交通事故紛争処理センターとは?流れとメリット・デメリット

交通事故紛争処理センター

相手の保険会社と示談交渉をしているが、提示された金額にどうしても納得できない。弁護士に頼むほどの金額ではない気もするし、裁判は大げさに思える。そんなときに候補に挙がるのが、交通事故紛争処理センターです。

交通事故紛争処理センターは、交通事故の損害賠償をめぐる争いについて、無料で法律相談と和解のあっせんを行う公益財団法人です。弁護士費用をかけずに裁判所の基準に近い水準で解決できることもある一方、中立の機関であって被害者の味方ではないという限界もあります。

この記事では、センターの役割と利用できる事故の条件、手続きの流れ、メリットとデメリット、弁護士に依頼する場合との違いを解説します。

交通事故紛争処理センターとは

交通事故紛争処理センター(公益財団法人 交通事故紛争処理センター)は、自動車事故の損害賠償に関する紛争を、裁判によらずに早く公正に解決することを目的とした機関です。東京の本部のほか、札幌・仙台・名古屋・大阪・広島・高松・福岡の各支部と、さいたま・金沢・静岡の相談室があり、申立人の住所地または事故発生地に応じて利用先が決まります。

センターが行う3つの手続き

センターでは、嘱託を受けた弁護士が次の3つの手続きを担当します。いずれも費用はかかりません。

手続き 内容
法律相談 和解あっせんを前提に、担当弁護士が損害賠償の見通しや争点を整理する
和解あっせん 担当弁護士が当事者双方の主張を聞き、公平な立場からあっせん案を提示する
審査 あっせんが不調のとき、法律学者・元裁判官・弁護士で構成する審査会が裁定を出す

この3段階の構造が、センターの特徴です。あっせんでまとまらなくても審査という次の段階が用意されていて、審査会の裁定には相手の保険会社が従う仕組みになっています。それぞれの流れは後述します。

利用できる事故・できない事故

便利な機関ですが、どんな交通事故でも使えるわけではありません。センターの利用規程で定められた対象と対象外を、表で確認してください。

利用できる 利用できない
自動車(原付を含む)の事故による損害賠償の紛争 自転車同士、自転車対歩行者など、自動車が関係しない事故
相手が協定保険会社・共済に加入しており、被害者に直接請求権がある事案 自分が契約する保険(人身傷害保険、搭乗者傷害保険など)の支払いをめぐる紛争
治療が終わり、損害額が確定できる状態の事案 慰謝料だけ、過失割合だけなど、損害の一部だけを解決しようとする紛争
すでに裁判・調停や他のADR機関の手続きが進んでいる事案
時効が完成し相手が時効を主張している事案、自賠責で無責と判断された事案

表のとおり、センターが扱うのは「自動車事故の損害賠償を、全体としてまとめて解決する」紛争です。後遺障害の等級そのものへの不服や、自分の保険会社との争いは別の窓口になります。

相手が任意保険に入っていない場合は原則対象外

センターの和解あっせんは、相手が加入する保険会社・共済が、センターと協定を結んだ「協定保険会社等」であることが前提です。相手が任意保険に未加入の場合や、協定外の保険会社・共済に加入している場合は、原則として利用できません。被害者・加害者・保険会社がセンターのあっせんを受けることに同意すれば例外的に利用できることがありますが、その同意は予約の前に被害者が取り付けておく必要があります。

利用できるタイミング

センターを使えるのは、治療が終わり、後遺障害があればその等級認定が済んで、損害額を計算できる段階になってからです。治療中や等級認定の手続き中は利用できません。示談交渉を始める時期の目安は「交通事故の示談交渉はいつ開始する?」の記事を参考にしてください。

交通事故紛争処理センターの利用の流れ

手続きは、予約から始まり、相談、和解あっせん、必要なら審査へと進みます。全体の流れは次のとおりです。

段階 すること
予約 電話で予約し、利用申込書を提出。相手方に利用することを連絡する
法律相談 担当弁護士と面談し、事故の内容と損害の資料を示す
和解あっせん 相手の保険会社も出席し、担当弁護士があっせん案を提示
和解成立 あっせん案に双方が同意すれば、示談書または免責証書を作成
審査 あっせん不調の通知から14日以内に申し立て。審査会が裁定

法律相談から和解成立までは数回の面談で終わることが多く、裁判に比べると短期間で決着します。ここからは、各段階で知っておきたい点を補足します。

予約と準備

予約後、申立人は相手方(保険会社)にセンターを利用することを連絡し、その旨をセンターに報告します。面談には、交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、後遺障害等級認定票、休業損害証明書、相手の保険会社の提示書面などを持参します。医療関係の書類の取り寄せは被害者自身が行い、費用も自己負担です。

和解あっせん

担当弁護士が双方の主張と資料をもとに、裁判例の水準を踏まえたあっせん案を示します。あっせん案に同意するかどうかは当事者が決め、双方が同意すれば示談書または免責証書を作って終了します。被害者が納得できなければ同意しなくて構いません。

審査と裁定の効力

あっせんが不調になった場合、当事者は通知から14日以内に審査を申し立てられます。審査会は原則として当事者と面接したうえで裁定を出します。この裁定について、協定保険会社等は尊重することになっており、被害者(申立人)は拘束されません。被害者は裁定の告知から14日以内に同意か不同意を回答し、同意すれば裁定の内容で示談が成立します。不同意ならセンターでの手続きは終了し、裁判など別の手段を取ることになります。

交通事故紛争処理センターを利用するメリット

相手の保険会社の担当者は交渉のプロです。被害者が知識のないまま交渉を続けても、提示額が上がらないまま時間だけが過ぎることがあります。その状況で第三者を入れる利点は、次の3つに集約できます。

無料で、裁判所の基準に近い水準が期待できる

相手の保険会社が提示する示談金は、保険会社独自の基準で計算されており、裁判をした場合の水準(弁護士基準・裁判基準)より低いのが通常です。センターの担当弁護士や審査会は裁判例を踏まえてあっせん案・裁定を出すため、弁護士に依頼しなくても裁判基準に近い金額で解決できる可能性があります。手続きの費用はかからず、必要なのは書類の取得費用や交通費程度です。

裁判より早く解決できる

民事裁判は提訴から判決まで1年以上かかることも珍しくありません。センターの手続きは、複雑な事案でなければ数か月程度で終わるのが一般的で、早期解決を望む被害者に向いています。

保険会社は裁定を尊重する

当事者同士の交渉では、保険会社が金額の引き上げに応じないまま膠着することがあります。センターの審査会が出した裁定は、協定保険会社等が尊重することになっているため、保険会社の提示額が頭打ちになっている状況を打開する手段になるのです。しかも被害者は裁定に拘束されないので、不利な裁定なら断って裁判に進む選択も残ります。

交通事故紛争処理センターのデメリット

一方で、「無料だから」という理由だけで選ぶと、かえって不利になることがあります。弁護士に依頼する場合との違いを意識して読んでください。

中立の機関であり、被害者の味方ではない

最も重要な点です。センターの担当弁護士は、公正中立な立場であっせんを行う人であって、被害者の代理人ではありません。被害者に有利な証拠を集めたり、主張を組み立てたりしてくれるわけではなく、提出された資料の範囲で判断します。十分な資料と主張を自分で用意できなければ、あっせん案が低めになることもあります。

担当弁護士を選べず、途中で変えられない

担当弁護士はセンターが割り当て、相性が合わないと感じても交代を求めることはできません。自分で弁護士を探して依頼する場合との大きな違いです。

本人が出向く必要があり、平日の対応になる

法律相談とあっせんには原則として被害者本人が出席します。利用先は全国に11か所しかなく、遠方の方は交通費と移動時間の負担が生じます。面談は平日の日中で、そのための休業について補償はありません。代理人を立てられるのは弁護士だけです。

損害の一部だけを争うことや、等級の不服には使えない

慰謝料の金額だけ、過失割合だけといった部分的な解決は扱いません。後遺障害の等級認定に不服がある場合は、センターではなく自賠責保険への異議申立てや、自賠責保険・共済紛争処理機構への申請が窓口になります。等級に納得できないときの対処法は「後遺障害が認定されない・非該当だったら?」の記事で解説しています。

弁護士に依頼する場合との違い

センターのほかにも、日弁連交通事故相談センターなど示談が進まないときに使える第三者機関(ADR機関)があります。各機関の違いは次の記事をご覧ください。

センターを使うか、弁護士に依頼するかで迷ったときは、次の比較を参考にしてください。

交通事故紛争処理センター 弁護士に依頼
費用 無料(書類取得費・交通費は自己負担) 着手金・報酬がかかる。弁護士費用特約があれば一定額まで保険から支払われる
立場 中立 被害者の代理人
証拠収集・主張の組み立て 自分で行う 弁護士が行う
相手との交渉 本人が出席 弁護士が代行、本人は原則出席不要
使える時期 損害確定後 事故直後から(治療・等級認定の段階から支援を受けられる)

自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、弁護士に依頼しても自己負担がないことが多く、その場合はセンターを使う理由はあまりありません。特約がなく、損害額が比較的小さくて弁護士費用を払うと手元に残る金額が減る(費用倒れになる)ケースでは、センターが有力な選択肢になります。迷ったら、まず無料相談で弁護士に見通しを聞いてから決めても遅くありません。

交通事故紛争処理センターについてよくある質問

申し込んだら相手の保険会社は必ず応じる?

相手が協定保険会社等に加入していれば、保険会社はセンターの手続きに応じます。相手が任意保険に未加入の場合や協定外の保険の場合は、相手の同意がなければ利用できません。

物損事故だけでも利用できる?

自動車事故の損害賠償に関する紛争であれば、物損のみの事案も対象になります。ただし、損害の一部だけを切り出した申し立てはできません。

センターの手続き中に時効は止まる?

センターの手続き自体に時効を止める効力はありません。損害賠償請求権の時効(人身は5年、物損は3年)が迫っている場合は、予約の段階で相手の保険会社に時効の扱いを確認するか、弁護士に相談してください。

まとめ

交通事故紛争処理センターは、自動車事故の損害賠償をめぐる争いについて、無料で法律相談・和解あっせん・審査を行う公益財団法人です。相手が協定保険会社等に加入していて、損害額が確定していれば利用でき、裁判より早く、裁判基準に近い水準で解決できる可能性があります。審査会の裁定は保険会社が尊重する一方、被害者は拘束されません。

ただし、センターは中立の機関で被害者の代理人ではなく、証拠や主張は自分で用意する必要があります。弁護士費用特約がある方や、後遺障害が絡んで損害額が大きい方は、被害者の立場で動いてくれる弁護士への依頼を先に検討してください。どちらが合うか判断がつかないときは、交通事故に詳しい弁護士の無料相談で見通しを聞いてみるのが近道です。

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