交通事故後、相手方弁護士から受任通知が届いたらどうすればいい?
弁護士からの受任通知について
交通事故に巻き込まれて、被害を受けてから加害者側とさまざまな交渉を進める中、加害者側の弁護士から受任通知が送付されるケースもしばしばあります。それまでは保険会社を通じてやり取りをしていて話がおさまりそうだったのに、なぜいきなり弁護士が登場することになるのだろうと思われる方もいらっしゃるでしょう。
そこで、このページでは交通事故後に、相手方弁護士から受任通知が届いた場合の対応方法を説明しますが、まずは、そもそも受任通知とはどのようなものなのかについての解説をします。
受任通知とは?
弁護士は、依頼者からの依頼を受けて事件を担当することになります。正式に代理することが決定すると、弁護士はまず事件の相手方に対して受任通知を送付します。係争案件について、弁護士が代理をつとめることになったことを相手方に教えるためです。つまり、受任通知とは、相手方に対する受任の告知でしかありません。
受任通知の目的
弁護士が代理することになったことを告げるのが目的の受任通知ですから、事件の内容は問いません。交通事故案件はもちろんのこと、離婚や過払い案件など、相手方が存在する限りの全ての事件に関して受任通知は送付されるものです。
委任の範囲にもよりますが、弁護士が代理するということは、通常、交渉など事件に関する全ての作業を弁護士が代理することを意味します。受任通知を受け取ることによって、相手方もこの事実を知ることになります。したがって、弁護士から送付された受任通知を受け取って以降は、加害者本人に対して直接何かしらの連絡をすることなどは一切できなくなります。
相手方の窓口が担当弁護士に一本化されるので、受任通知受領後は、相手方に対して何か伝えたいことや送付すべき書類があるのであれば、全て担当弁護士に対して連絡をすることになります。弁護士に依頼することでより法的な観点から事件を解決できるのはもちろんのこと、受任通知の送付によって当事者間が直接接触するのを防ぐことができるので、スムーズな事件解決を期待できることになるわけです。
交通事故加害者が弁護士に依頼する目的
交通事故に巻き込まれたのはこちら側なのに、なぜ加害者側が弁護士にわざわざ依頼するのか不思議に思われる方もいらっしゃるはずです。そのために、交通事故加害者が弁護士に依頼する際の目的について簡単に触れておきます。
煩雑さからの解放
まず考えられるのが、交渉事等の作業が面倒であるということが考えられます。
先程も述べたように、弁護士に依頼することで、事件に関する全ての作業を弁護士に一任することができます。書類の準備や細々とした電話対応などは、どうしても日常生活の妨げになってしまうものです。この煩わしさから逃れるために、弁護士に一任してしまうという加害者は意外と多いものです。
事件の円滑な解決
次に、弁護士に依頼した方がスムーズに手続きを進行しやすいという点です。
たとえば、当事者間で慰謝料の金額について簡単な口約束をしたとしましょう。もちろん口約束にも法的な拘束力は生じます。しかし、証拠とするものがありません。もしかすると、後からさらに金銭を要求されたりするというトラブルが発生するかもしれません。このような事態は、加害者の立場からするとやはり面倒ごとに感じてしまうのは仕方のないことでしょう。
それに対して、弁護士に依頼した場合には、一度で交渉をスムーズにまとめることができます。加害者側が弁護士を立てるのは、加害者側が反省していないということではありません。加害者側も事件を円滑に解決してしまいたいからこそ、弁護士に依頼して確実な解決を目指そうと思うものなのです。
有利な条件獲得を期待
交通事故案件ではさまざまな要素が問題となります。事故態様から見る過失割合、慰謝料の算定額、損害賠償額の内訳など、多くの場面で加害者被害者間の争いが生じることになります。
もちろん、当事者間で交渉するのも一つの手段でしょう。しかし、残念ながら法律家ではない一般人同士ではどうしても適切な解決という意味では限界があるはずです。また、保険会社の算定基準等に完全に依拠するだけでは、事件の詳細について立ち入った判断がされることなく、形式的な処理がされるだけの場合も往々にしてあることです。
加害者側がこれらの要素について納得していない場合、弁護士に依頼することによって、より自分の納得のいく形の主張を実現しようとするケースも多く見られます。
忘れてはいけないこと
普段弁護士というものに接する機会が少ないと、「事件を起こしたのは相手の方なのに、どうして弁護士なんてわざわざ頼むの?反省していないの?」というような思いに駆られるかもしれません。しかし、それは少し考えすぎです。上述したように、加害者サイドも合理的な目的意識に基づいて弁護士に依頼をしています。
したがって、弁護士からの受任通知が届いたことで何もネガティブな感情になる必要はありません。通常どおり、丁寧に対応を続けるだけで問題ありません。とはいえ、対等に交渉を進めていくためにも、被害者側としても弁護士に相談した方がいいでしょう。
受任通知が届いた場合の対応
それでは、交通事故加害者側弁護士から受任通知が届いた場合の対応について説明したいと思います。
被害者側も弁護士に依頼すべき?
交通事故加害者側に弁護士が就いたのであれば、被害者であり当事者である自分も弁護士に依頼しなければいけないのではないかと思われるかもしれません。しかし、全くそのようなことはありません。相手方に弁護士が就いたからと言って、こちら側も弁護士に依頼することが強制されるものではありませんので、ご自分で対応を進めることで一切問題ありません。
ただし、先程も述べたように相手だけが弁護士を立てている状況ですと不利な立場になってしまう可能性もありますので、交通事故に強い弁護士に相談するようにしましょう。
受任通知の記載内容を確認する
受任通知に記載されている内容はしっかりと読み込むようにしましょう。シンプルな受任通知であれば、依頼を受けて受諾した旨だけが記載されているだけの場合もあります。しかし、実際のところはいくつかの詳細事項について記載されていることがあり、何かしらの対応を求められるケースも通常のところです。
たとえば、「当方は慰謝料額〇〇万円を想定しておりますが、貴殿のお考えについて2週間以内に書面にてご回答頂きたくお願い申し上げます。」というような記載内容が付されていることがあります。もちろん、受任通知に付された弁護士からの要望というものは、あくまでも一方当事者からの希望でしかなく、法的な拘束力を生むものではありません。
ただし、このような記載があるということは、慰謝料額について相手方が交渉したい、つまり、争う姿勢を一応は見せているということが分かるわけですから、無下に扱ってしまうのも得策とは言えないでしょう。記載された内容はしっかりと確認した上で、今後の方策を検討しなければいけません。
交渉窓口に関すること
先程も述べましたように、受任通知が届いたということは、相手方に弁護士が就いたということを意味します。ほとんどの受任通知では、最後の部分に、「今後は、本件に係る連絡は直接〇〇(加害者本人)に一切しないことをお願いするとともに、全て当職宛になされることをお願い致します。」という文言が付されることとなります。交通事故紛争では、どうしても当事者が感情的になってしまうものですから、加害者本人が今後出てこないことで、被害者の方は苛立ちを覚えるかもしれません。
もちろん、交通事故紛争に関する受任通知内容には、とりあえずのところ法的な拘束力はないものです。受任通知にこのような記載内容が付されていたからと言って、これに反して本人に直接連絡を取ろうとしても、何かしらの罰が与えられるものではありません。ただ、加害者本人と弁護士が委任契約を結ぶ際に、「『今後被害者本人から連絡があったとしても、弁護士に一任しているのでそちらに連絡するようにして下さい。』と言うように。」という指導がされているのが一般的です。
したがって、加害者本人に連絡をしたとしても、「担当弁護士の方に一任しております」と伝えられるだけなので、事件の円滑な解決を目指すのであれば、交渉窓口は弁護士に一本化されたと考えるべきでしょう。
受任通知が届いたら弁護士に相談!
相手方の弁護士から受任通知が届いたとしても、それ自体に何らかの法的拘束力が生まれるものではありませんが、やはり緊張感が生まれるものではあるでしょう。先程も述べたように、記載内容を熟読しても、内容がしっかりと理解できなかったり、今後の流れについて不安を覚えたりする方もいらっしゃるかもしれません。
そうであれば、まずは弁護士に「受任通知が届いたけれどもどうすればよいのか」という程度の相談をしてみるのも一つの手でしょう。たとえば、受任通知に何かしらの回答を求める内容が付されているのであれば、相手方がなぜこのような回答を求めるのか、どのような回答をするのがベストなのかを弁護士に相談の上、自分で書面を作成すればよいのです。これであれば、一回の相談の範囲内で済むでしょうし、初回無料相談サービスを展開している事務所であれば、無料で不安を解消することもできます。
あるいは弁護士に相談した結果、書面の作成等の対応を自分でするのが難しいと感じたり、今後の流れを考えると委任しておいた方がベターだと感じたりこともあるかもしれません。その場合には、その弁護士にそのまま依頼をするといいでしょう。
今後の交渉がスムーズに進むのか、あるいは長期的なものになってしまうのかなど、さまざまな不安があるかと思います。そのような漠然とした不安を払拭するためにも、まずは交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
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