後遺障害11級の主な症状と慰謝料相場を解説

監修記事
交通事故弁護士相談広場編集部の写真

交通事故弁護士相談広場編集部

後遺障害11級の労働能力喪失率は20%です。健常者の80%の労働力となりますが、外見上はそれほどの変化がないため、今までのように働けないことへの周りからの理解が得られず、被害者本人は苦しみを背負ってしまいます。弁護士に依頼し、適正かつ十分な慰謝料を得ることができるように、等級認定の申請手続きを進めましょう。

後遺障害11級の認定基準~該当する症状は?

後遺障害による労働能力喪失率は12級の14%に対し、11級は20%と定められています。交通事故に遭ってしまう前と同じ仕事や作業をする際、また外貌の変化などを考え合わせると、仕事内容によってかなりの不便を感じ、精神的に辛い状態に陥り、復帰できないケースも考えられます。

また、以下に説明する11級10号の「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」に該当する症状は、外見上は健常者と変わらないものの、後に悪化する可能性もあり、逸失利益などの損害賠償請求において、適正で十分な損害賠償金を受けておきたいところです。

どのような後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害11級に相当するのかを見て行きましょう。

後遺障害第11級認定に必要な条件
1号 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2号 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4号 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5号 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
6号 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7号 脊柱に変形を残すもの
8号 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
9号 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

これらの条件に1つでも当てはまる症状があれば、後遺障害11級の認定が受けられます。

上記の認定条件を、それぞれ具体的に説明します。

1号)両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

交通事故によって、両方の眼球に著しい調節機能障害が残った場合、または運動障害が残った場合には後遺障害11級が認定されます。

調節機能障害とは、遠くの物や近くの物を見た時にピントを合わせる機能に障害が起こることです。この機能が2分の1以下になった場合に「著しい調節機能障害」と定義されます。また、眼だけで物を追うことができる範囲を注視野と呼び、この注視野が2分の1になった場合に「著しい運動障害」と定義されます。

しかし、眼の調節機能は年齢と共に衰えるため、55歳を超える場合は後遺障害として認定されないことに注意が必要です。

2号)両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

交通事故によって両方の眼のまぶたに著しい運動障害が残った場合は、後遺障害11級に認定されます。

具体的には、自分ではまぶたを開けているつもりでも十分に開かずに瞳孔が隠れたままの状態のもの、また自分ではまぶたを閉じているつもりでも実際には閉じられておらず、瞳孔や角膜が露出してしまう状態が「著しい運動障害」とされます。

3号)一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

交通事故によって片方の眼のまぶたを全部、もしくは大部分を失い、眼を閉じた時に眼を覆うことができない状態が残ると、後遺障害11級と認定されます。

両方の眼のまぶたに著しい欠損が残るものは、より重篤な後遺障害とされ9級となります。

4号)十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

歯科補綴(ほてつ)とは、歯科医師による適切な治療を指します。交通事故により歯が失われたり欠けたりしたため、差し歯を入れたりブリッジなどで義歯を付けたりした場合が該当します。事故発生後に歯科に行って適切な治療を受け日常生活に不便はなくても、後遺障害として認められます。

治療の必要な歯の数が増えると等級アップの可能性も

歯に対する後遺障害は、14歯以上に対し歯科補綴を行った場合の10級、10歯以上で11級、7歯以上で12級、5歯以上で13級、3歯以上で14級と、5段階に分かれています。等級認定において、歯科補綴を行った歯の数が増えると、より高い等級が認められるケースがあることに注意しましょう。

5号)両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

交通事故によって両方の耳の聴力が、1mの距離では小声を聞いて理解することができない場合、後遺障害11級と認定されます。

具体的には、両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上と規定されています。40dB以上の音でないと聴き取れない状態のことです。もともと耳がよく聞こえない人だと、事故によって聴力が低下したと気付かない場合もあります。聴力は主観的な部分が大きいので、専門的な耳鼻科の医師による治療や検査を受けるべきでしょう。

6号)一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

交通事故によって、片方の耳の聴力が、40cm以上の距離で普通の話し声を理解することができない状態を指します。

具体的には、片方の耳の平均純音聴力レベルが70~80dB未満(70~80dBに近い音でないと聴き取れない状態)で、かつ最高明瞭度が50%以下(「ア」「オ」などのいくつかある言葉のうち半分以下しか聴き取れない状態)の場合です。上記の5号と同様に、病状固定を行う前に耳の調子がおかしいと思ったら、専門的な耳鼻科の医師による検査を受ける方が良いでしょう。

7号)脊柱に変形を残すもの

交通事故によって脊柱(背骨)に大きな障害を受けて変形してしまった場合には、後遺障害11級7号が認められます。「腰椎圧迫骨折」が代表的な症例です。さらに、脊柱の変形により運動障害が起きている場合には、6級5号(脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの)や8級2号(脊柱に運動障害を残すもの)に等級が上がります。入念な専門医の診断を受けることが必要です。

具体的な認定基準は、レントゲンやCTなどで明らかに椎骨(脊柱を形作る個々の骨)が潰れていることが確認できること、脊柱固定手術で人工関節を埋め込まれていること、3個以上の椎骨に椎弓切除術が施されていること、などが該当します。

8号)一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの

交通事故によって片方の手の人差し指、中指、または薬指のどれか1本を失った場合、後遺障害11級と認定されます。

指を失った状態とは、指の第2関節より先を切断してしまった場合です。

9号)一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの

交通事故によって片方の足の親指を含む2本以上の指の用を廃した時、後遺障害11級が認定されます。

「用を廃した」とは、身体の部位本来の働きを失うことです。9号でいうなら、指の長さが半分以下になってしまった状態、あるいは親指の場合は第1関節、その他の指の場合は第2関節より先の可動域が2分の1以下になった状態を指します。

10号)胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

交通事故によっておこる胸腹部臓器の損傷により後遺障害が残った場合で、9級11号など胸腹部臓器の機能障害を内容とする他の等級に比べて労務に与える影響が最も少ない場合に後遺障害11級が認定されます。

具体的には、心臓の人工弁置換術を受けた場合、肝損傷や急性肺動脈血栓症などの後遺障害が残った場合などが当てはまります。

後遺障害11級の慰謝料の相場

自賠責基準による後遺障害11級の慰謝料相場 

強制保険である自動車損害賠償責任保険(自賠責)では、国が定めた基準により、後遺障害11級の慰謝料は136万円(2020年3月31日までの事故は135万円)と定められています。これが、後遺障害11級の適正な慰謝料金額を算出する際の最低水準だと考えてください。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の2(1)②」※PDFファイル

任意保険基準による後遺障害11級の慰謝料相場

任意保険基準の場合、一般的には自賠責基準より少し高く、後述の弁護士(裁判)基準よりはるかに低い水準です。被害者の後遺障害の状態によれば、自賠責基準と同額の金額を提示してくる保険会社もあると言われています。

これまで任意保険基準は保険会社の内部情報として公にされてきませんでしたが、最近は任意保険基準をWEB上で公開している保険会社もあります。たとえば、損害保険ジャパン株式会社が定める後遺障害の慰謝料基準は、次の表のとおりです。

後遺障害者等級 父母・配偶者・子のいずれかがいる場合 左記以外
第1級 1,850万円 1,650万円
第2級 1,500万円 1,250万円
第3級 1,300万円 1,000万円
第4級 900万円
第5級 700万円
第6級 600万円
第7級 500万円
第8級 400万円
第9級 300万円
第10級 200万円
第11級 150万円
第12級 100万円
第13級 70万円
第14級 40万円

損害保険ジャパン株式会社WEBサイト「WEB約款」より転載)

第11級の慰謝料は150万円で、自賠責基準の136万円より少し高く、次に紹介する弁護士基準よりずっと安いことが分かります。

弁護士基準(裁判基準)による後遺障害11級の慰謝料相場

弁護士に加害者との示談交渉や等級認定申請の手続きを依頼すると、弁護士費用はかかりますが、得られる損害賠償金や慰謝料は、一般的には大幅に増加します。

この弁護士(裁判)基準とは、慰謝料の金額を示した裁判例を基準にして算出されたものです。そして、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)によると、弁護士(裁判)基準による11級の後遺障害の慰謝料は420万円と記載されています。

後遺障害11級の慰謝料相場を3つの基準で比較
自賠責基準 任意保険基準 弁護士基準(裁判基準)
136万円 150万円 420万円

自賠責基準や任意保険基準とこれだけの差があれば、たいていのケースでは十分に弁護士費用はまかなえるものであり、近年では弁護士によって被害者に分かりやすくて利用しやすい費用体系を用意しています。

なお、これはいわゆる相場(通常の目安)であるため、交通事故に強い優秀な弁護士の場合は、この水準以上の慰謝料を得ることができる可能性も出てくるでしょう。

後遺障害11級の逸失利益の計算方法

後遺障害が残ると働くことが難しくなり、収入が減ってしまいます。こうした収入の減少は、事故に遭わなければ得られたであろう利益(逸失利益)として、加害者に請求することができます。

後遺障害による逸失利益は、平成13年の国土交通省と金融庁の連名告示により、次の式で計算することとされています。

“収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数“

参考リンク:国土交通省WEBサイト「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 第3の1」※PDFファイル

後遺障害11級の逸失利益の労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、後遺障害の影響により本来の仕事ができなくなるであろう将来の期間のことです。就労可能年数ともいわれます。

労働能力喪失期間は、先ほどの告示別表により、後遺障害等級が確定した時の年齢ごとに定められています。この別表を見る限り、労働能力喪失期間の決め手となるのは年齢だけで、等級は問われていません。

参考リンク:国土交通省WEBサイト「就労可能年数とライプニッツ係数表」※PDFファイル

11級7号「脊柱に変形を残すもの(腰椎圧迫骨折)」の労働能力喪失期間の裁判例

ただ、7号の「脊柱に変形を残すもの」については少々事情が異なります。

7号の代表的症例である腰椎圧迫骨折による労働能力喪失期間を示した裁判例を見てみましょう。

判決年月日 年齢・性別 等級 労働能力喪失期間
加害者側の主張 裁判所の判断
①神戸地裁 平成28年6月22日  77歳 女 11級 不明 7年
②名古屋地裁 平成22年7月2日 31歳 男 11級 5年 36年
③東京地裁 平成26年1月29日 37歳 男 11級 10年 28年
④東京地裁 平成25年4月26日 42歳 男 併号11級 23年 25年
⑤福岡地裁 平成29年10月17日 42歳 女 併合11級 不明 23年

告示別表の労働能力喪失期間と比べると、裁判例①は1年長い、②④は同じ、③⑤は2年短い期間となっています。

労働能力喪失期間を示した裁判例はこれらがすべてではありませんが、ここに挙げた裁判例を見る限り、告示別表を基に具体的事情も加味したうえで、加害者側が主張するよりも長い労働能力喪失期間を認めるのが裁判例の傾向かと思われます。

加害者側が労働能力喪失期間を短めに主張するのは、後遺障害による逸失利益を低く算定し、被害者に支払う損害賠償金を少なくするためであることは言うまでもありません。

後遺障害11級の逸失利益の計算例

具体例で考えてみましょう。
79歳で年収400万円の現役自営業者です。この人が交通事故に遭い、後遺障害11級の認定を受けました。告示別表に当てはめると、後遺障害11級の人の労働能力喪失率・労働能力喪失期間・ライプニッツ係数は以下のようになります。

  • 労働能力喪失率20%
  • 労働能力喪失期間5年
  • ライプニッツ係数4.580

この場合の逸失利益の金額は、以下のようになります。

年収400万円×労働能力喪失率0.20×労働能力喪失期間5年の場合のライプニッツ係数4.580=366万4,000円

ライプニッツ係数を掛けるのは逸失利益の「中間利息の控除」のため

本来、後遺障害を負った後、事故前と比べて労働能力を20%失った状態で5年間働くとすると、その間の逸失利益は“400万円×0.20×5年間=400万円“となるはずです。

しかし、逸失利益の計算では、中間利息を差し引くために、5ではなくライプニッツ係数4.580を掛けることとされています。その結果、ここでは33万6,000円の中間利息が差し引かれて、366万4,000円という逸失利益が算出されたわけです。こうした差し引きを「中間利息の控除」といいます。

「中間利息」とは、被害者が逸失利益として受け取ったまとまったお金を預金などに回すことを想定し、それによって得られる利息をいいます。こうした利息は、ちょうどまとまって手に入ったお金を金融機関に預けることによる儲けであり、事故による直接の損失ではないので、被害者の逸失利益に含めるべきではありません。

そこで、5ではなくライプニッツ係数4.580を掛けることにより中間利息を控除して、被害にふさわしい逸失利益を算出することにしたわけです。

後遺障害11級の逸失利益がもらえないケース

後遺障害等級認定で11級が認められた場合でも、逸失利益がもらえない、あるいはあまり高額にならないこともあります。適切な逸失利益を受け取れない原因にはどんなものがあるのでしょうか。

大きく3つの原因が考えられます。

  • 交通事故に遭ったが収入は減らない
  • 交通事故の前からもともと収入がない
  • 交通事故に遭っても労働能力が下がらない

交通事故に遭ったが収入は減らない

アパート経営者や年金生活者などがその例です。こうした人たちは、交通事故に遭って後遺障害11級を認められても、事故前と同額の家賃や年金が入ってくるので、事故による収入の減少はないとされ、逸失利益はもらえないことになります。

交通事故の前からもともと収入がない

年金がなく子どもの家に身を寄せている高齢者など、事故前からもともと収入のなかった人は、たとえ後遺障害11級を認められたとしても、事故による収入の減少ということが考えられないため、逸失利益は生じません。

交通事故に遭っても労働能力が下がらない

一日中パソコンに向かう仕事をしている人を考えてみましょう。こうした人が事故で片足の親指とひとさし指を半分ずつ失って11級9号の認定を受けても、仕事にまったく影響がないか、痛みで時々仕事のペースが落ちる程度であれば、労働能力喪失率がゼロまたは低率となり、逸失利益もゼロまたは低額になってしまいます。

後遺障害11級で障害者手帳はもらえる?

後遺障害11級で障害者手帳の取得は難しい

身体障害者手帳には医療費の助成、所得税・住民税の減額、鉄道やバスといった公共交通機関の運賃割引などいくつかのメリットがあるため、後遺障害11級の認定を受けたら身体障害者手帳も取得しておきたいところです。

ただ、実際のところ、後遺障害11級の状態では障害者手帳をもらうのは難しいのが普通です。

障害者手帳取得には障害等級6級以上が必要

後遺障害11級で障害者手帳をもらうのが難しいといえるのは、身体障害者障害程度等級表(障害等級)6級以上に該当するのが難しいからです。

障害者手帳をもらうには、7等級ある障害等級のうち6級以上に該当することが必要とされています。しかし、後遺障害11級のレベルではそれが難しいのです。

たとえば、両耳の聴力レベルでいえば、後遺障害11級で40㏈以上(40㏈以上の音でないと聴こえない)とされているのに対し、障害等級6級では70㏈以上(70㏈以上の音でないと聴こえない)とされています。後遺障害11級の人は69㏈までの音を聴き取れるため、障害等級6級に該当しないことになってしまうわけです。

身体障害者障害程度等級表は、厚生労働省のWEBサイトで公開されています。

参考リンク:厚生労働省WEBサイト 「身体障害者手帳の概要 等級表」※PDFファイル

障害が2つ以上重なると手帳がもらえるケースもある

ただ、障害等級7級の障害が2つ以上重なる、または7級の障害と6級以上の障害とが重なれば、身障者手帳がもらえます。
もっとも、後遺障害11級の人について障害等級7級の2つ以上の障害が重なることは、両方の等級表を照らし合わせる限り、まずあり得ません。

一方、後遺障害11級の人について7級の障害と6級以上の障害とが重なることは十分に考えられます。たとえば、交通事故で片方の足指すべてが半分以下の長さになり、下肢への外傷により肺動脈血栓症になった場合です。後遺障害では11級9号と10号に該当し、障害等級では「7級 下肢5号」と「4級 呼吸器機能障害」に該当するので、身障者手帳がもらえることになります。

異議申立てで後遺障害等級が上がれば手帳をもらえる可能性も

後遺障害認定について損害保険料率算出機構に異議を申し立てることにより等級が上がれば、身障者手帳をもらえる可能性も出てきます。

たとえば、交通事故により後遺障害11級7号「脊柱に変形を残すもの」との認定を受けた人が、異議申立てにより、後遺障害6級5号「脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」として認められた場合です。

この人が2㎞以上歩くことができなければ、「体幹の機能の著しい障害」として障害等級5級に該当し、身障者手帳をもらうことができます。

ただ、これまでの実例を見ると、後遺障害の異議申立てが認められる割合は約5%という狭き門です。交通事故の処理に詳しい弁護士に相談して力になってもらうのが、異議申立てによる等級アップを勝ち取る近道といえるでしょう。

労災の場合、後遺障害11級でいくらもらえる?

後遺障害11級認定のもととなった交通事故が被害者の就業中または通勤途中に起きた場合、被害者は、業務災害または通勤災害(併せて労働災害)として、労働者災害補償保険(労災保険)から労災保険給付金をもらうことができます。

後遺障害11級の認定を受けている人がもらえる労災保険給付金は、次の3つです。

  • 障害補償給付金 給付基礎日額×223日分
  • 障害特別給付金 算定基礎日額×223日分
  • 障害特別支給金 29万円

これら労災保険給付金は、本人・家族または勤務先事業所が労働基準監督署に支給申請書を提出した後、面談審査などを経て、指定した口座に全額が入金されます(一時金形式)。申請から入金までの期間は、通常3か月程度です。

入金が済むと、厚生労働省から本人宛に、支給の決定とそれに基づく振込をしたことを知らせる通知が届きます。

給付基礎日額とは、事故前3か月間の賃金総額を暦日数で割った1日当たりの賃金額です。
算定基礎日額とは、事故前1年間に支払われた特別給与(ボーナス、結婚手当など)の総額を365日で割った額をいいます。

障害補償給付金と障害特別給付金が後遺障害で労働能力が低下することによる減収分を補うものであるのに対し、障害特別支給金は福祉的な観点から被害者の社会復帰を促すためのお金です。

慰謝料は労災での支払いの対象外

なお、労災保険給付金は労災を被った人の収入の穴埋めと社会復帰の促進を目指すものであるため、交通事故による慰謝料については労災保険からは給付されません。慰謝料は加害者側に請求することになります。

後遺障害11級認定を獲得するための重要なポイント

すべての等級において、後遺障害の認定を受けるために大切なことは、被害者が正確な申告を行い、事故当初から適切な治療と検査を受け続けていることです。

事故直後に医師の診察を受けていないと、交通事故との因果関係がはっきりしないとされ、後遺障害診断書を作成してくれない場合があります。

急性期を除き、信頼の置ける医師による治療を受けるべき

後遺障害11級の認定を申請するような交通事故による負傷は、事故直後に医師の治療を受けないということはないと思われます。

被害者は病院に行き治療を受けているはずですが、なかなか治癒せずに病院を転々とするなど、医師としっかりとした信頼関係が築けていないケースもあるでしょう。そうした場合には、その後遺障害が交通事故によるものなのか、あるいは他の事故やもともと持っていた症状なのか、医師にとっても判断がつかないこともあるでしょう。

たとえば、11級7号の代表的症例である腰椎圧迫骨折は、転倒や尻もちなど、交通事故以外によっても日常容易に起こり得るものであるため、交通事故から時間が経って診察した医師からすれば、果たして交通事故によるものかどうかの判断が付きかねるケースがほとんどといえます。

特に高齢者は、骨粗しょう症などにより骨がもろくなっていることもあって、何気ない動作で腰椎圧迫骨折をするケースがとても多いことから、事故と腰椎圧迫骨折との因果関係の判断は医師にとって一層難しいものとなることは間違いありません。

事故直後、救急車で搬送されるなどして、急性期の治療に関して病院を選ぶことは難しいと思われますが、本格的な治療は、なるべく通いやすくて専門的な治療を施してくれる医師を選ぶべきでしょう。

後遺障害診断書は、等級認定において非常に重要

後遺障害の等級が認められるかどうかは、すべて書類による審査によって行われます。その際に最も重要になってくるのが後遺障害診断書だと言われています。
医師ならば誰でも後遺障害診断書は書けますが、より説得力のある、申請する等級をしっかりと意識したものが書けるかどうかは、医師の経験がモノを言います。

また、医師との信頼関係も重要です。真面目に治療に通い、それでも治癒せずに後遺障害が残ってしまい等級申請を行うとなれば、医師もなるべく認定が行われるように親身に書類を作成してくれるでしょう。

後遺障害が残ってしまい、被害者も心情的にはかなり辛いとは思いますが、医師に文句ばかり言い、治療も放棄するような人が、しっかりとした後遺障害診断書を作成してくれと望んでも、おそらく叶えられないと思われます。

被害者と医師が一体となって負傷の治療を行い、後遺障害が残ってしまったら、適正かつ十分な慰謝料を得るべく、等級認定に向けて一緒に取り組めるような関係性をつくっておきましょう。

適正な後遺障害診断書の取得には弁護士への依頼が役立つ

後遺障害診断書を巡っては、医師が診断書を書いてくれない、書いてくれたけれども記載漏れや記載不十分な箇所があるなど、後遺障害の認定を足止めするようなケースをよく耳にします。こうしたことがないようにするには、まず医師との円満な関係を築いておくことが大切です。

11級でいう診断書の不十分な記載については、9号の足指可動域が2分の1以下になったことについて、自賠責保険が基準としている「関節可動域表示ならびに測定法」(1995年 日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の共同作成)とは異なる測定の仕方による数値を医師が記載する実例が指摘されています。
こうした記載は、被害の実態にそぐわない等級認定につながるおそれがあるので、ぜひとも避けたいところです。

医師との円満な関係を築く努力をしているにも関わらず、医師が診断書を書いてくれなかったり、記載漏れや不十分な記載のある診断書を渡されたりしたら、等級認定の申請を弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士から医師に働きかけ、しっかりとした診断書を書いてもらい、被害の実態にふさわしい等級認定をもらえる可能性が高まるはずです。

後遺障害11級認定の申請を弁護士に依頼すると?

後遺障害認定の申請は、交通事故に遭う前には一般人であった被害者にとって、かなりハードルの高い作業になります。後遺障害11級ともなると、慰謝料を含む損害賠償金額は高額となり、加害者側も被害者が出す条件をすんなりとは受け入れてくれません。

たとえ運よく等級認定が認められたとしても、その等級を基準として加害者が加入する保険会社が示してくる慰謝料の額は、後遺障害の慰謝料として得られるべき金額の最低ラインだという現実を知っておきましょう。

運悪く交通事故の被害者となってしまった場合には、最初から弁護士に示談や損害賠償、慰謝料の交渉を依頼した方が良いと思われます。その理由は、被害者が得る慰謝料などの金額が大幅にアップするという結果が示すとおりです。

交通事故の被害者が、弁護士の力を借りるべきもう一つの理由

交通事故の被害者となってしまった場合、示談交渉の相手は、たいてい加害者が加入する保険会社の示談交渉担当員となります。

保険会社の示談交渉担当員というプロを相手に、一般人の被害者が有利な損害賠償の条件や慰謝料の金額を引き出すことは非常に難しいでしょう。また、交通事故の示談に関する知識がない被害者にとっては、必要書類の準備だけでも大変なのが実状です。

交通事故の被害者は、一日でも早く治療を終え、後遺障害を抱えながらも会社や学校などの社会生活に戻りたいと思うのが普通でしょう。しかし等級認定手続や交渉を被害者自身で行うとなると、身体的にも精神的にも日々の生活自体に苦労が伴うため、加害者側の保険会社とのやりとりに心底疲れてしまうことが考えられます。

こうした保険会社とのやりとりの負担を減らし、自身の健康を守ることも、もらう慰謝料額を高くすることと並び、弁護士に依頼する大きなメリットなのです。

弁護士に依頼するタイミングについては、できれば交通事故に遭った直後が最も良いのですが、保険会社の提示する金額に納得がいかないという理由で弁護士への依頼を思いつくこともあります。その時点からでも遅くはないので、弁護士の活用を考えてみましょう。

まとめ

交通事故の後遺障害に対する慰謝料は、前述の通り、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準によって大きく変わり、等級が1つ変化すると金額も大きく変化します。弁護士に相談すれば、認定を得るためだけではなく、等級を上げるための申請方法も示してくれることもあります。

11級の自賠責基準の慰謝料は136万円、弁護士(裁判)基準では420万円ですが、12級しか認められないと、自賠責基準では94万円というように100万円を超えず、弁護士(裁判)基準でも290万円で300万円に満たない金額となります。

11級に該当する後遺障害の症状は、社会復帰が困難とは言えないまでも、仕事に戻るまで時間がかかり、後遺障害を抱えたまま仕事をすることも、最初はかなり難しいことになると考えられます。

交通事故の被害者となり後遺障害が残ってしまった場合、そしてもし等級の認定や慰謝料に不満がある場合は、適正かつ十分な慰謝料を得られるように、弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故に強い【おすすめ】の弁護士に相談

交通事故

一人で悩まずご相談を

  • 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない
  • 交通事故を起こした相手や保険会社とのやりとりに疲れた
  • 交通事故が原因のケガ治療を相談したい