相続人の一人が音信不通で連絡がとれない場合の相続方法
相続人の一人と音信不通でも遺産分割は出来るのか?
携帯電話の着信や、郵便自体は届いていると思うのですが、それでも無視するということは、相続する権利を放棄したと捉えて良いのでしょうか?また、遺産分割に期限などはないのでしょうか?ちなみに遺言書のようなものは見つかっていないため、このまま姉と二人で母の遺産を分けてしまおうかと考えています。何か問題はありますか?
今回のケースのように、いくら連絡がつかないからといって勝手に遺産分割協議を進めることはできませんし、たとえ進めたとしてもそれは法的に有効な遺産分割ではありません。
また、遺産分割を請求する権利というのは、期間経過によって消滅することがないため(時効という概念がないため)、後になって相手から改めて遺産分割協議を請求されれば、当然それに応じなければなりません。こうした点からみても、後のトラブルへと繋がる危険が強く、一方的に遺産分割協議は進めるべきではありません。
音信不通な相続人がいる場合はどうすれば良いの?
しかし、遺言書には父のすべての財産について記載されていたわけではなく、特に記載がなかった預貯金の相続をどうするかについて、弟と困り果てています。
姉とは今も連絡がつかないので、このまま遺言書に記載されていなかった財産についても弟と二人で分けてしまおうと思うのですが、そのようなことはしても良いのですか?
もし、それが難しいのであれば、姉との音信不通を解消させる方法を教えていただきたいです。姉とは、もう10年以上も連絡を取り合っておらず、住所も電話番号も知りません。
よって、今回のケースを見れば、お姉さんに遺産分割協議に参加してもらわない限り、記載のなかった遺産については行方を決めることができません。そこで、音信不通を解消するためにも、以下の方法を実施していくことになります。
1.戸籍謄本を辿って現在の本籍地を調べる
他人の戸籍謄本を理由もなく取得することはできませんが、家族であり、今回のように相続が絡んでいるのであれば、問題なく取得することが可能です。
まずは、亡くなったお父さんの出生から死亡までの戸籍謄本を取るところからスタートし(どちらにしても預貯金解約の手続きなどに亡くなったからの出生から死亡までの戸籍謄本は必要)、お姉さんの転籍先を辿り、現在の本籍地を確認してみましょう。
2.戸籍の附票を取得してみる
しかし、本籍地がわかっても、そこに必ずしも住んでいるとは限りません。本籍地イコール居住地ではないのです(本籍地に住民票を置いているとは限らないため)。
そこで、次は戸籍の附票を取得してみます。戸籍の附票とは、対象となる方がその本籍地を定めてからの住所履歴が記載されている書面のこと。本籍地がわかっても住民票は取得できませんが、現在の住所を知ることは可能というわけです。
3.手紙を出して音信不通の解消を試みる
今回のケースのように、住所も電話番号もわかっていないとなれば、まずは手紙を出してみるところからスタートしていくことになります。音信不通であったならば、お父様が亡くなられたことも当然知らないでしょうし、事細かに事情を説明してあげましょう。
もちろん、自身の連絡先も手紙に記載し、音信不通の解消を試みます。
4.弁護士に相談してみる
通常、上記の手順にて連絡が取れることが多いのですが、それでも連絡がつかないような場合、何か事情があるのかもしれませんし、現地調査などが必要になる場合もあります。そういった場合は、弁護士といった法律問題のプロに相談してみるのが良いでしょう。
特に音信不通である場合、家族間で何かしらの溝があり、それがきっかけで音信不通になった経緯があるという方はよく見受けます。連絡が取れないのも無理はありません。
しかし、家族からの連絡は無視しても、弁護士から連絡がくれば無視できなくなるといったケースは本当に多いのです。どうしても連絡がつかない場合は、勝手に遺産分割をしてしまうのではなく、必ず弁護士に相談するようにしてください。
音信不通が解消できなかったらどうなるのか?
兄の行方が気になるため、警察への相談も検討中なのですが、こういった場合、遺産分割協議については、兄の行方がわかるまで一切進められないことになるのでしょうか?
いつ兄と連絡が取れるかわからないまま、何年も経ってしまうといったケースは実際にありえるのですか?弁護士さんに相談しても兄が見つかるわけでもなく、諦めかけています。
具体的には、以下の2つの方法を利用し、遺産分割協議を進めていくことになります。
1.不在者財産管理人の選任申立
不在者財産管理人というのは、行方がわからない方の代わりに財産を管理する権限を与えられた人のことです。今回のようなケースだけでなく、たとえば、行方のわからなくなった夫がいて、妻は夫の預金を勝手に引き出すことができずに困ってしまうといったケースにも利用される手続きです。しかし、不在者財産管理人というのは誰かに頼めば良いわけではなく、家庭裁判所にて選任申立を経なければなりません。
今回のケースでいえば、不在者財産管理人を選任し、本人に代わって遺産分割協議に参加してもらうといった流れにて解決することが可能となります。
2.失踪宣告の申立
不在者財産管理人の選任を検討するのは、本人が生きていることが前提で行うことが多いのですが、音信不通になってから何年も経過している、行方がわかっていない理由が災害によるものが考えられる、といった場合は「失踪宣告」という方法もあります。
失踪宣告とは、生死不明の状態の方が死亡したとみなすために行われる手続きで、家庭裁判所にて申し立てる必要があります。裁判所に失踪が認められるには、いくつか条件がありますが、認められさえすれば本人は死亡したとして遺産分割協議を進めていけます。
このように、たとえ音信不通が解消されなくても遺産分割協議を進める方法はあります。しかし、いずれの手続きも家庭裁判所への申立てが必要であり、多くの専門知識が必要となってしまうため、弁護士へ相談する価値は十分にあります。
弁護士は音信不通の方の行方を捜索するのではなく、行方不明であっても手続きを進めていくといった、別視点から方法を提案してくれます。連絡が取れないからといって諦めず、弁護士に相談してみるところから、再度始めてみると良いでしょう。
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