遺言なしの遺産相続~遺言書がない場合の相続手続きと注意ポイント
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遺言書の有無を確認、遺言なしなら話し合って相続を決める
遺産を分けるうえで前提となるのが遺言書の有無です。遺言書は被相続人がどのように遺産分割をするかを記した書物であり、遺産分割は遺言書に従わなくてはいけないとわが国の民放で決められています。
したがって、遺言書があればその意思に沿って、遺言書なしと判断されれば相続人の話し合いで遺産を分けます。
遺言書を探そう
遺言書を探すうえで知っておきたいのが遺言書の種類です。自宅に遺言書がないからと言って遺言書なしと判断しないよう注意してください。
もし、遺言書が見つかれば遺産分割のやり直しもあり得ます。
自筆証書遺言を探す
自筆証書遺言とは、自分で書いた遺言書のことです。自宅を隅々まで探してみましょう。自筆証書遺言が見つからなければ公正証書遺言や秘密証書遺言についても探しましょう。
公正証書遺言や秘密証書遺言を探す
公正証書遺言は公証役場で作成し、公証役場に保管した遺言書、秘密証書遺言は内容の精査をしないまま公証役場に保管した遺言書です。遺族に告げていない場合、写しを保管していない場合は遺言書検索システムを使います。
どの公証役場からでも全国の公正証書遺言と秘密証書遺言のありかを調べられます。
遺言書があっても遺言なしと判断される?
遺言書が見つかったとしても、遺言書が無効であれば遺言なしという扱いになります。この問題は自分で書く自筆証書遺言や、内容を確認しない秘密証書遺言で起こります。
公正証書遺言は法律のプロである公証人が遺言者に代わって作成するため確実に有効です。
遺言が無効になるパターンとしては自筆証書遺言の一部を他人に書いてもらった、日付を明確に定めなかった、書式が間違っていたなど些細なものが多いです。公正証書遺言以外は、家庭裁判所の判断で有効・無効が決まります。
もし、家庭裁判所が無効と判断したら遺言なしという処理がされます。遺言に従うかどうかは相続人の自由です。
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遺言書なしと分かったら法定相続人を確定する
遺言書がないと分かったら、民法第900条に定められた法定相続人を確定しましょう。
まず、法定相続人となるのは配偶者と子にあたる人です。
次に、被相続人に子がいない場合は直系尊属(つまり親や祖父母など)が相続人となります。
そして、被相続人に子も直系尊属もいない場合は被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
この優先順位はあくまでも法定相続人に確定する順番であって、遺産の割合ではありません。つまり、被相続人に子がいる場合は直系尊属および兄弟姉妹は法定相続人となりません。
法定相続人だけ探せばよいのは「遺言なし=法定相続人以外は遺産を相続できない」ことが確定しているからです。
法定相続人は戸籍で確定
法定相続人を確定するためには被相続人の戸籍をたどる必要があります。家族関係とはなかなか難しいもので、今まで知らなかった親族が戸籍によって明らかになることもよくあります。具体的にはこのような方法をとります。
戸籍謄本を順番に発行する
生まれてから亡くなるまで同じ住所で暮らしていた場合は戸籍謄本が1通だけになります。しかし、結婚していて元の戸籍を離れたり引っ越したりした場合は現住所以前の戸籍謄本を発行します。
戸籍謄本の発行は役所に出向くほか、郵送で申請および発行することも可能です。
法定相続人が確定したら相続人全員の戸籍謄本を取得
被相続人の戸籍をたどり、法定相続人が確定したら相続人全員の戸籍謄本を取得します。ただ、現住所の分からない相続人もいるため住所移転の履歴である戸籍の附票を取得します。戸籍の附票も戸籍謄本と同じく、順に辿っていくこととなります。
個人情報の取得ではありますが、相続が理由であれば問題なく認めてもらえます。
法定相続人になるのは現在の配偶者だけ
法定相続人として無条件に決まるのは配偶者ですが、重要なのは被相続人が亡くなった時の配偶者である点です。たとえ、亡くなるわずか1年間だけの配偶者だったとしてもその人が法定相続人となります。
代襲相続も忘れないように
代襲相続とは法定相続人が亡くなっている場合に、その子に相続権を与えることです。具体的にはこのようなルールがあります。
被相続人の子が亡くなっている場合
被相続人の子が亡くなっている場合、その人の子(つまり被相続人の孫にあたる)が代わって相続人となる。
もし、被相続人の孫もなくなっている場合はさらにその子が代わって相続人となる。(これを再代襲と言います。再代襲に制限はありません)
被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となり、かつ亡くなっている場合
被相続人の兄弟が亡くなっている場合、その人の子(つまり被相続人の甥や姪にあたる)が代わって相続人となる。
被相続人の兄弟の死によって代襲相続した人からは、再代襲されない
もちろん、このルールは被相続人の子や直系尊属がいないときに限ります。
以上をまとめると、子→孫→直系尊属→兄弟姉妹→甥や姪という相続順位になります。
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相続財産と債務を調査する
遺言なしということは、相続財産と債務に何があるのか把握できていない状態です。したがって遺産を分割する前に見落としている財産や債務がないか確認します。
相続は被相続人の財産および債務を受け継ぐことですから債務の確認は絶対に忘れないでください。
相続財産の確定は相続税申告にかかわります
相続財産はお金と不動産だけではありません。有価証券や生命保険、ゴルフ会員権、骨董品など様々な形で残っていますし、もしかしたら隠し財産が眠っているかもしれません。
「べつにそんなものまでお金にしなくていいや」というあなたも気をつけましょう。相続財産を見落としてはいけない理由は「相続税の申告にかかわる」からです。相続税の申告は相続税が0円の場合もする必要があります。
相続税が発生する場合は、修正申告や申告の延滞によって税金が加算されます。遺品はすべて評価し、相続税の申告が終わるまで勝手に処分しないことが原則です。
財産より債務が多いと分かったら?
残念ながら、被相続人が財産よりも多くの債務を抱えているケースもよく見られます。負の遺産を受け継ぐことは相続人にとって損をするばかり。しかし、相続人が遺産を相続したくない時のためにこのような制度が設けられています。
限定承認
限定承認とは、相続財産がプラスであったときのみ相続するというものです。限定承認を家庭裁判所に申し立てる期間は相続人になったことを知った日から3か月以内で、しかも相続人全員の合意が必要です。
遺産相続はなかなか余裕をもってできませんから「相続財産の差し引きが明らかにならない場合」のリスクヘッジとして機能します。
相続放棄
遺産を相続したくない、どう考えてもマイナスの財産が多いという場合は相続放棄をします。相続放棄の手続きをすると「初めから相続人でなかった」ことになります。よって相続放棄は代襲相続をさせる手段になりません。
相続放棄は自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に申し立てなくてはいけません。
負債が多そうなときは絶対に手を付けないこと
限定承認や相続放棄をする条件として財産を処分しないこと、財産を隠さないこと、財産を財産目録に記載しないことがあります。
よって、負債を相続したくない時は相続財産に手を付けないでください。葬儀費用については相応な範囲までなら不問とされるのが判例の動向です。
遺言なしの場合は遺産分割協議で一から決める
遺言なしの場合は、被相続人の意思に拘束されません。よって、遺産分割協議によって法定相続人の納得がいくように遺産を分けます。
極端な話、合意さえあれば被相続人の子が3人いても配偶者が100%遺産をもらうことや3兄弟のうちだれかが極端に多く遺産を受け継ぐこともOKです。たとえ、被相続人に冷遇されていたとしても遺産分割協議には関係ありません。
逆に言えば、被相続人の思う配分で遺産を分けたければ法的に有効な遺言書を遺すしかないのです。
法定相続人がそろわない時は電話でOK
遺産分割協議において必要なのは法定相続人すべての合意です。ただ、遺産分割協議のために1カ所に集まるのは難しいのが現状ですから、遺産分割協議に電話で参加することも可能です。大切なのは全員の意思で遺産分割を決めることです。
法定相続人が音信不通なら不在者財産管理人が必要
場合によっては法定相続人のだれかが行方不明になっている、行方は戸籍附票で分かったものの一向に取り合ってくれない場合はどうすればよいのでしょうか。
前提として遺産分割協議は相続人全員の合意を必要とし、かつ相続には時効の概念がありません。そうである以上、法定相続人のうち一人でも省いた遺産分割協議書は無効となります。
このままでは、永遠に遺産を分けられないためこのような対策があります。
不在者財産管理人を選ぶ
不在である相続人の代わりに財産管理を行う人を不在者財産管理人と言います。不在者財産管理人は財産管理を主な役割としますが家庭裁判所に権限外行為の許可という申請をすることで遺産分割協議に参加できます。
不在者財産管理人は、不在である相続人の代わりに遺産分割協議書に合意し、署名捺印をすることができます。
不在者財産管理人は利害関係のない人物、あるいは弁護士、司法書士を選びます。
遺産分割でもめるのは、やっぱり遺品
遺産分割協議は相続人の合意がすべてであり、だからこそ相続争いにつながります。相続争いの理由は心情的なものや経済的な理由などいろいろありますが、争う意図がなくても「物理的に遺産を分けづらい」時は協議が長引きます。
例えば、土地が残っているときはそれを相続人で分け合うかお金に換えて分配します。すると、土地を売却するかしないかで揉めます。被相続人のコレクションを適当に分配したら一人にだけ高額商品が混ざっていた、という時も争いになります。
どうしても遺産分割協議がまとまらないなら法で解決
遺産分割協議が紛糾した場合、裁判で決着をつけることもあります。実は民法第900条では法定相続人の用件だけでなく法定相続分も定められています。したがって、相続争いが泥沼化しても法による解決は可能と言えます。
しかし、あくまでも相続の割合を決めているだけですから欲しい遺品を相続できるとは限りません。
遺言なしでもスムーズな遺産分割をしたいなら弁護士の力を借りよう
遺言なしの遺産相続は、お互いの譲り合うやさしさと自らの権利を毅然と主張する強さの両方が求められます。たとえ仲の良い家族だったとしても、お互いに対する負の感情や被相続人に対する思いはそれぞれ持っているはず。
相続を円満に行うためには感情に囚われない第三者の目線が必要です。弁護士は豊富な実務経験から法律だけでは解決できない遺族の感情もサポートし、相続人みんなとって「公平」かつ「損のない」遺産相続を目指します。
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