内縁の妻・夫に相続権はない!財産を残す対策方法6つ

内縁の妻・夫に相続権はない!財産を残す対策方法6つ

内縁関係にあるパートナーがいる場合、夫婦として生活していても婚姻の届け出をしていないことから、内縁の妻(夫)に相続権はありません。それでも、パートナーに財産を渡す方法はいくつかあります。ここでは内縁の妻や夫に財産を残す方法と注意点について解説します。

内縁の妻(夫)に相続権はない

内縁の妻や夫には、パートナーの財産を相続する権利がありません。法定相続人でもありませんから、遺留分も認められません。

内縁関係(事実婚)とは

内縁関係とは、婚姻の届け出をせずに夫婦として生活していることで、事実婚とも呼ばれます。
事実上婚姻状態であることから、多くの制度で法律婚と同等の権利や義務が認められています。

しかしすべてが法律婚と同じというわけではありません。

内縁の妻に認められない権利

事実婚は法律婚とは異なり、民法上で配偶者と認められません。相続において内縁の妻に認められない権利には次のようなものがあります。

配偶者の相続権 (民法第890条)

第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。(民法|e-Gov法令検索)

内縁の妻は配偶者と認められないため、相続権がありません。

遺留分の帰属及びその割合(民法第1042条)

第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
(民法|e-Gov法令検索)

内縁の妻は法定相続人にならないため、遺留分を請求できません。

配偶者に対する相続税額の軽減(相続税法第19条の2)

第十九条の二 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。
(相続税法|e-Gov法令検索)

内縁の妻は民法の規定による配偶者ではないため、配偶者に対する相続税額の軽減の対象になりません。

内縁の妻との子どもは夫が認知すれば法定相続人に

法律婚の場合、子どもは摘出子として法定相続人になります。

しかし、内縁の妻との子どもは、認知をしないと夫の子として認められず相続人になれません。

認知された子は摘出子と同様に、法定相続人となります。

内縁関係の子どもが相続するケース

内縁の妻(夫)の子を実子として被相続人が認知している場合、認知された子どもには、法的な配偶者の子どもと同じだけの相続割合があります。
例えば、相続財産6,000万円を以下の相続人で分配するケースを見てみましょう。

相続人

  • 配偶者
  • 配偶者との間の子どもAさん、Bさん
  • 内縁の妻の子ども Cさん

この場合、相続割合は配偶者が2分の1、子どもが残りの2分の1を分配します。

内縁の妻の子を含む相続のケースモデル
相続する人 相続額
配偶者 3,000万円
配偶者の子:Aさん 1,000万円
配偶者の子:Bさん 1,000万円
内縁の妻の子:Cさん 1,000万円

内縁の妻が財産を相続する方法

内縁の妻が財産を確実に相続するには、遺言書の作成や生前贈与などの対策を生前に行う必要があります。相続発生後にできる手続きとしては特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがあります。また、内縁の妻に認められる相続以外の権利がありますから、こちらを活用するのもよいでしょう。

生前贈与をする

生前贈与の制度を活用すれば、婚姻関係等がなくても双方の合意によって自由に財産を譲れます。ただし年間110万円を超えると贈与税がかかります。何年かに分けて贈与することができますが、生前に贈与しきれなかった財産は内縁の妻に渡せません。

遺言書による遺贈

遺言書を作成する方法もあります。内縁の妻は相続人ではありませんが、遺贈というかたちで財産を遺せます。
夫に兄弟姉妹以外の法定相続人がいる場合は遺留分を請求される可能性がありますから、あらかじめ遺留分に配慮した内容の遺言書にしておくとよいでしょう。

また、遺言書が無効にならないように公正証書遺言にするなどの対策をしておくと安心です。

内縁の妻を受取人として生命保険を契約する

受取人を内縁の妻とした生命保険を契約すれば、一定の財産を渡すことができます。受け取った保険金は相続財産ではなく受取人の固有の財産になりますから、夫に相続人がいても遺産分割を行う必要はなく、全額受け取ることができるのです。

保険会社によって扱いが異なるので注意

生命保険(死亡保険金)の受取人の範囲は、犯罪リスクを排除する目的などから配偶者と1親等、2親等の血族までとされているのが一般的です。

この場合の配偶者は法律婚の配偶者ですので内縁の妻は該当しませんが、保険会社によっては一定の要件を満たすことで内縁者を受取人にできる場合もあります。
一定の要件とは、「法律婚の配偶者がいないこと」「同居期間・生計を共にしている期間が一定以上あること」などですが、保険会社によって取り扱いが異なりますので確認が必要です。

みなし相続財産として相続税がかかる

生命保険の受取金は相続財産ではありませんが、税法上はみなし相続財産として相続税の課税対象になることに注意してください。

特別縁故者の手続を行う

夫に法定相続人がいない場合は、内縁の妻が特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行うことで相続財産を受け取れる可能性があります。

特別縁故者として家庭裁判所へ申し立てることができるのは、次のような人です。

  • 被相続人と生計を同じくしていた
  • 被相続人の看護に努めた
  • その他被相続人と特別の縁故があった

他に財産を受け取る人がいない場合にとれる手続きですので、相続人が誰もいないこと、遺言書がないことが前提です。
どんなに疎遠であっても法定相続人がいる場合は申立てができません。また、申立てが認められても相続財産のすべてを分与されるとは限りません。

内縁の妻に認められる権利の活用

内縁の妻は相続人にはなれませんが、内縁関係を証明することで一定の権利を主張できます。

賃借権の主張

借地権法では相続人がいない場合は内縁の妻が賃借権を承継できるとされています。

借地借家法第36条

居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。(借地借家法|e-Gov法令検索)

夫婦で賃貸アパートなどの借家に住んでいて夫が亡くなった場合、内縁の妻がそのまま住み続けられるということです。

また、相続人がいる場合でも賃借権を認められるケースがあります。被相続人の賃借権の援用とも呼ばれます。

最判昭和42年2月21日(昭和40(オ)1435)

家屋賃借人の内縁の妻は、賃借人が死亡した場合には、相続人の賃借権を援用して賃貸人に対し当該家屋に居住する権利を主張することができるが、相続人とともに共同賃借人となるものではない。(裁判所HP 判例検索)

上記のように過去の判例では賃借人の死亡後の家に内縁の妻の居住を認める判例がありますが、どの場合でも認められるというわけではありません。
内縁関係の場合でも、遺言書を準備し、内縁の妻(夫)に相続させる意志をはっきりと明記しておくといいでしょう。

遺族年金

公的年金制度の給付は内縁者にも認められますので、内縁関係の妻は遺族年金を受け取れます。国民年金法、厚生年金保険法では「婚姻の届け出をしていない内縁者も配偶者に含む」とされているからです。

国民年金法第5条第7項(用語の定義)

この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。(国民年金法|e-Gov法令検索)
厚生年金保険法第3条第2項(用語の定義)も上記と同様

ただし、実際の遺族年金の受け取りには、社会保険事務所に事実婚を証明する資料等を提出し、内縁関係を認めてもらう必要があります。
そのため、証拠資料等なにもなしに事実婚を主張したとしても、必ずしも受給できるわけではない点には注意が必要です。

結婚する

入籍をして法律上の婚姻関係になれば、たった一日の結婚でも配偶者を相続人にできます。
対して、どれだけ長く連れ添っていても内縁者は相続人になれず、主張できる権利は最低限にとどまります。

また、税金の面でも事実婚よりも法律婚のほうが有利なのは明らかです。

相続の観点からすれば、事実婚で財産を残せるようどれほどの手を尽くすよりも、結婚し正式な妻(夫)になることこそ最も正当な、最強の方法です。どうしても結婚できない、特別な事情がないのであれば、入籍を検討してみるのもよいでしょう。

注目!

そのお悩み弁護士に相談してみては?

当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
初回相談無料の弁護士も数多く掲載しておりますし、どの弁護士もいきなり料金が発生するということはありません。まずはお気軽にご相談ください。

内縁の妻・夫が財産を受け取る場合の注意点

内縁の妻や夫がパートナーの財産を受け取る場合、法律婚の配偶者とは税金の面で大きな違いがあります。

相続税は2割加算に

相続税の2割加算とは、被相続人の配偶者、子、父母以外の人が相続財産を取得すると納付すべき相続税額が2割加算される制度です。
配偶者は2割加算の対象外ですが、相続税法上、内縁者は配偶者とみなされませんので2割加算の対象になってしまいます。

相続税の控除・特例を利用できない

相続税にはさまざまな控除や特例制度があります。特に配偶者の税額を軽減する制度を活用すると納税額を大幅に減らすことが期待できます。
しかし内縁の妻は対象外ですので、これらの制度を利用できません。

  • 配偶者の税額軽減
  • 障害者控除
  • 小規模宅地の特例

まとめ

法律婚の配偶者とは違い、内縁関係のパートナーには相続権がありません。長年生計を共にし、夫婦として一緒に暮らしていたとしても主張できる権利は限られたものです。

内縁の妻や夫に財産を遺す場合は生前に十分な対策をしておくことが肝心です。内縁者の相続については相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

遺産相続に強く評判の良い弁護士事務所を探す

遺産相続

相続問題で悩みを抱えていませんか

  • 相手がすでに弁護士に依頼している
  • 遺産分割の話し合いがまとまらない
  • 遺産を使い込まれているがどうすれば?