裁判の判決。控訴・上告~「本人訴訟」の手順
交通事故問題を争う民事訴訟は、多くの場合は和解で決着が着きます。弁護士同士が問題の落としどころを知っているからで、リスクを負って判決を受ける必要はないという判断。和解が受け入れられない場合は判決を待ち、納得がいかない場合は控訴・上告の道があります。
目次[非表示]
和解で合意に至らなければ、裁判官が下す判決を待つのみ
控訴・上告の道は残される
交通事故の損害賠償問題を争う民事訴訟では、多くの場合は和解で決着が着きます。
通常の裁判では原告と被告の双方に弁護士が付き、お互いに落としどころが分かっているため、裁判官が提示した和解案が妥当なものであれば、リスクを負って判決を待つよりも、和解において問題の解決を付けた方が、結果的には双方に納得のいく内容となるケースが多いためです。
交通事故の被害者がどうしても和解案に納得ができない場合、あるいは裁判の段になっても加害者に誠意が見られないといった時には、和解案を拒み裁判官による判決を待ち、勝訴という結果を求めることは考えられます。
このような場合には、もし判決に不服があれば、弁護士ともども控訴して戦う準備が可能であり、無理に和解案を受け入れることもないでしょう。
「本人訴訟」でも、落としどころを見つける努力を
一方で、「本人訴訟」で裁判に臨んだ場合、妥当な落としどころの判断ができないことが考えられます。
弁護士を雇わず、自分ひとりで勝訴を勝ち取るという意気込みで挑んだ裁判ですから、その心情は理解できます。しかし、和解案を蹴って判決を待ち、もしその内容が不当だと感じたとしても、控訴に値する十分な証拠や、手続きを行うことは非常に難しいと思われます。
「本人訴訟」だからこそ、和解案の内容を十分に吟味し、慎重に対応する必要があります
本来ならば裁判に入る前から弁護士の力を借りておくのが良いのですが、この時点でも専門家に内容を確認してもらうことを考えるべきです。
「本人訴訟」で、弁護士を立てた保険会社に、完全な内容で勝つことは至難の業です。
交通事故の民事訴訟において、和解案が出た後の流れを見てみましょう。
和解案を受け入れば裁判は終了
交通事故の民事訴訟において、通常の裁判の進行中に裁判官は原告と被告に和解を勧めてきます。
原告と被告が双方の主張を展開し、お互いに言い分を書類に出し切った頃に、裁判官が和解案を提示するのが一般的です。
第三者である裁判官からみて事件の争点が明確となり、和解の落としどころがわかってきた時と言い換えることもできるでしょう。
何度目の口頭弁論が終わった後に和解案が提示されるかは、交通事故の内容や原告が求める損害賠償内容の複雑さなどによって変わってきます。
和解案は、原告が譲歩するもの
和解案は一般的に、原告が譲歩しなければならないものです。
また和解案では、原告が求める遅延損害金や弁護士費用を被告に負担させることができないことが多いのです。
弁護士を雇っている場合は、和解案が妥当なものかどうかの判断はすぐにできると考えられます。しかし「本人訴訟」を進めていて、自分ひとりで判断しなければいけない場合は、かなり慎重に検討する必要があります。
和解に応じるかどうかは当事者双方の自由ですから、譲歩はしないと拒むことは簡単です。しかし判断が難しいと考えたならば、和解案に関して弁護士などの専門家にアドバイスを求めた方が良いでしょう。
和解案を双方が受け入れた時点で裁判は終了
交通事故の民事訴訟において、およそ7割は和解で終了していると言われています。
予想される判決内容を考慮し、リスクを負って判決を待つよりも、和解案を双方が納得して受け入れた時点で、裁判は終了します。
交通事故の和解案は、損害賠償の金額や過失割合の詳細が書面によって提示されることが多く、相手方が保険会社の場合は、そのままの金額が支払われることになります。
和解案がいずれかに拒否されれば裁判は続行
原告、被告のいずれかが和解案を拒否すれば、裁判は続きます。
この時点では、第1回の口頭弁論から月に1度程度の期日において、すでに書面による双方の主張は出尽くしていると考えられます。
本人尋問や証人尋問が行われることも
裁判における証拠調べでは、原告と被告の出した証拠や申請した証人で、裁判所が認めたものがすべて審理されます。
提出された証拠だけでは結論が出せないと裁判官が判断した際には、本人尋問や証人尋問が行われることもあり、長い裁判を戦う覚悟も必要でしょう。
そして審理が全て終わった段階で、裁判は結審を迎えます。
但し民事訴訟の場合は、この証拠調べが続く間にも、裁判官は和解で決着ができないかどうか、双方の様子を見ながら検討すると言われています。
和解の方が双方のしこりも少なく、穏便に問題を解決させたいという思惑があるようです。
しかし原告と被告の間に妥協点は見つからなければ、審理が終わった時点で結審し、判決が言い渡されることになります。
ここまで、裁判の期間は訴状を提出してから最低でも半年、長ければ1~2年はかかると言われています。
判決が下る! 納得できなければ上訴を!
民事裁判の判決は、最終審理で結審した後、改めて期日が設けられて行われます。
刑事訴訟では即日に判決が言い渡される即決裁判という制度がありますが、民事訴訟においては判決だけが審理と別の日に期日が設けられます。
通常は、最終審理の日から1カ月程度が経ってからになる事が多いようです。
判決の言い渡しは数分で終了
判決言い渡しの期日は、たいていの場合開廷から数分で終了してしまいます。
裁判官により決定した主旨だけが読み上げられ、その理由に関してまでは口頭で説明されないのが通例です。
その代わり、判決文は印刷されたものが渡されますので、後で内容をしっかり読み込むことができます。
この判決内容が、原告自身に納得いくものであっても、納得いかなくても、第一審の判決はこの時点で下され、とりあえず裁判は終了となります。
判決に納得がいかない場合は、上訴を検討すること
長期間にわたり法廷で争ってきた結果、裁判官が下した判決が納得のいくものだということの方が少ないでしょう。
和解の勧告を拒否し、とことん決着をつけようとした場合、原告も被告も100%納得できない可能性の方が高いのではないでしょうか。
不本意な判決が出てしまった時には、上訴という手続きで、もう一度裁判をすることが可能となっています。
「本人訴訟」で裁判を戦ってきた原告にとっては、上訴が受理される新たな証拠を提出することが難しいかもしれませんが、可能な限りの可能性を探り、専門家の助言を得て、上訴の道筋を付けたいものです。
控訴と上告、何が違う?
日本の裁判制度は三審制を採っているのをご存知の方は多いでしょう。
民事訴訟・刑事訴訟に関わらず、基本的にはひとつ事件について3回まで裁判を受けられることになっています。
第一審の判決が不服なら、それより上位の高等裁判所へ控訴でき、その第二審で出される判決が不服ならば、さらに上位の最高裁判所へ上告できる形です。
なお、民事訴訟において簡易裁判所で第一審がスタートした場合、控訴は地方裁判所へ訴えることになり、上告は高等裁判所となります。
そして高等裁判所で出された判決に、憲法解釈の誤りや憲法違反があることを理由に、最高裁判所に不服申し立てを行うことが認められています。
これは特別上告と言われるものですが、通常の交通事故裁判で特別上告を行うことはほぼ考えられません。
上訴の期限は、判決を知ってから2週間
控訴や上告は、判決送達日から2週間というタイムリミットがあります。
この期間内に上訴の手続きをしないと、判決内容が確定してしまいます。
第一審の判決から控訴審の開始までには数カ月かかりますので、受理されれば上訴すればさらに長い法廷での戦いが待っているのです。
交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談
交通事故一人で悩まずご相談を
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない
- 交通事故を起こした相手や保険会社とのやりとりに疲れた
- 交通事故が原因のケガ治療を相談したい