網膜裂孔とは?網膜剥離につながる症状だが交通事故と因果関係立証が難しい
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「網膜裂孔」は「網膜剥離」の前段階とも言える症状
放置すると視野欠損や失明の危険性。事故後の検査が重要に
交通事故によって受ける眼への障害として、視力が低下する視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害、まぶたの欠損障害、流涙、外傷性散瞳などがあります。
眼の負傷が後遺障害として残ってしまった場合は、症状「名」ではなく症状の「程度」に応じて認定が行われます。
本項では、交通事故によって頭部や顔面に衝撃を受けた場合に発生しやすい、眼の「網膜裂孔」について説明します。
「網膜裂孔」とは?
「網膜裂孔(もうまくれっこう)」とは、眼の網膜に裂け目ができてしまうものです。適切な診断と治療を受けないで放置しておくと、「網膜剥離(もうまくはくり)」を引き起こし、視野欠損や失明という重い症状の原因となってしまう可能性があります。
「網膜裂孔」が起こる原因は?
交通事故に遭って頭部や顔面に衝撃を受けると網膜裂孔が生じる可能性があります。交通事故、あるいは激しい運動や転倒などで頭や顔面をぶつけてしまい、急激な力が眼球に加わると網膜に裂け目が入ってしまうのです。
網膜裂孔は「交通事故との因果関係」が焦点に
外傷以外にも網膜裂孔となる原因があります。一般的に「網膜裂孔」の原因として挙げられるのは、加齢や強度の近視です。事故などによる強い衝撃を受けなくても、加齢や強度の近視といった要因で「網膜裂孔」が起こる可能性があります。
そこで網膜裂孔になると、交通事故との因果関係が疑われるケースが少なくありません。
「網膜裂孔」の症状は?
「網膜裂孔」の自覚症状は、目の前に黒い点や糸くずのようなモノが飛んでいるように見える「飛蚊症(ひぶんしょう)」や、光が当たっていないのに光が見える「光視症(こうししょう)」が代表的です。また「網膜裂孔」が原因となって「網膜剥離」が引き起こされた場合、視力が急に低下したり、視野が狭くなったりすることがあります。
「網膜裂孔」のやっかいな点
「網膜裂孔」の典型症状である「飛蚊症」や「光視症」は、交通事故以外の原因によって発症する場合が多々あります。交通事故に遭った後に網膜裂孔の症状を感じた場合でも、「事故が原因」と自覚するまでに時間がかかってしまうケースがあります。
また、網膜には痛覚がないので、網膜に裂け目ができ損傷を受けても痛みを感じません。視覚の異常が事故直後に生じたなどすぐに症状を自覚できた場合は別として、事故によって「網膜裂孔」が起きてもわからない方が多いのです。
「網膜裂孔」が「網膜剥離」を引き起こす?
「網膜裂孔」は、日常生活にさほど影響を与えない「飛蚊症」や「光視症」といった症状のため、「そのうち治るだろう」などと思われて放置されるケースが少なくありません。
しかし「網膜裂孔」は、より重い視野欠損や失明を引き起こす「網膜剥離」の原因となりかねない重大な症状です。
交通事故に遭って頭部や顔面に衝撃を受けた場合は、必ず眼の検査を受けておくことをお薦めします。
「網膜裂孔」の裂け目から水分が入り網膜が剥がれる!
網膜は人間がモノを見るときに画像を映す「スクリーン」にあたる重要な組織です。網膜で感じ取った光や映像が脳に送られ、人間はモノを見ることができます。
「網膜裂孔」は、眼球の内側にある重要な網膜に裂け目が入る傷病です。
通常、眼球はゼリー状の硝子体で満たされていますが、加齢や近視が進むと一部硝子体が液状化し水分となることがあります。その結果、硝子体が眼球内で動きやすくなり、硝子体の動きに網膜が引っ張られて破れてしまった状態が「網膜裂孔」です。
網膜に裂け目ができた網膜裂孔の状態で放置しておくと、破れた網膜の隙間から水分が入り込み、網膜が眼球の内側から剥がれてしまう「網膜剥離」を引き起こす可能性があります。
「網膜剥離」は最悪の場合、失明してしまうケースもある重大な傷病ですので、「網膜裂孔」のうちに治療を受けるべきです。
また網膜裂孔になっているなら、網膜剥離予防のために定期的な検査を受け続けましょう。
「網膜裂孔」の検査方法・治療法方は?
交通事故後、検査や治療を受ける病院の診療科は外科や整形外科が一般的ですが、頭部や顔面に衝撃を受けた場合は、自覚症状がはっきりしていなくても念のために眼科で検査を受けることをお薦めします。
視力検査と眼底検査を受ける
「網膜裂孔」の検査方法は、まず視力検査を行います。健康診断などで自分の視力を測る人は多いでしょうから、きちんと事故前の視力を記録して比較しましょう。
その後「眼底検査」を実施します。眼底検査は網膜の状態を調べる検査で、瞳孔を開く散瞳薬を点眼し、網膜がよく見えるようにして行われます。なお散瞳薬の点眼後は、光がまぶしく感じられる状態が数時間続きますので、検査直後は自動車の運転などをしてはなりません。
必要に応じて近赤外線を利用したOCT(光干渉断層計)による検査が行われます。これは網膜の断面を観察し、より詳しく網膜の状態を調べるための検査です。
「網膜裂孔」はレーザー治療が一般的
「網膜裂孔」の治療は、レーザー治療が一般的です。網膜の裂け目が広がり「網膜剥離」を引き起こしてしまわないように、レーザーを照射して裂け目の周囲を焼き固めます。症状が「網膜剥離」まで進行していなければ、レーザー治療だけで済みますので、通院での治療が可能となるケースが多いのが特徴です。
「網膜裂孔」になっても日常生活に支障のない程度まで治癒できるケースが多数です。ただし裂け目の場所や状態によっては治療が終了しても「飛蚊症」や「光視症」が残り、視力低下などの後遺症が残る場合もあります。
交通事故で起こる「網膜裂孔」は因果関係立証が難しい?
「網膜裂孔」は、交通事故などの外傷で頭部や顔面に衝撃を受けた場合に起きる可能性がある傷病です。
一方で、一般的には「網膜裂孔」の原因は加齢や強度の近視とされています。
加齢による「網膜裂孔」
先に説明した通り、眼球の内部は硝子体という無色透明のゼリー状の組織で満たされています。
硝子体は加齢とともに少しずつ液状化し水分に変化し、ゼリー状の液体の中に空洞ができ容積が減ります。硝子体の液状化が進行すると、硝子体と後方の網膜が離れてすき間ができ、50歳以降に多くみられる「後部硝子体剥離」を起こすケースがあります。
そして「後部硝子体剥離」が生じる時に硝子体と網膜が強く癒着している、あるいは網膜が弱くなっている場合には、硝子体に引っ張られて網膜に裂け目が生じることがあります。このように加齢による生理的な症状も典型的な「網膜裂孔」の1つです。
交通事故に遭わなくても「網膜裂孔」が起こるケースが多いので、事故後に網膜裂孔になったと主張しても、原因が交通事故によるものなのかどうか、因果関係を争われて立証が困難になるケースがよくあります。
中高年になったら眼底検査を定期的に受ける
交通事故による「網膜裂孔」を立証するには、「事故前は網膜に裂け目がなかった」事実を証明する必要が生じてきます。そのため、加齢による「網膜裂孔」が起こりやすい年齢になったら、他の病気が原因となる網膜の変性を調べる意味でも、定期的に眼科の検診を受けておいた方が良いでしょう。
また強度近視の方は、年齢に関わらず検査を受けることをお薦めします。「飛蚊症」や「光視症」といった、明らかに網膜に異常が疑われる症状が交通事故後に表れたら、眼科の医師に交通事故に遭ったことを説明し検査を受け、診断書に交通事故との因果関係を書いてもらうようにしましょう。
もしも医師が「事故が原因」と診断してくれない場合、早めに交通事故に強い弁護士に相談して対処方法についてアドバイスを受けましょう。
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