年金の支給停止とは?遺族年金の確認も~死亡後の諸手続き
年金を受給している人が死亡したら、必ず受給停止の手続きを行います。死亡を届け出なければ不正受給となります。一方、国民年金・厚生年金を納めている人が亡くなった場合は遺族年金が受け取れる可能性があります。労働災害で亡くなった場合は、給付が手厚い労災保険の遺族年金の受給資格も確認してみましょう。
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年金を受給していた人が亡くなったら、年金・遺族年金の確認を
高齢になった親や祖父母など年金を受給していた人が亡くなったら、主に2つの手続きが必要です。1つは、年金の支給を停止させること、もう一つは未支給の年金を受け取ることです。
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年金受給の停止
公的年金を受給していた人が死亡すると年金を受ける権利がなくなります。「死別後の生活費の足しに…」と本人の死亡を隠して受給し続けることは認められません。年金受給の停止には以下のような手続きを行います。
受給停止の手続き
受給を停止するには、年金事務所または街角の年金相談センターに「年金受給者死亡届」を提出します。手続きには死亡した人の年金証書、死亡の事実を証明できる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピーなど)も必要です。
手続きの期限は、国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は死亡日から10日以内です。葬儀が終わったら速やかにとりかかる必要があります。なお平成23年7月以降、日本年金機構に住民票コードを登録している人は、原則として死亡届の提出は省略できます。
うっかりでも停止しないと問題に
「死亡届を出さずに家族が何年も故人の年金を受け取っていた」という話が時々ニュースになりますが、公的年金はきちんと死亡届を提出しないと、停止されずにいつまでも支給されてしまい、多く受け取った年金は後に返還しなければなりません。故意に手続きをしないのは言語道断ですが、うっかり忘れたという場合も、早急に停止しなければ後々問題となります。忘れずに手続きしましょう。
未支給年金を受給する
年金を受給していた人が受け取るべき年金を受け取らずに死亡した場合は、生計を一にしていた遺族が未受給分を受け取れます。公的年金の給付は2か月に1度で、偶数月の15日に前月と前々月の分が振り込まれます。そして、死亡した月の分までは支給されるようになっています。
年金の支払いスケジュール
例えば受給者が9月1日に亡くなった場合、8・9月分は10月15日に振り込まれ、これは遺族が受け取って良いことになっています。このように公的年金は後払いの形になっているため、いつ死亡しても必ず未支給年金が発生することになります。ただしこれは自動的に遺族に支給されるわけではないので、請求手続きを行います。
未支給年金請求の手続き
未支給年金を請求するには、年金事務所または街角の年金相談センターに「未支給【年金・保険給付】請求書」を提出します。手続きには、死亡した人の年金証書、故人の年金証書、戸籍謄本など、故人と請求する人が生計を同じくしていたことが証明できるもの(住民票の写しなど)、受取を希望する金融機関の通帳も必要です。
なお、受け取れる人は年金を受給していた人が死亡した当時、その人と生計を同じくしていた人で、受け取る権利は(1)配偶者、(2)子ども、(3)父母、(4)孫、(5)祖父母、(6)兄弟姉妹、(7)その他の順となっています。
国民年金・厚生年金の遺族年金
生計を担う夫が亡くなった場合、残された家族の家計は苦しい状況に追い込まれます。そんな時に役立つのが国民年金や厚生年金の「遺族年金」です。一家の収入の柱だった夫が専業主婦の妻や子どもを残して亡くなった場合を例に説明します。
国民年金の場合
日本の公的年金制度は「国民皆年金」が特徴です。国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満の人なら誰でも加入と保険料納付の義務があります。自営業者や会社員など職業に関係なく、すべての人が国民年金に加入しているのです。
子どもが18歳以下
亡くなった夫が国民年金の加入者だった場合、子どもの養育のためのお金として「遺族基礎年金」を受給できます。年金額は「780,100円+子の加算」となっていて、子の加算は、第1子・第2子がそれぞれ224,500円、第3子以降はそれぞれ74,800円です。遺族基礎年金を受給できる期間は、子どもが18歳になる年度の末日(3月31日)までです。
子どもが大きい、子どもがいない
一方、子どもがすでに成人していたり、子どもがいない妻は「寡婦年金」を受給できる可能性があります。年金額は、亡くなった夫が本来受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3です。受給には以下のような条件を満たしている必要があります。
- 18歳未満の子供がいない妻である。(子供に障害がある場合は、20歳未満)
- 婚姻期間が10年以上だった
- 妻の年齢が65歳未満であり、老齢基礎年金の繰上受給をしていない。
- 夫の死亡当時、生計を担っていたのは夫で、老齢年金を受給せず亡くなった
- 夫が第一号被保険者として25年以上保険料を納付しており、年金をもらわずに死亡した。
なお、寡婦年金を受給できる期間は、以下の通りです。
- 妻の年齢が60歳未満の場合:妻が60歳に達した日の属する月の翌月から65歳に達した日の属する月までの5年間です。
- 妻の年齢が60歳以上の場合:夫が死亡した日の属する月の翌月から65歳に達した日の属する月まで。
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厚生年金の場合
日本の公的年金は「3階立て」の構造となっています。すべての人が加入する国民年金は1階部分にあたります。一方、厚生年金は2階部分にあたり、会社に勤めるサラリーマンが加入している年金です。
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子どもが18歳以下のとき、国民年金の遺族基礎年金に加えて、亡くなった夫が厚生年金にも加入していれば「遺族厚生年金」も受給できる可能性があります。厚生遺族年金は子どもの有無は関係ありません。年金額は、夫の収入によって異なりますが、夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の4分の3です。受給の条件は以下の項目のいずれかにあてはまることです
- 病気・けがなどで、初診日から死亡までが5年以内
- 障害厚生年金(1級・2級)を受給している
- 老齢厚生年金の受給資格がある
子どもが大きい、子どもがいない
子どもが大きい、またはがいない妻も、遺族厚生年金を受給できます。これに加えて、「中高年寡婦加算」がプラスされる場合もあります。条件は、子どもが成長して遺族基礎年金の受給が終わった時点で妻が40歳以上であること、または子どもがいない妻が夫の死亡時に40歳以上65歳未満であることです。受給額は年額585,100円です。
労災保険の遺族年金
仕事中に亡くなった場合は、労災保険の遺族年金も受給できます。労災保険は労働者なら必ず加入している保険です。保険料は会社が全額を払っているので加入している自覚がない人も多いのですが、手厚い給付はいざという時に頼りになります。
労災保険の遺族年金の対象
労災保険の遺族年金は、一家の収入の柱だった人が亡くなった場合だけでなく、共働きで収入を得ていた場合も利用できます。請求の期限は、亡くなった日の翌日から5年間です。
対象となるケース
労災保険の遺族年金の対象となるのは、主に2つのケースです。一つは工場で働いていた人が機械に巻き込まれて死亡するなど、業務中の事故で亡くなった場合です(「遺族補償給付」を受給)。もう一つは、会社に向かう道で車にはねられ死亡するなど、通勤中に亡くなった場合(「遺族給付」を受給)。
労災認定が必要
国民年金や厚生年金の遺族年金と異なるのは、労災保険に加入しているだけでなく、労災認定を受けていないと受給できないという点です。このため、勤務中や通勤中の事故による死亡でも業務と関係がなければ、遺族年金は受給できません。
手厚い給付が特徴
労災保険の遺族年金の受給資格がある人のうち、遺族基礎年金や遺族厚生年金も受給できる場合は二重受給となるため、労災保険が減額されます。それでも給付額は手厚く、残された家族にとっては貴重な収入となります。
受給資格者と受給額
受給資格があるのは、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。受給額は遺族の数によって以下のように異なります。
1人 | 給付基礎日額(1日分の給料)の153日分(条件によっては175日分の場合も) |
2人 | 給付基礎日額の201日分 |
3人 | 給付基礎日額の223日分 |
4人以上 | 給付基礎日額の245日分 |
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死亡直後の家計を助ける前払い一時金
人が亡くなった直後は、葬儀費用やお墓の費用など出費がかさむものです。貯金が少なければ残された家族が支払いに苦しんだり、生活が厳しくなる恐れがあります。そこで、労災保険の遺族年金にはまとめて前払いしてもらえる制度もあります。
遺産相続での年金の取り扱い、不明点は弁護士に相談を
年金に関する手続きは日常生活でなじみが薄いので戸惑うことも多いかもしれません。将来、家族が亡くなる事態に備えたい方は、まずは家族が加入している年金の種類や保険料の納付情報を確認してみてください。また、遺産相続に関して疑問が生じた場合は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
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