相続税の計算の流れ~4つのステップで相続税の仕組みを理解する
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相続税計算の流れを簡単に解説
相続税計算の流れは、このようになっています。
- 遺産と債務をすべて把握する
- 課税価格を計算する
- 相続税の総額を算出する
- 各人の相続税額を算定する
これだけ見ても遺産と課税価格が異なることや、相続税計算だけでも2段階の流れがあることがわかりますね。
詳しい工程はもっと複雑になるため独力での相続税申告は計算ミスや申告漏れにつながります。相続を無事に終えるためには先を見据えた行動と弁護士の協力が欠かせません。
遺産と債務をすべて把握します
遺産と債務をすべて把握します。そうしなければ相続税の計算が成り立ちません。
遺産となるものは被相続人、つまり亡くなった人が持っていたものやお金すべてです。
債務も同様に被相続人が支払う義務を持っていたすべてです。
遺産と債務を把握するためには家じゅうをくまなく探さなければいけません。心当たりのある人や会社にも逐一問い合わせをしてください。
財産をもれなく把握するためには財産目録の記帳が必須です。
遺産は絶対に見逃さないで!見逃しがちな遺産
遺産はどんな些細なものでも無視してはいけません。相続税の対象になりえるからです。あなたにとっては無価値でも実は市場価値を持っていたというパターンが多発しています。
例えばこのような遺産を見逃しがちです。
不動産
意外と知らない不動産を持っている場合があります。不動産は大きなものでも所有の根拠となる権利書がすぐに見つかるとは限りません。
有価証券
有価証券はお金に換えられるものですから立派な遺産です。価値が分からないからと放置しないでください。
骨董品
価値が分からないもの第一位。それは骨董品だと思います。骨董品に意外な価値が付くことや税務調査で詳しく聞かれることがあるので、絶対に処分しないでください。
ゴルフ会員権
ゴルフ会員権もお金になるものです。ゴルフ会員権も相続税計算で見逃しやすい財産のトップクラスです。
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他人名義の通帳
タンス預金として預金通帳を隠していることがあります。もし、他人名義でも「贈与契約の書面がない」場合は贈与が無効。よって被相続人の遺産となります。孫の名義で残されている場合が良くあります。
生命保険や死亡退職金などのみなし相続財産
生命保険や死亡退職金は死亡時に持っているという相続財産の定義に当てはまらないためみなし相続財産といいます。みなし相続財産は相続財産とは別に計算が行われる遺産です。
負債を見逃すことも大変なことになります
遺産だけでも探すものがたくさんあるのに、負債まで探すのは大変ですよね。しかし、負債の調査をおろそかにすると非常に大変なことになります。
負債を見つけないうちに相続放棄できなくなる
相続放棄は相続の事実を知ってから3か月以内にできる制度で、負債があまりに大きかったときや相続したくない時にその権利義務を放棄できます。相続放棄の期限後に債務が見つかった場合でも債務を見つけられなかった相当の理由がないと相続放棄できません。
相続税を払いすぎないために
債務が少額で相続によって得をする場合も、しっかり記録しましょう。
正の遺産も負の遺産も相続税計算で両方用いるからです。
相続財産の課税価格を計算します
遺産と負債をすべて把握したらいよいよ相続財産の課税価格を計算します。課税価格とは相続税の計算に使う金額のことです。
課税価格を計算するためにはこのようなステップを経ます
- 非課税対象の財産と債務を確定する
- 課税対象の財産をお金で計算する
- 相続人に相続開始まで3年以内に行われた贈与、遺贈の持ち戻し計算をする
非課税対象の財産と債務を把握する
遺産のうち所定の条件を満たした非課税財産があればそれを相続財産から除外します。さらに債務の支払いがある場合にもその分を相続財産から控除します。
非課税対象の財産には墓石や仏具、公益のために使われるお金、心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を得る権利などがあります。
葬儀費用は非課税となります
亡くなった後に被相続人のために支払われたお金として葬儀費用も非課税となります。ただし、葬儀費用のうち非課税とならないものもあるので詳しくは弁護士に相談することが良いでしょう。
課税対象の財産をお金に換算する
課税対象となる不動産や貴金属、骨董品はお金に換算しなければいけません。著作権や特許権など形のないものも相続税の課税対象となります。土地評価や有価証券の評価は時期や買い手から見た価値など様々な要素が関わります。
実務経験豊富な方であれば相続税申告のミスが出づらいです。
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生前贈与や遺贈の持ち戻し計算
生前贈与は相続開始前3年間に行われた財産を相続財産として持ち戻し計算を行います。遺贈によって受け継がれた財産についても持ち戻し計算の対象となります。
生前贈与の持ち戻しは相続人と遺贈した相手へ贈与した財産のみが対象となります。
よって孫や遺贈をしない他人への贈与はこの制度の対象外です。
みなし相続財産の計算
生命保険の死亡保険金と死亡退職金についてはそれぞれ
の控除をしたうえで課税価格に加えます。
法定相続人を確定し相続税の総額を算出します
課税価格が決まったらいよいよ相続税の総額を計算します。
相続税の総額を算出するうえで忘れてはいけないのが基礎控除です。基礎控除とは課税価格から以下の算出で控除するものです。
課税価格から基礎控除を差し引いたものを課税遺産総額と言います。
相続税の算出はこの課税遺産総額をもとに行います。
相続税総額の算出方法
相続税の総額を算出するためには課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定し、各人に割り振られた財産からそれぞれ相続税を算出し、再び合計します。
法定相続分はこちらを参考にしてください。
法定相続分 | |
---|---|
配偶者と子どもが相続人 | 配偶者に2分の1 子どもに2分の1 |
配偶者と直系尊属が相続人 | 配偶者に3分の2 直系尊属に2分の1 |
配偶者と兄弟姉妹が相続人 | 配偶者に4分の3 兄弟姉妹に4分の1 |
そして相続税総額の算出にはこちらの速算表を用います。平成27年から数字が変更されている点に注意してください。
定相続分に応ずる取得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | 0円 |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
例えば、被相続人の財産の課税遺産総額が4000万円で配偶者と2人の子供が法定相続人だったとします。
この場合は配偶者の法定相続分が2000万円となり、子の法定相続分はそれぞれ1000万円ずつとなりますから、相続税の合計は
となります。
法定相続人の確定は戸籍で行う
法定相続人は基本的に配偶者と子になりますが、子がいない場合は孫、孫もいない場合は兄弟と状況に応じて変わっていきます。
しかも、一緒に住んでいた家族が知らない法定相続人がいることもあります。よって法定相続人を確定するためには被相続人の戸籍を出生から死亡まですべて辿らなければいけません。
養子や非嫡出子も法定相続人です
養子や非嫡出子も法定相続人となります。法定相続分については養子、実子、非嫡出子はみな等しく与えられます。嫡出子と非嫡出子の差についても平成25年の最高裁判決で違憲と判断されました。
遺産分割し、各人の相続税を算定します
課税遺産総額から相続税の総額を算定できたら、晴れて遺産分割を行います。遺産分割は10か月以内に行わなければいけませんが、もし決着がつかなければ法定相続分ずつ遺産を分けた体で相続税を納めます。
遺産分割が終わったら、すでに算定している相続税の総額を「実際に分けた遺産の比率で」分けます。これで各人の相続税額の算定がスタートします。
相続税額の算定
相続税額の算定には各人に応じた控除や加算がされます。ここではよく知られているものを紹介しますが、実際はもっと複雑です。
配偶者控除
配偶者控除は配偶者についてされる控除です。よく法定相続分か1億6000万円の多い方までの相続であれば相続税がゼロになると言われていますが、実はこのような算定がされています。
配偶者控除の額をよくよく算定すると法定相続分にかかる相続税額が限度となっています。それ以上に相続をしても「少ない方」である法定相続分が算定に使われますし、法定相続分より少ない場合でも結局は法定相続分が算定に使われます。
未成年控除
未成年控除は以下の金額で算定されます。こちらは簡単です。
未成年控除の算定において1年に満たない期間は切り捨てとなります。例えば13歳11か月の場合は13歳からの7年として算定します。
障碍者控除
障碍者控除の額は以下金額で算定されます。こちらも算定が単純です。
特別障害者の場合は10万円でなく20万円が算定の基礎になります。
贈与税額の控除
生前贈与を受けて、贈与税を支払っているなら二重課税になってしまいます。相続税の算定に使われた以上は贈与税を相殺しなければいけません。もし、贈与税の方が多ければ還付されます。
相続時一括清算制度を使った場合も同様の処理がされますす。
相続税額の2割加算
被相続人の配偶者、父母、子以外が遺産を相続した場合は相続税が2割加算されたうえで控除の算定をします。
具体的には兄弟、遺贈を受けた他人、孫養子が考えられます。養子は子として扱われますが孫についてはすでに2親等の関係があるため養子にする・しない関係なく2割加算がされます。
相続の計算は弁護士のサポートが不可欠です
この記事を読まれて「こんなにやることがあるの?」と思われたでしょう。それぞれのポイントについて想像以上の細かさで行うのが相続税計算の難しさです。
あまりに計算が難しいため、法律のプロでさえ実務経験が少ないと申告ミスをしてしまうほどです。相続の問題を速やかに解決できるのはやはり実務経験に裏打ちされた信頼を持つ弁護士です。
相続財産が多い場合、存命中の相談も検討を
相続財産が多い場合は、間違いなく相続税の計算が複雑になり遺産分割にも時間がかかります。存命中に頼れる弁護士がいれば被相続人死亡後の負担が大幅に軽くなります、予期せぬ相続争いにも先手を打つことができます。
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