち戻しの対象になりません。これは、子(法定相続人)への贈与にはない、孫贈与ならではの強みです。

「持ち戻し」とは、亡くなる前の一定期間に行われた贈与を、相続財産に加え直して相続税を計算する扱いのことです(正式には生前贈与加算といいます)。

この対象期間は、2023年の税制改正で、それまでの「3年以内」から「7年以内」へ段階的に延長されました。令和6年(2024年)1月1日以降の贈与から順に延び、完全に7年になるのは令和13年(2031年)1月以降に発生する相続からです(延長された3年超7年以内の分は、合計100万円を差し引けます)。

ただし、持ち戻しの対象になるのは「相続や遺贈で財産を受け取った人」への贈与に限られます。孫は通常、法定相続人でも遺言で財産を受け取る人でもないため、孫への贈与は持ち戻しの対象外です。つまり、亡くなる直前に渡しても相続財産に加えられにくく、その分だけ相続税を抑えられます。

次のような孫は、例外的に持ち戻しの対象になる点に注意します。

  • 親(被相続人の子)を先に亡くし、代わりに相続人となる孫(代襲相続人)
  • 遺言で財産を受け取る孫
  • 生命保険金や死亡退職金を受け取る孫
  • 後述の相続時精算課税を使って贈与を受けた孫

加算期間の延長など、生前贈与と相続税の関係はこちらで詳しく解説しています。

参考:国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

孫への贈与を成立させるポイント

贈与は「渡した」つもりでも、形が整っていないと税務署に認められず、相続財産として課税されることがあります。孫への贈与を確実に成立させるには、双方の合意・お金の管理・渡し方の3点を押さえます。

渡す側と受け取る側の合意で贈与は成立する

贈与は、渡す側と受け取る側の双方が合意してはじめて成立します。祖父母が孫名義の口座にお金を入れても、孫側が受け取ることを知らなければ、贈与は成立していません。

孫がまだ幼い場合は、親権者である親が孫の代わりに受け取りを承諾します。誰から・いつ・いくら受け取ったかを親子で把握し、贈与の事実を共有しておきます。

口約束でも贈与は成立しますが、後日「本当に贈与だったのか」を税務署に問われることがあります。合意の証拠を残すため、次に述べる贈与契約書を用意しておくと安心です。

口座やお金は孫(や親)の側で管理する

孫名義の口座でも、通帳や印鑑を祖父母が管理していると「名義預金」とみなされ、実質は祖父母の財産として相続税の対象になります。

名義預金と判断されると、贈与そのものがなかったものとして扱われます。これを避けるには、通帳・印鑑・キャッシュカードを孫(未成年なら親)が保管し、入出金も孫側で管理します。口座の届出印も、祖父母のものとは分けておきます。

「まだ使わせたくない」と祖父母が管理を続けると、贈与が否定されかねません。お金の管理を孫側へ移しておくことが、贈与を認めてもらううえで大切です。

贈与のたびに契約書を作り、渡し方に幅を持たせる

「最初から総額を分けて贈る約束だった」とみなされると(定期贈与)、初年度にまとめて贈与税がかかることがあります。毎年同じ時期に同じ額を贈り続けると、この定期贈与を疑われやすくなります。

対策は、贈与のたびにその都度合意し、契約書を1回ごとに作ることです。日付・贈与する人と受け取る人・金額・渡し方を記しておきます。ただし、時期や金額を変えれば必ず避けられるわけではなく、当初からまとめて贈る約束がなかったかで判断されます。

契約書や振込の記録は、その年ごとに贈与したことを示す資料になります。実際の評価は贈与の実態を含めて総合的に判断されるため、金額が大きいときなどは税理士や弁護士など専門家に確認すると安心です。

孫にお金を残すときに使える非課税のしくみ

孫に非課税でお金を渡す方法には、学費・生活費のつど渡し、暦年贈与、相続時精算課税、結婚・子育て資金の一括贈与があります。かつての目玉だった教育資金の一括贈与は終了したため、これからは恒久的に使える方法を軸に考えます。

学費・生活費は必要なつどの負担なら非課税

祖父母が孫の学費や生活費を、必要なときに必要な分だけ直接支払う場合は、通常必要と認められる範囲で贈与税がかかりません。決まった上限額がなく、もっとも使いやすい方法です。

親や祖父母などの扶養義務者(生活の面倒をみる義務がある家族)が、子や孫の生活費・教育費に充てるために渡すお金は、通常必要と認められる範囲であれば非課税です。入学金や授業料、家賃や仕送りなどを、そのつど負担するイメージです。

注意点は「そのつど・実際に使うこと」です。生活費や教育費の名目でも、渡したお金を孫が預金にまわしたり、株式や不動産の購入に充てたりすると、その分は贈与税の対象になります。数年分をまとめて渡すのも課税されやすいため避けます。

参考:国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合

暦年贈与と相続時精算課税

まとまった額を計画的に渡すなら、暦年贈与(年110万円まで非課税)と相続時精算課税(累計2,500万円まで)の2つがあります。孫の状況に合わせて選びます。

暦年贈与は、受け取る人1人あたり年110万円までなら贈与税がかからない基本の方法です。孫が複数の祖父母から同じ年にもらうと合算されるため、110万円は「もらう孫」ごとに見る点に注意します。前述のとおり、孫への暦年贈与は持ち戻しの対象になりにくく、コツコツ続けるほど効果があります。

相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ贈与するとき選べる制度で、累計2,500万円までは贈与時に税金がかかりません(超えた分は一律20%)。令和6年(2024年)からは、これとは別に年110万円の基礎控除も使えます。
ただし、相続時精算課税制度を使って渡した財産(基礎控除を超える分)は、相続のときに相続財産へ加え直して精算するしくみで、いったん選ぶと暦年贈与に戻ることはできません。孫が使うと持ち戻しや後述の2割加算の対象になり得るため、選択は慎重に検討します。

参考:国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

結婚・子育て資金の一括贈与

18歳以上50歳未満の子・孫へ、結婚・子育て資金をまとめて贈与する場合、最大1,000万円(うち結婚資金は300万円)まで非課税にできます。令和9年(2027年)3月末までの制度で、受け取る子・孫の前年の所得が1,000万円を超えると利用できません。

専用口座を作り、金融機関を通じて手続きします。使えるのは結婚式や引っ越し、出産・不妊治療、子の保育料などに限られ、領収書の提出が必要です。

使い切れずに残った分や、贈与した祖父母が亡くなったときの残額には税金がかかる場合があります。まとまった額を早めに渡したいときの選択肢ですが、手続きの手間と使いみちの制限をふまえて検討します。

参考:国税庁 No.4511 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

教育資金の一括贈与は令和8年3月末で終了

孫にまとまった教育資金(最大1,500万円)を非課税で渡せた「教育資金の一括贈与」は、令和8年(2026年)3月31日で受付を終了しました。

適用期限が延長されずに終了したため、2026年4月1日以降に新しく預け入れる分には使えません(3月末までに預けたお金は、引き続き非課税で学費などに使えます)。今後の教育費の援助は、前述の「必要なつど渡す方法」や暦年贈与を軸に考えるとよいでしょう。

参考:国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

孫に贈与する前に知っておく注意点

孫への贈与は節税に有効な一方、孫が財産を受け取る形によっては相続税が2割増しになるなど、思わぬ負担が生じることがあります。渡し方を決める前に確認しておきます。

孫が取得すると相続税が「2割加算」されることがある

孫が遺言や相続時精算課税などで財産を取得すると、その孫にかかる相続税は通常より2割高くなります(2割加算)。一方、生前の暦年贈与で持ち戻しの対象にならない渡し方なら、この加算は関係しません。

相続税の2割加算とは、亡くなった人の配偶者と子・親(一親等の血族)以外の人が財産を取得したとき、その人の相続税額を2割増しにするしくみです。孫は原則この対象です(親を亡くして孫が代わりに相続人になる代襲相続の場合は対象外)。

ポイントは「相続税がかかる場面かどうか」です。生前の暦年贈与で持ち戻しの対象外なら、その財産に相続税はかからないため2割加算も生じません。反対に、遺言で孫に遺す場合や相続時精算課税を使った場合は、孫に相続税がかかり2割加算の対象になります。どの方法で渡すかで負担が変わるため、渡し方の設計が大切です。

参考:国税庁 No.4157 相続税額の2割加算

孫を養子にする場合

孫を養子にすると、法定相続人が増えて相続税の節税になります。ただし、数に入れられる養子には人数制限があり、孫養子は相続税が2割加算される点に注意が必要です。

法定相続人が増え節税効果も

孫を養子にすると法定相続人が1人増え、基礎控除や生命保険の非課税枠が広がります。

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」、生命保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算します。相続人が1人増えれば、それぞれ600万円・500万円ずつ枠が増えます。さらに、本来は子から孫へと2回かかる相続を1回分飛ばせるため、次の世代の負担も軽くできます。

ただし、相続税の計算で数に入れられる養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。何人養子にしても、この上限を超えて控除枠は増えません。

孫養子は2割加算の対象になる

孫を養子にした場合、その孫(代襲相続人である場合を除く)は相続税が2割加算されます。節税の一方で、この上乗せがある点を見落とさないようにします。

法定相続人が増える利点はありますが、孫養子が実際に財産を相続すると、孫の相続税額は2割増しになります。控除枠が広がる効果と、2割加算で増える分の両方を見た上で、相続全体としてどちらを選ぶと得かを確かめた上での判断が必要です。

どちらが大きいかは、財産の構成や相続人の人数によって変わることから、手続きを進める前に試算しておくことが欠かせません。

孫への贈与は、渡し方しだいで効果が大きく変わり、相続の場面では財産の分け方や遺留分ともからみます。税額の計算だけなら税理士、財産の分け方や手続き全体まで含めて整えたいなら、提携税理士とも連携する弁護士に早めに相談すると安心です。生前からの計画的な相続対策は、こちらもあわせてご覧ください。

注目!

孫への生前贈与を含む相続対策で迷ったら弁護士に相談を

当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
初回相談無料の弁護士も数多く掲載しておりますし、どの弁護士もいきなり料金が発生するということはありません。まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

孫への生前贈与は、いまも相続税の節税に有効な方法です。孫は持ち戻しの対象になりにくく、生前に渡した財産を相続財産から切り離しやすいためです。

一方で、まとまった額を一気に非課税で渡せる制度は縮小し、教育資金の一括贈与も終了しました。これからは、学費や生活費をそのつど渡す方法や暦年贈与を中心に、時間をかけて計画的に進めることが節税の近道です。

渡し方によっては2割加算や持ち戻しの対象になり、かえって負担が増えることもあります。税額の計算は税理士、財産の分け方や手続き全体は弁護士と、専門家の力を借りながら、孫にも家族にも無理のない形で財産を遺しましょう。

遺産相続に強く評判の良い弁護士事務所を探す

遺産相続

相続問題で悩みを抱えていませんか

  • 相手がすでに弁護士に依頼している
  • 遺産分割の話し合いがまとまらない
  • 遺産を使い込まれているがどうすれば?