不倫の慰謝料請求の流れ~浮気相手から慰謝料を取る方法と手順

不倫して縮こまる男性

配偶者の不倫相手に慰謝料を請求するときは、手続きを進める順序が結果を左右します。

証拠をそろえる前に問い詰めれば不倫の裏付けとなる記録を消され、示談書に必要な条項を入れ忘れれば、不倫相手からの求償で受け取った慰謝料の一部が同じ家計から出ていくこともあります。感情のまま先に動いた側が不利になる場面は少なくありません。

この記事では、不倫慰謝料を請求できる条件の確認から、証拠集め、交渉、示談書と公正証書の作成、裁判、慰謝料が支払われないときの差押えまでを、実際に進む順に解説します。

不倫の慰謝料請求の流れ

不倫相手への慰謝料請求は、次の7つの段階を順に進めます。

  1. 慰謝料を請求できる条件を確認する
  2. 慰謝料請求の下準備を整える
  3. 不倫相手と直接交渉する
  4. 示談書を作成する
  5. 分割払いなら公正証書を作成する
  6. まとまらなければ裁判を起こす
  7. 支払われなければ強制執行で回収する

浮気相手から慰謝料を取る方法は、直接交渉、内容証明郵便、裁判の3つです。どれを選ぶかで、解決までの期間と費用が変わります。

方法 期間の目安 費用 強制力 向くケース
直接交渉 1か月~2か月 ほとんどかからない なし 不倫相手が不貞を認めている
内容証明郵便 1か月~3か月 1,400円ほど(別に弁護士費用) なし(心理的な圧力) 連絡を無視される、本気度を示したい
裁判 6か月~1年半 1万6,400円~(請求額200万円・別に弁護士費用) あり(判決で強制執行が可能) 不倫相手が否認する、金額が折り合わない

いきなり訴訟を起こすケースは多くありません。費用と時間の負担が大きく、話し合いで解決できる場合が大半だからです。不倫相手が不貞を認めれば短く済み、否認して争えば長引きます。

不倫相手に慰謝料を請求できる条件

不倫相手に慰謝料を請求できるのは、配偶者と肉体関係があり、不倫相手に落ち度があり、その時点で夫婦関係が壊れていなかった場合です。

どれかひとつでも欠けると、不倫の事実があっても慰謝料の請求は認められません。まず次の5点を点検します。

  • 配偶者と不倫相手に肉体関係があった
  • 不倫相手が既婚者だと知っていた、または知らなかったことに落ち度がある
  • 不倫相手が自分の意思で配偶者と関係を持った
  • 不倫が始まった時点で夫婦関係が壊れていなかった
  • 慰謝料請求の時効が完成していない

不貞行為は不法行為にあたり、慰謝料を請求する根拠になります(民法709条)。財産的な損害がなくても、精神的な苦痛そのものに対して賠償を求められます(民法710条)。

慰謝料の対象になる不貞行為の範囲

慰謝料の対象になるのは、原則として配偶者と不倫相手に肉体関係があった場合です。

キスや手をつなぐ行為、二人きりの食事だけでは不貞行為にあたりません。親密であっても、夫婦の生活を壊したとまでは評価されないためです。

肉体関係を立証できなくても賠償が認められた裁判例もあります。宿泊をともなう外出を繰り返すなど、肉体関係と同じ程度に夫婦の生活を壊したといえる関係が対象です。認められる範囲は狭く、金額も肉体関係がある場合より低くとどまります。

不倫相手の故意と過失

慰謝料を請求できるのは、不倫相手が既婚者だと知っていた場合、または知らなかったことに落ち度がある場合です。

不倫相手の落ち度が問われるのは、確かめる材料があったのに確認しなかった場合です。職場の同僚で家庭の話を聞く機会があった、結婚指輪をしていた、休日や連絡の取り方が不自然だったといった事情が判断材料になります。

こうした事情がそろえば落ち度が決まる、というものでもありません。分かれ目は、独身だと信じたことに無理がなかったかどうかです。疑う材料が重なっていた状況ほど、知らなかったという説明は通りにくくなります。

既婚者だと知らず、独身だと信じたことに落ち度もなければ、不倫相手は責任を負いません。配偶者が独身と偽って交際を始めた場合が典型です。

この場合に不倫相手が配偶者へ慰謝料を請求できるかどうかは、別の問題です。独身と偽った事実だけで決まるわけではなく、交際の経緯や配偶者の説明の内容をふまえて判断されます。

自由な意思による関係だったか

不倫相手が自分の意思で関係を持ったことも条件になります。

配偶者が暴力や立場を使って関係を強いた場合、不倫相手は責任を負いません。この場合に責任を問われるのは配偶者の側です。

強制とまではいえなくても、上司と部下のように断りにくい関係だった場合は、不倫相手の責任が軽くなり、慰謝料は減額されます。年齢や立場に大きな差があるほど、上の側が重い責任を負う判断になります。

夫婦関係が壊れる前の不倫か

不倫が始まった時点で夫婦関係がすでに壊れていた場合、慰謝料は請求できません。

慰謝料は、夫婦が共同生活を送る利益を壊されたことへの賠償だからです。すでに失われていた関係は、不倫によって壊されようがありません。

壊れていたとみなされるのは、離婚に向けて別居しているなど、夫婦としての実体が失われている場合です。単身赴任や入院による別居は、生活を続ける意思がある限り含まれません。

時効が完成していないか

慰謝料を請求できるのは、不倫の事実と不倫相手が誰かを知った時から3年です(民法724条)。

3年の起算点は、不倫があったと知った時ではなく、不倫相手が誰かまでわかった時です。不倫相手を特定できていない間は、時効は進みません。

このほか、不倫があった時から20年が経過した場合も、慰謝料を請求できなくなります。

慰謝料を請求できる相手

慰謝料は、配偶者と不倫相手のどちらにも、両方にも請求できます。

不倫は配偶者と不倫相手が共同でおこなった不法行為にあたり、二人は連帯して賠償する義務を負うためです(民法719条)。

受け取れる総額は変わりません。慰謝料が200万円と認められた場合、不倫相手から200万円を受け取れば配偶者への請求は残らず、二人から200万円ずつ受け取ることはできません。

婚姻を続けるなら、不倫相手だけに請求する方法もあります。ただし支払った不倫相手は、負担部分にあたる金額を配偶者に請求できます。同じ家計から支払えば手元に残る金額は減るため、示談書での手当てが必要です。

慰謝料請求の下準備

交渉に入る前に、不倫相手の氏名と住所、不貞を示す証拠、請求する慰謝料の額の3つをそろえます。

準備が足りないまま問い詰めると、不倫相手も配偶者も否認したうえで記録を消します。話し合いは一度こじれると元に戻せません。

不倫相手の氏名と住所の特定

慰謝料を請求するには、不倫相手の氏名と住所が必要です。

請求書を送るにも訴訟を起こすにも、不倫相手を特定できなければ手続きが進みません。配偶者のスマートフォンに残る連絡先、SNSのアカウント名、勤務先の情報が手がかりになります。

自力で住所まで届かない場合、弁護士に依頼すると、弁護士会を通じて携帯電話会社などに契約者の情報を照会する方法が使えます。照会に応じるかどうかは問い合わせ先の判断によるため、必ず判明するとは限りません。

慰謝料請求に使える証拠集め

慰謝料請求で使う証拠は、肉体関係があったと第三者が判断できるものをそろえます。

不倫の証拠として使われるのは、次のような記録です。

  • ラブホテルや旅行先の領収書、クレジットカードの利用明細
  • 二人でホテルに出入りする場面の写真や動画
  • 性的な内容を含むメッセージのやり取り
  • 通話履歴、カーナビや位置情報の記録
  • 配偶者や不倫相手が不貞を認めた音声データや念書

証拠は数ではなく、肉体関係をどれだけ示せるかで評価されます。不貞を認めた音声データや念書のように、単独でも決め手になる証拠があります。

ホテルの領収書やメッセージの断片は、単独では別の説明も成り立ちます。同じ時期の記録を重ねて示す必要があります。仲が良かった事実や、二人で会っていた事実だけでは慰謝料請求は通りません。

見つけた記録は、その場で自分のカメラに撮ります。削除されたデータの復元は現実的ではなく、あとで確認しようと考えているあいだに消される例が多くあります。

配偶者の外出先まで確認する必要がある場合、行動の記録は個人では取りにくく、探偵の調査を使う方法もあります。費用は調査の日数と人数で変わります。

慰謝料の請求額の決め方

慰謝料の請求額は、離婚や別居に至ったかどうか、婚姻期間の長さ、不倫の悪質さで決まります。

不倫が原因で離婚または別居に至った場合は高くなり、婚姻関係を続ける場合は低くなります。婚姻期間が長いほど、また不倫の回数や期間が多いほど上がります。未成熟の子どもがいる場合も増額の要素です。

請求する額と認められる額は別ものです。交渉では相場より高い額から始めるのが通例ですが、裁判で認められる金額は過去の裁判例の水準に収まります。根拠のない高額を求めると、不倫相手が交渉を打ち切って訴訟に移る原因になります。

不倫相手との直接交渉

証拠と請求額がそろったら、まずは不倫相手との話し合いから始めます。

不倫相手が不貞を認めていれば直接交渉で足ります。連絡を無視される場合や金額で折り合わない場合は内容証明郵便に切り替え、それでも応じなければ裁判に進みます。段階を飛ばす必要はありません。

書面による交渉と内容証明郵便

書面による交渉は、主張を正確に伝えたうえで、送った事実を記録に残せます。

内容証明郵便を使うと、いつ誰にどのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明します。文書そのものに不倫相手を従わせる力はありませんが、慰謝料を請求する意思を明確に伝えた事実が、のちの裁判で証拠になります。

時効が近い場合にも意味があります。内容証明郵便で慰謝料を請求すると、不倫相手に届いた時から6か月のあいだは時効が完成しません(民法150条)。この6か月のうちに訴訟を起こせば、時効の完成をさらに止められます。

基準になるのは発送した日ではなく、不倫相手に届いた日です。期限が目前なら、配達証明を付けて届いた日を記録に残します。

弁護士の名前が入った書面は、不倫相手に対応の必要性を強く意識させます。請求する側が連絡しても無視していた不倫相手が、弁護士名の書面を受け取った時点で応じてくる例は少なくありません。

口頭による交渉

口頭の交渉は早く進む反面、記録が残らず、あとで内容を争われます。

その場で不倫相手の反応を見ながら話を進められるため、不貞を認めさせるまでが早く済みます。相手に考える時間を与えない点も利点です。

感情的な言葉が出れば、交渉はそこで止まります。慰謝料の支払いを迫る過程で勤務先や家族に不倫を伝えると告げれば、脅迫と受け取られる危険もあります。

録音していなければ、合意した内容そのものをあとから否定されます。口頭で話を進める場合も、決まった内容は必ず書面に残します。

不倫相手と示談書の作成

話し合いがまとまったら、合意した内容を示談書にします。

口約束のままでは、支払いの段になって内容を否定されます。示談書は、何をいくら、いつまでに支払うかを当事者双方が確認した記録です。

示談書に入れる条項

示談書には、慰謝料の額だけでなく、支払いが滞った場合と関係が再開した場合の取り決めまで書きます。

  • 不貞行為があった事実の確認
  • 慰謝料の金額、支払方法、支払期日
  • 不倫相手が配偶者と今後接触しない約束
  • 約束を破った場合の違約金
  • 分割払いで期日に遅れた場合に残額を一括で支払う取り決め
  • 示談書に定めた以外の請求をおこなわない確認
  • 不倫相手が配偶者に対する求償権を放棄する取り決め

示談書は自分でも作成できます。ただし金額や期日の書き方があいまいだと、支払いが滞ったときに何を根拠に請求するかで争いになります。接触禁止の範囲や違約金の額は書き方によって効力が変わるため、内容を弁護士に確認してから署名するほうが確実です。

求償権の放棄

示談書には、不倫相手が配偶者に求償しないという条項を必ず入れます。

不倫は配偶者と不倫相手の共同不法行為なので、全額を支払った不倫相手は、自分の負担部分を超えて支払った分を配偶者に請求できます。この権利を求償権といいます。

負担部分は、誘った側かどうか、関係をどれだけ続けたかなど、それぞれの関与の度合いから個別に決まります。半分ずつと決まっているわけではありません。

婚姻を続ける場合、配偶者が支払う求償金は同じ家計から出ます。仮に負担部分が半分と判断されると、不倫相手から200万円を受け取っても、配偶者が100万円を求償された時点で世帯に残るのは100万円です。

求償するかどうかは不倫相手が決めることですが、放棄させていなければその余地は残り続けます。条項は「不倫相手は配偶者に対する求償権を放棄する」と明記します。

放棄は不倫相手にとって負担が増える条件なので、慰謝料の額を下げる代わりに求める進め方が現実的です。

示談書をもとにした公正証書の作成

慰謝料が分割払いになる場合は、示談書の内容を公正証書にしておくと、支払いが止まったときの回収に備えられます。

公正証書は、公証役場で公証人が作成する公文書です。私文書である示談書より証明力が高く、条件を満たせば裁判を経ずに差押えができます。

強制執行認諾文言

裁判を経ずに差押えができるのは、強制執行認諾文言を入れた公正証書だけです。

強制執行認諾文言とは、支払わなかった場合にただちに強制執行を受けても異議を述べないと、支払う側が認める記載です。この一文が入って初めて、公正証書は差押えの根拠になります(民事執行法22条5号)。

文言のない公正証書では、慰謝料の支払いが止まっても差押えの根拠になりません。訴訟や支払督促で改めて取り直すところからやり直しになります。作成を依頼する際は、認諾文言を入れるよう公証人にはっきり伝えます。

一括払いと分割払いの分かれ道

慰謝料を一括で受け取れるなら、公正証書までは通常必要ありません。

支払いが一度で終わるなら、示談書を交わして入金を確認すれば手続きは完了します。手間と費用をかけて公正証書まで作る場面は限られます。

分割払いを受け入れるときは、公正証書の作成まで合意に含めます。支払いが途中で止まる危険は分割払いにつきもので、止まってから不倫相手の協力を得て作ることはできません。

公正証書の作成には、当事者双方または代理人が手続きに関わる必要があり、公証人の手数料もかかります。2025年10月1日から、この手続きはデジタル化されました。嘱託人が希望して公証人が相当と認めた場合は、ウェブ会議を使い、公証役場に出向かずに作成できます(日本公証人連合会)。

手続きが軽くなっても、不倫相手にとって公正証書は心理的な負担が大きく、作成に応じない場合があります。慰謝料の額や支払回数と合わせて、応じられる条件を探ります。

話し合いがまとまらないときの裁判

交渉で折り合わない場合は、裁判所に訴訟を起こして慰謝料の支払いを求めます。

不倫相手への慰謝料請求は、家庭裁判所ではなく地方裁判所に起こします。請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所です。離婚の手続きとは別の裁判になる点に注意が必要です。

訴状の提出と主張立証

訴訟は、不倫の内容と請求額を記載した訴状の提出から始まります。

訴状には、いつどこでどのような不貞行為があったか、それによってどのような精神的苦痛を受けたか、請求する金額とその根拠を書きます。

提出後は、不倫相手の反論に対して再反論する書面のやり取りが、1か月に1回程度の期日で続きます。

不倫相手が事実を否認した場合は、集めた証拠で肉体関係を裁判官に認めてもらう必要があります。請求する側にとって明らかでも、第三者の目から見て推認できなければ、慰謝料の請求は認められません。

和解と判決

訴訟の多くは、判決ではなく途中の和解で終わります。

審理の途中で裁判官から和解を勧められるのが通例です。和解が成立すると、その内容を記した和解調書に判決と同じ効力があり、慰謝料が支払われないときは、そのまま差押えができます。

最後まで折り合わなければ、双方の主張と証拠にもとづいて裁判官が判決を出します。判決で認められる金額は、交渉段階で提示していた額より低くなる場合が多くあります。

裁判にかかる期間と費用

判決までは6か月~1年半、費用は請求額に応じた申立手数料と弁護士費用がかかります。

請求額が200万円なら、書面での申立てが1万7,500円、オンラインでの申立てが1万6,400円です(裁判所)。

2026年5月21日に改正民事訴訟法が全面施行され、手数料は収入印紙を貼る方式から、ペイジーを使った電子納付が原則に変わりました。別に納めていた郵便費用も、申立手数料に一本化されています。

弁護士費用は、依頼時に支払う着手金と、回収できた金額に応じた報酬金で構成されるのが一般的です。回収の見込みが費用を下回るなら、訴訟を起こさず交渉で終える判断もあります。

訴訟費用は負けた側の負担になりますが、この訴訟費用に弁護士費用は含まれません。勝訴しても、弁護士費用の全額を不倫相手に負担させることはできません。

慰謝料が支払われないときの強制執行

慰謝料の支払いが止まったら、認諾文言つきの公正証書、和解調書、判決のいずれかをもとに、不倫相手の財産を差し押さえます。

差押えの対象になるのは、給与、預貯金、不動産です。

給与を差し押さえた場合、原則として手取りの4分の1まで、毎月直接受け取れます。勤務先に差押えの通知が届くため、慰謝料の支払いに応じさせる圧力にもなります。

預貯金は、金融機関名と支店を特定して申し立てます。差押えの時点で残高がなければ空振りに終わるため、勤務先がわかっているなら給与の差押えのほうが確実です。口座がわからない場合は、裁判所を通じて金融機関に情報を照会する手続きも使えます。

示談書だけでは差押えができません。認諾文言つきの公正証書も判決もない場合は、まず差押えの根拠になる書面を取るところから始めます。訴訟のほかに、金銭の支払いを求める支払督促を使う方法もあります。仮執行宣言が付けば差押えに進めますが、不倫相手が異議を申し立てると通常の訴訟に移ります。

自分で慰謝料請求する手順と限界

慰謝料請求に資格は必要なく、本人だけで進めることもできます。

本人で進められる場面は限られます。どこまでを自分でおこない、どこから弁護士に任せるかを先に決めておくと、途中で行き詰まりません。

自分で請求できるケースとできないケース

不倫相手が不貞を認めていて、慰謝料を一括で支払う意思がある場合は、本人だけでも進められます。

争点がなく、決めることが慰謝料の額と支払期日だけであれば、示談書を交わして入金を確認するだけで終わります。弁護士費用が差し引かれない分、手元に残る金額は多くなります。

次のような場合は、本人だけで進めるのが難しくなります。

  • 不倫相手が不貞の事実を否認している
  • 不倫相手が弁護士を立ててきた
  • 請求額と不倫相手の提示額が大きく開いている
  • 不倫相手の氏名や住所がわからない
  • 不倫相手も既婚者で、その配偶者からも請求される可能性がある

とくに不倫相手だけが弁護士を立てた状態は不利です。減額につながる主張に反論できないまま、提示された金額で合意してしまう例が多くあります。

自分で慰謝料請求を進める手順

本人で進める場合も、証拠を固めてから連絡する順序は変わりません。

  1. 不貞を示す証拠をそろえ、複製を別の場所に保管する
  2. 不倫相手の氏名と住所を確認する
  3. 請求する慰謝料の額と支払期限を決める
  4. 内容証明郵便で請求書を送る
  5. 不倫相手の回答を受けて、慰謝料の額と支払方法を調整する
  6. 合意した内容を示談書にまとめ、双方が署名押印する
  7. 入金を確認する(分割払いなら公正証書を作成する)

電話やメッセージでいきなり連絡すると、感情的なやり取りになりやすく、記録も残りません。最初の連絡を内容証明郵便にすると、その後のやり取りが書面中心になり、言った言わないの争いを避けられます。

請求書には、不貞行為の内容、請求する金額、支払期限、支払先の口座を書きます。金額の根拠を示さないまま数字だけを伝えると、不倫相手に減額交渉の余地を与えます。

自分で請求するときにやってはいけないこと

慰謝料請求の過程での行き過ぎた言動は、請求する側の立場を壊します。

慰謝料の請求そのものが正当でも、進め方を誤れば減額の理由にされ、逆に責任を問われる場合もあります。

勤務先や家族への暴露

不倫の事実を勤務先や親族に伝える行為は、名誉毀損として損害賠償の対象になります。

不倫が事実であっても、知らせる必要のない人にまで広める行為は正当化されません。不倫相手の社会的な評価を下げた点が問題になるためです。

支払わなければ勤務先に知らせる、と伝える行為も避けます。請求の中身が正当でも、伝え方によっては脅迫や恐喝と評価され、慰謝料の減額につながります。

脅迫と受け取られる言動

深夜の電話、勤務先への訪問、家族の前での追及は、不倫相手が録音していれば不利な証拠になります。

不倫相手が弁護士に相談した時点で、こうしたやり取りは真っ先に持ち出されます。交渉の場が、慰謝料をいくら払うかという話から、請求のしかたが行き過ぎていないかという話に移ってしまいます。

やり取りは書面に限り、連絡する時間帯と回数をあらかじめ自分で決めておくと、行き過ぎを防げます。

違法な方法での証拠集め

不倫相手の自宅に無断で立ち入る、他人のIDでSNSにログインするといった方法は、請求する側が責任を問われます。住居侵入や不正アクセス禁止法違反にあたるためです。不倫相手や配偶者の車に無断で位置情報の機器を取り付ける行為も、規制の対象になり得ます。

避けるべき理由は、証拠が使えないからではなく、請求する側が加害者になるからです。民事裁判では、違法な方法で集めた証拠がただちに使えなくなるわけではありません。著しく反社会的な手段で人格権を侵害して集めた場合に限り、証拠として認められないことがあります。

証拠集めは、配偶者の生活圏で無理なく確認できる範囲にとどめます。

弁護士に切り替える判断の目安

不倫相手が弁護士を立てた時点、または交渉が2回以上進まない時点が切り替えの目安です。

不倫相手の弁護士は、減額につながる材料を組み立てて連絡してきます。不貞の事実そのものを争う、夫婦関係がすでに壊れていたと主張する、請求額が相場より高いと指摘するといった内容です。

本人が直接応じると、反論の材料がないまま提示された金額を受け入れることになります。

支払いを引き延ばされる、連絡が途絶える、金額の開きが埋まらないといった状態が続く場合も、交渉のままでは動きません。訴訟に進む判断と準備は、弁護士に任せたほうが早く済みます。

時効が近い場合は迷う時間がありません。不倫と不倫相手を知ってから3年が近づいているなら、まず相談して時効の完成を止める手続きを取ります。

注目!

請求の進め方を弁護士に確認を

慰謝料請求は、進める順序と書面の内容で受け取れる金額が変わります。不倫相手に連絡する前に、いまの証拠で請求できるのか、いくらを求めるのが妥当なのかを確かめておくことが大切です。初回相談料無料の弁護士も多数掲載しています。不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼すると、不倫相手とのやり取りをすべて任せられます。

代理人が入ることで交渉の内容が変わるだけでなく、請求する側の負担そのものが軽くなります。

不倫相手と直接顔を合わせなくて済む

弁護士が代理人として入れば、不倫相手と直接やり取りする必要がなくなります。

制裁を加えたい気持ちがあっても、顔を合わせること自体が苦痛だという声は多く聞かれます。怒りや悲しみから感情的になり、不適切な発言や行動につながる危険もあります。

弁護士を通したやり取りであれば、冷静に言い分を主張できます。連絡の窓口が一本化されるため、突然の電話や訪問に振り回されることもなくなります。

専門家の客観的なアドバイスを受けられる

不倫や離婚の実務経験が豊富な弁護士は、状況に応じて次に取るべき行動を具体的に示します。

いまの証拠で足りるのか、いくらを請求すべきか、示談で終えるか訴訟に進むかといった判断は、経験の差がそのまま結果に出ます。

不倫は深刻な問題であるがゆえに、親や友人など身近な人にはかえって相談しづらいものです。まったく関係のない第三者だからこそ、正直に話せるという利点もあります。弁護士に相談するうちに冷静さを取り戻す人も多くいます。

不倫相手が弁護士を立ててきた場合に対等に交渉できる

不倫相手が弁護士を立てた場合は、こちらも弁護士を立てて対応します。

相手方の弁護士は、依頼者である不倫相手の利益のために動く立場です。請求する側に不利な点をわざわざ教えてはくれません。丸腰のまま応じれば、不倫相手の主張に沿った条件で合意することになります。

不倫相手の弁護士から連絡が届いた時点で、返答する前に相談します。一度回答した内容はあとから撤回しにくく、交渉の出発点が固定されてしまいます。

弁護士に不倫慰謝料請求を相談するまでの流れ

弁護士事務所に相談する際の、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 電話あるいはメールで連絡
  2. 事前ヒアリング(電話または来所)
  3. 弁護士との面談
  4. 契約

離婚・男女問題に強い弁護士を知り合いから紹介してもらう以外に、インターネットで検索して自力で弁護士を探す方法があります。プロフィールに「離婚・男女問題に強い」「離婚・不倫の実務経験豊富」などと記載されている弁護士を選ぶとよいでしょう。

事務所によっては、初回のみ無料相談を行っているところもあります。弁護士に相談するというと高額な費用がかかるイメージがあるかもしれませんが、気軽に無料相談ができる事務所はたくさんあります。敷居が低く、相談しやすそうな雰囲気の事務所を選ぶのがポイント。

現在の状況について基本的なアドバイスがもらえるので、あらかじめ相談内容をメモして持参することをおすすめします。トラブルの概要を時系列にまとめておくと、より伝わりやすくなります。

ほとんどの事務所では、契約上の注意事項や費用、契約締結に必要な書類などの詳細についても事前に説明してもらえますので、まずは気軽に相談してみましょう。

不倫の慰謝料請求についてよくある質問

慰謝料請求の場面で相談の多い論点をまとめます。

不倫相手から逆に慰謝料請求されたら?

既婚者だと知らなかった、関係を強いられたという理由で、不倫相手が配偶者に慰謝料を請求してくる場合があります。

既婚者だと知らなかったという主張では、独身だと信じたことに無理がなかったかどうかが問われます。疑う材料があったのに確かめていなければ、不倫相手の側に落ち度があり、請求は通りにくくなります。

独身と偽られていた場合でも、その事実だけで請求が認められるわけではありません。交際の経緯、配偶者がどう説明していたか、関係が続いた期間などをふまえて判断されます。

関係を強いられたという主張は、既婚者だと知っていたかどうかとは別に判断されます。自由な意思を抑えられていたことを、不倫相手の側が示す必要があります。自由な意思が認められる場合でも、配偶者のほうが年齢や立場で上であれば、不倫相手の責任は軽くなります。

不倫相手からの請求が向けられるのは配偶者です。請求する側が支払うわけではありませんが、婚姻を続けるなら支払いは同じ家計から出ます。

W不倫の場合慰謝料はどうなる?

不倫相手も既婚者だった場合、その配偶者からも慰謝料を請求される可能性があります。

双方が離婚する場合は、それぞれの配偶者が相手方に慰謝料を請求する形になります。

二組とも婚姻を続ける場合は、互いに請求しないと取り決める、または当事者四人で合意して差額だけを動かす解決が多く取られます。

二つの慰謝料は請求する人と支払う人の組み合わせが異なるため、自動的に差し引きされるわけではありません。差額で済ませるには、四人が同じ内容で合意する必要があります。

不倫相手の夫婦だけが離婚した場合は、離婚に至った側の請求額のほうが高くなり、支払う金額が受け取る金額を上回ることもあります。W不倫では、請求する前に相手方の状況を確認しておく必要があります。

家庭内別居状態だった場合慰謝料はもらえる?

家庭内別居の状態でも、慰謝料を請求できる場合があります。

夫婦関係が壊れていたかどうかは、別居しているかどうかだけでは決まりません。同居の有無、会話や家事の分担、生活費の負担、婚姻を続ける意思の有無をあわせて判断されます。

会話がほとんどなくても、同じ家に住み、生活費を分担している状態であれば、夫婦としての実体は残っていると判断される方向に働きます。

同じ理由で、別居していれば必ず壊れていたと判断されるわけでもありません。別居の理由と期間、その間のやり取りが判断材料になります。

離婚したこと自体への慰謝料はもらえる?

離婚したこと自体への慰謝料は、原則として不倫相手に請求できません。

最高裁は2019年2月、不貞の相手方に離婚慰謝料を請求できる場面を限定しました(最高裁平成31年2月19日判決・民集73巻2号187頁)。

請求が認められるのは、不倫相手が夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をしたと評価できる場合です。不貞行為があっただけでは、離婚そのものへの慰謝料は生じません。

不倫相手に請求できるのは、不貞行為そのものによって受けた精神的苦痛への賠償です。ただし、結果として離婚に至ったかどうかは、その金額を大きく左右します。

まとめ

不倫相手への慰謝料請求は、請求できる条件の確認、不倫相手の特定と証拠集め、請求額の決定、交渉、示談書と公正証書の作成という順で進みます。折り合わなければ訴訟に移り、慰謝料の支払いが止まれば差押えで回収します。

順序を飛ばすと、取り返しのつかない失敗につながります。不倫の証拠がないまま問い詰めれば記録を消され、認諾文言のない公正証書では差押えができません。求償権の放棄を入れ忘れれば、受け取った額を配偶者が求償される余地も残ります。

不倫の発覚直後は、精神的なショックから冷静な判断が難しくなります。感情のまま動いた結果、請求のしかたを責められて減額される例も少なくありません。動く前に順序を確認することが、結果的にいちばん早い道になります。

不倫の慰謝料請求の手続きは弁護士へ相談を

慰謝料請求は、証拠の評価、請求額の設定、示談書の条項という三つの判断で結果が決まります。どれも一度決めるとやり直しがきかず、あとから条件を覆すのは困難です。

誰にも言えない悩みを抱えたまま時間が過ぎると、解決が遅れるだけでなく時効も進みます。経験豊富な弁護士は、法律の知識を持つだけでなく、客観的な立場から次の一手を示してくれます。早い段階で相談することをおすすめします。

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