相続人の一人が音信不通で連絡がとれない場合の相続方法

音信不通

相続人の一人と音信不通でも遺産分割は出来るのか?

先月に母が亡くなってしまったのですが、ようやく葬儀や遺品整理なども落ち着き、その過程でいくつかの不動産と預貯金が発見されました。相続人は私を含め、兄と姉の3人なのですが、葬儀の段階から兄と連絡がつかないままで困っています。

携帯電話の着信や、郵便自体は届いていると思うのですが、それでも無視するということは、相続する権利を放棄したと捉えて良いのでしょうか?また、遺産分割に期限などはないのでしょうか?ちなみに遺言書のようなものは見つかっていないため、このまま姉と二人で母の遺産を分けてしまおうかと考えています。何か問題はありますか?

亡くなった方が作成した遺言書などが特に見つからなかった場合、残された相続財産は相続人同士による遺産分割協議によってその行方を決めなければなりません。ここで重要なのが、遺産分割協議に参加する相続人は、全員そろっていなければならないという点。

今回のケースのように、いくら連絡がつかないからといって勝手に遺産分割協議を進めることはできませんし、たとえ進めたとしてもそれは法的に有効な遺産分割ではありません。

また、遺産分割を請求する権利というのは、期間経過によって消滅することがないため(時効という概念がないため)、後になって相手から改めて遺産分割協議を請求されれば、当然それに応じなければなりません。こうした点からみても、後のトラブルへと繋がる危険が強く、一方的に遺産分割協議は進めるべきではありません。

なお、2023年4月施行の民法改正により、相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益や寄与分の主張ができなくなり、法定相続分(または遺言で指定された相続分)で遺産を分けることになりました(民法904条の3)。遺産分割そのものに期限はありませんが、「生前に多く援助を受けた兄の取り分を減らしたい」「母を介護した分を考慮してほしい」といった事情がある場合は、10年以内に遺産分割協議か家庭裁判所への調停・審判の申立てを行う必要があります。放置が長引くほど不利になり得る点は、改正前とは変わっています。

音信不通な相続人がいる場合はどうすれば良いの?

先日、亡くなった父の自宅にて遺品整理をしていたところ、遺言書が発見されました。その遺言書によると、私と弟に対する相続分については細かく記載されていたのですが、音信不通となっている姉の相続分については一切記載されていませんでした。

しかし、遺言書には父のすべての財産について記載されていたわけではなく、特に記載がなかった預貯金の相続をどうするかについて、弟と困り果てています。

姉とは今も連絡がつかないので、このまま遺言書に記載されていなかった財産についても弟と二人で分けてしまおうと思うのですが、そのようなことはしても良いのですか?

もし、それが難しいのであれば、姉との音信不通を解消させる方法を教えていただきたいです。姉とは、もう10年以上も連絡を取り合っておらず、住所も電話番号も知りません。

亡くなった方が生前に遺言書を作成していた場合、優先されるべきはその遺言書の内容です。しかし、すべての遺産について遺言書に記載がなかった場合、記載がなかった遺産については、相続人全員参加による遺産分割協議にて決める必要があります。

よって、今回のケースを見れば、お姉さんに遺産分割協議に参加してもらわない限り、記載のなかった遺産については行方を決めることができません。そこで、音信不通を解消するためにも、以下の方法を実施していくことになります。

1.戸籍謄本を辿って現在の本籍地を調べる

他人の戸籍謄本を理由もなく取得することはできませんが、家族であり、今回のように相続が絡んでいるのであれば、問題なく取得することが可能です。

まずは、亡くなったお父さんの出生から死亡までの戸籍謄本を取るところからスタートし(どちらにしても預貯金解約の手続きなどに亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本は必要)、お姉さんの転籍先を辿り、現在の本籍地を確認してみましょう。

2024年3月からは「戸籍の広域交付」が始まり、亡くなった父(直系尊属)の出生から死亡までの戸籍は、本籍地が各地に散らばっていても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました(本人が窓口に出向き、顔写真付きの本人確認書類が必要)。ただし、広域交付で請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)の戸籍に限られ、お姉さんのような兄弟姉妹の戸籍は対象外です。お姉さんの現在の戸籍は、父の戸籍から判明した転籍先の本籍地の市区町村に、相続手続きに必要である旨を示して郵送などで請求します。

2.戸籍の附票を取得してみる

しかし、本籍地がわかっても、そこに必ずしも住んでいるとは限りません。本籍地イコール居住地ではないのです(本籍地に住民票を置いているとは限らないため)。

そこで、次は戸籍の附票を取得してみます。戸籍の附票とは、対象となる方がその本籍地を定めてからの住所履歴が記載されている書面のこと。本籍地がわかっても住民票は取得できませんが、附票を取れば現在の住所を知ることは可能というわけです。附票も兄弟姉妹の分は広域交付の対象外なので、本籍地の市区町村に請求します。

3.手紙を出して音信不通の解消を試みる

今回のケースのように、住所も電話番号もわかっていないとなれば、まずは手紙を出してみるところからスタートしていくことになります。音信不通であったならば、お父様が亡くなられたことも当然知らないでしょうし、事細かに事情を説明してあげましょう。

もちろん、自身の連絡先も手紙に記載し、音信不通の解消を試みます。

4.弁護士に相談してみる

通常、上記の手順にて連絡が取れることが多いのですが、それでも連絡がつかないような場合、何か事情があるのかもしれませんし、現地調査などが必要になる場合もあります。そういった場合は、弁護士といった法律問題のプロに相談してみるのが良いでしょう。

特に音信不通である場合、家族間で何かしらの溝があり、それがきっかけで音信不通になった経緯があるという方はよく見受けます。連絡が取れないのも無理はありません。

しかし、家族からの連絡は無視しても、弁護士から連絡がくれば無視できなくなるといったケースは本当に多いのです。どうしても連絡がつかない場合は、勝手に遺産分割をしてしまうのではなく、必ず弁護士に相談するようにしてください。

音信不通が解消できなかったらどうなるのか?

父が残した財産について、遺産分割協議をしようと思っているのですが、どうしても連絡の取れない兄がいます。現在の本籍地も住民票の住所地もわかってはいるのですが、いくら手紙を送っても返事をもらうことができません。不審に思って現地まで足を運んだのですが、夜になっても部屋は暗いままで郵便物はたまっているような状況でした。

兄の行方が気になるため、警察への相談も検討中なのですが、こういった場合、遺産分割協議については、兄の行方がわかるまで一切進められないことになるのでしょうか?

いつ兄と連絡が取れるかわからないまま、何年も経ってしまうといったケースは実際にありえるのですか?弁護士さんに相談しても兄が見つかるわけでもなく、諦めかけています。

現実に、どれだけ調査をしても連絡がつかない相手がいる場合は当然あります。しかし、そういった場合であっても遺産分割協議を進める方法がないわけではありません。
具体的には、主に以下の方法を利用し、遺産分割協議を進めていくことになります。

1.不在者財産管理人の選任申立

不在者財産管理人というのは、行方がわからない方の代わりに財産を管理する権限を与えられた人のことです。今回のようなケースだけでなく、たとえば、行方のわからなくなった夫がいて、妻は夫の預金を勝手に引き出すことができずに困ってしまうといったケースにも利用される手続きです。しかし、不在者財産管理人というのは誰かに頼めば良いわけではなく、家庭裁判所にて選任申立を経なければなりません。

今回のケースでいえば、不在者財産管理人を選任し、家庭裁判所の許可(権限外行為の許可)を得たうえで本人に代わって遺産分割協議に参加してもらうといった流れにて解決することが可能となります。

2.失踪宣告の申立

不在者財産管理人の選任を検討するのは、本人が生きていることが前提で行うことが多いのですが、音信不通になってから何年も経過している、行方がわかっていない理由が災害によるものが考えられる、といった場合は「失踪宣告」という方法もあります。

失踪宣告とは、生死不明の状態の方が死亡したとみなすために行われる手続きで、家庭裁判所にて申し立てる必要があります。原則として生死が7年間明らかでないこと(災害などの場合は危難が去ってから1年)が必要ですが、認められさえすれば本人は死亡したとして遺産分割協議を進めていけます。

3.所在等不明共有者の持分取得・持分譲渡の制度(不動産の場合)

2023年4月施行の民法改正で、行方のわからない共有者がいる不動産について、裁判所の決定により、他の共有者がその人の持分を取得したり(民法262条の2)、不動産全体を第三者に売却したりできる(民法262条の3)制度が新設されました。持分の対価は裁判所が定める額を供託します。

相続した不動産は相続人全員の共有状態にありますが、この制度は相続開始から10年を経過した後でないと利用できません。長年行方不明の相続人がいて実家の名義が亡くなった方のままになっているようなケースでは、不在者財産管理人を選任するよりも費用と手間を抑えられる可能性があります。

相続登記の義務化にも注意

2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。行方不明の相続人がいて遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続人の一人が単独で法務局に申し出る「相続人申告登記」をしておけば、期限内に申請義務を果たしたことになります。

このように、たとえ音信不通が解消されなくても遺産分割協議や相続手続きを進める方法はあります。しかし、いずれの手続きも家庭裁判所への申立てが必要であり、多くの専門知識が必要となってしまうため、弁護士へ相談する価値は十分にあります。

弁護士は音信不通の方の行方を捜索するのではなく、行方不明であっても手続きを進めていくといった、別視点から方法を提案してくれます。連絡が取れないからといって諦めず、弁護士に相談してみるところから、再度始めてみると良いでしょう。

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