相続税を延納した場合にかかる利子税と相続財産の関係とは
主に不動産を相続した場合、それを売却して現金化するのに時間がかかる場合は相続税を延納することが可能です。延納が認められると年賦方式で相続税を納めることとなりますが、その際は利子税がかかります。その割合は相続財産の内容により異なるため、何にどれくらいの利子税がかかるのか、事前によく確認することが大切です。
相続税を延納するときにかかる利子税とは?
遺産相続で多くの財産を手に入れると、その分相続税も多くかかることになります。相続財産が預貯金や現金が大半を占めていれば、相続税を定められた期日までに支払うことが可能です。しかし、相続財産が不動産などの現金化が必要なものの場合は、財産をたくさん手にしたのにもかかわらず、相続税を納めることが難しいこともあります。
相続税を「延納」することってできる?
相続財産のほとんどが家や土地などの不動産の場合、不動産を売却して現金化するのに時間がかかるなど、期日までに現金を用意するのが難しいことがあります。そんなときに使えるのが「延納」の制度です。
相続税の延納とは
相続税の延納を申請して認められると、ローンのように相続税額を分割して年賦方式で毎年少しずつ納めることができます。取り急ぎ手元にある相続財産の中の預貯金や現金などで相続税の一部を支払い、残りを延納申請することもできます。
延納の要件
延納が認められるためには以下の要件を満たすことが必要です。
- 相続税の納期限までに、延納申請書を提出すること
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で一度に収めることが困難な理由があること
- 延納税額に見合う担保を提供すること(ただし、延納税額が50万円未満かつ延納期間が3年以下の場合、担保は不要)
担保として認められるもの
担保として認められるものの例は以下のとおりです。
- 国債、地方債、社債その他の有価証券
- 土地、建物、立木
- 自動車、船舶、機械
- 財団
等
また、不動産がすでにほかの債務の担保となっていて他に適当な財産がない場合などに限り、非上場株式も担保とすることができる場合があります。
延納している期間にかかる利子税とは
利子税とは、ローンでいう利子のことです。延納した相続税額を毎回支払う毎に、一定の利子税を支払うことになります。利子税の具体的な割合は相続した財産の内容により異なります。
利子税の仕組みとは
分割された延納税額を毎年支払うことでトータルの相続税額は年々減っていきますが、それに伴い利子額も少しずつ減少します。
例)利子税2.0%、延納税額が2000万円で、毎年200万円ずつ分納する場合
1年目 | 元本:200万円 | 利子税額:2000万円×0.02=40万円 |
---|---|---|
2年目 | 元本:200万円 | 利子税額:1800万円×0.02=36万円 |
3年目 | 元本:200万円 | 利子税額:1600万円×0.02=32万円 |
また、繰上げ返済をすればその年数分の利子税が節約できることになります。
延滞税と利子税の違い
利子税とは別に、「延滞税」の制度もあります。こちらは、相続税を納期限までに支払うことができなかった場合に課せられるものです。延納が認められたときにかかる「利子税」とはまた異なるものなので注意しましょう。
利子税に設けられた特例制度とは?
今、銀行の金利は超低金利の時代を迎えています。それに伴い、利子税にも特例制度が設けられることになりました。国内銀行の貸出約定平均金利に1%を加算した割合(特例基準割合)が年7.3%以下となった場合には、通常より低い税率が適用されます。
計算式は以下の通りです。
相続財産・延納期間・利子税の関係はこうなっている!
相続財産に占める不動産等の割合や、相続財産の内容によって延納利子税に違いがあります。
延納期間や利子税は相続財産により異なる
まず、相続財産の中に不動産などの割合が75%以上・50%以上・50%以下で場合分けがなされており、さらに、動産・不動産・立木などの区分により延納期間や延納利子税がそれぞれ異なっています。
延納期間は原則5年
相続税の延納期間は、原則5年と定められています。しかし、延納期間は相続財産に占める不動産等の価額の割合や相続財産の内容により異なります。
相続財産・延納期間・利子税率の関係
相続財産・延納期間・利子税率の関係を表すと以下の表のようになります。なお、特例割合については平成28年1月1日現在の延納特例基準割合で算出しているため、延納特例基準割合に変動があれば特例割合の数字も変わるため注意が必要です。
区分 | 延納期間 (最高) |
延納利子税 (年割合) |
特例割合 | |
---|---|---|---|---|
不動産等の割合が75%以上 | 動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 1.3% |
不動産等に係る延納相続税額 | 20年 | 3.6% | 0.8% | |
計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.2% | |
不動産等の割合が50%以上 | 動産等に係る延納相続税額 | 10年 | 5.4% | 1.3% |
不動産等に係る延納相続税額 | 15年 | 3.6% | 0.8% | |
計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額 | 20年 | 1.2% | 0.2% | |
不動産等の割合が50%未満 | 一般の延納相続税額 | 5年 | 6.0% | 1.4% |
立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額 | 5年 | 4.8% | 1.1% | |
特別緑地保全地区内の土地係る延納相続税額 | 5年 | 4.2% | 1.0% | |
計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額 | 5年 | 1.2% | 0.2% |
(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)
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贈与税にもある延納制度
贈与税でも同じように、一度に贈与税を納めるのが難しい場合には延納制度が設けられています。制度自体は相続税とあまり変わらないものの、異なるポイントがあるのでおさえておきましょう。
贈与税での延納制度の仕組みは相続税と同じ
贈与税と相続税とで、延納制度に関する基本的な仕組みは同じですが、申告期限や要件が相続税の場合と異なるので、申告や納付の際は注意しましょう。
贈与税の納付期限
贈与税の納付期限は、暦年課税・相続時精算課税のいずれの場合も申告期限と同じ3月15日となっています。税務署だけでなく、金融機関や郵便局の窓口で納付することができます。
要件が異なることに注意
次の要件を満たせば最長5年間、贈与税を延納することができます。担保を提供する基準が相続税では延納税額が50万円であるのに対し、贈与税の場合は100万円となっていることに注意しましょう。
- 贈与税額が10万円を超えている
- 金銭で一度に収めるのが難しい理由がある
- 公社債、株式、不動産などの担保を提供すること(ただし延納税額が100万円未満かつ延納期間が3年以下の場合は不要)
利子税もある
延納する税額に対して、原則年率6.6%の利子税が課せられます。しかし、平成26年1月1日以降の利子税については、前々年の10月から前年の9月における短期貸付けの平均利率の割合として財務大臣が告示する割合に1%を加算した割合(延納特例基準割合)が7.3%に満たない場合、現行の利子税の割合(6.6%)に延納特例基準割合が7.3%に占める割合を乗じて計算した割合(以下「延納特例割合」)となります。計算式で表すと次の通りです。
延納特例割合 = A × ( B+1% ) ÷ 7.3
A:現行の延納利子税率 (6.6%)
B:前々年10月〜前年9月の短期貸付平均利率
以上のように、相続税の延納をするには、利子税がかかります。相続税額にもよりますが、利子税だけで数十万円〜数百万円とかなりの額になることあり、区分によっては銀行で借りて納税する方が有利なケースもあります。どちらがよいのか判断がつかない場合は、遺産相続に強い税理士や弁護士に相談してみることをお勧めします。
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