後遺障害の等級認定における「相当(準用)」とは?
後遺障害等級表には、全身に渡りほとんどの部位に関する障害が網羅されているが、事故の状況は千差万別で、すべての障害はカバーされてはいません。その場合は「相当(準用)」ルールにより等級が認定されます。個人での申請は難しく、弁護士などへの相談が必要です。
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交通事故による後遺障害の症状が等級表にない!
どのようにして等級が認定されるのか?
自動車損害賠償保障法に定められた交通事故の後遺障害等級表には、16等級137の症状が掲載されています。これには全身に渡るほとんどの障害が網羅されていますが、交通事故の状況は千差万別で、個人的な差異もあるため、すべての障害がカバーされているとは言えないのです。
例えば、視覚や聴覚に関しては相当程度細かい基準が定められている一方で、嗅覚や味覚に関してはほとんど定められていません。
一般的な人とっては、嗅覚や味覚は損害賠償の基本である労働力の低下につながらないかもしれませんが、調理人にとっては大切な感覚で、失われてしまえば将来に渡り事故前の仕事ができなくなる可能性もあるのです。
このような場合は、「相当(または準用)」というルールで等級が認定されます。
自賠責後遺障害等級表の備考に定められている基準
「相当」の基本的な考え方は、自賠責後遺障害等級表の備考六に、「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。」と定められています。
個別の認定になるため、詳しくは説明されていませんが、等級表に載っている症状だけが後遺障害として認められる、ということではないということを知っておきましょう。
例えば、味覚の場合は?
交通事故によって、味覚だけが失われる、あるいは減衰するということは、きわめてレアなケースです。
味覚が失われる場合には、その他により大きな障害があると考えられ、その症状の等級で認定されることがほとんどだと考えられます。しかし、神経障害の一種として、味覚だけが損なわれるということは、あり得ない話ではありません。
等級表以外で調べる方法は?
味覚については、等級表に掲載されていませんが、裁判基準で損害賠償額を算定する際によく用いられる、通称赤い本(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」によると、味覚障害は第12級相当(味覚脱失)、または第14級相当(味覚減退)とされています。
味覚とは、舌で感じられる基本的な4つの味覚(甘み、塩辛さ、酸っぱさ、苦味)ですが、このすべてを喪失してしまった場合は、第12級相当、1つ以上3つ以下を失った場合は第14級相当とされています。
味覚については、検査法が確立されていて、味覚障害を証明することは可能ですから、等級表に載っていなくても、相当(準用)として認定される可能性が高いと言えます。
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その他の後遺障害で、「相当(準用)」が認められるケースは?
「相当(準用)」が認められる主な障害を、ここに紹介します。
眼の障害については?
眼の障害については、等級表において視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害、加えてまぶたの障害として欠損障害と運動障害が載っていますが、交通事故ではこの他に、外傷性散瞳や、流涙などの後遺障害が考えられます。
外傷性散瞳については、両眼の場合で第11級相当、または12級相当、片眼の場合で第12級相当、または第14級相当に認定される可能性が高いと言えます。
耳の障害については?
耳の障害については、等級表において聴力障害、耳介の欠損障害が載っていますが、交通事故で負いやすい耳漏、耳鳴りについては定めがありません。
聴力障害がなくても、これらの症状が残った場合は、その程度によって第12級相当、または第14級相当として認定される可能性があります。
鼻の障害については?
鼻の障害については、等級表において欠損障害のみが定められています。
欠損を伴わない、嗅覚脱失、嗅覚減退、鼻呼吸困難などの症状が残った場合は、その程度によって第12級相当、第14級相当が認定される可能性があります。
口の障害については?
口の障害については、等級表において咀嚼、言語機能障害、歯牙障害が定められていますが、上記の味覚障害、舌の異常や嚥下障害、かすれ声についても「相当(準用)」が認定される可能性があります。
以上が代表的なものですが、「相当(準用)」については非常に細かく多岐に渡り、職業によっても請求の金額が違ってくると考えられる、弁護士などの専門家に相談することをお薦めします。
後遺障害の等級は度々変更される。最新の情報を確認しましょう
交通事故に遭ってしまった時、弁護士に相談する前に、まずインターネットや書籍で損害賠償請求に関することを調べ、後遺障害についても検索することが多いと思われます。
しかし、公的機関の公的サイトを除き、インターネットのホームページの情報は必ずしも最新ではありませんし、特に書籍についても、情報が古く、後遺障害の等級表は必ずしも最新版ではない可能性があるので、注意が必要です。
労災保険法施行規則に準じて、自賠責法施行令によって運用される等級表
交通事故の後遺障害の等級は、労働者災害補償保険法施工規則の別表第一 障害等級表に準じて、自動車損害賠償保障法施行令により運用されています。両方の等級はおおまかな所は同じですが、詳細は違います。
また、度々改定されるので、調べたい後遺障害等級表に掲載されているのか、またどの等級に該当するのかは、常に最新の等級表で確認しておきましょう。
最近の改定では、顔の傷跡に関する等級が変更された
2011(平成23)年の改訂では、傷跡に関する等級の評価が変更されました。
容貌の美醜に関する等級は、それ以前は男女によって等級に差がありましたが、現在は男女の差はありません。
かつては第7級に「女性の外貌に著しい醜状を残すもの」とあったのが、「外貌に著しい醜状を残すもの」に変更され、第12級にあった「男性の外貌に著しい醜状を残すもの」が削除されています。
これは、男女の障害等級に差を設けることが違憲であるとの判決を受け、労災規則が改定され、それに伴って自賠責法でも変更が行われたものです。
このように、時代の変化によって後遺障害の等級は変化していきます。
現在は診断を付けるのが難しいものでも、被害者が悩んでいる症状が、医療の進歩により正確な診断ができるようになれば、新たに等級表に追加されるかもしれません。
自分の後遺障害の等級を調べる場合には、その等級表が最新のものなのか、必ず確認しましょう。
後遺障害の等級認定手続きは、弁護士に相談しましょう
交通事故によって負傷し、後遺障害が残ってしまった場合、その後の生活の補てんのため、少しでも上の等級の後遺障害認定を得て、適正な損害賠償金を得たいと思うのが普通でしょう。
そこで初めて後遺障害のことについて調べ、等級表や他の資料を手に入れ、自分の等級を自分で判断することになります。
しかし、いくら詳細に調べても、最終的に等級の認定を行うのは、公的機関である損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所です。
加害者側の任意保険会社に手続きを依頼する「事前認定」でも、被害者自らが書類や資料を揃えて申請する「被害者請求」でも、同じ申請条件であれば、同じ結果が返ってきます。
示談交渉にも重要となる後遺障害の等級
交通事故による後遺障害がどの程度の症状で、どの等級に該当するのかを事前に調べた方が、示談交渉がスムーズに進むのですが、実際には望んだ通りの等級が認定されないケースも多くあります。
特に、むちうち症など検査で数値的な証明がしにくい症状や、後遺障害等級表に記載されていない後遺障害は、示談で揉める原因にもなります。
プロ相手の交渉は、専門家の力を借りよう
最近の示談交渉では、加害者と被害者が直接話し合うことは滅多にありません。多くのケースでは、加害者が加入している保険会社の担当員と被害者の交渉となります。
そのような状況では、いくら勉強したと言っても、交通事故に遭うまではまったく馴染みのなかった言葉が飛び交う示談交渉の場では、保険会社側のペースで進んでしまうことが想像に難くありません。
被害者に残ってしまった後遺障害の等級認定が難しい時、複数の後遺障害が残った場合に行われる「併合」の時、等級表に掲載されていない症状がある場合の「相当」の時、そしてもともと障害があった場合の「加重」の時などには特に、弁護士などの専門家に相談するのが得策と言えます。
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