婚姻届を出していない内縁関係の妻(夫)に相続財産を残したい

内縁

内縁関係だけでは相続人になれない?

Q:私は数年前に離婚し、現在は、私と同じような境遇だった内妻と生活を共にしています。
前妻との間に子どもが3人いたのですが、現在は音信普通となっていて、どこで何をしているのかも知りません。ここ最近、私も良い年齢になってきたため、死後のことを考えるようになったのですが、可能な限り、内妻に財産を残してあげたいと考えています。

すでに前妻とは離婚していますし、子どもたちとも関係は無いに等しいことから、このまま内妻が私の財産を相続してくれればと考えていますが、そのためになにか手続きのようなものは必要なのでしょうか?内妻と一緒に暮らしている自宅も私名義なのですが、私の死後は内妻名義に変更してくれたらと考えています。

A:今回のご質問で重要になってくるのが、内縁関係だけでは相続人になれないという点です。相続というのは、一緒に住んでいる方に発生するという性質のものではありません。
法律上、相続人になれる方が決まっており、これを「法定相続」といいます。

ご質問者様の場合、確かに離婚している前妻の方が相続人になることはありませんが、3人の子どもは別です。たとえ音信普通だったとしても、親と子という関係までが無くなったわけではないため、このままだと残されたすべての財産は、3人の子どもがそれぞれ3分の1ずつ得るというのが法律の決まりとなっています。

よって、今回のケースでは、「生前贈与」というのも選択肢の1つに入ります。特に必ず必要となるご自宅の名義変更は、ご自身が生きているうちに行うのが賢明と言えます。いずれにせよ、弁護士などの法律の専門家に相談しながら解決していくことをオススメします。

婚姻届を出さずに財産を相続させるには?

Q:私は数年前に夫が他界し、現在は別の方と生活を共にしています。婚姻関係はないため、内縁関係とでも言えば良いのでしょうか。子どももおらず、二人だけで暮らしています。

内夫はとても健康志向で、これからもまだまだ元気でいてくれると思うのですが、私自身は身体が弱っているのをひしひしと感じています。現在、私名義のアパートや預貯金といった財産があるのですが、これらはすべて内夫に相続してもらえたらと考えています。

いっそ婚姻届を出してしまいたい気持ちはあるのですが、他界した夫の親族とは現在も交流があり、別の方と婚姻するというのはどうしても気が引ける状況です。
婚姻届を出すことなく、内夫に財産を相続してもらいたいのですが、なにか良い手続きはないでしょうか?また、このまま何もしなかった場合、私の財産はどうなるのでしょうか?

A:今回は2つのご質問をいただいたため、以下にてそれぞれ見ていきましょう。

①婚姻届を出さずに内夫に相続させるには?

確かに、内縁関係があるというだけでは相続人にはなれないため、このままでは内夫に財産を相続させることはできません。こういった場合は、「遺言書」を作成するのが良いでしょう。遺言書というのは、亡くなった方の最後の意思表示とも呼ばれるもので、自身の死後の財産の行方について記載することが可能となっています。今回のケースでいえば、「内夫に全財産を相続させる」といった遺言書を作成すれば問題ありません。

ただし、遺言書の作成には専門知識が伴いますし、必要要件を満たしていない場合、法的に有効な遺言書ではなくなってしまうため、作成には専門家に立ち会ってもらいましょう。

②なにもしないでいると財産はどうなるのか?

ご質問者様の場合、配偶者がすでに他界しており、子どももいないということなので、相続の順位としてはご質問者様のご両親となります。ご両親もすでに他界しているとなれば、祖父母になりますが、可能性としてはほとんどないため、次はご兄弟が相続人となります。亡くなっているご兄弟がいるのであれば、その子ども(ご質問者様の甥・姪)が、相続人となり、これを「代襲相続」といいます。このように、なにもしないでいると相続の順位に従った方が相続人となり、財産を得ることになっています。

なお、上記の相続人に該当する方がいない場合は、相続人は誰もいないことになり、利害関係人からの申立てなどによって、裁判所から選任された「相続財産管理人」が財産を適正に管理・処分をします。つまり、相続人が誰もいないからといって、内夫が相続人になることはないということ。相続財産管理人が選任された場合、手続きの中で「特別縁故者(亡くなった方と生前に縁があった方)」として、財産の一部を得られるといった制度はありますが、必ず財産を得られるというわけではありません。

相続人以外に自身の財産を相続させたい方(今回でいえば内夫)がいるにも関わらず、なにもしないでいると、自身が思い描いた相続は実現できないため、必ず遺言書や生前贈与といった方法にて、財産の行方を自らの意思で示しておくようにしましょう。

相続人が持つ遺留分権に要注意

Q:ここのところ体調が悪く、医師からはいつなにがあってもおかしくないと警告されるようになってしまいました。そこで今回は、私が亡くなった後に残された財産の行方についてご質問させてください。
私は数年前から妻と別居するようになり、現在は内妻と生活を共にしています。妻とは現在においても離婚はしておらず、妻との間には子どもが1人いる状態です。

子どもはすでに成人し、養育費の心配はないのですが、妻に対しては婚姻費用として毎月数万円を支払っています。妻とはなんとか離婚をしたいのですが、過去に離婚調停も不成立となっており、裁判をしてまでという気持ちが先行し、現在にいたっています。

内妻は、こうした状況下であるにも関わらず、理解してくれた上で生活を共にしてくれているため、私の死後の財産は、すべて内妻に残してあげたいと考えるようになりました。

遺言書を作成することで、内妻にも財産を相続できると聞いたのですが、仮に「内妻にすべての財産を相続させる」と記載した場合、実現するものなのでしょうか?
私の死後、妻と内妻が財産を巡って揉めるような事態には発展してほしくありません。

A:内妻にすべての財産を相続させたい場合、ご質問者様がおっしゃる通りの記載で問題はありません。それが自身の意思であれば、遺言書に記載する価値は十分あります。

しかし、現実に実現するかといえば、難しいと言えます。その理由は、相続人には「遺留分権」といって、最低限相続できる割合が決まっています。今回のケースでいえば、配偶者である妻と子どもがそれぞれ全財産の4分の1ずつの遺留分権が生じます。

もし、この二人が遺留分権を主張すれば、内妻にすべての財産を相続させるという意思表示を実現させることはできません。また、単に遺言書を作成しただけでは、遺留分の関係から、妻と内妻が財産を巡って揉めるような事態も想定できるところです。

そこで、こういった場合は、まずは弁護士といった専門家に相談されることをおすすめします。死後にできることは限りがありますが、生前であればいくらでも選択肢はあります。

たとえば、妻との再度の離婚を試みる方法があります。当事者同士の話し合いでは進展がなかったとしても、話し合いに弁護士が加わるとなれば、また違った展開となる可能性は十分にあるのです。今回のようなケースは、最終的に遺留分を巡った争いへと発展する恐れが高いため、今のうちから専門家を介入させることをオススメします。

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