生涯独身で兄弟もいない場合、相続財産はどうなる?
相続人がいない場合、相続財産の行方は相続財産管理人の手に委ねられます。
しかし、その前に本当に相続人がいないのかについては必ず確認しておく必要があります。また、相続人がいないからといって財産の行方は、すべて相続財産管理人に任せられるわけではありません。遺言書によって相続人以外に財産を相続させることもできるのです。
相続人がいないと財産はどうなるのか?
Q:独身で両親兄弟姉妹もおらず相続人なし。自分の財産はどうなる?
私はまもなく70歳を迎えますが、現在は独身であり、今後も結婚する気は一切ありません。また、両親はすでに亡くなっており、兄弟姉妹もいない状況です。
そこで、私自身、良い年齢になってきているため、「私が死んだら保有する財産はどうなるのか?」といった疑問が産まれてきました。教えていただけたら幸いです。
A.相続人がいない場合、残された財産は最終的に国のものへ
今回のご質問については、2つの視点から回答を導き出しましょう。
まず相続人がいないことが確定している場合、残された財産はどうなるのかについてです。
相続人がいない場合、以下で説明するような例が理由で、死後の財産を管理・処分する必要性が出てくるケースはいくらでもあります。また、財産の所有者が死亡し、相続人がいなかったからといって、最初に手をつけた方が所有者になれるわけではありません。
しかし、これでは財産を動かせる人がいなくなってしまいます。
そこで、財産に手をつけられず迷惑が生じている方(不動産の適正管理ができておらず、草などが伸びてきて近隣の住民が迷惑している)、生前に借金などの債務があった場合は回収したい債権者から(財産はあるのに相続人がいないため回収ができない)、誰もいなければ検察官が、裁判所に対して「相続財産管理人選任申立」を行います。
この相続財産管理人は、亡くなった方の財産を適正に管理・処分するのが職務です。
そして、適正な管理・処分がなされた後、処分しきれなかった財産については国庫に保管されます。つまり、最終的に国が財産の所有者になるというわけです。
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A.自分の戸籍を確認し、相続人調査することをおすすめします
もう1つが、相続人がいないという点についてです。
ご質問者様の場合、確かに相続人がいないと言える状況ではあります。
しかし、すべての戸籍調査を行って相続人を確定したわけでないのであれば、念のため確認しておく必要はありそうです。確認すべき点は、主に以下のとおりです。
- 現在まで一度も婚姻していない
- 両親がすでに亡くなっている(さらに言えば祖父母も亡くなっている)
- 兄弟姉妹がいない
一見、戸籍調査までする必要がないように見えますが、過去に一度でも婚姻している場合、離婚・妊娠のタイミングによっては戸籍簿上の父になっているケースは現実にあります。
女性の場合は自身が子どもを産むことになるためこういったケースは存在しませんが、男性の場合は、離婚後300日以内に生まれた子どもは自身の戸籍に入ることになっているのです。過去に自身の戸籍を取ったことがないという方はたくさんいるため、念のため確認しておきましょう。
また、兄弟姉妹がいないと思っていても、実は自身の知らないところで産まれている兄弟姉妹がいたなんてケースも現実には存在します。
本当に自身には相続人がいないのかについては、確認しておくべきと言えるでしょう。
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相続人がいない場合にしておくべきことは?
Q:独身・一人っ子で相続人がいません。生前にしなければならないことはある?
Q:私は生涯独身で、両親も祖父母もすでに亡くなっていますし、一人っ子だったため兄弟姉妹もおらず、相続人が誰もいないという状況です。相続人がいなかった場合、私が保有する財産は裁判所から選任された相続財産管理人の方が面倒を見てくれると聞いています。
死後の財産の行方についてそれほど興味はありませんが、私が生前にしておけること、しなければならないことなどがあれば知っておきたいです。
A.しなければならないことは特になし。遺言書を残せば家族以外への相続も可能です
A:結論からいえば、しなければならないこと、というのは特にありません。
強いていえば、保有財産の一覧表を作成しておく、不動産などはすべて処分して老人ホームに入る、借金はなるべく完済しておくといったところです。
こういった心づかいがあれば、相続財産管理人の業務はかなりスムーズに進むことになりはしますが、現実にはこうした点に気を遣う必要性は一切ありません。
また、相続財産管理人を選任されたくない、残した財産は国の保有になってほしくないといった方は、遺言書を作成する方法をおすすめします。財産というのは、なにも相続人である家族だけが相続できるわけではありません。生前、遺言書によって財産の行方を指定しておけば、家族以外の方に財産を相続させることも可能となっているのです。
もし、お世話になっている相手がいるのであれば、その方に自身の財産を託すため、遺言書を作成するというのも良い方法の1つと言えるでしょう。
突然死んでしまった場合はどうなる?
Q:籍を入れていない内妻に財産の相続はできる?
Q:私に相続人はいませんが、一緒に住んでいる内妻がいます。
今後も籍を入れる予定はありませんし、子どもを養子に取る気なども一切ないのですが、可能であれば私が生前保有していた財産は、内妻に相続してもらいたいと考えています。
そこで、遺言書の作成を検討しているのですが、私も身体が不自由なもので、なかなか公証役場にまで足を運ぶことができません。そうこうしているうちに、もし、私が突然死んでしまったら、保有していた財産はどうなってしまうのでしょうか?
早く遺言書を作成すれば良いだけの話ですが、高齢のためもあって、なかなか動き出せないため、いざというときにどうなるのかだけ教えていただきたいです。
A:遺言書がなくても「特別縁故者」と認められれば相続できます
A:今回の場合、遺言書を作成しておくのがもっとも良いのは言うまでもありません。内妻に方に相続権はありませんので、遺言書によって相続してもらうのがベストです。
公証役場にまで足を運べないとのことですが、公証役場にて作成する遺言を「公正証書遺言・秘密証書遺言」といいます。
一方で、遺言書というのはすべて自筆で作成をする「自筆証書遺言」という作成方式もあります。なにも公証役場に必ず足を運ばなければならないわけではないため、自筆証書遺言を作成するというのも良い方法の1つです。
しかし、それすら作成する前に突然の死を迎えてしまったという場合、内妻の方が財産を相続することはできなくなりますし、財産を手元に残すには多少の困難が伴います。
というのも、相続人がいなかった場合、残された相続財産を適正に管理・処分をするために相続財産管理人が選任されます。内妻の方が財産を得るためには、この相続財産管理人が行う業務の中で、「特別縁故者」として認められなければならないのです。
スムーズに相続させるなら弁護士に相談して遺言書の作成を
特別縁故者というのは、亡くなった方と生前親しかった方(内縁関係があったなど)や、生前の生活に貢献した方(病院や介護施設でよくお世話をしたなど)を指します。そして、特別縁故者から財産を分与する請求があった場合、相続財産管理人と裁判所の判断で、財産の一部を分与することができるのです。今回のケースでいえば、内縁関係がある相手となるため、特別縁故者として認められる可能性は高いですし、財産の一部が分与される可能性も十分あると言えるでしょう。とはいえ、自らの意思で財産を相続させているのとは異なり、どれだけ分与されるかについては裁判所の判断によります。
また、相続財産管理人とのやり取りなど、手間を取らせてしまうことを考えると、特別縁故制度を見越した財産分与というのは、決しておすすめできる方法ではありません。
早い段階で弁護士といった法律のプロに相談し、遺言書の作成を進めていきましょう。
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