上肢(腕・手指)の後遺障害等級一覧|欠損・機能・変形・醜状

上肢機能障害

交通事故で腕や手にケガをし、治療を続けても肩や肘が以前のように動かない、指を失った、骨が曲がったままくっついた。こうした腕と手の障害は、後遺障害の等級表で「上肢」の障害として、部位と程度ごとに細かく定められています。

上肢の後遺障害は、欠損障害・機能障害・変形障害・醜状障害の4つに分けられ、第1級から第14級まで幅広い等級が設けられています。この記事では、それぞれの障害の内容と該当する等級、認定で押さえておきたいポイントを解説します。

この記事を読む前に:記載している症状や治療の説明は一般的な知識としてのものです。症状の判断や治療方針は必ず医師の診断に従ってください。

上肢の後遺障害とは

後遺障害の等級表では、肩関節から先の腕と手をまとめて「上肢」と呼びます。具体的には、上腕・肘関節・前腕・手関節と、その先の手指・指関節です。肩関節・肘関節・手関節の3つを「三大関節」といい、機能障害の等級はこの三大関節のうちいくつに障害があるかで決まります。

上肢の障害は、失われた部分や動かない関節が日常生活と仕事に直結するため、等級表の中でも区分が細かく、手指については上肢とは別に独自の基準が設けられています。障害の種類ごとに整理すると次のとおりです。

障害の種類 内容
欠損障害 上肢や手指の全部または一部を失った
機能障害 関節が動かない、可動域が狭くなった、麻痺で使えない
変形障害 骨折後に偽関節が残った、骨が変形して癒合した
醜状障害 上肢の露出面に目立つ傷あとが残った

以下、この4種類の順に、等級と判断の基準を見ていきます。

上肢・手指の欠損障害

欠損障害は、交通事故で上肢の全部または一部を切断などによって失った障害です。失った部分が大きいほど等級は高くなり、腕そのものの欠損と手指の欠損とで別の基準が使われます。

上肢の欠損障害の等級

腕を肘関節または手関節以上で失った場合の等級です。両腕か片腕か、肘より上か手首より上かで分かれます。

等級 内容
第1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
第2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
第4級4号 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
第5級4号 一上肢を手関節以上で失ったもの

「ひじ関節以上で失った」とは、肩関節で離断した場合、肩関節と肘関節の間で切断した場合、肘関節で離断した場合を指します。「手関節以上で失った」は、肘関節と手関節の間での切断、または手関節での離断です。

手指の欠損障害の等級

手指の欠損は、どの指を何本失ったかで細かく分かれます。親指(おや指)を含むかどうかで等級が変わるのが特徴です。

等級 内容
第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
第6級8号 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの
第7級6号 一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの
第8級3号 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの
第9級12号 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの
第11級8号 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
第12級9号 一手のこ指を失ったもの
第13級7号 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの
第14級6号 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

手指を「失った」とは、親指は指節間関節、その他の指は近位指節間関節以上を失った場合をいいます。それより先の部分を失った場合は「指骨の一部を失った」として第13級・第14級の対象になります。

上肢・手指の機能障害

機能障害は、欠損はしていないものの、関節が動かなくなったり可動域が狭くなったりした障害です。等級表では、障害の重さを「用を廃した」「著しい障害を残す」「障害を残す」の3段階で表しています。

3段階の判断基準

3段階の違いは、関節がどの程度動くかで判断されます。目安は次のとおりです。

段階 基準
用を廃した 関節が強直した、完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態(可動域が健側の10%程度以下)、人工関節・人工骨頭を入れて可動域が健側の2分の1以下
著しい障害を残す 可動域が健側の2分の1以下に制限された、または人工関節・人工骨頭を入れて可動域が2分の1を超えて残っている
障害を残す 可動域が健側の4分の3以下に制限された

可動域はケガをしていない側(健側)の関節と比較して測定します。測定は医師が行いますが、どの運動(屈曲・伸展・外転など)を主要運動として測るかは関節ごとに決まっており、測り方しだいで等級が変わることもあるため、症状固定の時点で正確に測定してもらうことが大切です。

上肢・手指の機能障害の等級

3段階の基準を、腕の三大関節と手指それぞれに当てはめた等級は次のとおりです。どの関節がいくつ、どの段階に当たるかで等級が決まります。

等級 内容
第1級4号 両上肢の用を全廃したもの
第4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
第5級6号 一上肢の用を全廃したもの
第6級6号 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
第8級6号 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
第9級13号 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
第10級7号 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
第10級10号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級6号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
第13級6号 一手のこ指の用を廃したもの
第14級7号 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

手指の「用を廃した」は、指の末節骨の半分以上を失った場合や、指の関節の可動域が健側の2分の1以下になった場合などをいい、腕の関節とは別の基準です。表のとおり、腕の三大関節の障害は第5級から第12級、手指の障害は第4級から第14級の範囲で認定されます。

上肢の変形障害

変形障害は、骨折した骨がうまくつかずに関節以外の場所で曲がる偽関節が残ったり、骨が曲がったまま癒合したりした障害です。上腕骨や前腕の橈骨・尺骨といった長管骨に生じます。

等級 内容
第7級9号 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
第8級8号 一上肢に偽関節を残すもの
第12級8号 長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残す」とは、骨が15度以上屈曲して癒合した場合や、骨の一部を失って長さが短くなった場合などを指します。偽関節の有無や変形の角度はX線で確認するため、症状固定時の画像が認定の決め手です。変形障害は痛みや可動域制限を伴うことも多く、機能障害とあわせて評価されることがあります。

上肢の醜状障害

交通事故の傷あとが上肢の露出面(肘関節から先)に残った場合は、醜状障害として等級の対象になります。

等級 内容
第14級4号 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

「てのひらの大きさ」は、本人の手のひら(指の部分を除く)の面積が目安です。傷あとがそれより大きく目立つ場合、等級表に直接の定めはありませんが、程度に応じて上位の等級に相当すると判断される余地があり、個別の判断になります。顔の傷あとは別の基準で評価されるため、顔面の醜状障害については「外貌醜状とは?」の記事をご覧ください。

上肢の後遺障害で押さえておきたいポイント

上肢の障害は、等級そのものの認定に加えて、賠償額の計算でも争点になりやすい分野です。特に次の2点に注意してください。

可動域の測定と症状固定の時期

機能障害の等級は可動域の数値で決まるため、症状固定の時期と測定の正確さが結果を左右します。リハビリで回復の余地があるうちに症状固定とすると、本来より軽い等級になることもあれば、逆に回復前の数値で高い等級がつくこともありますが、後者はあとから争われる原因になります。主治医と相談し、回復が止まった時点で主要運動を正確に測定してもらってください。

利き腕かどうか、仕事への影響

後遺障害の等級は利き腕かどうかで変わりませんが、逸失利益(将来の収入の減少)の計算では、利き腕の障害か、仕事で手をどう使うかが考慮されることがあります。醜状障害も、等級は第14級でも、接客など手を見せる仕事では労働能力への影響を主張する余地があります。等級と賠償額は別の問題として、仕事への具体的な支障を資料で示すことが大切です。

適正な等級認定と補償は弁護士に相談を

上肢の後遺障害は区分が細かく、可動域の測り方ひとつで等級が変わる分野です。後遺障害診断書に必要な検査結果が漏れなく記載されているか、画像所見がそろっているかを確認し、等級に納得できなければ異議申立てを検討することになります。

相手の保険会社との交渉を自分で進めるのは負担が大きく、等級の妥当性を判断するにも専門知識が要ります。交通事故は突然やってくるものですから、事故に遭ってから慌てて勉強するより、後遺障害の案件に慣れた弁護士に早めに相談するほうが、認定と補償の両方で良い結果につながりやすいでしょう。

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