愛人や内縁の妻、その子どもは相続人になれる?非嫡出子への相続権は?

相続人

「愛人とその子供が、亡くなった父の遺産を相続する権利があると言ってきた」と聞くと、まるでドラマのワンシーンのようですが、そのようなケースは実際に発生しています。基本的に、愛人やその子どもに相続権はありませんが、遺言書の内容によっては愛人やその子どもに財産が遺贈されることもあります。

愛人や内縁の妻の相続権

被相続人の愛人や内縁の妻に相続権はあるのでしょうか?原則として、愛人や内縁の妻は婚姻関係がないため法律の上では法定相続人にはなれませんが、被相続人による遺言がある場合には遺産を受け取ることができます。

愛人や内縁の妻は法定相続人にはなれないのが原則

民法では被相続人の財産を受け継ぐべき法定相続人について規定していますが、法律上の婚姻関係がない場合は法定相続人になることはできません。

民法で定める法定相続人とは?

民法上、法定相続人になることができるのは、被相続人の配偶者である「配偶者相続人」と子や孫、父母、兄弟姉妹などの「血族相続人」です。被相続人と婚姻関係のない愛人や内縁の配偶者は法定相続人になることはできません。

相続人がいない場合は特別縁故者として相続可能なケースも

被相続人が生涯独身であったり、父母や兄弟姉妹が既に亡くなっているなど、相続開始後に法定相続人が見つからないケースもあります。そのような場合に、被相続人と特別な縁故があった人がいれば、その旨を家庭裁判所に申し立てると「特別縁故者」として遺産を譲り受けられる可能性があります。

特別縁故者になる条件

特別縁故者として被相続人の財産を受け継ぐには、相続人の不在が確定してから3か月以内に「特別縁故者の相続財産分与の請求」を家庭裁判所に申し立てる必要があります。申立人となれるのは、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」に限られます。

遺言がある場合には愛人も相続できる

被相続人が生前作成した遺言に「愛人に財産を譲る」旨を記載していた場合には、婚姻関係がなくても遺産を相続することができます。

遺言書の内容は法定相続人よりも優先される

愛人や内縁の配偶者は法定相続人になることはできませんが、被相続人による遺言書の内容によっては遺産を譲り受ける権利を得る場合があります。遺言書で愛人や内縁の配偶者が相続人として指定されている場合には、法定相続よりもその内容が優先されます。

法定相続人が遺留分を請求できる権利

ただし、例え被相続人が「全財産を愛人に譲る」との遺言を残していても、残された家族のその後の生活が立ちいかなくなっては人権侵害にも当たります。そのような場合、法定相続人は最低限得られる財産である遺留分を受け取る権利を行使することができます。遺留分の権利がある者は配偶者及び直系卑属である子、孫、直系尊属である父母、祖父母であり、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

愛人との間に子供がいる場合の相続権はどうなる?

被相続人と愛人との間に子供がいる場合には、さらに問題が複雑化します。婚姻関係のない男女の間に生まれた子供を非嫡出子といいますが、認知されていれば法定相続人と認められます。

非嫡出子の相続権は認知されているかがカギ

非嫡出子に相続権があるかどうかは、被相続人による認知の可否によって変わります。その子が認知されていれば非嫡出子でも相続権が認められます

非嫡出子には2つのパターンがある

婚姻関係のない男女の間に生まれた子を非嫡出子と言います。非嫡出子には、認知されている場合と認知されていない場合の2つのパターンがあります。婚姻関係のある妻との子供の嫡出子は常に相続権がありますが、被嫡出子は認知されているかどうかで相続権を有するか否かが異なります。

認知されている非嫡出子には相続権がある

非嫡出子でも父親が自分の子供であると認知している場合には、法定相続人としての権利があります。そのため、遺産分割協議も非嫡出子の合意なしに進めることはできません。認知されているかどうかは非嫡出子の戸籍で確認できます。

認知されていない子は法定相続人と認められない

たとえ血が繋がっていたとしても被相続人が認知していない場合には、その非嫡出子は法定相続人とは認められないことになっています。愛人との間、または親子間で「財産を譲る」等の口約束を交わしていた場合にも効力はありません。

親が子を認知する方法とは

認知にはいくつかの方法があります。父あるいは子供の本籍地または父の居住している市区町村役場に届ける方法が一般的ですが、遺言によって認知することも可能です。

一般的な認知の仕方は?

一般的な認知は、被相続人が生前に自分もしくは子の本籍地、あるいは自分の居住地のある市区町村役場に非嫡出子が自分の子供である届を出して行われます。認知の手続にあたっては、子供の母親の同意を得る必要はありません。

遺言認知の方法も

遺言認知とは、被相続人が遺言によって非嫡出子を自分の子であると認知する方法です。遺言認知には必ず遺言執行者が必要です。遺言書で遺言執行者が指定されていない場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることになります。

認知してくれない場合は調停や裁判も

父親が自分の子だと認めてくれない場合には、認知調停を申立てることが可能です。調停で双方の合意が得られ認知の審判が下されれば審判認知となりますが、調停不成立となった際には訴訟を起こすこともできます。この場合、裁判所により認知の判決が下されると強制認知となります。

非嫡出子の相続

非嫡出子が遺産を相続する際、嫡出子に比べて不利になることはあるのでしょうか。また、非嫡出子に遺産を譲りたい場合の対策についてもみていきます。

非嫡出子が相続できる割合

非嫡出子の相続分は、以前は嫡出子の半分と決められていました。しかし、平成25年の民法改正により現在は非嫡出子も嫡出子と同じ相続分を取得できるようになっています。

以前は嫡出子の半分だった

被相続人によって認知されていれば、非嫡出子にも相続権が認められています。しかし、かつては非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1と規定されていました。相続権は認められていたものの、相続できる財産の割合は両親が婚姻関係にない非嫡出子に不利な条件となっていたのです。

現在は嫡出子と非嫡出子の相続分の差はない

しかし、「同じ両親の子供であるのに嫡出子と非嫡出子が相続できる財産に差があることは違憲である」との判決が平成25年9月最高裁判所によって下されました。この判決により12月に民法が改正され、現在では嫡出子と非嫡出子の相続分は同等となっています。

非嫡出子に相続させるには

様々な理由から、実子や配偶者ではなく非嫡出子に遺産を相続させたいケースもあるでしょう。しかし、認知されていない非嫡出子には相続権がありません。財産を非嫡出子に譲りたい場合には、弁護士に相談しながら遺言による認知をしておくなどの対策をとることをおすすめします。

認知していない場合には遺言で

非嫡出子に遺産を受け継がせたい場合には、その子を認知しなければ相続人とすることはできません。生前に役場に行って認知の届出をすることもできますが、健康上の理由などで届出が困難な場合には、遺言で認知をすれば非嫡出子に相続権を与えることが可能です。

公正証書遺言を利用すると安心

遺言書で認知をする場合には、法律で定められた形式でなければ認められません。もっとも安心なのは、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」です。公正証書遺言を作るには、本人証明のための実印や印鑑証明等の書類のほか証人2名以上の立ち会いが必要になります。

弁護士への相談も大切

公正証書遺言はもっとも確実な方法ですが、第三者に内容を知られたくない場合もあるでしょう。そのような際には遺言書の作成を弁護士に依頼するのも有効な方法です。遺産相続に強い信頼できる弁護士なら、法律で定められた形式に則って遺言書を作成してもらえるだけでなく第三者に秘密が漏れることもありません。

愛人や内縁の配偶者でも、被相続人の遺言書の内容によっては遺産を相続する権利があります。さらに、認知されている非嫡出子には嫡出子と同等の相続分が保証されています。愛人関係や子の認知関係などで、遺産相続の際に揉めそうな場合には弁護士などの専門家に解決策についてのアドバイスをしてもらうようにしましょう。

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