経済的利益とは?交通事故事件の弁護士報酬の基礎となる計算方法
交通事故への対応を弁護士に相談するため、費用についてお調べの際、「経済的利益」という言葉が登場することがあります。
「経済的利益」は、交通事故をはじめ弁護士に相談する際には様々なシーンで採用される弁護士の報酬計算の基礎となる考え方、計算方法のひとつです。
この記事では、交通事故を弁護士に依頼した場合の経済的利益というものが、弁護士費用に対してどのように適用されるものなのか、説明していきます。
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経済的利益とは?
弁護士費用の内訳のうち、
- 着手金
- 成功報酬
を算定するために、交通事故被害者に生じた経済的利益を念頭に置くケースがよくあります。
では、この経済的利益とはいったいどのようなものなのでしょうか?
弁護士報酬規程(旧報酬規程)とは?
現在、弁護士費用は各弁護士が自由に設定してよいことになっています。
ただ、以前は完全に自由というわけではなく、報酬金額を妥当なものにするために、日弁連が報酬規程を定めていました。
交通事故案件にも関わる、旧報酬規程の一部をご紹介したいと思います。
訴訟 | 着手金 | 経済的利益額300万円以下:8% |
---|---|---|
経済的利益額300万円~3000万円以下:5%+9万円 | ||
経済的利益額3000万円~3億円以下:3%+69万円 | ||
経済的利益額3億円~:2%+369万円 | ||
※但し、着手金の最低額は10万円 ※内容に応じて3分の2に減額可能 |
||
成功報酬 | 経済的利益額300万円以下:16% | |
経済的利益額300万円~3000万円以下:10%+18万円 | ||
経済的利益額3000万円~3億円以下:6%+138万円 | ||
経済的利益額3億円~:4%+738万円 | ||
※内容に応じて3分の2に減額可能 | ||
示談交渉 | 着手金・成功報酬 | 訴訟の場合の着手金・成功報酬額に準じる。 内容に応じて3分の2に減額可能 |
現在は弁護士報酬の共通ルールとしては廃止されていますが、今なおこの報酬規程を参考にして弁護士費用を算定するようにしている事務所も多く残っています。
事件の内容・規模に応じた弁護士報酬を算出するための基準
経済的利益を基準に計算することで、弁護士が介入したことで得られた実際の利益(金額)の規模に応じた着手金や成功報酬を算出することができます。
そのため、旧報酬規定では、弁護士報酬の公平性のある算出方法として、経済的利益に基づく計算方法が採用されていました。
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交通事故の弁護士費用における経済的利益の具体例
それでは、この経済的利益の考え方に基づき、交通事故の弁護士費用を計算した場合、金額の考え方はどのようなものになるのでしょうか?
旧報酬規定と同等のルールを採用した場合を例に、説明していきたいと思います。
交通事故対応に関して、経済的利益に基づく弁護士報酬の算出事例
交通事故被害者がもろもろの損害を受けたために、加害者側に対して1000万円の損害賠償を請求することを検討しています。
担当弁護士が示談交渉を進めた結果、700万円を一括で支払期日までに振り込みすることで交渉がまとまりました。
支払期日に担当弁護士の口座に700万円が支払われました。
経済的利益と着手金
まずは、着手金について考えてみましょう。
今回の交通事故案件では、加害者側に1000万円の損害賠償を請求することになっています。
これが確定した場合には、被害者側に1000万円の経済的な利益が生まれることになります。
したがって、この段階では、経済的利益は1000万円であると想定されます。
旧報酬規程を参考にすると、1000万円の損害賠償請求に関する示談交渉では、3%+69万円が着手金の算定基準となります。
したがって、本件における着手金は、99万円となります。
経済的利益と成功報酬
次に、成功報酬について考えてみましょう。
示談交渉の結果、当事者間において損害賠償額700万円で合意が形成されました。
したがって、実際に被害者の手元に入ってくるお金は700万円と言うことになるので、経済的利益は700万円であると言えます。
旧報酬規程を参考にすると、700万円の損害賠償請求に関する示談交渉では、10%+18万円が算定基準となります。
したがって、本件における成功報酬は、88万円となります。
経済的利益と弁護士報酬(着手金と成功報酬)総額
以上より、本件における弁護士報酬(日当その他費用は省略するとして。)は、187万円と算出されることになります。
着手金と成功報酬の段階では、理屈上、経済的利益として想定する金額に差が生まれます。
現在、弁護士費用は自由化され、事務所・弁護士により異なる
ただ、旧報酬規程に素直に従った場合には、あくまでこのような形で算定されるということに過ぎません。
何度も申し上げたように、現在は弁護士それぞれが自らの報酬体系を自由に設定できるようになっています。
着手金は無料で成功報酬額は高めに設定するというような完全成功報酬制のような料金形態をとっている法律事務所もあります。
そのため、相談した弁護士に直接確認する必要があります。
経済的利益に基づく弁護士報酬支払い・被害者への入金額の例
賠償金はまず弁護士に入金され、被害者には報酬分を差し引いた金額が払われる
先程の事例でも明らかなように、基本的に相手方から支払われた損害賠償額は、直接被害者に支払われるのではなく、まずは弁護士の口座に支払われることになります。
そして、弁護士が自分の報酬額を差し引きしてから、残りについて被害者本人の口座に送金するというプロセスが取られます。
先程の例ですと、実際に加害者側から支払われた金額は700万円でしたが、弁護士報酬が187万円でした。
そのため、弁護士が報酬分を差し引いた513万円を被害者の口座に送金して、事件は終了することになります。
経済的利益に基づく弁護士報酬で依頼する場合の注意点
あくまでも旧報酬規程に素直に従った場合ではありますが、場合によっては弁護士費用が賠償額を上回るケースも想定されます。
たとえば「1000万円の損害賠償請求をしたが、被害者側に多くの過失割合が認められてしまったために、実際に回収できたのが50万円しかなかった」というようなことも、もちろん現実に起こりうることです。
着手金はあくまでも1000万円の経済的利益を前提として算出されるものですので、これだけで費用倒れになってしまいます。
このような事態を防ぐためにも、依頼した弁護士に対して事案の展望をしっかりと確認した上で、実際にどれくらいの金額を請求できそうなのか、その上で、費用倒れになることはないのかということを入念に確認するようにしましょう。
まとめ
弁護士報酬もふまえ、被害者自身の手元に十分な利益が残るよう確認を
各弁護士が設定する報酬規程が異なる以上、依頼を決める前に、実際に被害者の手元に残る金銭がどの程度であるのかについて、弁護士に直接確認しなければいけません。
この点がルーズな弁護士も中にはいるので、金銭面についてはしっかりと確認するように気を付けて下さい。
十分な賠償額を回収できる弁護士選びが重要
同時に、しっかりと相手方から賠償額を回収できる優秀な弁護士を選ぶことも忘れないようにして下さい。
経済的利益が増えれば弁護士の成功報酬も増えてしまいますが、それでも被害者本人の手元に残るお金が増えることに変わりありません。
交通事故案件に精通した弁護士に依頼することで、慰謝料などをできる限り高額を受け取ることができますし、しっかりと療養に専念することもできます。
そのため、交通事故の被害にあった場合には、交通事故に強い弁護士になるべく早く相談することをおすすめします。
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